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京都伏見稲荷は「インスタ映え」で土地価格上昇?路線価上昇から3エリアを紹介

2018.11.09

国税庁は7月2日、2018年1月1日現在の路線価(相続税路線価)を発表した。路線価とは主に相続税・贈与税を計算する上での評価基準となる土地価格を示したものである。1平方メートル当たりの金額で表記され、その土地に面した道路に値段を付けて算出される。実務的には、土地取引の目安とされる公示地価(国土交通省)の約8割程度の価格といわれている。
土地が面している道路に価格を付ける現在の路線価方式は1955年から開始されており、毎年の土地価格の推移を追うことができる。ここでは全国の路線価上昇地点の中から、3つのエリアを選定し上昇した背景を考察していく。

(写真=Yuttapol Phetkong/Shutterstock.com)

1. 京都市伏見稲荷大社付近(路線価対前年比28.8%上昇)

インバウンド効果に加えて東京オリンピック開催の追い風もあり、海外から日本への旅行者は増加傾向にある。日本政府観光局の速報値によると7月の訪日外客数は、総数で283万人(対前年同月比+5.6%)となり、国別ではタイ、ベトナム、イタリア、ロシアからの観光客が20%以上増加している。

まずは、外国人観光客にも人気がある京都の伏見稲荷大社周辺を取り上げる。この場所を取り上げた理由は、伏見稲荷大社の鳥居が画像投稿アプリ「インスタグラム」で数多く取り上げられた効果によって観光客が集まるようになり、その影響で周辺の土地価格が上昇するという、なんとも今日的な点に着目したいためだ。いわゆる「インスタ映え」が観光客の集客から土地の資産価値向上にも一役買っているというわけだ。

伏見稲荷大社の鳥居は、正確な数字は公表されていないものの、稲荷山も含め大小合わせると1万基以上にも及ぶそうだ。これらの鳥居はすべて寄進によるもので、インスタグラムによくアップされる写真は、人が通れるサイズの鳥居が限りなく続く風景だ。

インスタグラムに投稿される観光地の写真は、実際にそこにいった人が投稿するケースがほとんどであり、常に新しい情報を入手できることが魅力だ。その魅力的な観光地に多方面から人が集まると、経済効果が上がり、地価も上昇するといったことになる。伏見稲荷大社以外にも、地方にはまだまだ知られていない魅力ある観光地が数多く残されている。ある日突然インスタグラム等のSNSで人気に火が付き、観光客が押し寄せることも十分あり得るのだ。

※路線価参照地点:京都市伏見区深草稲荷御前町89番

2. 日暮里舎人ライナー沿線(路線価対前年比6.7%上昇)

次は、東京圏の住宅事情を表す好例として、日暮里舎人ライナーが走る赤土小学校前を取り上げる。日暮里舎人ライナーは、日暮里駅から足立区の舎人地区を終点に2008年3月に開通された。近年では都心へのアクセスの良さが認識され、国土交通省が毎年発表している都市鉄道の混雑率(最混雑時間帯1時間の平均)では187%という結果で、東京圏主要31路線の中でも第5位という状況だ。(2017年度実績)また、始発駅となる日暮里駅は下町情緒あふれる街で、JR東日本エリア内の乗車人員ランキングでも28番目に位置する主要な駅となっている。

この路線を代表として東京圏で値上がりが目立つのは、都心から近くても今まで土地価格が比較的安値に留まっていた東京の北側東側にあたる地域だ。反対に、JR中央線や東急線、小田急線、京王線などの比較的人気がある西側エリアの路線価上昇率はさほど目立っていない。このことは、首都圏のサラリーマン層が今までの沿線イメージから、通勤時間の短縮という実利を選ぶ傾向に変わってきていることを表しているのではないだろうか。

※路線価参照地点:荒川区東尾久2丁目43赤土小学校前

3. 愛知県豊田市付近(路線価対前年比7.14%上昇)

愛知県豊田市は言わずと知れたトヨタ自動車株式会社の本社所在地である。市のHPを見ると「クルマのまち」を標榜し、市内の自動車関連工場数は416棟、そこで働く従業員数は約8万6千人となっている。市内にはトヨタ本社の他、トヨタの工場やPR施設、労組会館などもあり、まさに企業城下町の様相をなしている。

そこで、日本最大の売上高を誇るトヨタの業績を見てみよう。米国会計基準ベースで2018年3月期の売上高29兆3795億円は、昨年同期の27兆5971億円と比較して、金額で1兆7824億円、率にして6.5%上昇と過去最高の売上を計上している。特に着目したいのが、従業員の賃金改善(ベースアップ)の実施だ。今年春の従業員の昇給状況を見ると、昨年実績である1,300円を上回るベアの他、定期昇給に相当する賃金制度維持分、さらに諸手当などを合計すると、期間従業員を含むすべての組合員平均で月額11,700円、率にして3.3%の昇給となった。

会社側も利益の一部を従業員に還元したことにより、それが消費を促し、ひいては地価上昇の布石になったのではないだろうか。特に企業城下町といわれる街の地価は、当然ながらその企業の栄枯盛衰と密接な関連があることは容易に想像がつく。自動車産業のすそ野は広く、今後も日本経済の屋台骨となるのは間違いない。となると、豊田市の地価と日本経済の成長は相関関係にあるとも言えるのかもしれない。

※路線価参照地点:愛知県豊田市西町6丁目85-1

今回ピックアップした全国3地点の事例から、時代の様々なトレンドにより地価が上昇する要因が発生するということが明らかになった。相続等が発生した時になって、「あれ、思っていた以上に路線価が上がっている」といった想定外の事態にならないように、毎年の路線価の発表にはアンテナをはっておく必要がありそうだ。