名古屋不動産市場レポート(2023年12月時点)

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目次

要旨

  • 名古屋市は、リニア中央新幹線の名古屋駅開業を見据えて、高機能オフィス等の開発を誘導する目的で「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」の運用を2020年10月より開始した。こうした施策を背景に、名古屋中心部では大規模な再開発が複数計画されている。
  • オフィスビルの成約賃料は、新規供給の増加等に伴う空室率の上昇に伴い、下落基調で推移すると予想する。2022年の賃料を100とした場合、2023年は「97」、2026年には「92」へと下落する見通しである。ただし、2017 年の賃料水準(86)を上回り、大幅な賃料下落には至らない見通しである。
  • 名古屋市では、住宅着工戸数(借家・共同住宅)は2020年を底に増加しているものの、人口の転入超過数はプラスを維持しており、需給環境が大きく悪化する懸念は小さく、マンション賃料は引き続き横ばいで推移することが予想される。
  • J-REITによる2023年1-9月累計の物件取得額(中部)は657億円となり、前年同期比+194%増加した。アセットタイプ別では、100億円を超える大型の物流施設やオフィスビルの取得が確認された。
  • 大規模金融緩和を背景に投資マネーが不動産取引市場に流入するなか、名古屋においても不動産利回りが低下している。J-REITの開示データをもとに、名古屋市に所在する大規模オフィスビルの還元利回りを推計すると、2022年は3.6%となり前年比▲0.1%低下した。同様に、住宅のキャップレートは4.1%(前年比▲0.1%)、商業は4.0%(同±0.0%)、ホテルは4.4%(同±0.0%)、物流施設は4.1%(同▲0.2%)となった。
  • 日本銀行は、2023年12月の金融政策決定会合で、金融緩和政策の現状維持を決定した。ニッセイ基礎研究所では、日本銀行が2024年春にも長短金利操作(YCC)やマイナス金利政策を解除すると予想する。これまでキャップレートは低下基調で推移してきたが、今後は、金融政策正常化に伴うベース金利の上昇にあわせて反転に向かう可能性もあり、転換点の見極めについて注視が必要である。

名古屋市中心部の再開発計画

「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」

名古屋市は、リニア中央新幹線の名古屋駅開業を見据えて、高機能オフィス等の開発を誘導する目的で「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」の運用を2020年10月より開始した。基準に適合する建築物の容積率は、名古屋駅東口周辺と栄駅周辺部では1,300%に、伏見駅周辺は1,100%に引き上げられる(図表-1)。

「名駅地区」はオフィス面積全体の約4 割、「栄地区」は約3割を占める。現在、両エリアでは、上記の制度等を活用した大規模開発計画が複数進行中であり、オフィス市場における存在感がさらに高まる見通しである。以下では、「名駅地区」と「栄地区」のオフィス開発計画を概観する。

図表-1 「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」の対象地域

(出所)名古屋市公表資料
(出所)名古屋市公表資料

「名駅地区」の再開発計画

「名駅地区」では、中村区名駅4丁目で、名古屋鉄道などが出資するオー・ティー・ワン特定目的会社が地上16階建ての「エニシオ名駅」(延床面積約2万㎡)を開発中で、2023年8月に竣工した(図表-2 ①)。

2024年以降も、中村区名駅3丁目で、三重交通グループホールディングスが地上14階建ての「第2名古屋三交ビル」(延床面積約2.1万㎡)を開発中で、2024年1月に竣工予定[1]である(図表-2 ②)。また、明治安田生命保険が、名駅4丁目の「明治安田生命名古屋駅前ビル」を地上20階建てのオフィスビル(延床面積約4万㎡)に建て替えを行い、2026年8月に完成予定[2]である(図表-2 ③)。

名古屋鉄道は、名古屋駅機能の整備と駅周辺地区の再開発(「名鉄名古屋駅地区再開発事業」)を計画している(図表-2 ④)。駅機能の整備は2030年頃を目途に完了させたい意向を示すが、新型コロナウィルス感染拡大に伴うテナント需要を見極めるため、当初の予定を延期して2024年度を目途に計画内容を決定する方針としている[3]

図表-2 「名駅地区」における
オフィス開発計画

(出所)新聞・雑誌記事、各社公表資料を基にニッセイ基礎研究所作成
(出所)新聞・雑誌記事、各社公表資料を基にニッセイ基礎研究所作成

「栄地区」の再開発計画

「栄地区」では、中区栄4丁目で、中部日本ビルディングが地上 33 階建てのオフィス、ホテル、多目的ホール等で構成する「中日ビル」(延床面積約11.7万㎡)を開発中で、2023年7月に竣工、2024年春に開業予定[4]である(図表-3 ①)。

また、市有地の「栄広場」と隣接エリアを合わせた地区(錦三丁目25番街区)で、三菱地所、パルコ、日本郵政不動産、明治安田生命保険、中日新聞社の5社は「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」を活用した複合ビル(延床面積約11万㎡)を開発中で、2026年3月に竣工予定[5]である。地上41階・地下4階建てを予定する当ビルの高さは約211メートルとなり、名古屋テレビ塔(約180メートル)を超え、栄地区では最高層のビルとなる(図表-3 ②)。

また、中区新栄町2丁目では、第一生命保険、鹿島建設、ノリタケカンパニーリミテドが共同で地上 19 階建てのオフィスビル(延床面積約4万㎡)を開発中で、2026年3月に竣工予定[6]である(図表-3 ③)

図表-3 「栄地区」における
オフィス開発計画

(出所)新聞・雑誌記事、各社公表資料を基にニッセイ基礎研究所作成

ただし、前述のリニア中央新幹線を巡っては、静岡県が水資源や環境への影響を考慮して静岡工区の工事に反対を表明しており、2027年度中の開業は困難な状況に陥っている[7]。リニア中央新幹線の開業工事や、リニア開業を見据えた再開発事業の先行きには不透明感もあり、その動向を注視する必要がある。

[1] 三重交通グループホールディングス株式会社、三交不動産株式会社「「(仮称)第 2 名古屋三交ビル」新築工事着工および東海エリア初 CASBEE-スマートウェルネスオフィス認証最高位 Sランク取得のお知らせ」2021年1月13日
[2] 明治安田生命保険相互会社「「明治安田生命名古屋駅前ビル建替計画」新築工事着工のお知らせ」2023年5月24日
[3] 中部経済新聞「名鉄、名駅再開発30年完成へ 高崎社長 駅機能整備を優先 東区に最高級マンションも」2021年6月26日
[4] 日本経済新聞「中部経済特集(上)輝く日本の「ど真ん中」――名古屋中心部と郊外、装い新た 交通網も整備進む」2023年11月27日
[5] 三菱地所株式会社、株式会社パルコ、日本郵政不動産株式会社、明治安田生命保険相互会社、株式会社中日新聞社「「(仮称)錦三丁目 25 番街区計画」着工~名古屋の新たなランドマークとなるシンボルタワーが栄に誕生~」2022年6月13日
[6] 第一生命保険株式会社、鹿島建設株式会社、株式会社ノリタケカンパニーリミテド「名古屋市中区栄エリアにおけるオフィスビル共同開発プロジェクト始動」2022年11月11日
[7] 日本経済新聞「JR東海、リニア工事完了「27年以降」 静岡で着工メド立たず」2023/12/15

名古屋の賃貸オフィス市場

空室率および賃料の動向

三幸エステートによると、名古屋市の空室率(2023年12月時点)は4.9%(前年比±0.0%)となった(図表-4)。
空室率をビルの規模別[8]にみると、「大型4.2%(前年比▲0.3%)」、「中型5.2%(同▲0.1%)」、「小型4.5%(同▲0.5%)」は前年から低下した一方で、「大規模5.1%(同+0.2%)」は上昇し、規模間の格差が縮小した(図表-5)。

図表-4 主要都市のオフィス空室率

(出所)三幸エステート

図表-5 名古屋オフィスの規模別空室率

(出所)三幸エステート

全国主要都市では、オフィス床の解約や事業拠点の一部閉鎖などに伴い、空室面積が増加傾向にあり、成約賃料にも頭打ち感がみられる。2022年下期の名古屋市の成約賃料は、前期比+0.2%、前年比+1.4%となった(図表-6)。

図表-6 主要都市のオフィス成約賃料
(オフィスレント・インデックス)

(出所)三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」を基にニッセイ基礎研究所作成

2022年の空室率と成約賃料の動き(前年比)を主要都市で比較すると、空室率は、上昇と低下で分かれる結果となった。また、成約賃料は、札幌市が上昇、東京都心5区が下落、その他の都市は概ね横ばいとなった。名古屋市は、空室率がやや上昇した一方で、賃料は前年と同水準となった(図表-7)。
賃料と空室率の関係を表した名古屋市の賃料サイクル[9]は、2012年下期を起点に「空室率低下・賃料上昇」局面が続いていたが、2020年上期から「空室率上昇・賃料上昇」局面へと移行し、現在は「空室率上昇・賃料下落」局面に向かいつつある(図表-8)。

図表-7 2022年の主要都市の
オフィス市況変化

(出所)空室率:三幸エステート、賃料:三幸エステート・ニッセイ基礎研究所

図表-8 名古屋オフィス市場の賃料サイクル

(出所)空室率:三幸エステート、賃料:三幸エステート・ニッセイ基礎研究所

名古屋オフィス市場の需要見通し

オフィスワーカー数の見通し

愛知県の就業者数は、2年連続で増加し、2022年は418.2万人(前年比+2.0万人)となった(図表-9・左図)。
名古屋市中心部のオフィスワーカー[10]を産業別にみると、「情報通信業(IT)」の占める割合が16%と最も大きい。次いで「卸売業,小売業(13%)」、プロフェッショナルサービスが含まれる「学術研究,専門・技術サービス業(10%)」、「金融業,保険業(8%)」の順となっている(図表-10)。
オフィスワーカーが多い産業の就業者数(2022年)をみると、「卸売業、小売業(前年比+1.7%)」が前年から増加した一方、「情報通信業(同▲6.4%)」や「学術研究,専門・技術サービス業(同▲4.2%)」、「金融業,保険業(同▲8.4%)」は減少した。(図表-9・右図)。

図表-9 愛知県の就業者数

就業者数(全体)

(出所)愛知県「あいちの就業状況」を基にニッセイ基礎研究所作成

産業別 就業者数(2012年=100)

(出所)愛知県「あいちの就業状況」を基にニッセイ基礎研究所作成

図表-10 オフィスワーカーの産業別内訳

(出所)総務省「令和2年国勢調査」を基にニッセイ基礎研究所作成

以下では、名古屋のオフィスワーカー数を見通すうえで重要となる「東海地方」における「企業の経営環境」と「雇用環境」について確認したい。
内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」によれば、「企業の景況判断BSI[11]」(東海地方)は、2020年第2四半期に「▲52.2」と一気に悪化した。その後は回復と悪化を繰り返し一進一退の動きで推移し、2023年第4 四半期は「+4.7」となった(図表-11)。
また、「従業員数判断BSI[12]」(東海地方)は、人手不足を示す「21.1」(2020年第1四半期)からやや過剰を示す「▲1.3」(第2四半期)へ大幅に低下した後、足もとでは「+24.7」に回復した。しかし、「全国平均」の動きと比較した場合、東海地方の回復ペースは鈍い傾向にある。(図表-12)。

愛知県の就業者数は2年連続で増加した。このうち、オフィスワーカーが多い産業では、「卸売業,小売業」が前年比で増加したものの、その他の産業は減少している。
東海地方の「企業の経営環境」は一進一退を繰り返し回復の足どりが重い状況にある。また、「雇用環境」についても全国平均と比較して回復ペースが鈍い傾向にある。以上のことを鑑みると、今後のオフィスワーカー数の増加は力強さに欠くことが予想される。

図表-11 企業の景況判断BSI(全産業)

(出所)内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」を基にニッセイ基礎研究所作成

図表-12 従業員数判断BSI(全産業)

(出所)内閣府・財務省「法人企業景気予測調査」を基にニッセイ基礎研究所作成

在宅勤務の進展に伴うワークプレイスの見直し

愛知県「労働条件・労働福祉実態調査」によれば、愛知県におけるテレワーク導入率は2020年の17.1%から2022年の24.0%へと増加した。産業別では、「情報通信業(88.2%)」や「卸売業、小売業(33.1%)」、「金融業、保険業(26.7%)」において高い傾向にある(図表-13)。
また、公益財団法人 名古屋まちづくり公社 名古屋都市センターの調査によれば、「コロナ収束後のオフィスへの理想出社日数」として、テレワークを週1日以上実施している就業者の多くがコロナ収束後においてもテレワークを取り入れた働き方を希望している(図表-14)。家族との時間が増えた等のメリットから、テレワークを中心とした働き方を希望する人が増えているようだ。
こうしたなか、名古屋市でもワークプレイスの見直しを検討する企業が増加している。ザイマックス不動産総合研究所「大都市圏オフィス需要調査」によれば、「ワークプレイス戦略の見直しの着手状況」に関して、「既に着手している」との回答は9%(2021年)から21%(2022年)へ増加した。着手予定を含めると全体で6割を超える(図表-15)。今後、名古屋でもワークプレイスの見直しが進むことが予想され、引き続きオフィス需要への影響を注視したい。

図表-13 愛知県のテレワーク導入率
(2022年)

(出所)愛知県「労働条件・労働福祉実態調査新型」を基にニッセイ基礎研究所作成

図表-14 コロナ収束後の
オフィスへの理想出社日数

(出所)公益財団法人 名古屋まちづくり公社 名古屋都市センターの調査を基にニッセイ基礎研究所作成

図表-15 ワークプレイス戦略の見直しの
着手状況

(出所)ザイマックス不動産総合研究所「大都市圏オフィス需要調査」を基にニッセイ基礎研究所作成

名古屋オフィス市場の供給見通し

2022 年の新規供給量は約1.0万坪となり、大規模ビルの竣工が相次いだ2021年(約1.9万坪)の約6割の水準に留まった(図表-16)。
2023年は「エニシオ名駅」や「中日ビル」等、複数の大規模ビルが竣工し、新規供給量は約1.9万坪に増加する見込みである。翌2024年も「(仮)名古屋丸の内一丁目計画」や「第2名古屋三交ビル」等、大規模ビルの竣工が予定されており、新規供給量は約1.4万坪に達する見通しである。

図表-16 名古屋のオフィスビル
新規供給見通し

(出所)三幸エステート

名古屋のオフィス賃料見通し

前述の新規供給見通しや経済予測 、オフィスワーカーの見通し等を前提に、2027年までの名古屋のオフィス賃料を予測した(図表-17)。
愛知県では、オフィスワーカーの多い産業の就業者数は、「卸売業、小売業」を除いて減少している。また、東海地方の「企業の経営環境」は回復の足どりが重く、「雇用環境」についてもコロナ禍からの回復ペースが鈍い。「在宅勤務」を取り入れた働き方が定着し、ワークプレイスの見直しも着実に進むことが予想される。以上を鑑みると、今後のオフィス需要(オフィス利用面積)は力強さを欠く見込みである。
一方、新規供給は名駅エリアや栄エリアを中心に大規模開発計画が複数進行中で、今後、名古屋の空室率は上昇基調で推移すると予想する。
名古屋のオフィス成約賃料は、空室率の上昇に伴い、下落基調で推移すると予想する。2022年の賃料を100とした場合、2023年は「97」、2026年には「92」へと下落する見通しである。ただし、2017 年の賃料水準(86)を上回り、大幅な賃料下落には至らない見込みである。

図表-17 名古屋のオフィス賃料見通し

(注)年推計は各年下半期の推計値を掲載。
(出所)実績値は三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」
将来見通しは「オフィスレント・インデックス」などを基にニッセイ基礎研究所作成

[8] 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
[9] 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、①空室率低下・賃料上昇→②空室率上昇・賃料上昇→③空室率上昇・賃料下落→④空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
[10] 従業地による職業別就業者のうち、専門的・技術的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者の合計。
[11] 企業の景況感が前期と比較して「上昇」と回答した割合から「下降」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど景況感が悪いことを示す。
[12] 従業員数が「不足気味」と回答した割合から「過剰気味」と回答した割合を引いた値。マイナス幅が大きいほど雇用環境の悪化を示す。

名古屋の賃貸マンション市場

名古屋市の転入超過数の動向

まず、賃貸マンションの需要を見通すうえで重要となる人口の転入超過数を確認する。
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」によると、名古屋市の転入超過数(日本人)は、プラスで推移しているものの、2020年以降プラス幅は縮小している。2022年の転入超過数は、前年比▲6%の+4,096人となり、2010年以降の平均(約4.6千人)を下回った(図表-18)。
転入超過数を区別にみると、「東区」、「中村区」、「中区」、「守山区」は、一貫してプラスを維持している。2022年は、「中区」において2010年以降の最高値を更新した(図表-19)。

図表-18 主要都市の転入超過数(日本人)

(出所)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」を基にニッセイ基礎研究所作成

図表-19 名古屋市 区別転入超過数
(2010年~2022年・日本人)

(出所)総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」を基にニッセイ基礎研究所作成

名古屋市の住宅着工戸数の動向

次に、住宅着工戸数(貸家・共同住宅)の動向を確認する。国土交通省「建築着工統計調査」によれば、名古屋市の住宅着工戸数は、2020年を底に増加している。2022年は前年比+6%の約9.1千戸となり、2011年以降の平均(約9.5千戸)とほぼ同水準となった(図表-20)。
規模別に住宅着工戸数をみると、名古屋市では、コンパクトタイプ(31㎡~60㎡)が2012年以降、一貫して最も多く供給されており、全体の6割程度を占めている。2022年は、シングルタイプ(~30㎡)が前年比+8%、コンパクトタイプが同+2%、ファミリータイプ(61㎡~)が同+18%増加した(図表-21)。
また、区別では、「中区」と「中村区」が長期的に高水準の供給量となっている。2022年は、「中区」(約1.3千戸)に次いで「中村区」(約1.1千戸)、「昭和区」(約0.9千戸)が多かった。昭和区は、2011年以降の最高値を更新した(図表-22)。

図表-20 主要都市の住宅着工戸数
(貸家・共同住宅)

(出所)国土交通省「建築着工統計調査」を基にニッセイ基礎研究所作成

図表-21 名古屋市 規模別住宅着工戸数
(貸家・共同住宅)

(出所)国土交通省「建築着工統計調査」を基にニッセイ基礎研究所作成

図表-22 名古屋市 区別住宅着工戸数
(貸家・共同住宅)[2011年~2022年]

(出所)国土交通省「建築着工統計調査」を基にニッセイ基礎研究所作成

名古屋市の賃貸マンション稼働率・賃料の動向

名古屋市に所在するJ-REIT保有物件の平均稼働率は、2013年をピークに低下傾向で推移し2020年には94.0%まで低下した。しかし、その後は回復に向かい、2022年は95.4%となったが、全国平均(96.7%)を下回って推移している(図表-23)。
一方、名古屋市のマンション賃料は、概ね横ばいの動きである。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2023年第3四半期(総合)は前年比+0.9%となった。タイプ別にみると、シングルタイプが+3.6%、コンパクトタイプが+0.3%、ファミリータイプが+1.0%となった。(図表-24)。

図表-23 J-REIT物件の平均稼働率
(名古屋市・住宅)

(出所)開示データを基にニッセイ基礎研究所が作成 
※各年下期の値

図表-24 名古屋市のマンション賃料

(出所)三井住友トラスト基礎研究所・アットホーム「マンション賃料インデックス(総合・連鎖型)」を基にニッセイ基礎研究所作成

名古屋市では、住宅着工戸数(借家・共同住宅)は2020年を底に増加しているものの、人口の転入超過数はプラスを維持しており、需給環境が大きく悪化する懸念は小さい。マンション賃料は引き続き横ばいで推移することが予想される。

名古屋の不動産投資市場

名古屋の地価動向

名古屋の地価は、商業地、住宅地ともに上昇している。国土交通省「地価LOOKレポート(2023年第3四半期)」によると、名駅駅前(商業地)、大曽根(住宅地)ともに前年比「0~3%」の上昇となった(図表-25)。同レポートでは、「商業地では、リニア中央新幹線の開業や、名古屋駅周辺等の再整備に伴う発展期待により、法人投資家の収益不動産への需要は安定し、地価が上昇している。住宅地でも、マンション開発素地に対するデベロッパーの取得意欲は依然として底堅く、地価が上昇している」としている。

図表-25 名古屋の地価動向
(地価LOOKレポートより)

名駅駅前(商業)

総合評価 0〜3%上昇(前期0〜3%上昇)
鑑定評価員コメント 当地区のオフィス賃貸市場では、新築のオフィスビルが一部募集面積を残して竣工したことや、縮小による解約等の影響により、空室率は前期に続いて相対的に高い水準で推移した。しかし、オーナーとテナントの賃料水準に対する目線に変化は見られず、オフィス賃料については当期も概ね横ばいが続いた。新型コロナウイルス感染症の影響の弱まりが続くなか当期は夏休み期間における旅行関連消費による物販や、外国人観光客による免税売り上げが好調で、店舗の売上高は大きく増加したものの、店舗賃料は当期も概ね横ばいで推移した。中長期的には名古屋駅周辺の再整備のほか、リニア中央新幹線の開業が予定され、延期になったものの鉄道会社等による私鉄駅ビルの建替え等も検討されており、当地区の将来的な発展が見込まれることから、取引市場では収益物件に対する取得意欲の底堅さが当期も続いている。法人投資家による収益用不動産の需要は引き続き安定している一方で、収益物件の供給が限られるため、取引価格の緩やかな上昇傾向が当期も続いており、当地区の地価動向はやや上昇で推移した。

当地区の空室率は相対的に高いものの底堅いオフィス需要が当期も認められ、人流の回復とともに当地区では消費行動の顕著な回復が継続している。また、高い将来性から収益物件に対する取得需要は底堅く、当面は当期の市況が継続すると見込まれることから、将来の地価動向はやや上昇で推移すると予想される。
路線、最寄駅、地域の利用状況など地区の特徴 名古屋市営地下鉄東山線の名古屋駅周辺。JR名古屋駅東側に位置し、中高層事務所ビルが建ち並ぶ高度商業地区。
詳細項目の動向
△:上昇・増加
□:横ばい
▽:下落・減少
取引価格 取引利回り オフィス
賃料
店舗賃料 マンション
分譲価格
マンション
賃料
詳細項目の動向
△:上昇・増加 □:横ばい ▽:下落・減少
取引価格 取引利回り オフィス賃料
店舗賃料 マンション分譲価格 マンション賃料
(出所)国土交通省「地価LOOKレポート2023年3Q」

大曽根(住宅)

総合評価 0〜3%上昇(前期0〜3%上昇)
鑑定評価員コメント 当地区は名古屋市中心部へのアクセスが良好で、幹線道路の背後は良好な住宅が連担する閑静な住宅地となっており、幹線道路沿道のマンション等のエンドユーザーはファミリー層が中心である。名古屋市中心部のマンション分譲価格は一部の地域でやや弱含み傾向が見受けられるものの、当地区のマンション分譲価格は当期も概ね横ばいで推移した。また、当地区の優れた交通利便性や住環境等からエンドユーザーのマンション需要は堅調に推移しており、マンションデベロッパー等によるマンション開発素地取得意欲は当期も底堅い状態が続いている。マンション開発素地等のまとまった規模の土地の需給は依然として逼迫した状態が続いており、取引価格は緩やかな上昇傾向が続いていることから当期の地価動向はやや上昇で推移した。

当地区は名古屋市中心部へのアクセス性や住環境が良好であるため、当期も分譲マンションの購買意欲の底堅さが続いている。立地の劣る分譲マンションは販売期間が長期化傾向にあるため、物件特性には注視を要するものの、当地区のマンション需要の堅調さから当期の市況が当面続くと見込まれるため、マンション開発素地の需給逼迫状況を背景に、当地区の将来の地価動向はやや上昇が続くと予想される。
路線、最寄駅、地域の利用状況など地区の特徴 JR中央線の大曽根駅(名古屋駅までJRで約11分)からの徒歩圏。中高層の共同住宅が建ち並ぶ住宅地区。
詳細項目の動向
△:上昇・増加
□:横ばい
▽:下落・減少
取引価格 取引利回り オフィス
賃料
店舗賃料 マンション
分譲価格
マンション
賃料
詳細項目の動向
△:上昇・増加 □:横ばい ▽:下落・減少
取引価格 取引利回り オフィス賃料
店舗賃料 マンション分譲価格 マンション賃料
(出所)国土交通省「地価LOOKレポート2023年3Q」

J-REITによる物件取得額(中部)

J-REITによる2023年1-9月累計の物件取得額(中部)は657億円(前年同期比+194%)となり、昨年の取得額(443億円)を既に上回った(図表-26)。アセットタイプ別では、物流(33%)・オフィス(29%)・ホテル(18%)・住宅(14%)・商業(5%)・底地(1%)となり、100億円を超える大型の物流施設やオフィスビルの取得が確認された。

図表-26 J-REITによる物件取得額(中部)

(出所)開示データをもとにニッセイ基礎研究所が作成
(注)引渡しベース。ただし、新規上場以前の取得物件は上場日に取得したと想定

名古屋のキャップレートの動向

大規模金融緩和を背景に投資マネーが不動産取引市場に流入するなか、名古屋においても不動産利回りが低下している。J-REITの開示データをもとに、名古屋市に所在する大規模オフィスビルの還元利回り(以下、キャップレート)を推計すると、2022年は3.6%となり前年比▲0.1%低下した(図表-27)。
同様に、住宅のキャップレートは4.1%(前年比▲0.1%)、商業は4.0%(同±0.0%)、ホテルは4.4%(同±0.0%)、物流施設は4.1%(同▲0.2%)となった。
2007年~2008年の「不動産ファンドバブル」時の水準と比較した場合、住宅の低下幅(▲1.3%:5.4%⇒4.1%)が最も大きい。名古屋ではコロナ禍における住宅需要の高まりなどを背景に、住宅への高い投資意欲を確認することができる。

日本銀行は、2023年12月の金融政策決定会合で、金融緩和政策の現状維持を決定した。ニッセイ基礎研究所では、春闘での賃上げ動向を確認したうえで、日本銀行が2024年春にも長短金利操作(YCC)やマイナス金利政策を解除すると予想する[13]
これまでキャップレートは低下基調で推移してきたが、今後は、金融政策正常化に伴うベース金利の上昇にあわせて反転に向かう可能性もあり、転換点の見極めについて注視が必要である。

図表-27 名古屋のキャップレート推移

出所)J-REITの開示データをもとに推計 
(注)オフィス:延床面積3万㎡以上、築年5年未満、最寄り駅から3分未満のオフィスビル
住宅:築年5年未満、最寄り駅から15分未満、シングルタイプの住宅
商業:築5年未満、延床面積3千㎡未満、長期契約でない商業専門店ビル
ホテル:最寄り駅より 3分以内、築5年未満、延べ床6千㎡未満のビジネスホテル
物流施設想定物件:建築後5年未満で延べ床面積6万㎡以上の物流施設

[13] 上野 剛志『2024年はどんな年? 金融市場のテーマと展望』ニッセイ基礎研究所、Weekly エコノミスト・レター、2023 年12月1日

寄稿者

ニッセイ基礎研究所 金融研究部 主任研究員

吉田 資 よしだ たすく

ニッセイ基礎研究所
HPはこちら 三井住友トラスト基礎研究所を経て、2018年よりニッセイ基礎研究所で調査・研究業務に従事。専門分野は、不動産市場、投資分析など。一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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