賃貸オフィスエリアレポート 大丸有エリア ー大手町・丸の内・有楽町ー

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目次

日本最大のビジネス街であり、首都東京の玄関口でもある「大丸有エリア」。1990年代後半から連鎖的に再開発が行われてきたこのエリアでは現在、「丸の内 NEXT ステージ」と銘打ったまちづくりが展開されている。重点エリアである常盤橋地区では、2028年完成予定の日本一の高さとなるTorch Towerが話題を呼び、まち全体でもエコシステム形成を中心として、ハード・ソフト両面の整備が進む。35万人のワーカーが集積するビジネス街は、今後さらに100万人の多様な人々が集まるまちに進化しようとしている。

※多様な人や組織が協働することで新たな付加価値を創出し、イノベーションを連鎖させていく仕組みのこと

時代を越えエリアをつなぐ「常磐橋」

常磐橋は江戸と浅草を結ぶ交通の要衝として、1590年に架けられた木造の橋がルーツである。1877年に石橋に架け替えられ、都内に残る最も古い石橋といわれる。現代までに関東大震災、東日本大震災という2つの大きな震災により被害を受けたが、そのたびに修復が行われ、今も当時の意匠や構造の特徴を受け継ぐ。周囲では超高層ビルの建設や首都高速道路の地下化も計画され、風景が変わるなか、建設当時の空気感を伝え続ける。

左手前は常盤橋、その奥が石造りの常磐橋(大正時代撮影)
出典:東京都立中央図書館

新しいシンボルが日本・東京を照らす

東京の新しいシンボルとして三菱地所が関係権利者とともに整備を進めているのが、2028年に完成予定のTOKYO TORCHだ。
敷地面積3.1haのなかに、高さ日本一となるTorch Towerを含めた4棟の建物が計画されており、東京駅周辺では類を見ない大規模再開発である。オフィス・商業施設だけでなく、このエリアには少ない住宅、超高層ならではの展望施設、そしてエンタメやMICEの充実化に必要なホール、ホテルなど多様な機能を包括する。これにより企業で働くワーカーだけでなく、ショッピングや観光などTOKYO TORCHを目的に訪れる人たちの新たな流れを生み、誰もがリアルに集まる価値があると感じられるエリアにすることを再開発の目的としている。
大丸有エリアの東端に位置する常盤橋地区は日本橋・八重洲エリアとの結節点でもあり、これらエリアから新たな来街者を呼び込むことも目指す。TORCHという名称には、「日本・東京の未来を明るく灯すような存在でありたい」という想いが込められている。
TOKYO TORCHの構想は2007年頃からスタートしているが、現在の開発概要や用途構成がはじめから確定していたわけではない。オフィス・商業が中心となるだけでなく、行政と三菱地所は協議を繰り返しながら、時代の潮流に合わせてこのエリアに求められる用途を模索。東京・日本の競争力向上に寄与する街区を目指し、多角的な視点から検討が重ねられ、都心型MICEの核となるホールや国際級ホテル、大丸有エリア初のラグジュアリーレジデンスといった機能を設けることが決まっていった。
開発にあたっては、街区内に位置する下水ポンプ場や変電所等、都心部の重要インフラを担う施設の機能を維持し続けながら工事を進める必要があり、開発は長い時間をかけて段階的に進行中だ。さらに、この街区の特徴としては、TOKYO TORCH Parkがある。約7,000㎡の大広場は、都心部ではまれな豊かな屋外空間となっている。街区内にはほかにも各所にオープンスペースが設けられ、その面積は合計2haにも及ぶ。
Torch Tower低層部には空中散歩道も設けられている。垂直方向にボリュームが積まれる超高層ビルでは、高層部と足元に広がるまちとの間にどうしても分断が生まれてしまうが、これを解消してまちとビルとのつながりをつくるという意図が空間に反映されている。こうした計画が評価され、国際的な環境性能評価システムLEED®、WELLの予備認証を取得している。

完成時に日本一の高さとなるTorch Tower
画像提供:三菱地所株式会社

イノベーションを生み出し、まちを新たなステージへ

2020年、三菱地所は「大丸有エリア」での新たなまちづくりを「丸の内NEXTステージ」と位置づけた。“人・企業が集まり交わることで新たな「価値」を生み出す舞台づくり”を掲げ、活動を進めている。
三菱地所は1998年に「丸の内再構築」を公表、おおよそ10年毎に「第1ステージ」「第2ステージ」「NEXTステージ」と区切り、まちづくりを推進してきた。「第1ステージ」では、丸の内仲通りの活性化、ベンチャー企業の支援を展開。丸ビルや新丸ビルなどを建替え、ビジネス特化のまちから転換した。第2ステージは丸の内の活気と賑わいを大手町、有楽町へ拡大、国際金融拠点やインフラ整備などを通じて国際競争力を強化。「NEXTステージ」ではイノベーション創発とデジタル基盤強化を通じ、個人のクオリティオブライフ向上と社会的課題の発見・解決を目指す。
重点エリアはTOKYO TORCHの開発が進む常盤橋と、既存ビルの再開発が発表された有楽町の二つのエリアだ。
映画館や劇場などエンターテインメント機能や、東京国際フォーラムなどMICE機能が充実しており、大手町・丸の内とは少し異なる特徴を持つ有楽町エリア。テクノロジーの進展によりコミュニケーションが容易になった時代だからこそ、人と人との出逢いやリアルな体験のつながり、そしてその連鎖によって情報が加速度的に発信されるという都市ならではの価値、「新しい出逢いと交流の機会を提供するTOKYO」を体現する有楽町を目指す。具体的な計画として有楽町ビル・新有楽町ビル、国際ビル・帝劇ビルという長年有楽町の人の流れを作ってきたビルの建替えが決まっており、今後大きくまちの様子が変わることが予想される。

出所:有楽町まちづくりビジョンver1.0(有楽町まちづくりビジョン策定委員会2023.11)
https://www.omy-committee.jp/images/yurakucho-vision-ver1.pdf

創造が事業となり、事業が新たな創造を生む

「丸の内NEXTステージ」において重要視されるのが多様な企業によるエコシステムの進化だ。
スタートアップ企業にとって敷居が高いイメージが根強かった大丸有エリア。しかし、大企業が集積し、関連する人・カネ・情報が集中するこのエリアは課題を抽出して新たなアイデアを募ったり、それを実証したりするのに非常に適した環境を持っているともいえる。この強みを活かし、事業の構想から社会実装まで、あらゆるフェーズでのイノベーションを生み出す仕組みが構築されている。
有楽町で展開する「SAAI」は、多種多様な会員が集い事業創造を目指すコミュニティ。企業ではなく個人単位での所属や活動を基本としていて、既存の枠に捉われずゼロからイチを生み出していくことを目指している。
丸の内にある「Inspired.Lab」や「FINOLAB」は、事業が始まり成長していく過程にあるスタートアップやベンチャー企業の活動をサポートする。ワークスペースや拠点として機能するほか、同種の企業が集まるコミュニティとしての役割も持つ。「Inspired.Lab」はディープテック(最先端科学)、「FINOLAB」はフィンテック(金融)をテーマとするなど、世の中のトレンドや課題に取り組んでいることも大きな特徴だ。今年秋には、気候変動対策を目的としたテクノロジー「気候テック(Climate Tech)」領域における国内初のイノベーション拠点「(仮称)Japan Climate Tech Lab」の開設も予定されている。
協業が進み、育ったアイデアの社会実装を支援する体制も充実している。その一つが、大手企業や官・学の団体が参加するイノベーションプラットフォーム「TMIP」。大企業同士や、スタートアップとのマッチング、コミュニティを活用したネットワーキングを支援し、新たなイノベーションを起こすことを目指していく。 
多様な人材を惹きつけるコミュニティ、そして創造と事業のサイクルが、大丸有を国内随一のイノベーションが起き続けるまちに進化させていく。

大丸有エリアでは各領域のスタートアップの成長段階に応じた施設・サービスを提供。大企業や官・学との連携も促進しながら、新しい技術やビジネスを推進する企業間の協業・共創機会を創出。エリアの付加価値向上を目指し、日本の競争力向上に寄与していく。
画像提供:三菱地所株式会社

移転視点

  1. 東京駅に至近の交通利便性と圧倒的なブランド力
  2. 就業者と来街者のさまざまなかかわりから新しい交流が生まれるまち
  3. 大企業とスタートアップ企業の協働・連携と成長を支えるさまざまな仕組み
  4. 常盤橋エリアの開発により新たな人流とビジネスの発展が期待される

ビジネスマップ

日本一の高さとなる超高層ビル「Torch Tower」の竣工を控え、新たなまちづくりのフェーズに突入した大丸有エリア。長年大型開発のなかった有楽町でも、歴史あるビルの建替え計画が発表され、注目を集めている。

  • 竣工済みプロジェクト
  • 竣工予定プロジェクト
マップ

竣工済みプロジェクト

  • 大手町プレイス
    竣工:2018年8月
  • 丸の内二重橋ビル
    竣工:2018年10月
  • Otemachi Oneタワー
    竣工:2020年2月
  • 常盤橋タワー
    竣工:2021年6月
  • 大手町ビル(大規模リノベーション)
    リノベーション:2022年5月

竣工予定プロジェクト

  • 内神田一丁目計画
    竣工:2025年11月予定
  • 有楽町ビル建替計画
    竣工:未定
  • 新有楽町ビル建替計画
    竣工:未定
  • 国際ビル・帝劇ビル建替計画
    竣工:未定

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日本の新たなランドマークTorch Tower

2028年3月予定

地上62階/地下4階

事務所、賃貸住宅、ホテル、
ホール、店舗、駐車場 等

TOKYO TORCH街区のメインタワーとして計画された高さ約390mの超高層ビル。都内最高層クラスの展望施設、ウルトララグジュアリーホテル、ホール、商業ゾーンのほか、事務所、賃貸住宅、ホテル、ホール、店舗、駐車場等を備える。オフィスは基準階約2,000坪で、高層階の圧倒的な眺望の良さは他ビルにない特長だ。
ビル内には空中散歩道や屋上庭園が作られ、アウトドアオフィスやリフレッシュの場となる。職域食堂などのサポートも計画され、働く人のワークライフを豊かにする。

画像提供:三菱地所株式会社

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まちの安心をつくる木と緑のオフィス東京海上日動ビル建替計画

2028年度予定

地上20階/地下3階

事務所、駐車場 等

現在の東京海上日動ビル本館および新館を一体で建替えるプロジェクト。国産木材を多く使用し、木の使用量が世界最大規模のビルとして生まれ変わる。立ち並ぶ木の柱のようにデザインされた外観は、人々に安心をもたらす力強い大木をモチーフとした。
中庭や周囲に樹木を植え、都心にいながら、季節を感じることができるしつらえとした。災害時に帰宅困難者を収容可能な屋内スペースを広く設け、地域防災にも貢献する。

画像提供:東京海上日動火災保険株式会社

※本記事の内容は2024年2月時点のものです。

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