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2018年度税制改正における企業への優遇策とは……「事業承継税制」の特例はどう変わる?

2018.06.22

2018年3月28日に「平成30年度税制改正法案」が可決・成立した。改正項目は多岐にわたるが、今回はその中でも中小企業への影響が大きい優遇税制の改正項目を概観するとともに、大幅な緩和策となる「事業承継税制」の特例について解説したい。

(写真=NicoElNino/Shutterstock.com)

企業への優遇策はデフレ脱却・経済再生の御旗のもとに

安倍内閣はデフレ脱却・経済再生を最重要課題として取り組んできた。それらを実現するためのキーワードはいくつかあるが、企業の取り組みに関するところでは「生産性革命」ともいうべき改革を促進する必要がある。2018年度税制改正もこうした流れを受けたものといえ、中小企業への影響が大きい優遇税制の改正項目として以下があげられる。

・情報連携投資等促進税制
新たに創設される制度としては「情報連携投資等促進税制」があげられる。これは「IoT投資税制」あるいは「コネクテッド・インダストリーズ税制」とも呼ばれるものだ。企業内外のデータ連携や高度な利活用によって生産性向上に資する設備投資を行う企業に対する優遇策である。具体的には、ソフトウェアや機械装置などの設備投資に対して30%の特別償却、3%ないし5%の税額控除を認めるものとなっている。

・地域の中小企業による設備投資の促進
市町村が主体的に作成する計画に基づき、中小企業が一定の設備投資をした場合に、固定資産税を
1/2あるいは全額まで軽減することができる制度を創設する。これは生産性投資集中期間における時限的な措置として導入するものだ。

・所得拡大促進税制の見直し
従来から適用されている「所得拡大促進税制」について要件の見直しが行われる。所得拡大促進税制とは、雇用者給与などの支給額が増加した企業に対して、増加額の10%など一定割合の税額控除を認める制度だ。今回の見直しでは、給与だけでなく、教育訓練費や設備投資などの増加も要件に追加してバランスの良い優遇策への転換を目指すものである。

上記以外にも、高度省エネルギー増進設備などに対する特別償却や税額控除、企業主導型保育施設用資産に対する割増償却などの促進税制が創設される。さらに、地方拠点強化税制の対象地域の見直し拡大なども盛り込まれた。

大胆な緩和策を取り入れた「事業承継税制」の特例

2017年4月に中小企業庁調査室が発表した「2017年版中小企業白書概要」によると、2015年の中小企業経営者の年齢分布は66歳がピークとなっている。1995年はピークの山が47歳であったことから、20年で高齢化が進み、しかも数値的にはほぼ20年そのまま歳を取ったようなことになっているのがわかるだろう。そのため、中小企業の円滑な世代交代は喫緊の課題となっている。一定の割合で贈与税、相続税の納税猶予を認める「事業承継税制」がすでに実施されているが、今回の改正では世代交代をさらに促進するため抜本的な拡充が図られた。

・2017年までの事業承継税制の概要について
事業承継を行うためには先代経営者が保有する会社の株式を後継者に移転することが必要だ。しかし、会社の株式は一般に評価額が多額となるため、生前贈与するにしても相続するにしても税金の負担が問題となる。事業承継税制は、このような税金の負担が世代交代の妨げにならないよう一定の要件を満たす場合に議決権総数の2/3までの株式について80%の納税を猶予するものだ。

・会社や人に関する要件とは
この制度の適用を受けられる会社は、製造業であれば資本金3億円以下または従業員数が300名以下、サービス業であれば資本金5,000万円以下または従業員数が100名以下など一定の要件を満たす中小企業者である。また、人に関する要件としては、先代経営者が会社の筆頭株主かつ代表であったこと、後継者が相続時に筆頭株主であり、相続開始から5ヵ月以内に代表となることなどが求められる。

・手続き上の要件とは
相続税の申告期限(相続開始から10ヵ月)までに事業承継税制の適用を受けたい場合には、相続開始から8ヵ月以内に経済産業大臣の認定を受ける必要がある。また、納税猶予される相続税などの金額に相当する担保を税務署に提供することが求められる。なお、承継される株式をすべて担保提供することでもこの要件を満たすことが可能となっている。

・継続して守るべき要件とは
制度適用後に納税猶予が引き続き認められるために、継続して守るべき要件もある。主なものとしては、「後継者が代表であり続けること」「80%以上の雇用を確保し続けること」「後継者が筆頭株式であること」などがあげられる。

・2018年度税制改正における見直しについて
今回の見直しでもっともインパクトがあるのは相続税などの納税猶予の割合が、80%から100%となったことだ。同時に、猶予対象となる株式について議決権総数の2/3という制限が除外された。つまり、実質的に贈与税、相続税が100%免除されることを意味する。

また、上述の80%以上の雇用確保要件を満たさなくなった場合でも、ただちに納税猶予が打ち切りとならない措置が設けられた。この場合、都道府県に所定の理由書を提出することとはなるが、一般に高いハードルとなっている雇用確保要件のさらなる緩和といえる。

納税猶予の対象となる後継者はこれまで筆頭株主だけであったが、今回の改正では上位3名までの株主が対象に加えられた。また、経営環境の変化に応じて5年経過後の株式譲渡時における納税額を減免する制度も創設されている。

中小企業の経営を後押しする施策

事業承継税制の特例をはじめ、多くの分野で中小企業の経営を後押しする施策が講じられている。今回紹介したもの以外にも、法人課税に関連するものでは自社株式を対価としたM&Aの円滑化、組織再編税制の適格要件、収益認識基準の見直しなど改正論点は話題に事欠かない。こうした施策を積極的に活用し、自社の生産性向上、さらなる企業成長へとつなげていきたいものである。