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富裕層に人気なのは仮想通貨ではなくアンティークコイン?

2018.05.16

「仮想通貨」はブロックチェーンをはじめとするITの技術的な進歩によって生み出され、近年、特に日本国内において取引が盛んとなり、2017年はまさに“ビットコイン元年”ともいえる様相を呈している。ただ一方で、2018年1月には、仮想通貨取引所「Coincheck(コインチェック)」から、日本円で約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出する事件が発生した。この事件は、投資家に対して大きな不安と不信を与えることとなり、仮想通貨そのものの安全性を疑問視する声も上がっている。
そのような背景から、日本銀行の黒田東彦総裁は仮想通貨を「仮想資産(クリプトアセット)という言い方に変えるべき」との認識を述べている。また各国の中央銀行においても、仮想通貨に対する判断に慎重な姿勢を崩していない。

つまり現状、仮想通貨は“投機”の対象にはなっても、いまだ“投資”としての対象とは見られていない向きがあるといえる。そうなると、やはりこれまでどおり証券や不動産、あるいは金などに投資するしかないのだろうか。
実は富裕層向けの投資対象として、ある資産がひそかに注目されている。それは「アンティークコイン」というもので、ビットコインとは異なり歴史的な価値や希少性という裏付けを持つ現物の貨幣である。そこには投資適格性を認める理由があるといえる。

(写真= Bjoern Wylezich/Shutterstock.com)

なぜアンティークコインは富裕層に人気なのか?

そもそもアンティークコインとは、ヨーロッパやアメリカをはじめとする世界各国で流通している“古銭”のことである。一般的にアンティークコインと呼ばれるものは100年以上前に発行されていたもので、つまりはそれだけ歴史的な価値があり、その点が投資価値のベースになっている。
イギリスのファンド「Stanley Gibbons(スタンレー・ギボンズ社)」は、同社のホームページにて、アンティークコインに関する興味深いデータを提供している。そのデータとは、同社がイギリスコインの中から200枚を選び、価値の推移を調べたものだ。なだらかではあるが、コインの価格は着実に上昇しているのが見て取れる。つまり、特定のコインに関しては、世界情勢に左右されることなく資産形成に寄与する可能性があるといえる。

たとえば、代表的なアンティークコインの「ウナとライオン」で見てみると、2011年頃には400~500万円ほどだったものが、2013年には1,000万円、さらに翌年には2,000万円、そして2015年には3,000~4,000万円という鑑定結果が出ていることから、実に10倍も高騰している。このように、アンティークコインの中には、安定的な価値の上昇が見込めるだけでなく、飛躍的に高騰するものも含まれている。だからこそ世界中の富裕層が保有し、過去にはポートフォリオの中に組み込まれてきたと推測される。

さらに、富裕層を魅了するポイントとして“税金対策がしやすい”こともあげられる。具体的には、不動産のように登記する必要もなく、また金のように支払調書(所得税法第225条第1項第14号)の提出も義務付けられていない(2018年2月現在)。加えて、アンティークコインを相続資産として上手く継承すれば、資産形成と節税を同時に実現することも可能かもしれない。
上記のように、アンティークコイン投資にはさまざまなメリットがある。日本国内ではまだそれほど周知されていないこともあり、新たな資産形成手法としての地位を確立していくかもしれない。

アンティークコインそのものの魅力

では、アンティークコインを収集している人は全て、投資の対象としてアンティークコインを見ているかというと、そんなこともなく、例えば絵画の収集家や古美術品の収集家などと同様に、アンティークコインそのものに美術的価値や歴史的価値を見出している人も多い。

世界で発行されているアンティークコインの枚数はおよそ20万種類といわれ、そのうち特に資産価値が高いコインは200~300種類ほどになる。代表的なものとして、先に述べた「ウナとライオン」があり、これは、ヴィクトリア女王の即位を祝う記念金貨として1839年にイギリスで発行されたものであり、発行枚数はわずか400枚である。希少性もさることながら、なんといってもコインそのものとして美しく、表面は、イギリス女王に即位したばかりの、ヴィクトリア女王、裏面にイギリスを代表する長詩「妖精の女王」に出てくる、ウナ姫とライオンが描かれており、収集家としては入手できないまでも、死ぬまでに一度はこの目で見てみたいと願うコインの1つである。

また、面白いところではナポレオンの「百日天下銀貨」というようなものもあり、これは帝位を追われたナポレオン一世が1815年3月1日に帰国して帝位を取り戻し、ワーテルロー会戦に敗れて再びその地位を追われるまでの間に発行されたものである。まさにコインが歴史の証人になっているケースで、芸術的価値以外でアンティークコインが魅力を発揮する一側面でもある。

資産形成の一手段としてだけでなく、さまざまな魅力を持つアンティークコインの世界。趣味や投資の目線で考えることもひとつの選択肢かもしれない。