エンゲージメント向上につなげるオフィス

目次
企業が成長をするうえで、エンゲージメントの重要性が高まっている。エンゲージメントが高まると、従業員の仕事に対する意識向上や組織の活性化につながる。企業における現状の課題を押さえ、エンゲージメントを高めるためのオフィスの取組みや事例を紹介する。
エンゲージメントとは?
エンゲージメントは、人事領域では「愛着や関心など個人と組織の結びつき」を指す言葉である。対象や構成要素によって、次の通り2つに分類される。

エンゲージメント向上がもたらす経営面のメリット
エンゲージメントが向上することで、個人の企業への理解度や帰属意識が高まり、企業の目標達成に向けて自発的に貢献するなどの効果が期待できる。
こうした従業員の変化は、企業にとって、「従業員の定着」「生産性の向上」「職場の活性化」に寄与し、経営面にプラスの影響をもたらす。続いて、日本におけるエンゲージメントを取り巻く課題を把握し、オフィスに関するエンゲージメントを向上させる取組みや事例を見ていく。

エンゲージメント向上のカギは、従業員の「働きがい」
リンクアンドモチベーション社が国内8,000 社を対象に実施した調査によると、2015年以降、エンゲージメントスコアは上昇傾向にある。2015年を基準1.00(100%)とした場合、2021年には同スコアは、1.05(105%)にまで上昇した。
その要因を見てみると、研修制度の充実に加え、働き方の多様化や労働時間の適正化、会社の安定性、労働環境の快適性といった働きやすさの向上が関係している。
一方で、企業理念の理解・浸透や仕事への責任・働きがいは改善が見られず、今後に向けた課題とされている。企業は「働きやすさ」への取組みを継続しつつも、従業員が「働きがい」を感じられる取組みを行っていくことが重要であると考えられる。

エンゲージメントを高めるためのオフィスの取組み
従業員が働きがいを感じていきいきと働けるよう、オフィスでできる取組みについて考えたい。先進的な企業では、従業員が働く組織への理解度を高め、共感し、同じ方向に進めるよう、企業理念の理解・浸透のために発信をしたり、コミュニケーションを活性化させるための仕組みづくりを行っている。その具体的な方法を見ていく。
経営ビジョンの共有


コミュニケーションの活性化


事例1 :良品計画(住友不動産飯田橋ファーストビル)
良品計画では、2024年2月の本社移転に向けて、「壁を作らない」「完成させないオフィス」「多様な働き方に適応する」の3つの指針をもったプロジェクトが始動した。旧オフィスにあった部門間の物理的および心理的な隔たりを解消するために、執務スペースのセンターに自由にコミュニケーションできるエリア「Open MUJI」や大規模なイベント・研修等の実施が可能な「コミュニティサロン」を設けた。また、「完成させないオフィス」という考え方を取り入れ、“ はたらく場” の環境改善に向けた意見交換を部門横断で定期的に継続することで、社員自らが気づき、行動する風土を醸成している。
空間デザインにおいては、部門や役職で固定されない自由で多様な過ごし方に対応できるゾーニング、華美な装飾がない最小限にデザインした家具等、快適に働ける環境を目指すほか、自分たちの実体験を基に法人向けの商品開発も進めている。

1階の「コミュニティサロン」は、社内だけでなく、社外の皆様とつながりが持てる場や社員同士の交流ができる場として設置。おおまかな部署のマッピングのみを行いグループアドレスの「執務スペース」にすることで、全社員区別せず、有機的に動けるデスク配置により、コミュニケーションを促す。さらに、良品計画の全社員にオープンな場で行う商品部の「専用開発スペース」の箇所は2倍に増やし、活発な意見交換の促進を図る。執務デスク数は1.7 倍にして、緩やかなフリーデスクにすることで、出社率は7割想定で計画した。


事例2:ライオン本社(JPライオンビルディング)
ライオングループは、「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」をパーパス(存在意義)として掲げている。新しい習慣への気づきや共創を促すため、これまで、グループ会社を含めて東京エリアにあった4つのオフィスを集結し、環境にも配慮した新たな本社ビルを誕生させた。新本社設計にあたって、社員が「リアル(新本社)やテレワークで働くことを自ら選択することが生産性向上につながる」という考えのもと、「自ら選ぶ・つながる・ワクワクする」という3つのコンセプトでオフィスレイアウトを設定した。

「自ら選ぶ」というコンセプトを体現すべく、社員一人ひとりがアクティブに選択し、ベストパフォーマンスが発揮できるようにActivity Based Working をもとに、執務フロアを構築した。
「つながる」においては、1Fロビーにミント畑を設置したり、会議室に商品のブランド名を付けたりすることで、新たな出会いの創出を図っている。そして、「ワクワクする」では、働く人の気持ちが高まると同時に、快適であることを実現すべくボルダリングやトレーニング機器、卓球台を備えたGENKI アクションルームを設置している。社内外のつながりの強化、イノベーションを促進し、共創に向けた仕掛けが施されたオフィスづくりを行っている。

