賃貸オフィスエリアレポート 渋谷エリア

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渋谷駅が開業した1885年当時、まだ田園風景が広がっていたという渋谷エリア。東京の発展とともに市街化が進み、人が集まるようになった同エリアは、戦災で大きな被害を受けたものの、東急グループを中心とした開発により活況を取り戻し、現在のまちの基盤が形成された。

1970年代には渋谷PARCOや渋谷109が開業し、若者の街・流行の発信地として強い存在感を放つようになる。その後2000年前後には「ビットバレー」と呼ばれるほどITやベンチャー企業が渋谷エリアに集積し、オフィス街としてのイメージも強まった。現在は、豊かに供給されるオフィスが人気を集め、より幅広い企業の集積地となっている。

人々の憩いの場として蘇った渋谷川

江戸時代の渋谷界隈は、川の流れで精米や製粉のための水車を回す、のどかな農村だった。明治時代に入っても花が咲き、魚が泳ぐ自然豊かな小川が流れていたようで、文部省唱歌「春の小川」(1912年発表)のモデルともいわれている。都市化とともに護岸で固められ、一部は暗渠化したが、渋谷ストリームなどの再開発に合わせて、川沿いに新しい遊歩道が誕生するなど、親水空間の再生が進み、水辺に再び人が戻ってきた。


葛飾北斎『富岳三十六景』に描かれた渋谷川の水車

「100年に一度の再開発」が佳境に差し掛かる

渋谷駅は、鉄道4社10路線のほかバス路線も多く乗り入れ、都心や空港にもアクセスしやすい交通の結節点である。駅周辺では、100年に一度といわれる大規模再開発が進んでいる。

2010年代、渋谷駅東側では「渋谷ヒカリエ」「渋谷ストリーム」「渋谷スクランブルスクエア(第Ⅰ期)」などそれぞれ延床面積10万㎡を超える開発が完了した。西側や北側では、2019年にバスターミナルを備えた「渋谷フクラス」、2020年に「MIYASHITA PARK」、そして2024年に「渋谷アクシュ」「Shibuya Sakura Stage」が相次いで開業した。現在は「渋谷一丁目地区共同開発」「道玄坂二丁目南地区再開発」「渋谷スクランブルスクエア(第Ⅱ期)」「Shibuya Upper West Project」などが進行しており、数年以内に竣工予定となっている。

明治通り沿いからの渋谷スクランブルスクエア
渋谷アクシュ

周辺の開発が進むにつれ、複雑になっていた駅の構造がホームや改札の移設により整備され、また特徴的なすり鉢状の地形をまたぐように施設間のデッキがはりめぐらされたことで、歩行者ネットワークが強化され、回遊性も高まっている。

多様性をエネルギーに、磨きがかかる渋谷の個性

渋谷区は、2016年に策定した新たな基本構想のなかで、20年後を展望し、区の未来像を「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」と定めた。「この地上に暮らす人々のあらゆる多様性(ダイバーシティ)を受け入れるだけにとどまらず、その多様性をエネルギーへと変えてゆくこと(インクルージョン)」を大切にし、成熟した国際都市へと進化することを目指している。

そのような姿勢は企業支援の取組みにも表れている。渋谷区は、東京圏一円のプラットフォーム「スタートアップ・エコシステム東京コンソーシアム」のハブの一角として、特にスタートアップ支援に力を入れている。コワーキングスペースの提供、企業・大学とのマッチング、外国人起業家に対するスタートアップビザ発行など、誰でも新事業に挑戦しやすい環境づくりを進めている。

人種、性別、年齢、障がいの有無を超えて、渋谷に集まるすべての人の力を原動力とするまちづくりの方針を背景に、個性のある商業施設や宿泊施設、公園、そしてオフィスなどが生まれ、渋谷らしいまちの在り方に磨きをかけている。

MIYASHITA PARK屋上にあるボルダリング設備

新しい価値を生み出すベンチャー企業やクリエイティブ企業が集積

多様な人を受け入れる渋谷のまちの特色に魅力を感じる企業は多い。かつては中小規模のオフィスが中心で、成長とともに転出する企業もあったが、近年の開発により大規模・高性能なオフィスが供給されるようになり、渋谷にて業務拡大または転入してくるメガベンチャーも増えている。その代表的な業種(企業)として、IT・メディア系(グーグル、サイバーエージェント、GMOインターネットグループ)、人材系(ビズリーチ、クラウドワークス、オープンワーク)などが挙げられる。これら以外にもコンテンツ系、ファッション系などのクリエイティブ企業も本社を構え、渋谷を象徴する企業として認知されている。

幅広い事業規模・業種の企業が集積し、各企業の社員が同じまちで過ごすことで、自然と情報交換の機会が生まれる。特に幅広いネットワーキングやコラボレーションを重視する企業は、ますます渋谷エリアに集積する傾向にある。2020年以降、コロナ禍でリモートワークが普及しオフィス需要が落ち込むなかでも、渋谷エリアは早期から下げ止まった。2024年にオープンした「Shibuya Sakura Stage」も高い入居率を達成するなど、他エリアと比較しても出色の人気を誇っている。

ともにまちの魅力をつくっていく

民間企業自ら、クリエイティブな企業の集積を進め、まちの価値向上につながる取組みを進めていることも、渋谷エリアの特徴のひとつだろう。

2019年に「渋谷スクランブルスクエア」に開業した「SHIBUYA QWS」は、「問いから社会価値を生み出す共創拠点」として、2,600㎡を誇るフロアで多様なプログラムを展開してきた。渋谷ならではの多様性を生かして、学生、スタートアップ、大企業、自治体までがフラットに参画するコミュニティを形成し、社会を変えるような新事業の創出や支援を促進している。

また、2024年には「Shibuya Sakura Stage」に移転したSansanが東急不動産と協業し、施設の本格開業を祝う「渋谷阿波おどり powered by Sansan」を開催した。渋谷に集まる人・企業の出会いとまち全体のにぎわいを創出するための取組みである。

集積は今後もますます進んでいくだろう。エリアの魅力が人を集め、集まった人が魅力をさらに磨いていく、渋谷の今後の動向が楽しみだ。

Shibuya Sakura Stage内にある、365日異なる空間を創出する「にぎわいSTAGE」
MIYASHITA PARK1階にある渋谷横丁
のんべい横丁から渋谷スクランブルスクエアを望む
Shibuya Sakura Stageにつながる施設間歩行デッキ
Shibuya Sakura Stage内部

移転視点

  1. 大企業、中小企業、スタートアップ企業のニーズに応える規模・性能のオフィス供給
  2. 交通アクセスの良さに加え、再開発で進んだぺデストリアンデッキの整備等により、駅周辺の利便性や回遊性がさらに向上
  3. 幅広い事業規模のベンチャー企業やクリエイティブ企業が共存しており、企業間交流の機会が豊富
  4. 渋谷という土地柄がクリエイティブやテクノロジー分野を中心とした採用活動のアピールポイントに
  5. 駅周辺に飲食店や商業施設が豊富、職住だけでなく余暇を含めた近接が実現しやすい

ビジネスマップ

複数路線の乗り入れにより、路線が豊富で都内各所への交通アクセスの良さから、多様な人々が行きかう渋谷エリア。駅周辺を中心に延床面積10万㎡近くの複数の大規模複合商業施設の再開発プロジェクトが進行中である。再開発が進むことで、駅を中心とした渋谷というまち全体のさらなる発展が期待されている。

  • 竣工予定プロジェクト
  • 竣工済みプロジェクト
  • 当社管理物件
マップ

竣工予定プロジェクト

  • 渋谷一丁目地区共同開発事業
    竣工:2027年6月予定
  • 渋谷スクランブル第Ⅱ期(中央棟・西棟)
    竣工:2027年度
  • 渋谷二丁目西地区第一種市街地再開発事業
    竣工:2029年度

竣工済みプロジェクト

  • 関電不動産渋谷ビル
    竣工:2024年2月
  • MIYAMASU TOWER
    竣工:2024年2月
  • 渋谷アクシュ
    竣工:2024年5月末

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渋谷駅南側に誕生した新たな玄関口Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)

2023年11月末竣工

地上39階/地下4階
(SHIBUYAタワー)

事務所、店舗、駐車場等

代官山や恵比寿へのアクセスもよい桜丘エリアの約2.6ヘクタールの敷地を一体的に整備して誕生した大規模複合施設。
JR渋谷駅「新南改札」を移転させ、駅や周辺地区を結ぶ多層の歩行者ネットワークを整備することで、働く人、暮らす人、訪れる人といったさまざまな人の拠点づくりを進めている。 オフィスを含むSHIBUYAサイド(SHIBUYAタワー、セントラルビル)と、住居階もあるSAKURAサイドで構成され、どちらも低層階には商業施設を備えており、オフィスワーカーの利便性にも対応している。

2023年10月23日桜丘地区B街区工事現況

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道玄坂に人流の活性化をもたらす大規模複合再開発(仮称)渋谷区道玄坂二丁目計画

2027年竣工予定

地上31階/地下2階/塔屋2階
(オフィス棟)

事務所、店舗、
ホテル等

渋谷駅西側に位置する道玄坂一・二丁目をつなぐ南北ネットワークを形成し、強化するプロジェクト。オフィス棟とホテル棟の2棟から構成され、道玄坂沿いには商業空間を、2棟の中心となる接続部には交流・憩い空間として広場や緑道を整備する。
オフィス棟・ホテル棟ともに渋谷マークシティ経由で京王井の頭線「渋谷」駅接続の高いアクセス性を誇り、各フロア 1,500㎡超の貸付面積を有する高機能オフィスビル。非常時には共用部・専有部に72時間電力供給が可能であり、防災機能が高いのも特長である。

画像提供:三菱地所株式会社
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