Vol.3

変革期を乗り越えるオフィス戦略

OFFICE MARKET&TREND オフィスの価値を上げるカギは「ESG」 コロナ禍でワークスタイルやオフィス環境が大きく揺れ動いている今、
オフィスビルに求めているニーズも変わってきている。
不動産市場を研究する𠮷田 資氏にオフィスマーケットやトレンドについて話を伺った。

𠮷田 資氏

Tasuku Yoshida
𠮷田 資 株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 不動産投資チーム 主任研究員
(株)三井住友トラスト基礎研究所を経て、2018年より(株)ニッセイ基礎研究所で調査・研究業務に従事。
専門分野は、国内の不動産市場、不動産金融。2020年度より一般社団法人不動産証券化協会 資格教育小委員会分科会委員に就任。

現在のオフィス需給バランス
オフィス改革の好機

コロナ禍によるテレワークの浸透やオフィス見直しで空室率が上昇し、平均賃料も下がっています。2022年1月末現在、都心5区平均で6.37%です(数字は三菱地所リアル調べによる)。
テレビなどでオフィス空室率悪化のニュースを目にする機会が増えましたが、報道するほどの悪化とはみていません。空室率については、私は現状くらいが標準と捉えています。2008年9月のリーマンショック時と比較すると空室率は同程度ですが、平均募集賃料の下落ペースの振れ幅は小さいです。
むしろ、数年前の空室率1%台だった時期が例外ともいえ、現在のオフィス需給バランスは、オフィス改革で移転先を探している企業にとっては物件の選択肢が広がっている好機ともいえます。

コロナ禍とリーマンショック時の比較(調査・作成:三菱地所リアルエステートサービス)
                コロナ禍とリーマンショック時の比較(調査・作成:三菱地所リアルエステートサービス)

2023年、2025年にオフィスマーケットが変化

今後は、2023年に虎ノ門エリアを中心とした大型ビルの竣工が控え、2025年にも新築オフィスビルが大量供給される予定です。オフィスマーケットも大きな変化をみせると予想しています。
虎ノ門では森ビルが「都市と自然の共生」として都市緑化に力を入れた開発を進めており、環境配慮のトレンドをみせています。また、オフィスの大量供給で虎ノ門がビジネスエリアとしてどのような存在感を放つのかにも注目しています。
2023年と2025年のオフィス大量供給で、ビジネスエリアのブランド感にも変化が出てくるかもしれません。交通利便性の高いエリアとそうでないエリアでは格差が広がってくると予想しています。

ESG配慮の効果

近年、不動産のESG投資(環境[Environment]、社会[Social]、ガバナンス[Governance]の要素も考慮した投資)が拡大しています。物流施設では、外国人投資家の間でESGに配慮していない物件を投資対象外にする動きもみられます。
オフィスビルでは延床面積10,000坪以上の大規模ビルを中心に、ESGを意識した環境配慮型の認証を取得する物件が増えています。脱炭素社会の実現といった社会的要請が年々高まってきていることも無視できません。
将来的なことを考えると、大規模ビルに限らず、中小規模のオフィスビルもESG配慮の取り組みを検討したほうがよい時期に差し掛かっているのではないでしょうか。私の予測では10年後には不動産価値や賃料収入の格差が現れてくるとみています。

ESG評価は環境から健康へ広がっている

これまでESG評価の中心は環境性能でしたが、コロナ禍で健康や感染症対策への関心が高まり、投資家や事業者は利用者のWell-being※1を評価する「CASBEE-ウェルネスオフィス」のような認証に注目し、取得するビルオーナーも増えています。
こうしたオフィスマーケットの動きやトレンドのなか、テナント側である企業はオフィス戦略をどう考えるべきか?慢性的な人手不足は統計にも出ており、人材確保や生産性向上、働き方改革の推進などは企業の経営課題に挙げられています。
ESGに配慮したオフィス環境は、自社ブランドや企業価値の向上につながり、人材確保の面でも有効だと考えています。
また、生産性向上や働き方改革の推進を考えると、Well-beingオフィスに取り組んだり、サードプレイスオフィス(会社・自宅以外の第三のオフィス)の導入でワークスタイルの多様性を広げたりすることも効果的だと思います。マーケット分析では自宅に近い郊外型のシェアオフィスが拡大傾向にあり、なかでも個室型シェアオフィスの供給が増えています。
それらに加えて、Afterコロナのワークプレイス構築も大きな課題でしょう。在宅勤務経験者の意識調査の結果から、センターオフィス=「従業員がコミュニケーションを図り共創する場」としての重要性が再認識されています。
今後は、オフィス勤務と在宅勤務、サードプレイスを最適に組み合わせた「オフィス戦略の再構築」が本格化することが予想され、オフィス需要への影響を注視したいと考えています。

※1 well-being(ウェルビーイング):心身ともに、さらに社会的にも健康で満足した生活を送れる状態をいう。

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