• スペシャリストの智
  • リアルな現場
  • The Watch
  • OFFICE JOURNAL
  • 不動産の税金ガイドブック
  • 民法改正のポイント
  • 空室率レポート
  • 鑑定士の視点

不動産を売却したい。
知っておくべき売却の流れと費用、注意点とは?

2019.06.25

不動産を資産として運用する場合、キャピタルゲインを得るために売却する場合もあれば、運用効率が下がった物件を売却し、別の不動産を購入するということもあり得る。また、相続が発生した場合に、不動産を売却するという選択肢も自然に生じる。今回は、不動産売却時の流れと費用、注意点を解説する。

不動産売却には、早くても三ヶ月、通常ならば半年以上かかる

 不動産は、「売ろう」と思ったからといって、すぐに右から左に売れるものではない。売却したい不動産の現在の価値を把握しなければならないし、売却先もすぐに見つかるとは限らない。大きな流れを図示すると次のようになる。

 
売却フロー図

 まず、不動産を売却したいと考えた場合、最初にやるべきことは、①相場の把握になる。不動産の場合、取得時とはその価格が大きく変わっている場合もあるので、注意が必要だ。近隣物件の売買状況なども分かる範囲で調べておきたい。こういった情報を基に②の査定は不動産会社に頼むことになる。自身で調べた相場と乖離があった場合には、その点を質問し、納得出来るかどうかも確認したい。査定内容について適切に説明できる、信頼にたる不動産会社を見つけ、③仲介依頼と④売出し、売却先探しを任せることが多い。それだけに②~③の段階での不動産会社探しは重要だ。ただ、高額な査定額をつけたというだけで不動産会社を選定してしまうと、後から売却先が見つからず、売り出し価格を下げなければならないということもありえる。
 売却先候補が見つかり交渉をする⑤、売買契約を結ぶ⑥、⑦引き渡しでは、専門的なことも多い。これら一連の不動産売却の流れでは、すぐに売却先が見つかるようなケースでも、約三ヶ月から半年はかかる。売却先が見つからなければ、それ以上かかることも珍しくない。不動産売却の計画は、この流れとかかる期間を意識しておきたい。

不動産価格の相場を知る方法とは? 売却時にかかる費用は?

 前項で述べたとおり、不動産を売却する際に、最初にすべきことは「相場を知る」ことだ。その相場を知る方法は多岐にわたる。よく耳にする不動産価格の指標として「公示価格」「路線価」という言葉がある。公示価格とは正確には「地価公示価格」といい、国土交通省が毎年複数の不動産鑑定士に依頼して、土地の価格を調査したものである。この価格を基準に、「路線価(相続税路線価、固定資産税路線価)」が決められる。ただし、公示価格は実際の売買の価格とはズレが生じることが多い。そもそも公示価格は、すべての土地ではなく、そのエリアの代表的な区画を対象に調査されるため、ピンポイントで所有する物件の価格とはならない。立地条件によって不動産の価格は変わるため、公示価格はあくまでも参考程度のものなのだ。
 では、実際の相場を知りたい場合には、公示価格を把握した上で、近隣の不動産の売買情報を調べることになる。チラシや不動産会社のサイトでの売出し情報なども大いに参考になる。自身が所有する物件と近い条件のものを探して比較してみるといい。また、公益財団法人不動産流通推進センターでは、実際の不動産取引での成約情報をデータベース化している。路線や最寄り駅、駅からの距離、専有面積など、詳細な条件で成約情報を検索できるので、ぜひ利用したい。
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
 不動産売却時にかかる費用としては、不動産会社に支払う仲介手数料、印紙税、抵当権抹消登記の手続きにかかる司法書士費用、譲渡益に対する不動産譲渡税などが挙げられる。

仲介手数料 売却価格のうち200万円以下の部分…取引額の5%以内
〃    200万を超え、400万円以下の部分…取引額の4%以内
〃    400万円を超える部分…取引額の3%以内+6万円
(上記の金額に別途消費税がかかる)
印紙代 売却価格5000万円以上1億円以下の場合 3万円
  1億円超5億円以下 6万円
  5億円超10億円以下 16万円
  10億円超50億円以下 32万円
  50億円超 48万円
※2014年4月1日~2020年3月31日までに作成される契約書に関して、印紙税の軽減措置が適用される。上記は軽減措置適用後のもの)
抵当権抹消登記にかかる費用
※不動産に抵当権が設定されている場合(不動産を担保に融資を受けている場合など)
不動産1件につき 1,000円
※土地、建物の両方に抵当権が設定されている場合は、それぞれに抹消費用がかかる
※司法書士に手続きを依頼した場合、別途、費用がかかる
譲渡所得税 短期譲渡取得の場合 (不動産取得期間5年以下)
売却益に対して 所得税 30% 住民税9%
 

長期譲渡取得の場合 (不動産取得期間5年超)
売却益に対して 所得税 15% 住民税5%
※短期と長期いずれも2013年から2037年までは復興特別所得税として所得税額の2.1%を併せて納付する必要がある。

不動産売却での注意点
相続した不動産、ローンが残っている不動産、入居者がいる賃貸物件の売却は?

 不動産の売却に関する疑問として、「相続した不動産」「ローンが残っている不動産」、「入居者がいる賃貸物件」を売却したい、というものも少なくない。それぞれ、実際には売却ができるのだが、注意点がある。
 まず、「相続した不動産」を売却するケースだが、相続登記を済ませた物件でないと売却ができない。そのため、速やかに相続人で協議し相続登記を済ませる必要がある。相続税の支払いは「相続を知ったときから10ヶ月以内」と定められているので、売却益を相続税に当てようと考えている場合は、急ぐ必要がある。
 次に「ローンが残っている不動産」についても売却は可能である。手続き上、抵当権抹消登記が必要になるが、売却益でローン残債を支払う場合、ローン残債、諸費用を考慮して売却金額を考えなければならない。
最後に「入居者がいる賃貸物件」だが、こちらは、売却価格が「収益性」に大きく左右されることに注意したい。また、管理費や家賃の滞納などがあった場合は精算しておくべきだろう。民法改正で、入居者と物件オーナーの地位譲渡に入居者の同意が不要と明文化されたこともあり、このケースでも売却に大きな問題は生じにくいと言える。
不動産を資産と考えた場合、売却や購入によって流動的に、その折に応じた資産形成を行うことは必須だと言える。そのためにも、不動産売却に関する基本的な知識は頭に入れておきたい。