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快適なだけでなく生産性もアップする?オフィスの「CO2濃度」と「温度・湿度」、見直しのススメ

2019.01.10

ビジネスパーソンが、多くの時間を過ごす「オフィス」。快適な作業環境が用意されていることで業務効率が向上し、高いアウトプットが導かれることは言うまでもない。
では、「快適な作業環境」とは具体的に何を指すのだろうか。ワークプレイスのレイアウト、それとも最先端のビジネスツール? いずれにしても、オフィスのハード面をイメージする人が多いに違ない。ところが、持続的な快適性と効率性には、「CO2濃度」や「温度・湿度」といった環境面の管理が小さからぬ要因になると、近年わかり始めている。むしろ、ミスコントロールをすることで心身に不調をきたすというのだ。ここでは、そんな生産性に直結する、オフィス環境について考察してみよう。

(写真= Nico ElNino Reduce greenhouse gas emission for climate change and sustainable development/Shutterstock.com)

高いCO2濃度はビジネスパーソンの大敵

オフィスでデスクワークやミーティングをしていると、眠気に襲われて頭が回らなくなり、仕事がままならない……。そういった経験があるとしたら、自身の体調を気にしたり仕事へのモチベーションの低下を疑ったりするかもしれないが、そんな時は一度、屋内の「CO2(二酸化炭素)濃度」に着目してほしい。

CO2濃度が人体に及ぼす影響は甚大だ。大気中における通常のCO2濃度は360ppm程度で、典型的な都会である東京都新宿区の路上で450ppmほどだ。この水準では問題はないが、上昇するに伴いパフォーマンスの低下や体に不調をきたしていく。

2012年に米エネルギー省の研究機関であるローレンス・バークレイ国立研究所とニューヨーク市立大学が実施した共同研究では、次のような報告があった。24人の被験者に、CO2濃度を600ppm、1000ppm、2500ppmに調整した部屋で2時間半過ごさせた後、意思決定能力を調べるテストを実施したところ、二酸化炭素濃度が上昇するにつれ、テストの得点は著しく低下したという。こういった研究からも、CO2濃度が高くなるにつれ人間の意思決定や集中力に支障をきたすことは実証されており、さらに上昇していくと呼吸困難や頭痛といった健康被害にもつながっていく。

よって、換気の悪い部屋や、会議のように大勢集まる締め切った空間で長時間過ごすというのは、ビジネスパーソンにとって日常的なシーンだが、CO2濃度の観点から良い環境とは言いがたい。

オフィス環境に関する法令である「労働安全衛生法」の「事務所衛生基準規則」において、CO2濃度は5000ppm以下、空調設備により調整が可能な場合は1000ppm以下とされていて、事業者にその測定義務がある。また、「建築物における衛生環境の確保に関する法律(通称:ビル衛生管理法)」においては、延べ床面積3000㎡以上の建物で、室内のCO2濃度を1000ppm以下で維持管理するよう規定されていて、こちらの場合は建物の所有者に測定義務が課せられている。法令を遵守しているなら問題ないが、定期的にケアが行き届いていないこともあるかもしれない。就業中にウトウトする従業員が散見されるなら、ここに目を向けてみてはどうだろう。あるいは、CO2濃度の測定器を購入してチェックする、換気扇の定期的なメンテナンスといったことも併せて検討したい。

オフィスの温度・湿度もパフォーマンスに影響する

注視すべきはCO2濃度だけではない。オフィスの温度や湿度もパフォーマンスに影響するので、適切な維持管理が求められる。前述の「事務所衛生基準規則」によると、空調設備を設けている場合、建物内の室温は17℃以上28℃以下及び相対湿度は40%以上70%以下になるように努めることが定められていて、「職場快適基準」でも、室温は夏季20℃~27℃、冬季20℃~23℃、湿度は50~60%が適切だとしている。

例えば温度。当然ながら暑すぎても寒すぎても業務は捗らない。2005年に米コーネル大学がフロリダ州の保険会社でPCを使って働く女性を対象に行った調査では、室温を20℃から25℃に上げることで従業員のタイプミスが44%減少、タイプする文字数も150%増加したことがわかっている。

ただし、最適な温度には個人差もある。夏場に頻繁に外回りのある営業職だと涼しい方がありがたいだろうが、デスクワークがメインだとそうはいかない。男性と女性では筋肉量が異なり、男性より基礎代謝量が低い傾向がある女性は寒さを感じやすいという説もある。

一方、湿度に関しても高すぎると不快感や疲れを誘い、低すぎると乾燥によりドライアイなどに悩まされるなど、何かと不具合が生じる。まばたきの回数が増えることで、視覚によるデータ収集を要する業務でマイナスの影響が見られたという報告もあるほどだ。

とりわけ冬で気になるのは、湿度が低いことで体質によっては皮膚の乾燥やかゆみ、せき、鼻水、のどの痛みなどに悩まされることが夏より多くなり、従業員の健康被害にも直結してしまう。調湿機能のある空調システムを有するオフィスであれば相対湿度が40%を下回らないように自動調整が可能だが、そうではないと低湿度になっていることもあるだろう。厚生労働省が実施した全国を対象とした特定建築物立入検査や東京都による特定建築物立入検査の結果によると、測定場所における勤務時間帯のうち30~40%が相対湿度40%未満だったこともわかっている。勤務先でさまざまな症状に悩まされているなら、組織的に対策を練るか、個別で加湿器を利用したり、マスクを着用したりすることも考えたい。

このように、オフィスのCO2濃度、温度、湿度は生産性に深く関わるため、何らかの対策を講じたいところだ。ちなみに近年だと、オフィス内にこれらを計測するセンサーを設置し、基準を超えると外気を取り込み適切な水準になるよう、換気と空調をコントロールするといったソリューションも提供され始めている。IoTを活用することで、快適な環境に持続性を持たせることができ、企業が従業員の健康にも配慮して生産性の向上を図る「健康経営」の観点から、こういったシステムの導入を組織的に考えてみてもいいだろう。

とはいえ、IoTの導入ですべてが解消するわけではなく、そもそもこうした環境面については個人差が大きく、一律基準を徹底しにくい面もある。その点では、フリーアドレスの導入や、オフィス内に様々な環境のバリエーションを設けることでこうした不協和音を緩和することにも大きく貢献しうる。一考の余地があるだろう。