さらなる企業成長に向けて オフィス増床移転

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コロナ禍を経て企業の業績は回復基調にあり、株式市場からの後押しもあって成長投資への意欲が高まっている。特に、人的資本への投資が大きく取り上げられたことにより、従業員の働く環境の見直しに注目が集まっている。
都内の就業者数や新築オフィスビルの供給数も増加傾向にあり、増床移転の機運も高まるなか、企業が中長期的な成長を目指す上で、人的資本投資の考え方を意識してオフィスを移転する場合の具体的な取り組みを紹介する。

日経平均株価が最高値を更新

日経平均株価 ©日本経済新聞社

日本を代表する株価指数である日経平均株価。バブル期に最高値を記録して以来、2024年3月4日に初めて4万円の大台を突破した。コロナ禍を経て株式市場は活性化している。

成長投資をする企業が評価される時代に

株式市場では企業の成長投資がキーワードになっている。その指標となるのが、株価と純資産額の関係性を表す「PBR(株価純資産倍率)」だ。株価を一株当たり純資産額で割った場合、「PBR1倍割れ」をしている企業は、株価が割安であると判断されてしまう。
こうした「PBR1倍割れ」の上場企業に対して、東京証券取引所(東証)は2023年3月に経営改善を要請。翌年1月には対象企業一覧リストを公表し、改革に踏み切った。成長投資を行っていない企業は、評価されにくい時代になってきたのだ。それでは「成長投資につながる経営」とは何だろうか?
株主還元の強化やサステナビリティ対応、事業ポートフォリオ見直しなどが挙げられるが、人的資本投資も注目を集めている。
社員が快適に働き、成長できるオフィス環境を選ぶこと。株式市場の影響は、オフィス市場にもプラスの効果をもたらすことが期待されている。

増床移転の機運が高まる

都内では、就業人口の増加が続いている

地域別就業者数の推移

出典:総務省統計局「労働力調査結果」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000001082698)を加工して作成

東京を含む南関東地域では就業者数の増加が続いており、直近では2,100万人を超えている。
都内にオフィスを構える企業は、多くの従業員が働く場を用意するとともに、優秀な人材を獲得するためにオフィス環境の整備が求められている。

今後3年間のオフィス供給は東京区部に集中

オフィスビルストック(床面積)

出典:日本不動産研究所「全国オフィスビル調査(2023年1月現在)

東京区部におけるオフィスビルの床面積は、今後も増加傾向にある。2023年1月時点の三大都市を含む全国87都市におけるオフィスビルストックは、13,351万㎡(10,556棟)。東京区部は7,406万㎡(4,992棟)で、床面積ベースでみると全都市計の約55%と過半を占める。2025年には、コロナ禍前のピークである時期のオフィスビルストック量とほぼ同水準へ回復する見込み。
今後のオフィスビルの供給計画では、全都市計で634万㎡(149棟)。中でも東京区部が469万㎡と全体の約74%を占め、突出している。

オフィス移転は人材確保とエンゲージメント向上が目的に

三菱地所リアルエステートサービスが実施した調査によると、2022年度第3四半期以降、オフィス移転時に「増床」と回答した企業が連続して増加している(直近の調査では「増床」が全体の約58%を占める)。
また、オフィス移転検討・実施理由についても、「人員増・事業拡大」と「オフィス環境改善」の回答数が増加し、「コスト削減」や「集約・統合」が減少していることから、人員の確保や従業員エンゲージメントの向上を目的とした移転を検討・実施する企業が増加していることがわかる。

オフィス移転時面積の動向

出典:三菱地所リアルエステートサービス株式会社「企業の不動産ニーズに関する調査レポート

オフィス移転検討・実施の理由(複数選択可)

出典:三菱地所リアルエステートサービス株式会社「企業の不動産ニーズに関する調査レポート

企業の成長につなぐオフィス移転のトレンド

中長期的な企業成長を目指す上で、人的資本投資の考え方を意識してオフィス移転を行う場合の具体的な取り組みを紹介する。

人材戦略に求められる5つの共通要素

2022年経済産業省が発表した「人材版伊藤レポート2.0」では、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかという点について、以下の考え方を提示している。

動的な人材ポートフォリオ

経営戦略の実現のために、
要件を充たす必要人材の獲得と育成

知・経験のD&I

多様な価値観・専門性を取り込み、
具現化すること

※D&I…ダイバーシティ&インクルージョンの略称

リスキル・学び直し(デジタル創造性等)

企業と個人の環境変化に対応できる
従業員の能力向上

従業員エンゲージメント

主体的に業務に携わり、
やりがいも感じる職場の創出

時間や場所にとらわれない働き方

時間や場所に縛られず、
緊急時への強靭性もある
環境・体制の整備

出典:経済産業省「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書~人材版伊藤レポート~」
https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf

5つの共通要素の枠組みに基づく、オフィスに関する具体的な取り組み

快適性

オフィスの快適性を高めることは従業員の健康や生産性向上に寄与する。リラックス効果のある植栽の設置や環境音・香り、自動調節機能のある空調や照明などが挙げられる。

エンゲージメント

従業員の一体感や仲間意識を醸成することは生産性や効率性を高める。カフェスペース、マグネットスペース(社員が自然に集まる空間)を設置して、偶発的な出会いと共創を促す場を提供することが効果的である。

スぺパ

スペースパフォーマンスの略。ペーパーレス化推進による什器(キャビネットやコピー機など)の削減に取り組むことで、オフィス内のワークスペースが増え、優先度の高いリソースに使用できる。

ブランディング

自社のパーパスやミッション・ビジョンを反映したオフィス空間にプロデュースすることで、その企業が顧客や取引先に打ち出したいメッセージを伝えやすくなる。また、採用においても、優秀な人材獲得に寄与する。

ABW

業務内容や時間帯、気分に合った働き方は生産性や効率性を高める。フリーアドレスの実施、目的や用途に合った多様な場(集中用、WEB会議用、会議・打ち合わせ用など)を用意するなどが挙げられる。

※ABW…Activity Based Workingの略称

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