• スペシャリストの智
  • リアルな現場
  • The Watch
  • OFFICE JOURNAL
  • 不動産の税金ガイドブック
  • 民法改正のポイント
  • 空室率レポート
  • 鑑定士の視点

オフィス2.0「アクティビティベース型ワークプレイス」で変わる働き方

2018.08.08

オフィスでの働き方の進化が止まらない。より効率的でコストパフォーマンスに優れ、働き手の自由度と満足度を高める新しい形のワークプレイスが欧米を中心に急速な普及を見せている。
コストがかさむ上に柔軟性に欠ける従来の「固定席型オフィス」から進化した、決められたデスクのない「フリーアドレス型オフィス」が日本でも多く採用されるようになりつつある。だが、「フリーアドレス型」はスペース削減などコストコントロールに効果を発揮するものの、従業員の生産性や満足度を上げる点に関しては「固定席型オフィス」からの課題も依然残したままの部分もある。

(写真= Sarawut Chainawarat/Shutterstock.com)

アクティビティベース型ワークプレイス(ABW)とは?

そこにソリューションとして登場したのが、1980年代に米国人建築家ロバート・ルチェッティが提唱し、1990年代にオランダ人コンサルタントのエリック・ベルトホーンがコンセプトを完成させた「アクティビティベース型ワークプレイス(ABW)」だ。2010年代半ばから欧米で普及が加速している。

ABWは、オフィスに限らず自由に場所と時間を選択して働くことによって、よりクリエイティブな成果や業務効率化を促す仕組みであり、近年この考え方をオフィス設計に取り入れる企業は多い。日本でも普及しているフリーアドレス制は社内で自由に働くデスクを選択することができるのに対しABWはデスクに限らずさまざまなタイプの執務スペースから働く場所を選択することができる。更に社外での労働も可能なため、その日の仕事にあわせて自宅やカフェでの労働も実現できる。

これまでの固定席型やフリーアドレス型のワークスペースで課題になることの多かった「フォーマル化したオフィス運営による人間関係の閉鎖性」や「集中しづらい執務環境」などを解決することがきる点がABWの長所といえる。仕事上の所属関係が異なる人々が事務所スペースを共有するコワーキングスペースに多くのヒントを得ている。

ABWは「決まった場所、決まった時間」から開放されて働くことを実現する

ABWは、どのように課題を解消できるのか。

例えば、「フリーアドレス型」では特定の時間帯に従業員の多くがワークスペースに集中して滞在してしまうと、デスクやワークステーションが不足し、かえってモチベーションや生産性が下がってしまうという懸念がある。

また、従業員同士の関係が「固定席型」の慣習を引きずってフォーマルなままである場合も多く、せっかくフリーアドレスを導入しても、従業員の間の自由闊達なインターアクションやコラボレーションを生み出せないことで悩む企業も多い。

こうした問題を解決するため、ABWには多くの工夫が凝らされている。ワークプレイス全体を全従業員で共有するという点は「フリーアドレス型」と同じだが、オフィス内のワークスペースの種類を多様化し、従業員がそれぞれのスペースに短時間しか滞在せず、各スペースを頻繁に行き来することで、生産性と満足性を向上させるのだ。

例えばABWの”ふるさと”、オランダにあるIT大手マイクロソフトのアムステルダム支社。1,000人が働く同支社には固定席がない。代わりに、従業員同士のインターアクションが可能な仕切り付きデスクが集まったワークスペース、立ったまま作業ができるハイデスク、オープン型と閉鎖型の異なる種類のカンファレンススペース、電話用の個室ブース、コーヒースペース、屋内及び屋外食堂、仮眠室、リラックスゾーン、集中ブース、ラウンジなどが用意されている。

会議室についてはミーティングのたびに予約するのではなく、気軽にオープン型のカンファレンススペースに集まって話し合い、ムダな会議時間を減らす。もちろん、機密情報を扱うシーンや落ち着いて話し合いたいシチュエーションでは、閉鎖型カンファレンススペースが使用できる。目的に応じたオープン型と閉鎖型があることで、効率性が増すのである。

こうしたインフォーマルなスペースの配置により、働き手は必要に応じてこれらの場所を自在に動き回る。毎日の仕事の目的や内容に合わせ、さまざまなタイプのスペースを柔軟に選択できるため、従業員たちは自分専用のデスクを持たなくても、自分の居場所が会社にあると感じることができる。それが従業員の満足度と生産性を引き上げ、ひいては会社の収益向上にもつながってゆく。決まった場所、決まった時間の束縛から開放されて働くことができる点が特徴といえよう。

マネジメントで意識すること、ABW導入時の注意点とは?

ABWは、マネジメント側にも変化が求められる。ビジネス上の多様なシーンの中で、異なるスペースの中から目的に応じてどこを使うか、どうすれば職場のコミュニケーションが活性化されるかといったことを考える必要がある。上司と部下が異なる目的と雰囲気の複数のワークスペースで移動を繰り返すため、適度な距離感のコントロールも求められるだろう。

ABWの目的は、自社が追求する生産性目標と働き手のニーズをマッチさせるという「問題解決型」のオフィスを実現することであり、設計もそうした明確な意図をもって行われる。したがって、ABWの導入に当たってマネジメント側としては、自社のワークスタイルに適しているかの見極めが必要となる。

「なぜABWが自社の問題解決になるのか」「組織としての課題を、ABWはどの程度解消できるのか」という基本的な問いに始まり、「どの程度の投資が目的に合致し、適切か」など、自社の働き方の改革と併せて検討することが求められる。

適切な設計を行えば、雇用者と従業員の双方に生産性向上という、win-winの関係をもたらすことが期待できる。今後、日本での導入事例が徐々に増えていくことが予想される。

 当社三菱地所リアルエステートサービスでは、2018年5月新オフィスへと移転した経験をもとにオフィス移転を検討中のお客さまをワンストップでサポートいたします。実施中のオフィス見学ツアーではカフェスペースやフリーアドレスの取組もご確認いただけます。オフィスに関するお悩みがございましたらいつでもお気軽にご相談ください。