駐車場から始まる街づくりの未来 
新会社「三菱地所パークス」が描く次世代の駐車場事業

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目次

三菱地所リアルエステートサービスは2020年4月に駐車場関連事業を分割し、グループ会社に一本化。駐車場の運営・管理はもとよりコンサルティング業務も幅広く手掛ける総合駐車場会社、三菱地所パークスがスタートしました。AIやIoTなど先端のテクノロジーの研究も積極的に進めており、次世代の駐車場開発を目指していきます。
三菱地所グループにおける駐車場事業がひとつの転機を迎えたこの機会にあたり、駐車場事業を取り巻く現状とこの先に広がる未来像について、当社経営企画部と三菱地所パークスの担当者がそれぞれの視点から語ります。

Speaker

三菱地所パークス コンサルティング本部 兼 パークスパーク運営本部平川 修一

三菱地所パークス コンサルティング本部 研究開発部荻田 健之

三菱地所リアルエステートサービス 経営企画部富田 剛史

駐車場関連事業を一本化した背景と、運営・管理会社に求められる役割

富田 この度業務を開始した三菱地所パークスは、三菱地所リアルエステートサービスの駐車場関連事業を、グループ会社であった株式会社駐車場綜合研究所に統合する形で誕生しました。
もともと駐車場綜合研究所は、駐車場経営に関するコンサルティングおよび運営・管理において多くの実績を持つ会社で、2018年6月にM&Aにより三菱地所グループの一員となりました。施設型駐車場事業を主体としており、新しい技術の開発も積極的に進めている点が特色です。一方、当社の駐車場事業はコインパーキングを主体としていました。両者の事業を一本化することで、それぞれの強みを活かしつつ、駐車場に関する総合サービスをお客様にとってよりわかりやすく便利なワンストップの形で提供できると考え、事業統合を行ったという経緯です。
現在のコインパーキング事業においては、駐車場の数が増え、運営会社間の競争も激しくなっている背景があります。そのため、単に受託を行うだけではなく、常に新しいこと、革新的なことへの取り組みが求められていると感じています。

三菱地所パークス コンサルティング本部 兼 パークスパーク運営本部 平川 修一

平川 もうひとつの柱となる施設型駐車場に関して言えば、前提として利用者の方にとって安全で利便性が高いものであることが求められています。さらに周辺道路の渋滞をいかに少なくするかも大きな課題です。それらを実現し解決するために、オーナー様がより高い専門性、そしてノウハウと経験値を求めて専門の会社に駐車場管理を委託されるケースが増えてきています。
例えば駐車場運営に不可欠な機器ひとつとっても、その機能は日進月歩で進化しています。また、昨今は100年に1度の自動車業界の変革期と言われ、通信キャリアの事業者までもが駐車場事業に参画してきている状況です。そのように変化の目まぐるしい中で、ビルや商業施設の運営を行いながら駐車場の管理も行うというのはオーナー様にとっては非常に負担が大きい部分があります。そのため、特に中型・大型施設のオーナー様が駐車場管理を委託されることが多い印象です。

より安全で快適な駐車場づくりを進めていくためには

荻田 施設型駐車場の新設や再開発をどう進めるかについてご説明しますと、まず駐車場の出入口に接する取付道路の状況や位置などについて、警察も含めた協議を行います。最近ではシミュレーションソフトなどを活用することにより、例えば交通量が通常の2割増し、3割増しになった時にどこがどのように渋滞するのかをかなり正確に予測できるのです。そういったデータを活かして緻密に計画を進めていきます。

平川 つまり施設に出入りする車が公道にあふれることのないよう、事前にさまざまな対策を行うのです。そもそもの建物の構造や立地による限界はあるものの、先程も話に出たソフトなどを使い、オーナー様にも目で見える形で確認していただくことで、建築計画や警察協議も進めやすくなります。当社はそういった細やかなコンサルティングを統合前から長年続けている点が強みであり、結果的にオーナー様にもご満足いただけていると自負しています。

三菱地所パークス コンサルティング本部 研究開発部 荻田 健之

荻田 一方、既存の駐車場で起きている問題を解決する際は、主に設備の見直しによって改善を進めていきます。例えば、場内の走行ルートを一方通行にするだけでもずいぶん滞留が減ることがあります。また、損害保険会社のレポートでは自動車事故の3、4割が駐車場で発生しているという実態もあります。なぜなら空車室を探すことを意識し過ぎてしまい、うっかり車をぶつけてしまうことがあるからです。これを防ぐには、ゾーン別空き台数表示機器の設置が挙げられます。どのゾーンが何台空いているかを見せることによりドライバーの心理を落ち着かせ、わき見運転を防ぐことができるのです。この設置は今後積極的にご提案を進めたいです。
もちろんオーナー様からは、稼働率に関するご相談も多いです。商業施設の場合、平日は館内で食事や買い物をされるお客様が少ないので、駐車場をどう稼働させるかが課題になってきます。ですが、特に首都圏の商業施設は交通の便が良い場所にあることが多いため、車で来た方がそこから移動するために停める駐車場、いわゆるパークアンドライド型の駐車場とすることで売り上げをつくれる可能性があるのです。その場合、平日のみ停められる契約車台数や時間貸しの部分でどのくらいの駐車台数を目指せば本来の施設型駐車場としての運営に影響せずに売り上げを見込めるかの判断が大事になってきます。私たちは過去に多くの実例がありますので、その指標を高い精度で導き出すことができるのです。

街の繁栄を支える、社会インフラとしての駐車場の未来

荻田 私たちの調査研究では車で外出する方の多くは出発する時点で駐車場を決めているという結果が出ています。そうなるとまず、その駐車場の空室情報を到着前に知り、予約を可能にするサービスの提供にはニーズがあると言えるでしょう。ですが、それだけで本当に良いのか、というところもあります。
今、自動車業界は「CASE」(「Connected/接続性」「Autonomous/自動運転」「Shared/共有」「Electric/電動化」)と呼ばれる変革期を迎えていると言われています。
この中の「Connected」で言えば、2026年には6割の車がコネクティッドカーに変わるとされていますが、コネクティッドカーと駐車場の予約は非常に相性が良いと言えます。例えば車の中のAIスピーカーに「丸ビルに行きたいんだけど」と話しかけると、「丸ビルの駐車場はいっぱいです。隣の三菱ビルなら20台空いています、予約しますか?」と返事があり、「予約する」と答えたら、その瞬間にカーナビが走行ルートを表示している。そういう時代が来るのも遠い先のことではないのです。
ですから、この先本当に必要な技術を考えると、単に選んだ駐車場を予約できるようにするのではなく、そもそも目的地最寄りの空き駐車場を探すという最初の苦労自体をなくすということになってくるかもしれません。

三菱地所リアルエステートサービス 経営企画部 経営企画課 富田 剛史

富田 もともと駐車場はビルを建てる時に義務として作らなければいけないもの、交通渋滞を起こさないために必要なものでした。ですが、今後モビリティ革命によって個人が自動車を保有すること自体が減り、必然的に駐車場も減っていった場合、社会インフラのひとつとして発展させていくことで、街において必要な存在であり続けることができるのではないでしょうか。
すなわち、駐車場を単に車を置く場所で終わらせるのではなく、そこで何ができるのかを考えていくために、まず車の出入りの状況からその後の移動先までをきちんと把握し、その動線から街づくりへ広げていく。その過程に三菱地所リアルエステートサービスが不動産サービスを通じ蓄積した知見も活かしながら、最終的には三菱地所グループ各社または社会全体に還元できればと思います。

荻田 私は駐車場を、街の繁栄や賑わいのためのひとつの装置であるととらえています。一方、特定の施設がいくら賑わっていたとしても、街全体として周りも共に発展していかないと、いずれその施設自体の賑わいも止まってしまいます。皆で手を取り、街全体で発展させると考えた方が、実はメリットがあると考えています。
その意味で、駐車場は社会インフラのひとつであると思います。最近ではオーナー様の意識も少しずつ変わりつつあり、お客様に気持ちよく駐車場にお越しいただき、街全体を一日楽しんで帰っていただく、というストーリーを描いている方が増えてきた印象です。
これから先は、駐車場の役割がさらに多様になっていくのではないでしょうか。もちろん法規制がどう変わるかによりますが、例えば電気自動車を駐車している間に、充電はもちろん車のメディカルチェックのようなものが行えるとして、それを続けると車検を1年延長できたり代金が安くなったりするとしたら、やはり利用する方は多くなるでしょう。そのような時代の先を見据えた上で、駐車場は今何をしておく必要があるかを常に考えたいと思います。

平川 最後になりますが、駐車場事業において私たちが技術開発と併せて非常に大切なものと考えているのが、ホスピタリティです。公共性の高いインフラとしての側面も踏まえた上で、人にしかできないおもてなしは、この先時代が変わったとしても常に必要でしょう。例えばですが、オペレーターがお客様の車のドアを開けたり、名前やお顔を覚えてご挨拶したり、時には簡単な清掃を行ったり、といったことです。もちろんそれらは業務委託の約定にはないものですが、お客様へのそういった気配りが自然に行われていることが、オーナー様からも高く評価していただけている理由のひとつです。
今後も三菱地所パークスとして、駐車場運営・管理の基本を大切にしつつ、より良いサービスをご提供できるよう努めてまいります。

三菱地所パークス 取締役 常務執行役員 コンサルティング本部長 兼 パークスパーク運営本部長

平川 修一

1989年三菱地所住宅販売(現・三菱地所リアルエステートサービス)入社。複数の支店にて個人向け不動産売買仲介業務に従事し、2003年より法人営業第二部にて法人向け不動産売買仲介業務を担当。その後オフィスビル賃貸仲介業務およびリーシングマネジメント業務に携わり、2017年よりパーキング運営部にてコインパーキング事業の運営業務に従事。2020年4月より現職。

三菱地所パークス コンサルティング本部 研究開発部 部長

荻田 健之

国内大手商社にて25年以上にわたり、鉄鋼や建材製造プラントの輸入・国内営業や海外パートナーからの技術提携・導入斡旋など幅広い業務に携わる。さらに電子決済、キャッシュレスパーキングビジネス、ITS(高度道路交通システム)ビジネスにも従事。その後国内大手カード会社を経て、2015年駐車場綜合研究所入社。現在、三菱地所パークス研究開発部長を務める。

三菱地所リアルエステートサービス 経営企画部 経営企画課

富田 剛史

2007年入社。流通事業グループにて法人向け不動産仲介業務に携わった後、大手百貨店への出向を経て、2017年4月より経営企画部にて従事。三菱地所リアルエステートサービスにおける事業計画の策定・損益管理、三菱地所パークスに関する窓口などを担当。

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