不動産の税金ガイドブック
他にもデフレ脱却と経済再生の実現のための賃上げや設備投資を後押しする税制上の措置、観光立国実現に向けた国際観光旅客税(仮称)の創設など、広範囲にわたって注目すべき改正が行われます。
以下では、企業をはじめ多くの方に関係する、平成30年度税制改正の主な内容を紹介します。
(1) 個人所得課税の見直し
① 個人所得課税の見直しの概要
様々な形で働く人をあまねく応援し、「働き方改革」を後押しする観点から、次のような見直しが行われます。
ただし、準備期間を十分に確保するため、平成32年(2020年)から施行されます。
② 基礎控除への振替
給与所得控除及び公的年金等控除の控除額を一律10万円引き下げ、基礎控除の控除額が一律10万円引き上げられます。
③ 給与所得控除の引き下げ
給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除額が195万円に引き下げられます。
ただし、子育てや介護に対して配慮する観点から、22 歳以下の扶養親族が同一生計内にいる者や、特別障害者控除の対象となる扶養親族等が同一生計内にいる者については、負担増が生じないよう措置が講じられます。
④ 公的年金等控除の引き下げ
公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に195.5万円の上限が設けられるとともに、公的年金等収入以外の所得金額が1,000万円を超える場合には控除額を10万円引き下げ、2,000万円を超える場合には控除額を20万円引き下げることとされます。
⑤ 基礎控除の逓減・消失
合計所得金額が2,450万円を超える場合は次のとおり基礎控除額が逓減するとともに、2,500万円を超えた場合は基礎控除の適用が受けられないこととなります。
⑥ 基礎控除の引き上げ及び給与所得控除の引き上げに伴う調整
基礎控除及び給与所得控除の金額を踏まえて設定されている配偶者控除・扶養控除・配偶者特別控除・青色申告特別控除などの金額基準について、基礎控除の引き上げ及び給与所得控除の引き下げに伴う影響が生じないよう、必要な調整等が行われます。
(2) 土地・住宅税制
① 特定の居住用財産の買換え(交換)の場合の長期譲渡所得の課税の特例の見直し・延長
特定の居住用財産の買換え(交換)の場合の長期譲渡所得の課税の特例(※)について、買換え資産が建築後使用されたことのある家屋で耐火建築物以外のもの(非耐火既存住宅)である場合の要件に、その取得の日以前25 年以内に建築されたものであること又は地震に対する安全性に係る規定若しくはこれに準ずる基準に適合することのいずれかを満たすこと(経過年数等要件)を加えたうえ、その適用期限が平成31年12月31日まで2年延長されます。
なお、経過年数等要件を満たさない非耐火既存住宅を取得した場合であっても、その取得期限までに改修等を行うことにより経過年数等要件に適合することとなったときには、経過年数等要件を満たす家屋を取得したものとされます。
この改正は、平成30 年1月1日以後に譲渡を行い、同年4月1日以後に買換資産を取得する場合について適用されます。
※ 居住用財産を譲渡した年の前年から翌年までの3年の間に買換え(交換)を行った場合で、譲渡価額が1億円以下や、譲渡資産が譲渡した年の1月1日現在で所有期間10年超及び居住期間10年以上などの一定の要件に該当するときに、その譲渡益の課税を繰り延べる特例
② 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の延長
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等(※)の適用期限が、平成31年12月31日まで2年延長されます。
※ 居住用財産を譲渡した年の前年から翌年までの3年の間に新たに買換え資産を取得し、年末においてその買換え資産の取得に係る住宅ローン残高がある場合で一定の要件に該当するときに、譲渡した居住用財産の譲渡損失の金額について損益通算及び繰越控除をすることができる特例
③ 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の延長
特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除等(※)の適用期限が、平成31年12月31日まで2年延長されます。
※ 譲渡契約締結日の前日において住宅ローン残高がある居住用財産を譲渡した場合で一定の要件に該当するときに、その譲渡した居住用財産の譲渡損失(住宅ローン残高から譲渡対価の額を控除した残額を限度とする)の金額について損益通算及び繰越控除をすることができる特例