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極寒の地が熱い!?
20○○年に南極大陸の地価上昇?

2017.08.24

日本の約36倍、オーストラリア大陸の約2倍、およそ1,400万平方キロメートルの広さを持つ南極大陸。周知の通り、その大部分は途方もない分厚さの氷のかたまりに覆われており、人間が定住できる環境ではない。
そんな南極大陸だが、20世紀初頭以降いくつかの国によって領有権が主張された結果、1959年には「南極条約」が制定され、現在まで政治的な中立地としてどの国の領土にも属さない状態が続いている。当然、個人や企業が売り買いできる土地は存在しない。
しかし、現在でも各国の主張する領有権は文字通り「凍結」されたままであり、未来永劫、現在の状態が続く保証はない。南極大陸には豊富な地下資源が眠っていると目されているためだ。
将来的に、南極大陸の広大な土地が特定の国家や個人、組織の領有するところになる可能性はあるのだろうか。今回は、南極大陸の領有権を巡る歴史を整理するとともに、今後南極大陸の「不動産事情」がもたらす可能性とリスクについて考察したい。

(写真=Stanislav Fosenbauer/Shutterstock.com)

19世紀以降の探検ブームと領有権

15世紀後半に訪れた大航海時代以降、名だたる冒険家たちが唯一到達できなかった大陸が、南海の極地たる南極だ。
南極が人間の世界に登場したのは19世紀、1820年頃である。イギリスのブランスフィールド、アメリカのパーマー、ロシアのベリングスハウゼンの3人が南極大陸を発見した。しかし、3人のうちだれが最初に発見したかは分かっていない。20世紀に入って1911年には、ノルウェー人探検家ロアール・アムンゼンが世界で初めて南極点到達を達成した。
次第に、いくつかの国が探検の成果に基づいて、南極大陸の一部の領有権を主張するようになった。第2次世界大戦後、冷戦を背景として米ソが南極大陸を軍事基地として利用する可能性が高まるなど、政治的なリスクが高まった。

南極条約と環境保護の気運

こうした中、1959年にアメリカ・ソ連・イギリス・日本など12ヵ国によって「南極条約」が締結された。領有権を「凍結」する(「放棄」ではないのがミソ!)とともに、南極大陸を科学調査など平和的利用に限定した。南極大陸は、国際協力のための中立地になったのである。
その後、南極の環境や海洋資源・地下資源の保護に光が当たるようになった。ここには、対立を生みやすい「領有権」「軍事基地」というトピックを避け、国際協力の得られやすい環境問題に焦点を絞った各国の外交的な知恵も見え隠れする。
冷戦が終了し、1991年(発効は1998年)には「環境保護に関する南極条約議定書」が締結された。南極の環境や生態系の保護、そして鉱物資源の採掘などを禁止する「南極条約体制」が構築されて現在に至っている。2016年時点で、南極条約の締約国は53ヵ国に増えている。
南極条約体制は、発効から50年間、2048年まで続くことが明文化されている。従って2048年まではこの体制が続くことになるはずだ。

2048年という「Xデー」に何が起きるか?

南極条約体制の成立から20年近く経った2017年現在、2048年以降について話し合う動きは出てきていない。今後南極大陸がどうなるか予言することは困難だが、3点ほど考える手がかりがある。

1. 調査技術の進展に伴う新たな発見
南極の地理・自然・動植物・鉱物資源等については、未解明の部分も多い。特に鉱物資源については、各国の水面下での関心が高いところでもある。
今後、ロボットテクノロジーやAIの発達により、厳しい自然の下でも低いリスクとコストで広範囲を調査できるようになる可能性が高い。これによって、新たな発見が相次ぐ未来もありえるだろう。

2. 南極大陸の私的利用の可能性
南極大陸における調査活動は国家主体で行われ、個人や企業の関わりは限定的である。例えば、日本の昭和基地では民間研究者や施設のメンテナンスのための技術者が一部滞在しているだけである。
今後も、個人・企業の関与を制限する体制は大きく変化することはないだろう。南極大陸の土地が不動産として売買・投資の対象になる可能性は今のところ低い。ただし、将来的に現行の国民国家の影響力が低下し、国際社会におけるグローバル企業の発言力が高まれば、南極大陸の私的利用に道が開ける可能性はあるかもしれない。

3. 新興国の関与
南極条約は、20世紀の国際秩序に基づいている。経済成長と人口増加によって国際社会での存在感を高めた中国やインドといった国も締約国の一つであるため、今後国際社会でのパワーバランスの変化を反映して南極条約体制も変化していくかもしれない。
南極を巡る軍事衝突が起きる可能性は極めて低いと考えられるが、未だに「凍結」されたままの領有権争いに新たな波が立つことはあり得る。特に、鉱物資源の無断調査・採掘、海洋資源の乱獲などが発生した場合、国際的な問題となる可能性がある。

技術革新によっては経済的価値向上も?

南極大陸の土地は国際的な条約によって管理され、平和が保たれている。厳しい自然の中では活動範囲も限られるため、領有権を強く主張するメリットも各国にはあまりない。したがって、南極大陸の領有権を巡る現在の凍結状態は2048年まで続く可能性が高いだろう。
しかし、南極には豊富な鉱物資源が眠っていると言われている。近年、米国を中心に起こっているシェール革命は、採掘コストの低下が普及を後押しし、結果として、採掘場付近の地価上昇を促した。資源採掘技術に限らず、南極でより快適に居住できる技術などが今後、発達する可能性もある。
このように、技術革新の進み具合によっては2048年を待たず、南極の土地が各国・各企業から熱い注目を集めることになるかもしれない。