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はじめに

「国宝」と聞いてあなたはなにを思い浮かべるだろうか? やはり法隆寺や東大寺といった寺社の建物や、興福寺の阿修羅像などの仏像だろうか? 姫路城などの城を思い出す方もいるだろうし、長谷川等伯の絵かな、と思う方もいるだろう。

多くの国宝は寺社が所有していたり、東京・京都・奈良・九州にある国立博物館をはじめとした大きな博物館・美術館に所蔵されていることが多い。そうした中、なにかと話題を集めている《曜変天目(稲葉天目)》をはじめとした国宝を含む重要文化財など多数の東洋古美術品を所蔵している美術館がある。

武蔵野の面影を残す自然がそのまま息づく世田谷・岡本にある『静嘉堂文庫美術館』だ。アート好きを自認される方なら、一度は足を運んでみたい、知る人ぞ知る美術館といえる。今回は曜変天目を中心とした所蔵の名品とともに静嘉堂文庫美術館の魅力を、近くにお住まいで何度も足を運んだというフリーアナウンサーの羽田沙織さんにナビゲータを務めていただきご紹介する。


数ある国宝の中でも、とりわけ人気の高い、曜変天目を所蔵する静嘉堂文庫美術館


《国宝 曜変天目(稲葉天目)》

制定120年を迎えた「国宝」

今年は「国宝」をテーマにした展覧会や国宝を目玉とした企画展があったり、美術雑誌やテレビ番組では国宝を題材にした特集が組まれたりと、なにかと国宝が話題になっている。というのも、今年は国宝が制定されて120年になる「国宝イヤー」だからだ。

「国宝」(national treasures)という概念は、明治時代にアメリカ合衆国から「お雇い外国人」として来日し、日本美術の紹介に寄与したアーネスト・フェノロサが考えたものだ。法令上、「国宝」という言葉が使用されたのが、古社寺保存法が制定された1897年(明治30年)であり、同年はじめて国宝指定が行われた。これをもって、1897年を「国宝」制定の年としており、2017年は国宝制定120年の節目にあたるというわけだ。

1950年に制定された文化財保護法の施行以前はすべて国宝と称されていた国指定の有形文化財(建造物および美術工芸品)を、施行以後は「重要文化財」とし、その中から文部科学大臣が「世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるもの」(文化財保護法第二七条第2項)をあらためて「国宝」と指定した。現在の「国宝」はこの文化財保護法による、いわゆる「新国宝」となる。


静嘉堂文庫美術館が所蔵する7件の国宝のひとつ。《国宝 俵屋宗達筆 源氏物語関屋・澪標図屏風》

「国宝」の中の星、曜変天目

現在、国宝に指定されているのは(2017年9月指定分)、建造物が223件、美術工芸品(絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料、歴史資料)が885件だ。国宝指定の数字は「点数」ではなく、「件数」で数えられる。“海の正倉院” とも称される2017年にユネスコ世界遺産に登録された《『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群》には8万点もの国宝に指定された祭祀遺跡出土品があるが全体で1件と数えられる。

国宝は重要文化財の一部であり、その文化的価値に違いはないとは言え、やはり国の宝たる「国宝」は国民にとってはもちろん、世界の美術愛好家にとっても「宝」であることには違いない。

数ある国宝のなかにあって、もっとも注目を集めているもののひとつに、世界に3点しか現存しないという曜変天目が挙げられるだろう。椀の中に宇宙を内在しているかのような妖しく美しい輝きから、もとより人気の高い国宝ではあるが、お宝を鑑定するテレビ番組で「新発見?」と話題になったことで、図らずも広く知られることとなった。