近年、空き家の増加が社会問題化しています。実家を相続したが住む人がいない、転勤が長くなりマイホームを手放すか迷っているなど、空き家の処分に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。空き家はそのまま放置していると、コストだけがかかりつづける「負動産」となりかねません。
そこで今回は、空き家を売却処分したいときに考えられる方法や流れを解説します。空き家の売却にかかる税金や費用、高く売りたいときのポイント・注意点などもご紹介するのでご参考にしてみてください。
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空き家を売却する5つの方法

空き家を売却する方法としては、次の5つが考えられます。 順番に詳しく見てみましょう。
1.中古住宅または古家付き土地として売る
一般的に木造住宅は、築20年を超えると不動産としての価値がなくなるとされています。しかしよくメンテナンスされており、十分人が住める状態であれば、築20年を過ぎても「中古住宅」としての売却が可能です。
一方、家が劣化し人が住めない状態となっている場合は、「古家付き土地」として売り出す方法もあります。「古家」とは劣化がひどく人が住めない状態の家を指します。建物はあるものの家としては使えないため、「古家付き土地」はあくまでも「土地」に分類されるのが、中古住宅として売り出すときとの違いです。
古家付き土地として売り出すと、建物を解体する必要がないため売却コストを抑えられるのがメリットです。また建物に対する契約不適合責任(契約書通りのものを買主に引き渡す売主が負う責任)を負う必要もありません。
ただし土地に対する契約不適合責任は残り、また買主による解体・撤去が前提となる場合には、価格が安くなる傾向がある点は留意しておきましょう。
2.解体して更地として売る
空き家になっている土地は、建物を解体して更地として売る場合もあります。
土地を探している人にとっては、解体・撤去の手間と費用がかからずすぐに家を建てられるので、購入意欲がわきやすくなります。また「埋没物があるのでは」といった買い手の不安や、売主側の契約不適合責任を問われる不安を軽減できるのもメリットです。
ただし更地にするには費用がかかり、解体費用を回収しようとして市場価格より高くなると、なかなか買い手がつかない恐れがあります。更地にしたからといって、必ず買い手が見つかるとも限りません。
また更地にすると、建物が建っている土地に対する固定資産税の優遇措置(建物が建っていると、固定資産税が6分の1に軽減される措置)を受けられなくなります。そのため更地にしたものの、長期間売れない場合には固定資産税が上がり、今より維持費が高くなることも理解しておきましょう。
3.リフォームして売る
空き家をリフォームしてから売り出すことも一つの方法です。リフォームをすれば物件印象が良くなることで、内覧希望者の増加が期待できます。また、すぐに住める状態で買主に引き渡せるため、買い手が見つかりやすくなります。
ただし、リフォーム費用がかさむと売却益が得られずに損をする可能性もあるので注意が必要です。リフォームしてから売り出したほうがよいかは、事前に不動産会社に相談してみましょう。
4.不動産会社に買い取ってもらう
リノベーションして再販する、あるいは更地にして土地として売却する目的で、不動産会社が空き家を買取してくれる場合もあります。買取の場合は、査定価格に納得したら早ければ1週間程度で現金化できる可能性があることがメリットです。
ただし買取は、リフォームや建物の解体にかかる費用を折り込む必要があるため、仲介による売却よりも価格が安くなりがちです。また買い取っても売却できる見込みがないような、需要が低いエリアにある空き家は買取してもらえない場合もあります。
買取について詳しくは以下の記事をご覧ください。
▼関連記事
不動産買取とは? 買取の種類や仲介との違い、業者の選び方、成功ポイントを解説
5.不動産のマッチングサービスを利用して売る
売主と購入希望者が直接やり取りできる「マッチングサービス」を利用し、空き家を売却する方法もあります。不動産のマッチングサービスを利用すると、不動産会社に買取してもらえない物件でも買い手を見つけられる可能性があります。
代表的な不動産のマッチングサービスは、自治体が運営する空き家バンクです。空き家バンクの利用には掲載料金や仲介手数料がかからないため、売却活動の費用を抑えられます。また、買い手と合意すれば、どのような契約内容でも取引が可能です。
ただし、空き家バンクを利用した売買では、物件の掲載や買主からの問い合わせ対応、契約締結などの手続きをすべて自力で行わなければなりません。専門家が仲介しないため、法令に関する正しい知識を備えトラブルの発生を防ぐ必要があります。
▼関連記事
不動産売却の方法とは?流れや必要書類、発生する税金を解説
空き家を早く売却すべき3つの理由

空き家はできるだけ早く売却したほうがよいとされていますが、それには3つの理由があるとされています。
1.所有している限り維持管理費がかかり続ける
2.近隣に迷惑がかかる恐れがある
3.特定空き家に指定される可能性がある
どのような内容か、順番に解説します。
1. 所有している限り維持管理費がかかり続ける
空き家は所有している限り、さまざまな維持管理費がかかり続けてしまいます。
例えば固定資産税や都市計画税は、毎年1月1日時点で家や土地などの固定資産を所有している人に対して課税されます。その家に住んでいるかどうかは問われないため、たとえ空き家であっても所有者である限り、払い続けなければなりません。
また劣化を防いで家の資産価値を保とうとする場合には、定期的に通風や通水に通う必要もあります。近隣であれば問題ありませんが、遠方だと交通費や外注費がかかってしまいます。さらに外壁や屋根は10年に1度程度の周期で塗装メンテナンスをおこなわなければ、雨漏りが発生することも。外装の塗装は100万円単位での出費となるケースもあり、大きな負担となるでしょう。
2.近隣に迷惑がかかる恐れがある
人が住まなくなり空き家となった家は、害虫や害獣の住みかとなってしまうことがあります。また庭のお手入れがされず雑草や雑木が生い茂ると、不法投棄の現場となる恐れもあるでしょう。不衛生な環境になった結果、悪臭を発生したり景観を損なったりしてしまい、近隣に迷惑をかけてしまいかねません。
さらに家の劣化が進むと、台風で屋根材が飛散したり、外壁や塀が崩壊し近隣に迷惑がかかる可能性も。近隣の家や人に被害が及ぶと、損害賠償責任を問われる可能性もあるでしょう。
3.特定空き家に指定される可能性がある
空き家を放置していると、自治体から「特定空き家」に指定される恐れがあります。国土交通省によると、特定空き家とは以下のような状態にある空き家を指します。
“① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態”
【引用】空き家等対策の推進に関する特別措置法(概要)|国土交通省
特定空き家に指定されると自治体から助言や指導、勧告などを受け、対応しなかった場合は最終的に行政代執行により解体・撤去されることも。その費用は所有者の負担とされてしまうため、特定空き家にしていされる可能性があると考えられるのであれば、早めの売却を検討しましょう。
空き家を売却する流れ
ここからは、空き家を「中古住宅や古家付き土地」「更地」として売却する場合の流れを解説します。
不動産会社の買取による売却の流れは、不動産買取とは? 買取の種類や仲介との違い、業者の選び方、成功ポイントをご確認ください。
まずは一連の流れを図で確認してみましょう。
各ステップの内容を、順番に見てみましょう。
Step1.名義変更されているかを確認する
不動産の売却は、登記簿上の所有者(名義人)しかできないとされています。そのため売却する空き家の名義が自分となっているか、必ずチェックが必要です。
とくに相続した空き家の場合、被相続人(亡くなった方)から買主に直接名義変更することはできません。まずは相続登記をおこない自分の名義に変更し、それから買主に所有権移転登記をする流れになります。
なお空き家の名義人が複数いる場合は、全員が同意しないと売却できない点にも注意が必要です。複数の子が相続した空き家を売却する場合は、まずは相続人全員でよく話し合うことが重要です。
相続について詳しくは、不動産相続の流れと手続きとは?成功ポイントも解説をご確認ください。
Step2.不動産会社の査定を受ける
まずは、空き家がいくらで売れるかを調べるために、不動産会社の査定を受けることから始めます。不動産の査定には「机上査定」と「訪問査定」があり、それぞれ特徴が異なります。
机上査定 | 訪問査定 |
---|
不動産の価格を調べるときに、Webや書類で集めた情報だけを使って、おおよその価格をだすこと。物件の価格の目安を知りたい人に向いています。 期間:数時間~1日程度 | 訪問査定とは、不動産専門家が物件を直接訪れ、家の持ち主と話をして、家や土地に関する情報を集めます。そして、その情報をもとに、家や土地の価値を評価します。 期間:数日~1週間程度 |
不動産の売却時には訪問査定が欠かせないため、いきなり訪問査定を受けても問題はありません。しかし、まずは机上査定を受けて査定価格や不動産会社の対応を比較したうえで、訪問査定を依頼する会社を選ぶのがスムーズです。
査定を受ける不動産会社の選び方
空き家の状態にもよりますが、一般的に空き家の売却は簡単ではありません。中古住宅として売るのか、古家付き土地として売り出すのか、更地にしたほうが良いのかなど、建物の状態によって戦略を考える必要があるためです。
さらに市場ニーズも考慮しなければならないことを考えると、空き家のあるエリアの不動産事情に精通した不動産会社に査定を依頼し、売却方法を相談するのが成功の近道といえます。ただし実際に売却を進めるのはエージェント(担当者)になるため「不動産会社ではなくエージェントを選ぶ」という視点を持つことが大切です。
一度の申し込みで複数の不動産会社に査定を依頼できる一括査定サイトは便利ですが、誰が担当になるかわからないのがデメリットです。そのため担当者選びを重視したい場合は、担当者と直接マッチングできる「エージェント紹介サービス」の利用を検討してみましょう。
例えばTAQSIE(タクシエ)なら、空き家のあるエリアでの実績が豊富なエージェントを推薦してもらえます。エージェントのこれまでの実績を確認したうえで、チャットでコミュニケーションを取りながら、相性のいい依頼先を選べるのでおすすめです。
Step3.媒介契約を締結する
売却する不動産会社を選んだら、媒介契約を結びます。媒介契約には以下の3種類があります。
種類 | 特徴 |
---|
一般媒介契約 | ・複数の不動産会社と同時に媒介契約を結べる ・レインズ※への登録、売主に対する販売活動の報告義務はない |
専任媒介契約 | ・1社の不動産会社とのみ媒介契約を結ぶ ・7営業日以内のレインズへの登録義務、2週間に1回以上の売主への販売活動報告書の提出義務がある ・売主は自分で見つけた買主と直接売買契約を結んでも良い |
専属専任媒介契約 | ・1社の不動産会社とのみ媒介契約を結ぶ ・5営業日以内のレインズへの登録義務、1週間に1回以上の売主への販売活動報告書の提出義務がある ・売主は自分で見つけた買主と直接売買契約を結ぶことはできない |
※レインズ:国土交通省の指定を受けた不動産流通機構が運営するコンピュータネットワークシステム
需要が高く、多くの購入希望者が見込める場合には、複数の不動産会社と契約を結び広く売却活動をおこなうのが一般的です。しかし空き家の売却には時間がかかるケースが多いため、基本的には二人三脚でじっくりと売却に取り組める専任系の媒介契約を選ぶのがおすすめです。
Step4.売却活動をおこなう
媒介契約を締結した不動産会社は、所有している購入希望者のリストをあたる、自社サイト・ポータルサイトに物件情報を掲載するなど売却活動を開始します。
購入希望者が見つかったら、中古住宅として売る場合には内覧が、古家付き土地や更地で売る場合には現地見学がおこなわれます。空き家の中はきれいに掃除し、家の周りも雑草や雑木を処分するなど、購入希望者に好印象を残せるよう不動産会社に協力しましょう。
なお内覧や現地見学は不動産会社が対応するのが一般的ですが、場合によっては立ち会いを求められることもあります。
Step5.売買契約を締結する
空き家の買主が決まったら、売買契約を締結します。不動産会社からあらかじめ売買契約書の内容を確認するよう依頼されるので、よく読み込んだうえで不明点は事前に質問して疑問を解消しておきましょう。空き家の場合は、とくに契約不適合責任の範囲や期限を確認しておくことが大切です。
売買契約締結の当日には、買主から売却価格の5〜10%程度の手付金を受け取り、仲介手数料の半額を支払うのが一般的です。
Step6.決済・引き渡しをおこなう
買主が住宅ローンを組む場合は、必要な手続きが終わるのを待ち、決済・引き渡しをおこないます。売買契約から決済引き渡しまでにかかる期間は2週間〜1カ月程度が一般的です。ただし買主の住宅ローンの審査に時間がかかる場合は長引くこともあります。
決済・引き渡し日には、買主から残金を受け取り、不動産会社に仲介手数料の残りを支払います。司法書士が所有権移転登記の手続きをおこない、売却手続きは終了です。
Step7.確定申告をおこなう
空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却の翌年に確定申告が必要です。譲渡所得については次章で詳しく解説します。
空き家の売却にかかる税金や費用

空き家を売却する際には、さまざまな税金や費用が発生します。どの程度の費用を見込んでおく必要があるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
空き家の売却にかかる税金
まずは空き家の売却に関係する税金を3つご紹介します。
印紙税
印紙税は、契約書や領収書などの契約文書に対してかかる国税です。空き家の売却に際しては、買主と交わす売買契約書に対して課税されます。
印紙税は、売買契約書に記載される売買金額により、納税額が決まります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率* |
---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
*令和6年3月31日までの間に作成される契約書については軽減税率が適用されます。
参考:国税庁
印紙税は、売買契約書に貼付し割印する形で納税します。
登録免許税
登録免許税は、不動産登記する際にかかる国税です。
売却する空き家に住宅ローンが残っている場合には、抵当権が設定されています。抵当権とは、住宅ローンを融資している金融機関が、万一返済が滞ったときに備えて担保とすることです。
抵当権が設定された不動産はいつ抵当権が行使されるかわからないため、買い手を見つけることができません。そのため売却に際しては、住宅ローンを一括返済して抵当権を抹消する必要があります。
抵当権抹消登記にかかる登録免許税は「不動産の個数×1,000円」とされています。例えば土地1筆に空き家が1軒であれば不動産の個数は2個であるため、登記手続きの際に2,000円を納税します。
また空き家が相続不動産の場合で相続手続きが済んでいない場合は、被相続人からの「相続登記」(名義変更)が必要です。相続登記にかかる税額は「固定資産税評価額の0.4%」とされており、例えば固定資産評価額が2,000万円の場合、納税額は8万円になります。
譲渡所得税
空き家を売却して利益である譲渡所得が出た場合には、譲渡所得税(譲渡所得に対してかかる所得税、住民税、復興特別所得税の総称)が発生します。譲渡所得税は以下のように計算します。
①譲渡所得を算出する
売却金額から取得費(物件の取得にかかった費用から建物の減価償却費を差し引いた費用)と売却にかかった費用(仲介手数料など)を差し引いて算出する
②譲渡所得税を算出する
①で算出した譲渡所得に、売却した年の1月1日時点の所有期間に応じた税率を掛け合わせて算出する
譲渡所得税の税率は以下のとおりです。
所得の区分 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
---|
売却した年の1月1日時点での所有期間 | 5年以下 | 5年超 |
税率 | 39.63% (所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%) | 20.315% (所得税15%+住民税5%=合計20.315% +復興特別所得税0.315%) |
※参考:国税庁
なお売却するのが相続した空き家であれば、所有期間は被相続人の所有期間を引き継げます。例えば築25年の一戸建てを相続してから3年以内に売却した場合でも、短期譲渡所得ではなく長期譲渡所得として税額を計算します。
また譲渡所得が出た場合も、一定の要件を満たすことで譲渡所得の控除を受けられる可能性があるため必ずチェックしましょう。詳しくは、利益が出た場合は控除や特例を利用するをご覧ください。
空き家の売却にかかるその他の費用

空き家の売却に際しては、以下のような費用がかかる場合もあります。
仲介手数料
不動産会社に買主を見つけてもらう「仲介」による売却をした場合、不動産会社には成功報酬である仲介手数料を支払います。仲介手数料は税抜の売却金額に対してかかり、宅地建物取引業法で上限額が決まっています。
<仲介手数料の上限額の計算方法(速算式)>
売却価格 | 上限額 |
---|
200万円以下の場合 | 売却金額(税抜)×5%+消費税 |
200万円超400万円以下の場合 | 売却金額(税抜)×4%+2万円+消費税 |
400万円超の場合 | 売却金額(税抜)×3%+6万円+消費税 |
例えば空き家が1,500万円(税抜)で売れた場合、
1,500万円×3%+6万円=51万円
51万円×1.1(消費税10%の場合)=56.1万円
と計算され、56.1万円を不動産会社に支払います。
なお空き家の場合は「低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例」が適用され、800万円以下のケースでは上限額を30万円+消費税とすることが認められています(※)。空き家の売却は手間と時間がかかるわりに低価格での取引となることが多く、不動産会社が取り扱いに対して消極的になるケースが少なくないためです。
特例が適用されるには事前に売主の許可が必要であるので、無断で30万円+消費税が請求されることはありません。不動産会社から相談を受けたときには売却の見込額なども考慮して、検討するようにしてください。
(※)「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(国土交通省)
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不動産売却の仲介手数料と諸費用の相場を解説!無料になるケースは?
解体・処分費
空き家を取り壊し更地にして売却する場合には、解体費や処分費もかかります。30坪の木造住宅で120万〜180万円程度が相場とされていますが、建物の構造や大きさ、また空き家のある地域によって異なるため、あらかじめ業者に確認しましょう。
空き家の解体は、自治体が補助金制度を設けているケースもあるので調べてみることをおすすめします。
空き家の解体費用の相場

空き家の解体費用は、建物の構造や広さ、解体の難易度などによって異なります。建物の構造別の坪単価の相場は以下のとおりです。
構造 | 坪単価相場 |
---|
木造 | 4~6万円 |
鉄骨造 | 6~7万円 |
RC造 | 7~8万円 |
建物の強度が高いほど解体に手間がかかるため、木造、鉄骨造、RC造の順で費用が高くなります。
また、平屋は2階建てよりも解体費用が高くなる傾向にあります。平屋のほうが、基礎部分と屋根部分の面積が大きいからです。
さらに、以下のようなケースに該当すると、解体費用が相場より高くなる可能性があります。
- 建物にアスベストが使われている
- 地中に浄化槽や井戸がある
- 木材やコンクリートなどの廃棄物がある
- 建物内に残置物がある
- 建物前の道路が狭い
正確な費用を把握したい場合は、解体工事業者に現地調査を依頼しましょう。
空き家を高く売りたいときのポイントと注意点

最後に、空き家を高く売りたいときに押さえておくべきポイントと注意点を紹介します。
自己判断でリフォームしたり更地にしたりしない
古い空き家だと「リフォームしてきれいにしたほうが高く売れるのでは」「更地にしないと買い手が見つからないのでは」と考えがちです。
しかしリフォームした、更地にしたからといって、必ず売却できるとは限りません。また売却できたとしても費用を回収できるかどうかは不明です。リフォームや建物の撤去が必要かどうかは市場ニーズによって慎重な判断が必要なため、まずは不動産会社に相談しましょう。
▼関連記事
リフォームしてから家を売るメリット・デメリット!中古物件を高く売るコツを紹介
更地にする場合は1月1日以降におこなう
更地にする場合は、年末ではなく年始におこなうことをおすすめします。なぜなら、土地や建物にかかる固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に支払い義務があるためです。
建物が建っている土地の固定資産税は6分の1に軽減される措置が取られており、年末に建物を撤去し更地にしてしまうと翌年の固定資産税が跳ね上がってしまいます。更地にして売却する場合は、1月1日以降に解体・撤去し、その年の12月31日までに売却するのが理想的です。
残置物を片付けておく
空き家を売却する前に、残置物を処分しておきましょう。残置物があると買い手が見つかりにくくなるからです。
残置物があると、買主が処分する必要があり手間や費用がかかるため、敬遠される可能性があります。また、残置物の家具や家電が汚れていたりすると、物件の印象が損なわれ、買主の購買意欲の低下につながります。
空き家をスムーズに売却するためにも、査定を依頼する前に残置物は処分しておきましょう。
空き家の売却相場を把握しておく
不動産会社に査定を依頼する前に、売却予定の空き家と類似した条件や同じエリアの空き家の売却相場を調べておきましょう。相場を把握しておくことで、提示された査定額が適正かどうかを判断しやすくなります。
過去に取引された不動産の価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」(国土交通省)で確認できます。取引時期が新しい物件を中心に調べておきましょう。
利益が出た場合は控除や特例を利用する
個人が不動産を売却して利益が出た場合には譲渡所得税の課税対象となりますが、納税額を抑えるためのさまざまな特例が用意されています。適用されると譲渡所得税が軽減され、結果的に手残りが多くなるので、対象となる特例がないか必ずチェックしましょう。
空き家の売却で利用できる可能性のある代表的な特例は、以下の4つです。
控除・特例 | 内容 | 主な要件 |
---|
3000万円特別控除の特例 | 空き家となったマイホームの売却に際し譲渡所得から3000万円まで控除される | ・売却した空き家がマイホーム(居住用財産)であったこと ・以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること ・売り手と買い手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと など |
10年超所有軽減税率の特例 | 空き家となった居住用財産の売却で出た譲渡所得の、6,000万円以下の部分に軽減税率が適用される ※3,000万円特別控除の特例と併用可能 | ・売却した年の1月1日時点において、売却した空き家と敷地の所有期間が、10年を超えている居住用財産であったこと ・以前に住んでいた空き家の場合は、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却すること ・売却した年の前年および前々年に、この特例の適用を受けていないこと など |
相続空き家の3000万円特別控除の特例 | 相続した空き家の売却に際し3000万円まで控除される | ・昭和56年5月31日以前に建築されたこと ・譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。 ・相続の開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいなかったこと(一人暮らしであったこと) など |
相続税の取得費加算の特例 | 相続した空き家を売却した際に、納付した相続税の一部を譲渡所得の取得費に加算できる | ・相続や遺贈により空き家を取得した際に、相続税が課税されていること ・相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していること ・相続空き家の3,000万円特別控除の特例の適用を受けていないこと など |
相続した空き家を売却した際、3,000万円の特別控除と相続税の取得費加算の特例は併用できません。双方の要件を満たす場合、いずれか一方の特例を選択する必要があります。どちらの適用を受けたほうが有利であるかは状況によって異なるため、事前に専門家へ相談するとよいでしょう。
取得費を証明できる書類を用意しておく
空き家の取得費を証明できる書類を用意しておきましょう。売却益から取得費と譲渡にかかった費用を差し引いた金額が譲渡所得税の課税対象額となるため、取得費が証明できれば節税につながります。
取得費とは、不動産(売却予定の空き家)を購入した際にかかった費用です。取得費を証明するには、以下のような書類が必要です。
- 購入当時の売買契約書や領収書
- 登録事項証明書(登記簿謄本)
- 固定資産税の納税通知書
取得費を証明できる書類が見つからない場合、不動産の売却価格の5%を概算取得費とみなして譲渡所得を計算するルールが適用されます(※)。
事前に必要書類を探し、本来の取得費を証明できるようにしましょう。
(※)「取得費が分からないとき」(国税庁)
空き家の売却が得意なエージェントを選ぶ
「査定を受ける不動産会社の選び方」でも述べたように、空き家の売却はエリアの事情などを考慮したうえでどの方法で売却するか戦略を考える必要があり、簡単なことではありません。そのためこれまでどのような売却実績があるか、エージェントの経歴を確認して相談するのがおすすめです。
とはいうものの一般的な一括査定サイトでは、不動産会社は選べてもエージェントは選べずどんな人が担当になるか分かりません。そんなときには、エージェント紹介サービスを活用すると、効率よく担当者とマッチングしてもらえるので検討してみましょう。
例えば三菱地所グループが運営しているタクシエなら、空き家のあるエリアでの戸建の売却実績が多い順に、仲介担当者がマッチングされます。担当者のプロフィールや取引実績、買い手情報などを事前に確認したうえで、マッチング度が高いエージェントのご紹介が可能です。担当者として登録されているのは、大手不動産会社20社以上から集まった約350名の売却のプロフェッショナルです。是非、このサービスを検討してみてください。
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空き家の売却はTAQSIE(タクシエ)に相談!

空き家は所有し続けている限りさまざまなコストがかかります。今後住む予定がないのであれば、早めに手放すことを検討するのがおすすめです。
とはいえ空き家の売却は、物件の状態によってどのような方法で売却するかを考える必要があり、簡単ではありません。そのため売却に成功したい場合は、空き家売却のノウハウと経験が豊富なエージェントに依頼するのが近道です。
三菱地所グループが運営しているタクシエでは、空き家のあるエリアを得意とする売却のプロのご紹介が可能です。チャットやWeb面談でコミュニケーションを取りながら担当者を選べるので、ぜひ利用をご検討ください。
三菱地所リアルエステートサービス 新事業推進部
「不動産売却マスター」編集長
【保有資格】宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、衛生管理者、ファイナンシャルプランナー3級
2008年入社。人事部門で福利厚生制度などの企画運営、住宅賃貸部門でタワーマンション営業所長、高級賃貸マンション企画などを経て、2018年より経営企画部で主に事業開発を担当し、複数の新規事業立上げに従事。2020年度三菱マーケティング研究会ビジネスプランコンテスト最優秀賞受賞。「TAQSIE」では初期構想から推進役を担い、現在もプロジェクト全般に関わっている。
「不動産の売却に特化した情報を発信する『不動産売却マスター』編集部です。不動産の売却や買取をスムーズに進めるポイントや、税金、費用などをわかりやすく解説します」