近年、高齢化社会に伴い、親の家の処分方法について悩む方が増えているようです。特に、親が健在のうちに家を売却する「生前売却」という選択肢が注目を集めています。
生前売却には相続トラブルの防止や税負担の軽減など、様々なメリットがあるとされています。一方で、引越しの負担や新しい環境への適応など、考慮すべき課題もあるようです。
本記事では、親の家の生前売却について、そのメリットやデメリット、具体的な進め方、売却時の注意点などを詳しく解説していきます。税制上の特例や具体的な費用についても触れながら、生前売却が適している場合の判断材料を提供できればと考えています。
- この記事を読むと分かること
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- 生前売却を行うメリット/デメリット
- 生前売却を実際に行う際の具体的な進め方
- お得に家を売るための方法
親が生きてるうちに家を売るケース

親が生きているうちに家を売却する選択肢を検討されている方もいらっしゃるかもしれません。
近年、相続前に家を売却する「生前売却」が注目を集めています。
生前売却がおすすめなケース
- 相続におけるトラブルが見込まれる場合
- 小規模宅地等の特例が使えず相続税が抑えられない場合
- 3,000万円の特別控除を受けたい場合
ここでは、生前売却が特に有効な3つのケースについて詳しく解説します。
相続におけるトラブルが見込まれる場合
相続トラブルは、複雑な家族関係がある場合に特に発生しやすい傾向があります。 例えば、兄弟姉妹の関係が疎遠になっているケースや、再婚により継子がいるケースなどが挙げられます。
このような状況では、相続発生後に遺産分割を巡り深刻な対立が生じる可能性が高くなるでしょう。
実際に、ある相談事例では「母が他界した後、実家の取り扱いを巡って兄弟間で意見が分かれ、5年以上も話し合いが続いた」というケースなどもあったようです。
このような事態を防ぐためにも、親が健在のうちに不動産を売却し、その資金の使い道を親自身が決めておくことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
小規模宅地等の特例が使えず相続税が抑えられない場合
小規模宅地等の特例は、相続税を大幅に軽減できる制度ですが適用できないケースも少なくありません。例えば、被相続人が介護施設に入所していた場合や、二世帯住宅で親子が別々に生活していた場合などが挙げられます。
このような場合、相続後に不動産を売却すると、売却時の税金負担が予想以上に大きくなる可能性がありますが、生前売却を行い、3,000万円の特別控除を活用することで、税負担を大幅に抑えることができるでしょう。
参考:生前贈与で取得した自宅でも居住用不動産の3,000万円控除を利用可能!
生前売却を行う2つのメリット

生前売却には、相続に関する様々な負担を軽減できる大きなメリットがあります。
実際に生前売却を選択された方々の声を参考に、具体的なメリットを2つご紹介します。これらのメリットを理解することで、生前売却がご自身にとって適切な選択肢かどうかの判断材料になるでしょう。
相続に関する負担を軽減できる
先述したように、生前売却の最大のメリットは相続に関する様々な負担を大幅に軽減できることでしょう。
不動産を相続する場合、相続人全員の合意が必要となり、その手続きだけで数ヶ月、場合によっては数年かかることもあるようです。
また、相続税の申告・納付、固定資産税の支払いなど、様々な手続きと費用が発生します。生前売却であればこれらの煩雑な手続きを大幅に簡略化できます。
特に相続税は現金で納付する必要があるため、不動産を相続した場合に生じる可能性がある納税資金の調達に頭を悩ませる必要もなくなるでしょう。
親が生きているので遺言書がいらない
生前売却では、親が意思決定者として直接不動産取引に関わることができます。そのため、不動産の処分に関する遺言書を作成する必要がなく、相続人全員の同意を得る必要もありません。
遺言書がないことによる相続争いのリスクも回避できます。実際の手続きにおいても、親が契約者となることで相続時に必要となる戸籍謄本や相続関係説明図などの複雑な書類の準備が不要になります。
これにより、手続きにかかる時間と労力を大幅に削減できるでしょう。
相続トラブルの防止
相続時のトラブルの多くは、不動産に関する問題から始まると考えられています。特に深刻なケースとして、相続人間での不動産の取り扱いを巡る意見の対立が挙げられるでしょう。
ある相続人は売却を望み、別の相続人は保持を希望するといった状況や、固定資産税などの維持費用の負担配分に関する争いなどが典型的な例と言えます。
このような問題に対して、生前売却は効果的な解決策になり得ると考えられています。不動産を現金化することで、将来的な相続人間の対立を未然に防ぐ可能性があるためです。さらに、売却代金の使途についても所有者である親が生前に決定できるため、相続時の金銭トラブルのリスクも軽減できる可能性があります。
ただし、生前売却の判断には、家族間での十分な話し合いと専門家への相談を行うのが良いでしょう。
売却資金を他の用途に使える
生前売却のもう一つの大きなメリットは、売却資金を様々な用途に活用できることです。具体的な活用例をいくつかご紹介します。
【売却資金の活用例】
このように、売却資金を活用することで、より充実した老後生活を送ることができます。また、計画的な資産移転により、相続税の負担軽減も図ることができます。
生前売却の3つのデメリット

生前売却には多くのメリットがある一方で、考慮すべきデメリットも存在します。
ここでは、実際に生前売却を経験された方々の声を基に、主な3つのデメリットとそれぞれの対処方法について詳しく解説していきます。
引越しの準備をしなければならない
高齢の親の引越し準備には、通常以上の配慮と時間が必要です。
特に長年住み慣れた家からの引越しは、物理的な作業以上に精神的な負担が大きくなります。
【引越し準備の具体的なスケジュール例】
期間の目安 |
対応する内容 |
準備開始 (3ヶ月前) |
・引越し先の決定
・整理する荷物の仕分け開始
・思い出の品の整理 |
2ヶ月前 |
・不要品の処分開始
・引越し業者の選定
・新居の間取り確認 |
1ヶ月前 |
・必要な手続きの開始
・生活必需品の選別
・新居の内装確認 |
2週間前 |
・細かな荷物の整理
・各種住所変更手続き
・新居の受け入れ体制確認 |
このような準備を計画的に進めることで、高齢の親の負担を最小限に抑えることができるでしょう。
特に思い出の品の整理には十分な時間を確保し、家族と一緒に思い出を振り返りながら進めると良いでしょう。
引越し・売却の費用がかかる
生前売却に伴う費用は、売却費用と引越し費用の大きく2つに分けられます。具体的な費用の内訳と相場を以下で見ていきましょう。
【生前売却に関わる費用の内訳】
1. 売却関連費用
- 仲介手数料:約105万円(物件価格3,000万円の場合)
- 登記費用:約5万円
- 印紙代:約1万円
- 測量費用:約15万円(必要な場合)
2. 引越し関連費用
- 引越し業者費用:20~30万円
- 不用品処分費:10~20万円
- 新居の敷金礼金:家賃の3~4ヶ月分
- 新居の内装工事:必要に応じて50~100万円
これらの費用は、売却価格や地域によって変動しますが、総額で200~300万円程度を見込んでおく必要があるでしょう。
新しい環境への適応が大変
高齢者にとって、新しい環境への適応は大きな課題となるでしょう。特に、長年住み慣れた地域を離れると、生活習慣の変化や人間関係の再構築が必要になるためです。
【新環境適応のためのサポートポイント】
1. 医療・介護体制の整備
- かかりつけ医の転院手続き
- 新居近くの病院の事前確認
- 介護サービスの引継ぎ
2. 生活環境の整備
- 買い物環境の確認
- 公共交通機関の利用方法確認
- 地域コミュニティの把握
3. 心理的サポート
- 定期的な家族の訪問
- 趣味活動の継続支援
- 近隣住民との交流機会の創出
一般的に、新しい環境に適応するには3~6か月程度かかると言われており、この期間は定期的な訪問や電話連絡を通じて、家族でサポートしていくことが重要でしょう。
生前売却の流れ

生前売却を成功させるには、適切な手順で進めることが重要です。
ここでは、売却を検討されている方に向けて、実際の売却プロセスを詳しく解説します。
不動産会社に査定を依頼する
不動産売却の第一歩は、信頼できる不動産会社・担当者に査定を依頼することです。
適切な売却価格を把握することで、今後の計画を具体的に立てることができます。
【不動産業者選びのチェックポイント】
1. 取引実績
- 地域での売買実績件数
- 同様の物件の取扱実績
2. 対応力
- スピーディーな連絡対応
- 丁寧な説明
- 生前売却対応の実績
3. 信頼性
- 宅建業者免許の更新回数
- 業界団体への加盟
- 口コミ評価
同じ物件であっても、立地条件や建物の状態に対する評価は、不動産業者によって異なる視点や基準が用いられる可能性があります。そのため、より正確な市場価値を把握するためには、最低でも3社以上の不動産業者に査定を依頼することがおすすめです。
また、査定額の差が生じる要因としては、各不動産会社が持つ売買実績データや、地域の市場動向に対する分析力の違いなども影響していると考えられます。特に、築年数が古い物件や、立地条件が特殊な物件では、査定額の差が大きくなる傾向にあるかもしれません。
このように、複数社の査定を比較検討することで、より適切な売却価格の設定が可能になると言えるでしょう。
金額に納得したら売買契約を結ぶ
売却価格が決まったら、いよいよ売買契約の締結です。
契約時には、以下の重要事項を特に注意深く確認する必要があります。
契約時の重要確認事項 |
注意点 |
売買価格と決済条件 |
・売買代金の総額
・手付金の金額と支払時期
・残金決済の時期 |
引渡し条件 |
・物件の引渡し時期
・設備・備品の取り扱い
・原状回復の範囲 |
諸費用の負担 |
・仲介手数料の金額
・固定資産税の精算方法
・登記費用の負担区分 |
契約書の内容は、将来的なトラブルを防ぐために、不明な点があれば必ず質問し、十分に理解してから署名しましょう。
決済・登記の手続き
最終段階となる決済と登記の手続きは、通常、以下のような流れで進みます。
決済・登記の手続きの流れ
- 必要書類の準備開始
- 売主側の必要書類提出
- 買主側の融資手続き完了
- 決済・物件引渡し
- 法務許にて所有権移転登記完了
特に必要となる書類は以下の通りです。
決済・登記の手続きに必要な書類
- 印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 権利証(原本)
- 実印
- 住民票
- 固定資産税納税証明書
これらの書類は事前に準備しておくと、手続きがスムーズになるでしょう。
決済から登記完了までは通常1~2週間程度ですが、物件や地域によって多少前後する可能性があります。
家を売るときの高額売却・税負担軽減の2つのポイント

不動産を少しでも高く売却したり、税金負担を軽減するためにはいくつかの重要なポイントがあります。
ここでは、実際の売却事例から得られた効果的な2つのポイントをご紹介します。
相見積もりを取る
適正な売却価格を把握するには、複数の不動産業者から見積もりを取ることが重要です。
実際の事例では、業者間で査定価格に差が生じることも珍しくありません。
そのため、相見積もり取得は3~5社を目途に見積もりを取っておくのが理想的です。
見積もり比較のポイント
- 査定(売却予定)価格
- 売却期間の見込み
- 売却戦略
- 過去の実績
特に重要なのは、単に価格だけでなく、価格設定の根拠を各社に詳しく説明してもらうことです。
近隣の取引事例や市場動向など、具体的なデータに基づいた説明ができる業者を選ぶことで、より確実な売却が見込めます。
特例・控除を活用する
不動産売却時には、さまざまな税制上の特例を活用することで、実質的な手取り額を増やすことができます。ここでは、主要な特例について解説します。
3,000万円の特別控除
この特例は、居住用財産を売却した際に、最大3,000万円まで課税対象額から控除できる制度です。
3,000万円の特別控除を受けるためには「現に自分が住んでいる家屋」であったり「他の特例の適用を受けていないこと」など様々な条件をクリアしていないと特例を受けることができないので、予め特殊控除を受けれるかどうかを確認しておく必要があるでしょう。
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
軽減税率特例
所有期間が10年を超える居住用財産を売却する場合、通常の税率20.315%から14.21%に軽減される特例があります。
この特例を活用することができれば更に大幅な節税を行うことができるでしょう。
参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
マイホーム買い替えの特例
住み替えを前提とした売却の場合、譲渡所得の課税を繰り延べることができます。
この特例を活用すると、売却時の税負担を大幅に軽減し、新居購入資金として活用できます。
【適用条件】
- 売却する住宅に2年以上居住していること
- 売却した年の前後3年以内に新たな住宅を取得すること
- 新住宅の価額が売却した住宅の価額以上であること
参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
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