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利益を生む不動産、負債となる不動産。
その見極めのポイントとは?

2019.06.25

元号が平成から令和に変わったが、前回の改元の頃、1989年といえば、まさにバブルの絶頂期といっていい時代だった。当時は土地神話、つまり「不動産価格は下がらない」ということが常識として通用していた。その常識は、バブル崩壊と同時に消え去ったことは周知の事実である。しかし、不動産が「資産」であることに変わりはない。問題はそれが「利益を生む資産」なのか、それとも、損を出し続ける「負債」なのかということになる。

利益を生まない不動産は“負債”。では不動産が生む利益とは?

 かつて土地神話が通用していた時代は、不動産は間違いなく「利益を生む資産」だった。このときに考えられていた利益の大部分は、「キャピタルゲイン」だったと考えられる。不動産価格が上昇していくという環境において、例えば5億円で買った物件を7億円で売却し、その差額を利益とすることが可能だったのだ。しかし、不動産価格が下がることもあるということはいまや、常識になっている。そのような環境では、不動産購入、転売時の経費、税金などを考慮してもキャピタルゲインが得られるとは限らない。
 一方で、平成の時代、バブル崩壊後の不動産運用において、比重が高くなってきたのが「インカムゲイン」だ。簡単に言えば、家賃収入による利益のことだが、キャピタルゲインと違って、ある程度、定期的な収入を生むことが期待される。ただし、こちらでも空室リスクが存在し、安定的なインカムゲインが得られるかどうか、判断が必要だ。また、家賃収入に対して、固定資産税や修繕費用、管理運営費などの経費、不動産取得時のローン金利なども考慮して、それでも、利益が出ているかを考えなければならない。購入時には、ほぼ満室で運用されていた賃貸物件も経年劣化や近隣に競合する物件が増えるなど、様々な要因で空室が増え、賃料収入よりも支出が増えてしまうケースも有り得る。
 キャピタルゲイン、インカムゲインを含め、利益が生む資産であればいいが、損失が出ている不動産は「負債」だと言える。いま、不動産を所有している場合は、その物件が利益を生んでいるのか、それとも損失を出す負債なのかを見直す必要がある。また、これから不動産を取得し、資産として運用を考えているならば、どの程度の利益を期待するのかを考え、例えば賃貸物件ならば、賃料はいくら以上、空室率は何割以下でなければ利益が出ないのか、いわゆる「損益分岐点」を把握しておかなければならない。

“負債”となっている不動産を「組み換え」て、利益を生む資産に変える。

 では、いま、負債となってしまっている不動産について、どのように対応すればいいのだろうか。例えば老朽化している、周辺の賃貸物件と比較して設備が古いといった場合には、改修、設備の更新、さらには建て替えや賃料の変更といった抜本的な改革も含め、対策を考えなければならない。もちろん、そこで支出する費用も将来的な収入のシミュレーションを行って、損益分岐点を意識した計画立案が必要だ。それでも改善が見込みにくい場合には、売却も検討しなければならないケースもありえる。ここでも、購入時の支出、これまでの支出、損益を踏まえて、売却価格を検討しなければならない。周辺の地価の影響、相場もあり、思うような価格で売却できないこともあるだろう。
 ここで検討したいのが「資産の組み換え」だ。いまある資産を売却し、別の資産を購入することであり、いまのままでは利益が期待しにくい不動産を売却して、別の不動産を購入する、あるいは株式などの他の資産に切り替えることを指す。不動産で組み替えた場合、期待通りのキャピタルゲインが得られなくても、その資金で別の収益性が高い不動産を購入することで、インカムゲインによってその損失を埋められる可能性が出てくる。立地条件が悪い不動産の収益性改善は至難の業だ。ならば、売却して、立地が良い賃貸物件を購入するほうが、長期的には利益を生むことが期待できる。

 

いま、利益を生んでいるから、将来も大丈夫とは限らない

 不動産が利益を生むかどうかという判断には、難しい側面がある。金利の変動や周辺地価の動向、近隣の競合となる物件の状況で大きく変わる。他にも、ある程度の規模の土地を売却しようとしてもなかなか買い手が見つからなかったところが、土地を分割したところ、すぐに買い手が見つかるということもあり得る。立地によって土地の需要は異なるので、どのようにすれば利益を生む資産になるのかは、まさにケースバイケースとなる。当然だが、将来性の予測は難しい。現在、利益を生んでいる不動産であっても、いつ負債に姿を変えてしまうかわからない。一方で、いま損失を出し負債となっている不動産は、何もしなければ利益を生むことは考えにくい。道路建設や鉄道の路線の変更(急行停車駅の変更、ダイヤ変更なども含む)で、急激に不動産価値が上昇することはあり得るが、珍しいケースだと言えるだろう。
不動産が収益を生むことができるかどうかはなかなか、素人には判断しづらい。現在、保有不動産について悩みを抱えているのであれば、信頼できるプロフェッショナルの力を借りて、保有不動産の評価、組み替える資産の評価をすることも検討してはどうか。