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公示地価の推移から見る人気エリアの現状

2017.10.12

国土交通省が毎年発表している「公示地価」。2017年版全国の住宅地“地価下落率”において、 日本の社会変化を色濃く映し出す、ある傾向をはっきり感じ取ることができた。

(写真=HelloRF Zcool/Shutterstock.com)

都心近郊ベッドタウンの公示地価を見る

ここで「公示地価」についておさらいしておこう。これは、国土交通省が全国に定めた「標準地(平成29年は2万6,000地点)」を対象として、毎年1月1日時点における地価を公示したものである。
実際に売却や購入をする場合の地価と必ずしも同じわけではないが、毎年の推移を見ることで経済状況、社会情勢、土地の需給バランスなどの変化が分かる。
たとえば、東京駅から電車で1時間程度の距離にあるようなベッドタウンは、高度経済成長とともに人口も右肩上がりで増加を続け、これまで順調に成長してきているように見える。
しかし、地価下落率ランキングの10位までをみると、都心からそれほど離れていないこのようなエリアが複数ランクインしているのだ。
この共通点は、都心への通勤が可能な、首都圏近郊の地区であることだ。実に4市7ヵ所がランクインしている。いずれも東京駅からは電車で1時間強の距離に位置しており、「ベッドタウン」といって差し支えない。
長年、人口が増え続けてきたはずのベッドタウンで地価が下落した事実からは、日本が少子高齢化、人口減少の時代に突入していることがうかがえる。

高度成長期に人口を増やしたベッドタウンの変化

具体的に地価下落の要因を探ってみると、考えられるのは交通アクセスの不便さだろう。のどかで環境のよいところであっても、駅から離れているなどの事情があれば、都心への通勤には少々時間がかかる。
また住民の高齢化もあるだろう。高度経済成長期にこれらのベッドタウンに居を構えた層も年月がたつにつれ高齢になり、不便に感じるようになったはずだ。さらに職住近接が叫ばれる昨今は、若い世代は長い時間をかけて通勤しなくなりつつある。
こうして都心近郊のベッドタウンの人気が失われ、地価も下がっているということだろう。
この事実から浮かび上がるのは、少子高齢化による過疎化が進んでいるのは、何も地方だけではないということだ。今回、ランキングに入らなかった都市でも、数十年前に急激に人口の増えた「ベッドタウン」では、高齢化と過疎化が進む可能性は十分ある。
ひと昔前までは、30~40代になったら環境のよい郊外に庭付き一戸建てを建てるというのが、サラリーマンのモデルケースだった。しかし、こうしたライフプランも時代とともに変化の兆しがうかがえる。

公示地価の推移を見極める

公示地価の推移は、長期的にみると日本の人口動向や流入出の状況を映し出している。
投資や居住のために不動産を購入するなら、住みたい、買いたい物件のスペックや周辺環境ばかりに目をとらわれず、公示地価の推移は押さえておきたい。欲しい物件があるエリアが現在置かれた状況を把握し、今後の行く末についても推測できるだろう。具体的には、大都市圏近郊では、交通の便や自然の豊かさ以上に、高齢化度合にも注意したい。
ただし、ベッドタウンと呼ばれた地域すべての地価が下落するわけでもなければ、郊外の地域の魅力がすべて失われつつあるわけではない。人口が減り入居者の確保が難しくなりつつある中でも、地価や賃料、物件価格が上がっているエリアはある。魅力ある物件を見つけるうえでも、公示地価のようなマクロのデータにも目を配りたい。