古い家の売却を検討される理由は様々です。住み替えのため、相続した空き家の処分、長年住んだ実家の売却など、様々な事情を抱えていることでしょう。
しかし、築年数が経過した家は、老朽化による様々な問題を抱えており、建物の価値が大きく下落しているため、通常の物件と比べて売却が難しいケースが多くなっています。
この記事では、古い家を売却する際の具体的な方法や注意点、税金を抑えるための控除制度について詳しく解説します。
- この記事を読むと分かること
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- 古い家を売却するメリット・デメリット
- 古い家の5つの売却方法とそれぞれの特徴
- 売却時のチェックポイントと具体的な確認方法
- 税金負担を減らせる4つの控除・特例制度
古い家は売却した方が良い?

一般的に戸建てに多い木造住宅の寿命は30年程度と言われていますが、日頃の手入れや定期的なメンテナンスを行うことで80年以上住み続けることも可能です。
しかし、築年数が経過するにつれて建物の資産価値は大きく下落し、修繕費用も年々増加していく傾向にあります。
特に空き家として放置している場合、防犯上の問題や近隣への迷惑、固定資産税の負担など、様々なリスクを抱えることになります。
以下では、古い家を所有し続けることのデメリットについて詳しく解説していきます。
建物の資産価値が下落する
建物の資産価値は、築年数の経過とともに下落していきますが、その下落率は建物の種類によって異なります。木造戸建て住宅の場合、築15年ほどまでは下落率が大きく、その後はゆるやかになり、築20年以降はほぼ横ばいとなります。
一方、マンションは木造戸建て住宅と比較して価値の減少ペースがゆるやかで、築10年でも70~80%程度の価値を維持しており、築25年が経過する頃に価値がおよそ半分になる傾向があります。
また、1981年以前の旧耐震基準で建てられた物件は、耐震性への不安や修繕費用の増加、居住性の低下などの問題があり、住宅ローンを受けることも難しいため、需要が低く売却価格が安くなる傾向にあります。
ただし、耐震改修を行い「耐震基準適合証明書」を取得したり、住宅性能評価書を取得して品質情報を客観的に示したりすることで、資産価値の維持が可能です。
定期的な管理・修繕が必要
古い家に住み続ける場合、屋根の補修や外壁の塗り替え、設備の交換など、老朽化に伴う定期的なメンテナンスは避けられません。
アットホーム株式会社の調査によると、築30年以上の戸建て住宅では平均修繕費が532万1,000円(築年数36.8年)となっており、年間で換算すると約17.7万円の費用が必要となります。
また、空き家として所有している場合でも、定期的な管理は欠かせません。空き家対策特別措置法に基づき、適切な管理がなされていない場合は特定空家等に認定され、固定資産税の住宅用地特例(最大6分の1)が適用されなくなる可能性があります。
さらに、建物や庭の管理を怠ると、近隣への迷惑となるだけでなく、不法侵入や放火など犯罪行為に利用されるリスクも高まるため、空き家の場合はできる限り早く売却すると良いでしょう。
古い家を売る5つの方法

築年数が経過した家は、建物の老朽化や耐震性能の問題から、通常の物件と比べて売却が難しく、価格も低くなりがちです。
しかし、物件の状態や立地条件に応じて、以下のような売却方法を選択することで、より良い条件での売却が可能となります
売却方法 |
特徴 |
仲介 |
手間や費用が少なく、管理状態の良い物件に適する |
瑕疵担保保険付加 |
買主の不安を軽減し、売却しやすくなる |
リフォーム後に売却 |
売却価格の上昇が期待できる |
更地にして売却 |
土地の価値を活かした売却が可能 |
買取 |
早期売却を実現できる |
仲介でそのまま売却する
定期的にメンテナンスを行い、適切に管理・修繕が行われている物件であれば、市場価格での売却も期待できる仲介を選択するのがもっとも良いでしょう。
仮に内装や設備にやや欠損や汚れ等があったとしても、そのままの状態で売り出すことで、自分好みにリフォームしたいという買主にもアピールできます。
また、建物や設備の老朽化が進行している場合には、土地のみの価格で古家付き土地として売り出すことで、更地化や建て替えを検討している購入希望者にもアプローチができます。
売主側には解体費用を負担しなくて良い、固定資産税を安く抑えられるというメリットがあり、一方、買主側にも家が残っていることで住宅ローンが組みやすい、解体に必要な費用の値引き交渉ができるという利点があります。
瑕疵担保保険を付加して売る
中古住宅の購入を検討する買主の多くは、基本的に長く住み続けることを目的としているため、建物の老朽化による住宅の基本性能に不安を抱きます。
そこで買主が安心して購入できるよう、瑕疵担保保険を付けてから売却するとよいでしょう。
瑕疵担保保険とは「構造耐力上主要な部分(基礎、基礎ぐい、壁、柱など)」や「雨水の浸入を防止する部分(屋根、外壁の開口部に設ける戸・枠、サッシなど)」に不具合が見つかった際に、その補修費用を保証してもらえる保険です。
保険料は物件の検査料を含めて6~15万円程度が相場となっており、保証期間は1年間、2年間、5年間から選択できるケースが一般的です。
中古住宅の場合は任意加入となっており、瑕疵担保保険に加入する際には専門機関による建物検査が必要です。この検査を受けることで、買主に対して物件の状態に問題がないことを客観的に示すことができ、売却活動を進めやすくなるというメリットがあります。
リフォームしてから売却する
古い家を購入される方には、購入後に自分でリフォームをしたいという方が多く、基本的には現状のまま売却されることが多いです。
しかし、なかなかそのままの状態では売れにくいという場合には、家の一部をリフォームすると買主が見つかりやすくなるケースもあります。
特に、水回りの設備の更新やリビングの床・壁紙の張り替えは、家の印象が大きく変わり、特に築古物件では効果が高いとされています。
ただし、過度なリフォームは費用の回収が難しくなる可能性があるため、リフォーム箇所は一部に留めておきましょう。
また、一般的な好みに合わせたリフォームが、かえって買主の選択肢を狭めてしまうケースもあるため、事前に不動産会社と相談することをおすすめします。
家を解体し更地にしてから売る
外壁が破損している、倒壊の危険性があるなど建物の老朽化が著しい場合や、立地条件が良い場合は、解体して更地にすることで売却しやすくなるケースもあります。
特に、再建築可能な物件で周辺の土地需要が高い地域では、更地化することで売却価格が上がる可能性があります。
ただし、解体費用の負担が必要となり、住宅用地特例による固定資産税の軽減措置も受けられなくなります。
また、再建築不可物件の場合は、解体してしまうと売却がより困難になってしまうため、事前に不動産会社や専門家に相談するようにしましょう。
不動産会社に買取を依頼する
不動産会社による買取は、建物の状態に関係なく売却できる方法です。
仲介での売却とは異なり、不動産会社が直接物件を購入するため、建物の解体や修繕が不要です。売却までの期間が短いのが特徴で、場合によっては最短1週間で現金化できるケースもあります。
また、仲介手数料が発生しないため、売主の初期費用を抑えることができます。
ただし、売却価格は仲介での売却と比べて低くなる傾向にあり、市場価格の7〜8割程度になることが一般的です。不動産会社は修繕やリフォームをおこない、物件を再販することで利益を得ることを目的としているため、必要経費や利益を見込んだ金額が差し引かれます。
そのため、相続した空き家の処分や住宅ローンの滞納、転勤による急な引っ越しなど、早期での売却を優先したい場合に適した方法といえます。
古い家を売る時のチェックポイント

古い家を売却する際は、建物の状態や法的制限など、さまざまな観点からの確認が必要です。以下では、特に重要な確認ポイントについて紹介します。
家財は撤去しておく
内覧時の印象改善や売却後のトラブル防止を図るためにも、売却前には家財を撤去しておきましょう。
また、不動産会社に買取を依頼する場合や解体工事を行う際には、不要な家財があると断られてしまったり、費用が高額になってしまう可能性があります。
家具や電化製品、生活用品などの残置物の処分を専門業者に依頼する場合、物品の量や種類、地域によって異なりますが、一戸あたり15万〜25万円程度費用がかかると言われています。
家財の撤去を依頼する業者を選ぶ際は、一般廃棄物収集運搬業などの適切な許可を持つ業者であることを必ず確認しましょう。無許可で営業している業者も多く、依頼した場合、違法投棄や高額請求などのトラブルが発生するリスクがあります。
再建築不可物件か確認する
再建築不可物件とは、現在建てられている建物を解体して更地にしても、新たに建物を建てられない土地のことを指します。
この状態となる主な要因は、建築基準法で定められている接道義務を満たしていないことです。具体的には、幅員4m以上の道路に2m以上接道していない場合に該当します。
ただし、周囲の土地を購入して接道できる部分を確保したり、建築基準法43条の但し書きによる救済措置を受けたりすることで、条件を変えれば建て替えが認められるケースもあります。
しかし、これらの対応には費用がかかり、必ずしも許可が下りるわけではありません。
さらに、2025年4月の法改正により、再建築不可物件の市場価値がさらに低下する可能性があることから、取引が成立しにくくなることが予想されます。
そのため、再建築不可物件であれば売却が難しく、売却方法が限られてくるため、事前に役所や不動産会社などに相談して確認しておくとよいでしょう。
新耐震基準に適合しているか確認する
築年数が古い家の場合、現在の耐震基準に適合していない物件も多いでしょう。
1981年6月の建築基準法改正で新耐震基準が設けられ、「震度5程度の中規模地震では軽微な損傷にとどめ、震度6強~7程度の大規模地震でも倒壊を防ぐ」ことを厳格な基準として定められました。
さらに、2000年には木造住宅の耐震基準が強化され、接合部への金物使用や偏りのない耐力壁の配置、地盤調査の事実上の義務化などが定められています。
特に、1981年以前に建てられた家の場合、現在の耐震基準を満たしていない可能性が非常に高く、耐震性に問題がある場合、災害時の倒壊のリスクや修繕費用が増加することから買い手が見つかりにくい傾向にあります。
建物の耐震基準は、建築確認申請書や設計図書で確認できます。書類が見つからない場合は、建築士による耐震診断を実施することをおすすめします。
耐震診断の費用は建物の規模や地域によって異なるため、専門家に確認するとよいでしょう。
耐久性も調査しておく
雨漏りや水漏れ、外壁のひび割れなどの劣化も売却価格に大きく影響します。また、これらの不具合が売却後に発覚した場合、契約不適合責任により補修や損害賠償を求められる可能性があります。
このようなリスクを避けるためにも、ホームインスペクション(建物状況調査)の実施をおすすめします。調査を実施することで、建物の状態を客観的に把握でき、適切な売却価格の設定や修繕計画の立案に役立ちます。
自治体の補助金制度を活用する
空き家の解体や耐震改修工事の費用負担を軽減するため、多くの自治体では補助金制度を設けています。
東京都、大阪府、横浜市をはじめとする各自治体では、空き家の解体支援や耐震改修に関する補助金制度が整備されており、工事費用の一部を補助してもらえます。
これらの補助金を活用するためには、建物の築年数や構造、所有者の要件など、自治体ごとに定められた条件を満たす必要があります。申請には建物の登記簿謄本や工事見積書、現況写真などの書類を提出する必要があり、工事着工前の申請が原則となります。
また、補助金は年度ごとの予算に限りがあるため、できるだけ早めに各自治体の担当窓口に相談することをおすすめします。申請から交付までは一定期間かかりますので、工事の計画段階から余裕をもって準備を進めることが重要です。
補助金制度の詳細な条件や申請方法は自治体によって異なりますので、お住まいの地域の担当窓口で確認してください。
古い家を売る時に税金負担を減らせる控除・制度

家を売却した際には、主に譲渡所得税・住民税が課税されます。課税対象となる譲渡所得は「売却価格 – 取得費 – 譲渡費用」で計算され、所有期間が5年を超える場合は、長期譲渡所得として20.315%の税率が適用されます。
以下では、税負担を軽減できる主な制度を解説します。
マイホームを買い換えた時の譲渡損失損益通算および繰越控除の特例
家の売却により譲渡損失(赤字)が発生した場合には、譲渡所得税は課されず、売却部分の確定申告も不要です。
損失については他の不動産の売却益と通算することは可能ですが、給与所得や不動産所得などの他の所得の黒字との損益通算はできません。
しかし、マイホームを買い換える際に、旧居の売却で譲渡損失が発生した場合には、一定の要件を満たすことで赤字分を3年間にわたって他の所得と損益通算することができます。
主な要件は以下の通りです。
- 令和7年12月31日までに譲渡すること
- 売却損失が発生していること
- 居住用として使用していた、または以前に居住用として使用していたこと(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する場合)
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
- 買換資産は売却した年の前年から翌年までの間に購入し、床面積は50㎡以上であること
- 売却した年の翌年年末までに買換資産に居住すること
- 買換資産はローンで購入し、返済期間は10年以上であること
- 合計所得金額が3,000万円を超えないこと
詳しい適用要件については国税庁の「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」のページを確認してください。
バブル期に高値で購入した物件などの売却を検討している場合には、この特例を適用できる可能性が高いでしょう。
マイホーム売却時の3,000万円の特別控除
居住用財産を売却する際に適用できる特例として、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度があります。
この特例は、所有期間に関係なく適用可能で、売却時まで居住用として使用していた物件が対象となります。
主な適用要件は以下の通りです。
- 現在居住している物件であること(転居済みの場合、転居後3年目の年末までの売却であること)
- 売却した年の前年、前々年に同控除、またはマイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例の適用を受けていないこと
- 売った年、その前年及び前々年に、マイホームの買い換えや交換の特例を受けていないこと
- 固定資産の交換特例、収用等の特別控除などほかの特例の適用を受けていないこと
住み替えに際して家を売却する場合、この特例を適用すると住宅ローン控除は適用できなくなるため注意しましょう。
詳しい要件は国税庁のページをご参照ください。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例|国税庁
相続した空き家を売った時の3,000万円の特別控除
相続によって取得した築年数が古い家を売却する場合には、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度が利用できます。
【適用条件】
- 昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された建物であること
- 被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡すること
- 一定の耐震基準を満たしていること
- 相続時から売却時まで居住や貸付をしていないこと
- 売却代金が1億円以下であること
特別控除を利用するには、特に相続開始以後、3年を経過する日の属する年の12月31日までに相続した空き家を売却しなければならない点に注意しましょう。
詳しい要件については国税庁のページを確認するようにしてください。
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例|国税庁
相続した家を売却した時の取得費加算の特例
取得費加算の特例とは、相続財産を売却した場合、相続税額の一部を取得費に加算することで、譲渡所得税の負担を軽減することができる特例です。
この特例の主な適用要件は以下の3つです。
- 相続、遺贈により財産を取得した人であること
- その財産を取得した人が相続税を納めていること
- 相続開始日から3年10か月以内に譲渡していること
取得費に加算できる金額は、実際に支払った相続税のうち、相続財産における売却した不動産の割合に応じて決まり、以下の式で算出します。

1981年6月以前に建てられた家を売却する場合には、「相続した空き家を売った時の3,000万円の特別控除」と併用はできないため注意してください。
詳しい要件については、以下の国税庁のページをご確認ください。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
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