転勤が決まったので今のマンションを売却したい、家族が増えたので広い家に住み替えたいなど、さまざまな事情でマンション売却を考えることは珍しくありません。しかしそのマンションに住宅ローンが残っている場合、売却できるのか気になる方も多いのではないでしょうか?
ローン残債があるマンションの売却の可否は、住宅ローンを一括返済できるかどうかによって決まります。この記事では、ローン残債を一括返済できるかを見分ける方法や売却の流れ、完済できない場合の対処法、売却に際しての注意点などを解説します。
ローン残債があるマンションは売却できる?
住宅ローンの残債があるマンションでも売却はできますが、抵当権の抹消が条件になります。抵当権とは、住宅ローンを融資した不動産会社が、万一返済が滞った場合に備えて担保とする権利です。
住宅ローンの返済が滞り抵当権が行使されると、担保とされたマンションは競売にかけられ売却されてしまいます。そのようなリスクがあるマンションを購入したいと考える人はいないため、抵当権が付いている物件は買い手を見つけることができません。
そのためローン残債があるマンションを売却したい場合には、住宅ローンを一括返済し、抵当権を抹消する必要があるのです。
マンションのローン残債を一括返済できるか確認する方法
抵当権の付いたマンションの売却に際してローン残債を一括返済できるかどうかを調べたいときには、以下の手順で進めます。
Step1. 住宅ローン残債を確認する
まずは、住宅ローンがどれくらい残っているかを確認します。融資を受けている金融機関から毎年送られてくる返済予定表をチェックするか、手元にない場合は借り入れた金融機関に依頼してローン残高証明書を発行してもらいましょう。
ローン残債が少なく手持ちの預貯金で一括返済できる程度なら、問題なく売却が可能です。
Step2. 不動産会社にマンションの査定を依頼する
一般的に住宅ローンは借り入れ金額が大きいので、手持ちの預貯金で一括返済できないほどの残債があるケースも珍しくありません。その場合、マンションの売却代金で完済できるか確認する必要があります。
マンションの正確な売却見込み金額を把握するためには、不動産会社に査定を依頼しましょう。査定とは、おおよそ3カ月程度で売却できると思われる「見込み額」を出すことです。
マンション査定には、机上(きじょう)査定と訪問査定の2種類があります。
机上査定 |
マンションの築年数や構造、階数、方角などの情報をもとにおおよその査定額を出す方法 |
訪問査定 |
実際にマンションを訪問し、周辺環境や物件の状態を確認したうえで正確な査定価格を出す方法 |
住宅ローンが残っている場合、正確な売却見込み額を把握する必要があるため訪問査定が欠かせません。しかしいきなり不動産会社の訪問を受けるのは、不安を覚える方も多いでしょう。
そのためまずは机上査定を依頼して、不動産会社の対応を見極めたうえで絞り込み、訪問査定を受けることをおすすめします。
査定を受ける不動産会社の選び方
査定額の出し方は法的な決まりがないので、出される金額は会社によって異なります。しかしローン残債のあるマンションは、ローンを一括返済できるかどうかにより売却の可否が決まるので、査定額はシビアに出さなければなりません。
そのためローン残債のあるマンションの売却を前提に査定を受けるときには、エリアの市場に詳しくマンション売却を得意とする担当者がいる不動産会社を選ぶことが重要です。
マンション売却が得意な担当者を見極めて選びたいときには、エージェント紹介サービスの利用がおすすめです。エージェント紹介サービスとは、不動産会社の担当者と直接マッチングされるサービスです。
いくら「この会社がよさそう」と思っても、担当者が誰になるのか分からなければ、不安が残ってしまうでしょう。その点エージェント紹介サービスであれば、担当者の実績を確認したうえで査定を依頼できるので安心です。
Step3. アンダーローンかオーバーローンか確認する
ローン残債と売却見込み額が出そろったら、両者を比較して「アンダーローン」になるか「オーバーローン」になるかを確認します。
アンダーローンとは、売却の見込み額がローン残債を上回ることです。売却代金でローンを一括返済できるので問題なくマンションの売却が可能です。一方オーバーローンとは、ローン残債が売却の見込み額を上回ることを指します。ローンを一括返済できないため抵当権が残るので、マンション売却はできません。
ただしオーバーローンとなっても、不足する金額が少なく、手持ちの預貯金で補うことで一括返済できるのであれば問題はありません。
アンダーローンのときのマンション売却の流れ
ここからは、アンダーローンになる場合のマンション売却の流れを解説します。
Step1. 不動産会社と媒介契約を結ぶ
査定を受けた不動産会社のなかから仲介を依頼する不動産会社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約の種類は次の3つがあります。
種類 |
特徴 |
一般媒介契約 |
・複数の不動産会社と媒介契約を結べる
・レインズ*への登録、売主に対する販売活動の報告義務はない |
専任媒介契約 |
・1社の不動産会社とのみ媒介契約を結ぶ
・7営業日以内のレインズへの登録義務、2週間に1回以上の売主への販売活動報告書の提出義務がある
・売主は自分で見つけた買主と直接売買契約を結べる |
専属専任媒介契約 |
・1社の不動産会社とのみ媒介契約を結ぶ
・5営業日以内のレインズへの登録義務、1週間に1回以上の売主への販売活動報告書の提出義務がある
・売主は自分で見つけた買主と直接売買契約を結ぶことはできず、媒介契約を結んだ不動産会社を通す必要がある |
*レインズ:国土交通省の指定を受けた不動産流通機構が運営するコンピュータネットワークシステム
基本的には、人気のエリアにあり築年数が浅いなど、高い需要が見込めるマンションなら一般媒介契約を選びます。複数の不動産会社と契約を結ぶことで広く集客できるためです。ただし不動産会社には売主に対して販売活動を報告する義務がないので活動の様子が見えにくく、売主側から積極的にコミュニケーションを取る必要があります。
マンション売却の難易度が高そうな場合や、1社と信頼関係を結んだうえでじっくりと高値売却を目指したい方は、専任系の媒介契約を選ぶとよいでしょう。
Step2. 金融機関に一括返済の連絡をする
マンションを売却すると決めたら、住宅ローンを借り入れている金融機関に一括返済する予定であることを連絡し、必要な書類や手続きを確認しておきましょう。実際に手続きをおこなうのは買主と売買契約を結んだあとになりますが、必要事項をあらかじめ把握しておくとスムーズに進められます。
Step3. 売却活動をおこなう
媒介契約を締結したら、不動産会社は自社ホームページやポータルサイトに物件情報を掲載したり、チラシの配布やポスティングをおこなったりして売却活動をおこないます。
購入希望者が見つかったら、実際にマンションを見に来る内覧がおこなわれます。できるだけ高く売却するためには不用品の処分や清掃をおこない、少しでも好印象を与えられるよう工夫しましょう。
なお、マンションは共用部分の状態もチェックされます。内覧当日はエントランスから住戸まで一通り歩いてみて、ゴミが落ちていないか確認しましょう。
Step4. 買主と売買契約を結ぶ
マンションの買主が決まったら売買契約を結び、売却金額の5〜10%程度の手付金を受け取ります。この時点で、不動産会社に仲介手数料の半額を支払うのが一般的です。
Step5. 金融機関に決済日を連絡する
売却するマンションにローン残債がある場合は、借り入れしている金融機関の担当者が決済・引き渡し時に必要書類を持参し立ち合うのが一般的です。そのため買主と売買契約を締結して決済・引き渡し日が決まったら、金融機関に連絡し、住宅ローンの一括返済の申し込みをおこないます。
金融機関によっては準備に数週間かかるケースもあるので、できるだけ早く連絡することが大切です。
Step6. 決済・引き渡しと同時に抵当権抹消登記をおこなう
決済日には買主から残代金を受け取り、住宅ローンを一括返済します。完済を確認したあと、金融機関の担当者が司法書士へと抵当権抹消に必要な書類を引き渡します。司法書士はそのまま法務局に向かい、抵当権抹消登記と所有権移転登記をおこないます。
Step7. 利益が出た場合は翌年に確定申告する
マンション売却で利益である譲渡所得が出た場合には、翌年に確定申告が必要です。譲渡所得が出たかどうかは、以下の計算式で確認します。
譲渡所得=マンションの売却代金−(①取得費+②譲渡費用)
①マンションを取得したときにかかった購入費や仲介手数料などから、経年劣化による減価償却分を差し引いた金額
②マンションを売却する際に支払った仲介手数料や印紙税などの合計金額
上記で計算してプラスとなった場合には、確定申告をおこない所有期間に応じた譲渡所得税(売却した年の1月1日時点の所有期間が5年以下の場合で39.63%、5年超の場合で20.315%)を支払います。
ただし売却したマンションがマイホームだった場合には、3,000万円特別控除の特例(一定の要件を満たすことで、譲渡所得3,000万円まで控除される特例)が適用され、譲渡所得3,000万円までは譲渡所得税が発生しません。制度の適用条件に該当しないか必ず確認しましょう。
オーバーローンのマンションを売却したいときの対処法
マンションのローン残債と売却見込み金額を比較してオーバーローンとなった場合には、高度な売却ノウハウと戦略の検討が必要になります。そのためオーバーロンとなるマンションをどうしても売却しなければならない事情がある場合には、実績と経験が豊富なエージェントに相談しましょう。
その場合、マンションのあるエリアで実績が豊富な担当者と直接マッチングされるエージェント紹介サービスを利用すると効率的です。利用を検討してみるとよいでしょう。
ローン残債があるマンション売却におけるポイントと注意点
最後に、ローン残債があるマンションを売却するときに押さえておきたいポイントと注意点をご紹介します。
売却にかかる費用を把握しておく
マンション売却にはさまざまな費用がかかるため、売却代金をそのまま全額ローンの返済に充当できるとは限りません。売却にかかる費用も含めて売り出し価格や売却価格を決めないと、結果的にオーバーローンになり売却できなくなる可能性があるため注意が必要です。
マンション売却にかかる主な手数料や費用の目安は、以下の通りです。
費用の種類 |
内容 |
費用の目安など |
仲介手数料 |
媒介契約を結んだ不動産会社のうち、買主を見つけてくれた会社に支払う成功報酬 |
・売却価格が400万円以上の場合「(取引価格(税抜)×3%+
6万円)+消費税」が上限
・3,000万円の場合で105.6万円 |
印紙税 |
契約書や領収書などの課税文書に対してかかる国税。不動産売却では買主と交わす売買契約書に課税される。 |
・1,000万円超〜5,000万円以下で1万円(軽減税率適用の場合)
・売買契約書に収入印紙を貼付して納税する |
登録免許税 |
登記する際にかかる国税。抵当権が付いている場合、抹消登記する際に必要。 |
・不動産1個につき1,000円
・マンションの場合、土地+住戸で2,000円となるのが一般的 |
司法書士報酬 |
抵当権抹消登記を司法書士に依頼する場合に支払う報酬 |
・依頼先によって異なるが、5,000円〜1万円+実費が相場 |
売却にかかる費用は、売却代金の5%程度になるのが一般的です。このうち仲介手数料については金額が大きくなる傾向があるうえ、現金での支払いを求められることが多いので、あらかじめ把握しておくと安心です。
住み替えの順番はエージェントに相談して検討する
マンションを住み替える場合には、今のマンションを売ってから新居を購入する「売り先行」と、新居購入後に今のマンションを売却する「買い先行」の2つの方法があります。
売り先行は、ローン残債を一括返済し手元にいくら残るかを確認したうえで新居購入に進めるので、資金計画に狂いが生じにくいのがメリットです。ただしマンションが売れるまで新居を購入できないので「〇月までに引っ越したい」と思っていても、スケジュール通りには進まない可能性があります。
一方買い先行は、理想の新居が見つかった時点でタイミングを逃さず購入できるのがメリットです。しかし、もし現在の家の買主がなかなか見つからなかったり、期待していた価格で買い手が見つからなかったりした場合、新しい家の住宅ローンと合わせて返済期間が長くなり、返済が困難になる可能性があります。
住み替えをどのように進めるのかは、エージェントに相談しながら慎重に検討しましょう。
マンション売却が得意なエージェントに依頼する
不動産会社はそれぞれ得意分野が異なるため、マンション売却に際してはマンション取引を得意としている会社を選ぶことが重要です。とくにローン残債がある場合には、残債を一括できる金額で売却しなければならないため、マンション売却の経験が豊富でノウハウを有したエージェントを見極める必要があります。
そのためには、エージェント紹介サービスを利用するのがおすすめです。一括査定サイトのように、一度に多くの不動産会社に査定を依頼できるサービスは便利ですが、不動産会社は選べてもエージェントは選べないデメリットがあります。媒介契約を結ぶまでの担当者は熱心でよかったのに、契約後は担当者が変わりコミュニケーションを取りにくくなることも。
その点、例えばタクシエなら、申し込んだらエリア内でマンション売却の実績が多いエージェントがマッチングされます。プロフィールやこれまでの実績を確認してから誰に相談するかを選べるうえ、相談から引き渡しまで担当者が変わる心配もありません。チャットでコミュニケーションを取りながら相性を見極められるので、ぜひ利用をご検討ください。
まとめ
ローン残債があるマンションの売却は、抵当権抹消が必須条件になります。
抵当権を抹消できるかどうかは、ローン残債と売却見込み額を比較して確認が必要です。シビアな査定額を出す必要があり、さらに確実にローン残債を超える額で売却しなければならないので、マンション売却を得意とするエージェントを見つけることが何よりも重要です。
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