不動産の売却後に確定申告をする際は、減価償却費を正しく算出しなくてはなりません。しかし、減価償却の計算方法がわからず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、不動産売却における減価償却の計算方法を解説します。
- この記事を読むと分かること
-
- 不動産売却における減価償却の概要
- 不動産売却における減価償却の計算方法
- 不動産売却における減価償却の経過年数ごとのシミュレーション
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不動産売却における減価償却とは
不動産売却における減価償却とは、不動産の経年劣化によって下がる価値(減価償却費)を取得原価から差し引くことです。
減価償却の対象になるのは、老朽化によって価値が下がる建物や不動産に付随する設備です。土地は使っても古くはならないため、減価償却の対象にはなりません。
減価償却は、不動産売却後の確定申告で譲渡所得額を計算する際に必要になります。譲渡所得額は、減価償却費を差し引いた取得費を用いて、以下の計算式で算出します。
譲渡所得=売却価格ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額 |
参考:「土地や建物を売ったとき」(国税庁)
取得費に減価償却費が適正に反映されていないと、修正申告や追徴課税を求められる場合があります。そのため、減価償却の計算方法を理解しておく必要があります。
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不動産売却における減価償却の計算式
不動産売却における減価償却の計算式は、事業用と非事業用で異なります。それぞれの計算方法について解説します。
非事業用不動産の場合
自宅や別荘などの非事業用不動産を売却する際の減価償却費は、以下の計算式で算出します。
非事業用不動産の減価償却費=建物の取得費×0.9×償却率×経過年数 |
参考:「建物の取得費の計算」(国税庁)
償却率は、建物の構造によって以下のように異なります。
建物の構造 | 耐用年数 | 償却率 |
|---|
木造、合成樹脂造 | 33年 | 0.031 |
木骨モルタル造 | 30年 | 0.034 |
れんが造、石造、ブロック造 | 57年 | 0.018 |
鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 |
金属造(骨格材の肉厚4mm超) | 51年 | 0.020 |
金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 40年 | 0.025 |
金属造(骨格材の肉厚3mm以下) | 28年 | 0.036 |
参考:「減価償却費の計算について」(国税庁)
経過年数とは、不動産を購入してから売却するまでの所有期間です。6ヶ月以上の端数は1年とみなし、6ヶ月未満の端数は切り捨てます。
たとえば所有期間が2年5ヶ月の場合、経過年数は2年とみなします。非事業用不動産の減価償却費は1回の計算で求められるため、1年ごとに分けて算出する必要はありません。
事業用不動産の場合
賃貸マンションや事務所などの事業用不動産を売却する際の減価償却費は、定額法を用いて算出します。定額法は不動産を取得した時期によって、以下のように計算式が異なります。
不動産の取得時期 | 計算式 |
|---|
2007年3月31日以前 (旧定額法) | 事業用不動産の減価償却費=建物の取得費×0.9×定額法の償却率(1÷耐用年数) |
2007年4月1日以後 (定額法) | 事業用不動産の減価償却費=建物の取得費×定額法の償却率(1÷耐用年数) |
参考:「定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」(国税庁)/「旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)」(国税庁)
事業用不動産の減価償却費は、毎年算出する必要があります。年の中途で不動産を取得または売却した場合は、業務に使用していた月数で按分します。
不動産売却時の譲渡所得と減価償却の計算シミュレーション【経過年数別】
ここでは、以下の条件で不動産を売却した際の譲渡所得と減価償却の計算シミュレーションを、経過年数別に紹介します。
- 木造のマイホームを売却(特例の適用はないものとする)
- 購入価格:3,000万円(土地1,000万、建物2,000万)
- 売却価格:4,000万円
- 譲渡費:100万円
所有している不動産を売却した際の、おおよその譲渡所得額と減価償却費を把握するための参考にしてください。
経過年数が3年の場合
経過年数が3年の場合の譲渡所得額と減価償却費をシミュレーションします。
| | 計算式 | 金額 |
|---|
減価償却費 | 2,000万円×0.9×0.031×3 | 167.4万円 |
取得費 | 3,000万円ー167.4万円 | 2,832.6万円 |
譲渡所得額 | 4,000万円ー(2,832.6万円+100万円) | 1,067.4万円 |
譲渡所得税額 | 1,067.4万円×39.63% | 約423万円 |
譲渡所得税の税率は、不動産を売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで以下のように変わります。
不動産の所有期間 | 譲渡所得の税率 |
|---|
5年超(長期譲渡所得) | 20.315% |
5年以下(短期譲渡所得) | 39.63% |
参考:「土地や建物を売ったとき」(国税庁)
このケースでは短期譲渡所得に該当するため、譲渡所得額は1,067.4万円、譲渡所得税額は約423万円になります。
経過年数が10年の場合
経過年数が10年の場合の譲渡所得額と減価償却費をシミュレーションします。
| | 計算式 | 金額 |
|---|
減価償却費 | 2,000万円×0.9×0.031×10 | 558万円 |
取得費 | 3,000万円ー558万円 | 2,442万円 |
譲渡所得額 | 4,000万円ー(2,442万円+100万円) | 1,458万円 |
譲渡所得税額 | 1,458万円×20.315% | 約296万円 |
このケースでは、譲渡所得額が1,458万円、譲渡所得税額が約296万円です。
経過年数が増えると取得費から差し引く減価償却費が大きくなります。その結果、取得費が少なくなるため、課税対象となる譲渡所得額が増えます。
経過年数が20年の場合
経過年数が20年の場合の譲渡所得額と減価償却費をシミュレーションします。
| | 計算式 | 金額 |
|---|
減価償却費 | 2,000万円×0.9×0.031×20 | 1,116万円 |
取得費 | 3,000万円ー1,116万円 | 1,884万円 |
譲渡所得額 | 4,000万円ー(1,884万円+100万円) | 2,016万円 |
譲渡所得税額 | 2,016万円×20.315% | 約410万円 |
このケースでは譲渡所得額が2,016万円、譲渡所得税額が約410万円になります。
なお、マイホームを売却する場合の特例を適用した場合は、譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます(※)。今回のシミュレーションでは適用せずに計算しましたが、実際は適用できるケースがほとんどです。
マイホームを売却する場合は、譲渡所得額が3,000万円を超えると譲渡所得税がかかる可能性が高くなると考えましょう。
(※)「マイホームを売ったときの特例」(国税庁)
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不動産売却で利益が出て確定申告をする際には、減価償却費を正しく計算して取得費に反映させる必要があります。建物や設備の経過年数が増えるほど減価償却費は大きくなり、取得費が少なくなるため納税額は増えます。減価償却の計算が適切にできるか不安な場合は、税理士に相談しましょう。
不動産売却においては、減価償却の計算以外に登記手続きや物件引き渡しの準備など、対応すべきことが多数あります。スムーズに売却を進めるためには、安心して売却活動を任せられる不動産会社に依頼するのがおすすめです。
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三菱地所リアルエステートサービス 新事業推進部
「不動産売却マスター」編集長
【保有資格】宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、衛生管理者、ファイナンシャルプランナー3級
2008年入社。人事部門で福利厚生制度などの企画運営、住宅賃貸部門でタワーマンション営業所長、高級賃貸マンション企画などを経て、2018年より経営企画部で主に事業開発を担当し、複数の新規事業立上げに従事。2020年度三菱マーケティング研究会ビジネスプランコンテスト最優秀賞受賞。「TAQSIE」では初期構想から推進役を担い、現在もプロジェクト全般に関わっている。
「不動産の売却に特化した情報を発信する『不動産売却マスター』編集部です。不動産の売却や買取をスムーズに進めるポイントや、税金、費用などをわかりやすく解説します」