マンションの建て替えが検討・決定された場合、区分所有者の方々は「建て替え後も住み続けるべきか、売却した方が良いのか」という重要な判断を迫られます。建て替えには多額の費用負担が発生する可能性があり、また仮住まいの確保も必要となるため、慎重な検討が必要です。
一方で、建て替え後のマンションは資産価値が上がる可能性が高く、住環境も大きく改善されます。そのため、建て替え後まで待って売却するという選択肢もあります。
この記事では、マンションの建て替えにかかる費用や期間、売却のタイミング、そして売却時の不動産会社の選び方について詳しく解説していきます。
- この記事を読むと分かること
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- マンションが建て替えになる場合
- 建て替え前にマンションを売却した方がいいケース
- マンションの建て替え・売却時にかかる費用
- 売却時の不動産会社の選び方
マンションが建て替えになるケースとは?

マンションの建て替えは、建物の老朽化が進み、大規模修繕では対応が難しくなった場合に検討されます。
建て替えを検討する主な要因としては、設備の老朽化、大規模修繕コストの増大、居住性能の向上などがあります。
容積率に余裕がある場合は新たな住戸販売で費用負担を軽減できる可能性もありますが、平均自己負担額が約2,000万円にのぼることが一般的です。
実際の建て替えには区分所有者の5分の4以上の賛成が必要で、高齢化や相続問題とも相まって合意形成が難しい状況です。
一方、長期修繕計画に基づく適切な維持管理が行われている場合は、大規模修繕工事で一定期間の居住環境を維持できますが、耐震性や設備更新費用など長期的な視点での検討も重要となります。
マンションが建て替えになる前に売却した方がいい?

建て替えが決定または検討されているマンションの場合、売却のタイミングは慎重に判断しなければなりません。
建て替え後の資産価値向上が期待できる一方で、建て替え期間中の費用負担や仮住まいの確保など、さまざまな課題があるためです。
建て替え時の入居者の費用負担が大きい
建て替え工事には多額の費用が必要となり、区分所有者の費用負担も発生します。不動産会社の調査によると、専有面積70㎡の場合の一般的な建て替え時の負担額は以下のように試算されています。
【建て替え時の費用負担例(専有面積70㎡の場合)】
- 建築工事費:2,520万円~3,000万円以上
- 解体費用:150~200万円
- 設計・監理費:150~200万円
- その他諸経費:300万円以上
このように、区分所有者1戸あたりの総負担額は、修繕積立金や新たな分譲戸数の利益を考慮しても1,000万~3,000万円程度となり、小規模マンションや容積率に余裕がない場合は5,000万円以上になる可能性もあります。
建て替え費用を負担しなくてもいいケースとは?
デベロッパーが事業主となる等価交換方式の建て替えでは、区分所有者の費用負担を軽減できる可能性があります。以下のように費用負担の軽減策がありますが、それぞれに適用条件があります。
【費用負担が軽減されるケース】
- 等価交換方式(容積率に余裕があり、保留床確保が必要)
- 補助金制度(優良建築物等整備事業で最大2/3補助)
- 余剰床の売却による費用回収
- 行政による支援制度の適用(耐震性能不足などの要件あり)
これらの適用には、容積率の余裕、要除却認定基準への該当、地区面積や接道条件などの都市計画上の要件を満たす必要があります。
多くの場合、区分所有者による相応の費用負担が必要となることを理解しておく必要があります。
建て替え期間の仮住まい先を探す必要がある
マンションの建て替え工事期間は、一般的に6か月から1年半程度です。その間、区分所有者は仮住まいを確保する必要があります。
仮住まいにかかる費用は、賃貸物件の家賃が月額8〜15万円、引っ越し費用が15〜25万円(2回分)、初期費用が20〜30万円、家具・家電の保管費用が月額1〜2万円程度です。
ただし、これらの費用は地域や物件条件によって大きく異なり、都市部では家賃が15万円を超えるケースも多く、郊外では8万円以下になることもあります。
また、引っ越し費用は荷物量や距離によって変動し、30万円以上になる場合もあります。
短期の賃貸契約は一般的に締結が難しいですが、マンスリーマンションやウィークリーマンションなど、仮住まいの選択肢もあります。これらの選択肢について検討することで、よりスムーズな仮住まい生活を送ることができます。
建て替え後に売却するのも一つの手
建て替え決定後のマンションは、一般的に買主が見つかりにくい傾向にあります。これは、建て替えの具体的な計画や費用負担が不透明な場合が多いためです。
一方、建て替え後の新築マンションは、以下のような理由から売却がしやすくなります。
【建て替え後の売却メリット】
- 新築物件としての価値
- 最新の設備・仕様
- 耐震性能の向上
- 管理体制の刷新
建て替え費用を負担できる場合は、建て替え後に売却することで、より有利な条件での売却が期待できます。
建て替えに際して立ち退き料はもらえる?
マンションの建て替えが決議された場合、反対者であっても立ち退き料を請求することはできません。
建て替えが決定した場合には、反対している人に対して組合が売渡請求権を実行します。
その後反対者は、建替組合から売渡し請求を受けてから2か月以内に返答する必要があります。売渡し価格は「時価」で算定されますが、具体的な評価方法について協議になるケースもあります。
反対者は裁判所に権利保護や価格査定について申し立てることも可能ですが、この手続きには時間と費用がかかります。最終的に建替組合へ参加することで、新築マンションへの再入居や利益配分を受ける選択肢もあります。
マンションの建て替え・売却にかかる費用相場

建て替えや売却を検討する際は、具体的な費用を把握することが重要です。特に建て替えの場合、工事費用だけでなく、仮住まいの費用なども含めて総合的に検討する必要があります。
以下で、それぞれの場合の具体的な費用相場を見ていきましょう。
建て替え後のマンションに再入居する場合にかかる費用
マンションの建て替えには、様々な費用がかかります。主な費用項目は以下の通りです。
- 建て替え工事負担金: 1戸あたり1,000万〜2,000万円が相場
- 仮住まい費用: 2年間で200〜300万円が一般的(家賃月額10〜15万円程度)
- インテリア・設備費用: 200〜300万円程度が目安
- 引っ越し費用: 2回分で30〜50万円程度が目安
建て替え時には、住宅ローンの借り換えや追加融資が必要となるケースも多いです。既存ローン残債がある場合、新たな融資審査を通過する必要があります。
また、仮住まい費用や建て替え工事負担金に対して住宅ローンを利用できない場合もあるため、事前に資金計画を立てることが重要です。
売却にかかる費用
マンションを売却する際には、様々な費用が発生します。主な費用項目は以下の通りです。
- 仲介手数料: 132万円(税込)
- 印紙税: 1〜3万円
- 登記費用: 10〜15万円
- 残債返済手数料: 2〜3万円
- 引っ越し費用: 15〜25万円
仲介手数料は、売却価格の3%+6万円+消費税で計算されます。4,000万円の場合、132万円となります。
印紙税は、売買価格に応じて異なり、1,000万円超〜5,000万円以下の場合1万円、5,000万円超〜1億円以下の場合3万円です。
登記費用は、抵当権抹消登記や所有権移転登記などを含めて10〜15万円程度が一般的です。
残債返済手数料は、金融機関によって異なりますが、2〜3万円程度が相場です。
引っ越し費用は、荷物量や距離によって変動しますが、15〜25万円程度が目安となります。
これらの費用は売却価格や地域によって変動することがあります。具体的な費用は、不動産会社に相談して確認することをおすすめします。
マンション売却時の不動産会社・担当者の選び方

マンションの売却を成功させるためには、複数の不動産会社に査定を依頼し、比較検討することが重要です。
特に建て替えが検討・決定しているマンションの場合、その状況を適切に理解し、買主に説明できる不動産会社を選ぶ必要があります。
物件種別・エリア別の売却実績
不動産会社によって得意とする物件や地域が異なります。特にマンションの売却では、以下の点を確認することが重要です。
【確認すべき実績】
- 対象エリアでの売却実績件数
- 同規模・同価格帯のマンション売却実績
- 建て替え予定マンションの取扱実績
これらの実績は、不動産会社のウェブサイトや営業担当者との面談を通して確認するとよいでしょう。
連絡のスピードや対応の丁寧さ
不動産売却の成否は、担当者の対応に大きく左右されます。担当者の対応を評価する上で、特に重要なのは以下の点です。
- 迅速な対応
- 分かりやすい説明
- 正確な回答
- 具体的な提案
- 密な連絡
- 専門知識
- 問題解決力
- ニーズ理解
顧客の立場に立って考える姿勢は、顧客の不安や疑問に寄り添い、親身になって対応しているかに現れます。
また、情報を包み隠さず伝える誠実さも重要です。不利な情報もきちんと伝え、顧客に納得してもらうことが信頼関係構築につながります。
強引な営業は顧客の意向を無視する行為であり、避けるべきです。顧客の意向を尊重し、無理な売り込みをしない担当者を選ぶことが大切です。
これらの点を総合的に評価することで、信頼できる不動産会社、担当者を見つけることができるでしょう。
査定の根拠
信頼できる不動産会社は、査定価格の根拠を明確に説明できます。査定内容を確認する際には、以下の点に注目しましょう。
- 近隣の取引事例が具体的に記載されているか
- 建物の状態が詳細に調査されているか
- 建て替えやリフォームの影響が考慮されているか
- 価格の上下要因が明示されているか
- 売却までの期間が予測されているか
これらの点に加え、査定価格がピンポイントで表示されているか、不動産の特性に合わせた具体的なコメントや総評があるか、担当者や担当会社の名称が明記されているかなども確認しましょう。
また、建物状況調査(インスペクション)の結果が反映されているか、評価に根拠のある具体的なコメントが記載されているか、売却時の注意点やリスクについても言及しているか、近隣の開発状況、交通の利便性、学校や商業施設の有無などが考慮されているかなども確認することで、より信頼性の高い査定書であるかどうかを判断できます。
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しかし、実際に実績やノウハウが豊富な不動産会社を自力で見つけるのはかなり難しいと思われます。
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