この夏の地震と豪雨をきっかけに、築年数の経ったマンションを手放すべきか考え始めた方もいるのではないでしょうか。
マンションの防災力は、耐震性や立地、管理などで決まりますが、築古マンションは総じて不利と言わざるを得ません。1981年5月以前に建築確認申請をしたマンションは旧耐震基準で建築されており、買い手からすると耐震性が懸念点になりやすいうえ、住民の高齢化が進み、管理の担い手が減っているマンションも少なくありません。
とはいえ、築古マンションは決して売れないわけではありません。とくに近年は新築価格の高騰を背景に、中古市場では築年数の経ったマンションの取引が増え、市場の主役になりつつあります。
この記事では、東日本レインズの最新データから築古マンションの相場と売れ行きを確認し、価格を分ける要因と売り方の選択肢を整理してお伝えします。
- この記事を読むと分かること
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- 中古マンションの成約件数が減るなか、築30年超の成約件数だけが増加し全体の4割超に
- 築古マンションの相場は2,500〜2,800万円程度で、価格は耐震性・管理・立地で決まる
- 築古マンションの売却では買取が有力で、エリアによっては買取価格が仲介並みになることも
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築古マンションは売却できるのか
首都圏では2026年度に入ってから中古マンションの成約件数が減少傾向にあり、7月まで3ヶ月連続で成約平米単価は下落しています。ただし、築年数別に見ると築古の物件だけは別の動きをしています。
成約の4割以上が築30年超
出典:東日本不動産流通機構
2026年4月〜6月の首都圏における中古マンション成約件数は、前年同期比2.0%減でした。一方、築5年以内から築25年までの各築年帯がすべて減少するなかで、築26〜30年(5.2%増)と築30年超(5.5%増)のみ成約件数が増加しています。
築30年超の成約は5,016件で、全体の42.3%を占めます。築25年超まで広げると、53.5%。首都圏で取引されている中古マンションの半分以上は、築25年を超えています。築古だけが件数を伸ばしているのが現在の市場構図です。
築41年超は10年で3倍に
出典:東日本不動産流通機構
2025年の年間データでは、築41年超の比率は23.5%でした。2015年は8.1%だったため、10年で3倍近くにシェアが拡大したことになります。成約物件の平均築年数は26.58年で、前年の24.53年から2年以上進みました。
築古の取引がここまで増えた背景には、マンション価格の高騰で買い手が予算に合う物件を探すと築古に行き着くケースが増えていることに加え、リノベーション前提で築古を選ぶ層が増えたことなどがあります。築40年超のマンションは、もはや例外的な取引ではなく、市場の主要な構成要素となっています。
旧耐震・築古マンションの売却相場
続いて、築古マンションの売却相場を見ていきましょう。
首都圏平均で2,500〜2,800万円程度
2025年の首都圏における築41年超の成約価格は平均2,558万円、平米単価は47.50万円でした。築31〜35年が2,638万円、築36〜40年が2,761万円なので、築40年を超えても価格の落ち方は緩やかで、築31年超の中古マンションは2,500〜2,800万円程度が相場といえます。
注意したいのは、売り出し価格との差です。2025年の新規登録物件における築41年超の価格は平均2,941万円、平米単価55.06万円で、成約価格とは約13%の開きがあります。売り出したままの価格で売れるわけではなく、値下げを経て成約している物件が多いことがうかがえます。
対新規登録成約率(成約件数を新規登録件数で割った数字)は築41年超で20.9%、築11〜15年の40.9%の半分です。築古物件のシェアが拡大傾向にあるとはいえ、すぐ売れる物件ばかりではないというのが現状です。
エリアによって倍以上の開きがある
2026年4〜6月期の築30年超の成約価格を地域別に見ると、都区部が4,398万円(前年同期比11.4%上昇)、横浜・川崎が2,320万円、多摩が2,077万円、神奈川県のその他地域が1,574万円、埼玉県が1,660万円、千葉県が1,536万円でした。都区部と千葉県では3倍近い差があります。
成約状況も地域で異なります。都区部では中古マンション全体の成約件数が前年同期比13.2%減、築25年以内の各築年帯は15〜25%の大幅減となるなかで、築30年超は6.2%減にとどまりました。価格は4,398万円で11.4%上昇しています。
都区部の中古マンション平均7,576万円に対して6割弱の価格帯で、金利上昇で高額帯の取引が細るなか、都区部では予算内に収まる物件として築古に需要が向いているものと考えられます。一方、千葉県は成約件数が21.1%増、埼玉県は12.3%増と、郊外では築古の取引そのものが増えており、両県では成約の半数近くを築30年超が占めています。
価格帯は地域差があるものの、築古マンションは都区部では金利上昇と不動産価格高騰のなかでも「手が届きやすい価格帯」として、郊外では「主要な選択肢」として位置づけられている様子がうかがえます。
同じ築古でも価格を分けるものとは
平均価格はあくまで平均で、実際の成約価格にはかなりの幅があります。同じ築40年超でも、高く売れるマンションと値下げを重ねても動かないマンションを分けている要素を整理します。
耐震性
旧耐震基準のマンションは、安全性が懸念点になるとともに、税制・融資・保険の面でも買い手にとって不利になります。
税制では、中古住宅の主な優遇措置が「1982年1月1日以降の建築」を要件にしています。住宅ローン減税、所有権移転登記の登録免許税の軽減、不動産取得税の軽減、親や祖父母からの住宅取得資金にかかる贈与税の非課税措置は、1981年以前の建物では耐震基準適合証明書か住宅性能評価書(耐震等級1以上)、既存住宅売買瑕疵保険の付保のいずれかがなければ使えません。
融資では、フラット35が旧耐震の建物には耐震性の確認を求めるほか、民間の金融機関でも旧耐震は担保評価が低くなったり、融資期間が短くなったりする場合があります。保険についても、地震保険の建築年割引は1981年6月以降の建物を対象としており、旧耐震のマンションは保険料が割高になりやすくなります。
そのため、耐震診断を実施していて結果が新耐震基準相当の強度を示している、もしくは耐震改修を済ませていて、それが分かる資料があるかないかで、買い手の受け止め方は大きく変わってきます。
管理状態
築古マンションの買い手はリノベーションを前提としていることが多く、自分で手を入れられない共用部分の状態を重視する傾向にあります。長期修繕計画の有無や修繕積立金額、大規模修繕履歴などは、検討時に確認される項目です。
出典:令和5年度マンション総合調査
一方で、築古の管理には構造的な弱さがあります。令和5年度マンション総合調査によると、1984年以前に完成したマンションでは世帯主の55.9%が70歳以上で、マンション全体の25.9%と比べて高齢化が際立っています。3ヶ月以上の空室があるマンションの割合も、1984年以前のマンションでは約6割にのぼります。
住民が減り高齢化すれば、理事の担い手が不足し、総会で議決が成立しにくくなり、修繕や建替えの議論が進まないマンションも少なくありません。
立地
築古になるほど、価格に占める土地の比重が大きくなります。建物の価値が年々目減りしていく分、駅からの距離や周辺環境、災害リスクといった立地の良し悪しが、築浅よりもシビアに価格へ反映されます。
逆にいえば、都市部の駅近など土地の価値が高い場所では、建物が古くなっても価格があまり落ちないマンションも散見されます。ただやはり、立地の強みがないマンションは管理状態や耐震性がそのまま価格に響くうえ、買い手の数そのものが限られるため流動性も低くなります。
築古マンションの売却は「買取」が有力な選択肢
マンションの売り方は、不動産会社に仲介してもらって個人の買い手を探す方法だけではありません。買取再販業者に直接売る「買取」という方法があり、築古マンションではとくに有力な選択肢になります。
買取のメリット
買取再販業は、買い取ったマンションをリノベーションして再販することで利益を得る事業です。専有部分を全面的に作り替える前提で仕入れるため、室内の状態や設備の古さは問われず、売主の契約不適合責任が免除されるのが一般的です。
引き渡しの時期も売主の都合に合わせやすく、内見対応や値下げ交渉を重ねる必要がありません。売却期間が読みやすいため、仲介ではなかなか売れないマンションはもちろん、住み替えで新居の引き渡し日が決まっている場合や相続した実家のマンションを期限内に現金化したい場合などにも向いています。
買取価格は「相場の7掛け」とは限らない
買取の価格は、仲介で売れた場合より低くなるのが通常です。ただし、かつては「相場の7掛け」が目安といわれてきたものの、近年はこれに当てはまらないケースも出てきています。
買取再販業者が今後の値上がりを見込んで仕入れを強めているエリアでは、相場に近い買取価格が提示されることも増えており、価格差は物件と業者によって幅があるのが実情です。とくに都心へのアクセスがよく周辺と比べて割安感のある東京近郊エリアは、実需層とともに買取再販業者の注目度も高く、こうしたエリアの築古マンションであれば、買取でも仲介と遜色ない価格が出る可能性があります。
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まとめ
築古マンションの相場は、首都圏平均で2,500〜2,800万円程度と築浅に比べれば確かに低い水準です。しかし、金利上昇や不動産価格の高騰を受け、手の届く価格帯の物件として築古への需要は確実に高まっています。
価格を分けるのは、耐震性・管理状態・立地の3つです。この条件に不安があるマンションほど、仲介で値下げを重ねる前に買取の価格と並べて比べる価値があるでしょう。
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