所有している不動産を売却する場合には数種類の税金が発生します。売買する不動産の種類や金額によっては、思った以上の税額になるケースもあるため注意が必要です。
不動産の売却でどのような税金が発生するのか、税額がどの程度になるか気になっている人もいるのではないでしょうか。税額によっては残るお金が大幅に減少するため、事前にチェックしておくことが大切です。
そこでこの記事では、不動産の売却と税金の関係を解説します。基本的なルールを正しく理解することで、税負担を軽減して手元に残るお金をできるだけ多くするためにできることを理解できるでしょう。
- この記事を読むと分かること
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- 不動産を売却するときに発生する税金の種類
- 税負担を軽減させるための対策・特例
- 損失が発生したときに適用できる特例
この記事の編集者
平川 茂
税理士法人平川会計パートナーズ 代表社員税理士
平成24年度、平成25年度、平成26年度税理士試験 試験委員
「税務・会計」のプロフェッショナルであると同時にお客様にとって最も信頼できるパートナーであり続けることを理念としています。
1. 不動産売却で生じる税金と発生のタイミング
不動産を売却する際には、いくつかの税金が発生します。発生する代表的な税金は以下のとおりです。
上記のうち、所得税と住民税は不動産の譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いた利益に対して課税されます。譲渡所得は、事業所得や雑所得を含めた他の所得と分けて計算する分離課税の対象です。確定申告は不動産を譲渡した日が属する年の翌年に行い、例えば、2025年の1月に不動産を譲渡した場合には、2026年の2月16日から3月15日の間に行う必要があります。
また、住民税は確定申告で申告した譲渡所得の内容が住所地の市区町村に共有され、そのデータをもとに税額が算出されます。
普通徴収を選択した場合、毎年6月頃に市区町村から送付される納付書で納付すればよく、特別徴収の場合は給与から天引きされるため、特に対応の必要はありません。
印紙税は不動産売買契約書に、登録免許税は登記申請書にそれぞれ収入印紙を貼付する形で納税します。
ここで覚えておくポイントとは? |
- 所得税・住民税は不動産の売却で利益が出た場合のみ課税される
- 不動産売却に伴って発生する所得税・住民税は分離課税の対象になる
- 契約書の作成や抵当権の抹消登記に伴って印紙税や登録免許税などの税金も発生する
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2. 譲渡所得にかかる税金と税率
不動産の売買で利益(譲渡所得)が発生した場合、以下の式にもとづいて算出した課税譲渡所得に対して所得税・住民税が課税されます。
● 課税譲渡所得=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
税率は長期譲渡所得と短期譲渡所得のどちらに該当するかによって異なります。それぞれの条件と税率は以下のとおりです。
※()内は2037年12月31日まで適用される復興特別所得税を含めた税率
なお、課税譲渡所得を計算するときは、状況によって特別控除を適用できます。代表的な例は、居住用財産(マイホーム)を売却したときに適用できる3,000万円の特別控除です。後述しますが、他にも税制上で有利となる控除・特例はさまざま存在します。
ここからは、不動産売却に伴う税負担を軽減するために押さえておきたい12個のポイントを紹介します。これらのポイントを意識していないと税額が予想以上に高くなるリスクがあるため、この機会に一通りチェックしておきましょう。
参考:土地や建物の譲渡所得に対する税金|国税庁
3-1. 取得費が分かる資料を探す
課税譲渡所得を計算するときは、譲渡価額から取得費を差し引きます。そのため、取得費を証明できる書類を用意しておくことが必要です。証明書類には以下のようなものが含まれます。
取得費の証明書類
- 不動産の売買契約書
- 売買代金の領収書
売買契約書や領収書があれば不動産の取得価額を証明できるため、保管されているか確認しましょう。金庫やキャビネットなどに保管しているケースも多いため、一通り探すことをおすすめします。
また、買い換えなどで新しい不動産を取得するときは、将来の売却を考えて契約書や領収書を永久保存しておきましょう。
売買契約書や領収書以外にも、購入時の抵当権の設定金額が記載されている登記事項証明書や住宅借入金の契約書なども証拠書類として活用できます。
なお、証拠書類の紛失や相続で取得した場合などで取得費を証明できない場合は、売却した金額の5%を取得費として計算できます。例えば、1億円で不動産を売却した場合の課税譲渡所得の計算は以下のとおりです。
- 取得費:100,000,000円 × 0.05(5%) = 5,000,000円
- 譲渡所得:100,000,000円 – 5,000,000円 = 95,000,000円
上記より、特別控除の適用がない場合の課税譲渡所得金額は9,500万円です。もし、不動産の取得費が8,000万円であった場合、取得費の証明書類があれば課税譲渡所得金額が2,000万円になることを考えると、取得費を証明する書類はとても重要であることがわかるでしょう。
譲渡金額の5%を取得費とする場合、実際の取得費よりも下回ってしまうケースがほとんどであるため、不動産売却時には、売買契約書や領収書などの取得費を証明できる書類がないかを必ず確認しましょう。
参考:取得費が分からない時|国税庁
3-2. 取得費に加算できるものを加える
取得費として計算できるのは、売却した不動産を購入した代金のみではありません。以下のような費用も計上できるため、契約書や領収書などの証拠書類をきちんとそろえておきましょう。
取得費の例 |
概要 |
登記費用 |
登録免許税(不動産取得時の登記に際して課せられる税金)、司法書士への報酬 |
印紙税 |
不動産売買契約書に貼付した印紙のうち、買主の負担分 |
仲介手数料 |
不動産購入時に宅建業者に支払った手数料 |
不動産取得税 |
不動産を取得したときに1回限り課せられる税金 |
強制執行費 |
不法占拠者を立ち退かせるために裁判所に納めた費用 |
測量費 |
境界や地積を確定するために実施した測量の費用 |
訴訟費 |
所有権を主張するために提起した訴訟の費用 |
造成費 |
埋立や盛土などにかかった費用 |
解体費 |
古家付き土地を購入した場合の建物解体費 |
例えば、一戸建てやマンションなどの不動産の取得費が6,000万円であり、取得時に上記の費用が合計500万円かかったとすると取得費は6,500万円です。上記の費用500万円を計上できるかどうかで、短期譲渡所得の場合であれば税額が200万円程度、長期譲渡所得の場合であれば100万円程度増加する可能性があるため、きちんと書類を集めて計算することが大切です。
3-3. 譲渡費用をもれなく計上する
課税譲渡所得を計算するときは、譲渡費用も差し引きます。以下の費用は譲渡費用に該当するため、税負担を軽減するためにもれなく費用に加えましょう。
譲渡費用の例 |
概要 |
仲介手数料 |
不動産売却時に宅建業者に支払った手数料 |
登録免許税 |
抵当権抹消や名義変更などの登記に際して納付した税金 |
印紙税 |
不動産売買契約書に貼付した印紙のうち、売主の負担分 |
解体費 |
土地売買のために建物を解体した場合の費用 |
立退料 |
売却時に借主に支払った費用 |
不動産を売却するために支出した費用が譲渡費用に該当するため、領収書などの証拠書類をそろえてもれなく計上しましょう。特定の費用が譲渡費用に該当するか迷ったときは、「この不動産を売却するために必須の手続き・作業だったか」を考えて判断します。
細かい費用の計上漏れを防ぐためにも、不動産売却に際して支払った費用をリストアップしておくとよいでしょう。
参考:譲渡費用となるもの|国税庁
3-4. マイホームの売却なら3,000万円特別控除を利用する
マイホームは居住用財産に該当し、課税譲渡所得を計算するときに3,000万円の特別控除を受けられます。本特例の適用要件は以下のとおりです。
控除の適用要件
- マイホーム(売主が居住していた家屋)を売却する
- すでに居住していない場合は、居住しなくなった日から3年以内に売却する
- 売却した年の前年・前々年に本特例や買い換え・交換の特例を適用していない
- 買主が親族や売主と特別な関係がある法人ではない
基本的に、現に居住していたマイホームを売却する場合は本特例を適用できます。ただし、別荘や仮住まいとして使用していた家屋を売却する場合は適用できない点に注意してください。
上記の要件を満たしていても、本特例の適用を受ける直近3年間に住宅ローン控除の適用を受けている場合には特例の適用ができないので注意が必要です。
参考:マイホームを売ったときの特例|国税庁
関連記事:家を売るときの税金はいくら?計算方法と節税対策を徹底解説
3-5. 税率が下がる5年超・10年超を意識して売却する
売却した年の1月1日時点で、不動産の所有期間が5年を超えている場合は長期譲渡所得となり、税率が低くなります。具体的な税率は以下のとおりです。
区分 |
所得税の税率 |
住民税の税率 |
長期譲渡所得 |
15%(15.315%) |
5% |
短期譲渡所得 |
30%(30.63%) |
9% |
※()内は復興特別所得税を含めた税率
そのため、5年が近い場合は5年経過してから売却することを検討するとよいでしょう。ただし、時間が経過することで不動産の価値が低下して売値が下がるリスクがあることも考える必要があります。
また、マイホームを売却する場合に限って、所有期間が10年を超えている場合にさらに税率が軽減される特例があります。本特例を適用した場合の税率は以下のとおりです。
課税譲渡所得 |
所得税の税率 |
住民税の税率 |
6,000万円以下の部分 |
10%(10.21%) |
4% |
6,000万円を超える部分 |
15%(15.315%) |
5% |
※()内は復興特別所得税を含めた税率
課税譲渡所得額のうち、6,000万円以下の部分に対して課税される所得税の税率が5%、住民税の税率が1%軽減されます。マイホームを売却する場合で10年目が近い場合は、タイミングを調整するのもひとつの方法です。
参考:マイホームを売ったときの軽減税率の特例|国税庁
3-6. 譲渡所得が3,000万円を超える場合には居住用財産の買い換え特例を利用する
マイホームを買い換える場合は、「買い換え(交換)の特例」を適用できます。本特例は以下の条件を満たした場合に適用可能です。
特例の適用要件
- マイホームを売却してから3年以内に新たなマイホームを購入する
- 売却価格が1億円以下である
- 売却した年の1月1日時点での所有・居住期間が共に10年を超えている
- 3,000万円特別控除の適用を受けていない
- 買い換え先のマイホームが以下の条件を満たしている
- 土地面積・床面積がそれぞれ50㎡以上500㎡未満である
- 築年数が25年以下であるか一定の耐震基準を満たしている
ただし、買い換え(交換)の特例は課税される税金の納付を先送りできる制度です。本特例を適用すると3,000万円の特別控除や10年以上所有時の軽減税率は適用できません。税額をきちんと計算し、どちらを適用するか注意深く選ぶ必要があります。
参考:特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁
3-7. ふるさと納税を利用する
不動産の売却で利益が発生して課税対象となった場合、ふるさと納税を活用するのもおすすめです。ふるさと納税は、市区町村に対して金銭を寄附することで寄附金控除と呼ばれる税額控除を受けられる制度を指します。
例えば、100,000円を寄附した場合は自己負担額として定められている2,000円を除いた98,000円が所得税・住民税から控除されます。控除される金額の計算式は以下のとおりです。
税区分 |
計算式 |
控除区分 |
所得税 |
寄附額 – 2000円 |
所得控除 |
住民税 |
基本分:寄附額 – 2000円 × 0.1
特例分:寄附額 – 2000円 × (0.9-所得税率) |
税額控除 |
また、ふるさと納税には控除の上限額があります。分離課税対象になっている不動産の長期譲渡所得のみの場合を例にすると、上限額は「住民税所得割額 × 0.26779 + 2000」で計算できます。
事業所得や雑所得などの総合課税対象とあわせて課税されるケースで、所得税率が40%のときは「住民税所得割額 × 0.40683 + 2000円」で計算可能です。上限を超えた分は控除を受けられないため、きちんと計算してどの程度ふるさと納税するか決めましょう。
ふるさと納税は不動産を売却して譲渡所得を得た年の12月31日までに済ませる必要があります。
参考:ふるさと納税(寄附金控除)|国税庁
3-8. 平成21年及び平成22年に取得した土地の1,000万円特別控除を利用する
売却する不動産が土地で、以下の条件を満たす場合は1,000万円の特別控除を受けられます。
控除の適用要件
- 2009年1月1日~2010年12月31日に取得している
- 親族や取得者と関係がある法人などから取得していない
- 相続や遺贈・贈与・交換などで取得していない
- 本特例以外の譲渡所得の特例を適用していない
本特例を適用する場合は、確定申告を提出する際に特例を受けることを明記する必要があります。また、あわせて以下に掲載した書類の提出が必要です。
確定申告時に提出が必要な書類
- 譲渡所得の内訳書
- 取得時期が明記されている証明書(登記事項証明書・売買契約書)
適用できる不動産は限られていますが、課税譲渡所得を減らす上で効果的なため該当するのであれば適用するとよいでしょう。
参考:平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
3-9. 低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除を利用する
2020年7月1日から2026年12月31日までの間に、以下の条件に該当する土地を売却した場合は譲渡所得から100万円の特別控除を受けられます。
控除の適用要件
- 売主が個人である
- 売却した土地が都市計画区域にある
- 居住や事業などの用途に利用されていないもしくは利用程度が低い
- 売却した年の1月1日時点で5年以上所有している
- 売却価格が500万円以下(一定の区域内に在る場合は800万円以下)である
※建物等が含まれる場合は含める
- 売却後に土地が利用される
- 前々年以降に本特例の適用を受けていない
- 他の譲渡所得の課税に関する特例を受けていない
本特例を適用する際は、確定申告書に適用することを記載した上で以下の書類をあわせて税務署に提出しましょう。
確定申告時に提出が必要な書類
- 譲渡所得の内訳書
- 土地所在地の市区町村が発行した必要事項が記載された書類
- 売買金額を証明する書類(売買契約書等)
空き地を売却するケースで、売値が安価なときは本特例の対象になる可能性があります。
参考:低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除|国税庁
3-10. 相続空き家の3,000万円特別控除を利用する
売却する不動産を相続・遺贈で取得しているケースで、2027年12月31日までに売却する場合は最高3,000万円の控除を受けられます。本特例を適用するには、以下の条件に該当していなければなりません。
控除の適用要件
- 売却する不動産が以下の条件に該当する
- 1981年5月31日以前に建設された
- 区分所有建物ではない(マンションやビルなど)
- 相続開始直前で被相続人以外の居住者がいない
- 相続から譲渡まで居住・貸付されていない
- 譲渡時に一定の耐震基準を満たしている
- 相続開始から3年後の年の12月31日までに売却する
- 売却価格が1億円以下である
- 売却する不動産が他の特例を受けていない
- 親族や売主と関係がある法人などに売却していない
家屋を取壊して譲渡する場合に、買主が取り壊す場合にも適用ができますが、譲渡の日の翌年2月15日までに実施する必要があります。
本特例を適用する場合は、確定申告のときに以下の書類を税務署に提出する必要があります。
確定申告時に提出が必要な書類
- 譲渡所得の内訳書
- 登記事項証明書(建築年・区分所有登記の有無・相続や遺贈の事実を記したもの)
- 被相続人居住用家屋等確認書
控除額が最大3,000万円と大きく節税効果が高いため、該当する場合は忘れずに適用しましょう。相続開始から3年後の年末までという期限がある点にも留意が必要です。
参考:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
【関連記事】
不動産相続税の基礎知識|計算方法と節税のコツ、関連費用を解説
相続した土地を3年以内に売却したほうがよい?税金控除や売却の注意点
3-11. 相続税納税者なら取得費加算を利用する
相続で不動産を取得して相続税を納税しているケースでは、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」として納税した相続税の一部を取得費に加算できます。本特例を適用する条件は以下のとおりです。
特例の適用要件
- 相続・遺贈で不動産を取得した
- 取得者が相続税を課税された
- 取得した不動産を相続税申告期限の翌日から起算して3年以内に売却している
上記に該当する場合、以下で計算した金額を取得費に加算できます。
● 納税した相続税額 × 課税根拠となった相続税評価額 / (取得した不動産の価額 + 相続時精算課税適用財産の価額 + 暦年課税分の贈与財産の価額)
本特例を適用するときは、以下の書類を添付して確定申告する必要があります。
確定申告時に提出が必要な書類
- 相続税の計算明細書
- 譲渡所得の内訳書
多額の相続税を納税した場合、本特例によって大きく課税譲渡所得を減らせる可能性があるため一度計算してみましょう。
参考:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁
3-12. 収益物件なら特定事業用資産の買い換え特例を利用する
不動産投資や事業に使用している収益物件を売却した場合、一定の条件を満たすと「事業用の資産を買い換えたときの特例」を適用できます。
譲渡価額より新しく取得した不動産の取得価額が上回る場合には、譲渡価額の20%のみの収入があったとして譲渡所得を計算でき、最大で譲渡所得の80%分の所得税を繰り延べすることが可能です。
本特例の具体的な適用条件は以下のとおりです。
特例の適用要件
- 譲渡資産・買換資産双方が租税特別措置法第37条第1項の条件に当てはまる
- 新たに取得した土地の地積が売却した土地の地積の5倍以内である
- 不動産を売却した年の前年から翌年までに新たな不動産を取得している
- 新たな不動産を取得してから1年以内に事業に使用する
- 他の特例を適用していない
- 贈与や交換・代物弁済などで取得していない
また、不動産売却で利益が出た場合は、不動産の用途と所在地に応じて、譲渡価額と取得価額の差額に取得価額の10%~40%を加算した合計額から譲渡所得を計算します。適用する場合は以下の書類を添えて確定申告しましょう。
確定申告時に提出が必要な書類
- 譲渡所得の内訳書
- 新たに取得した不動産の登記事項証明書
- 特定地域内に所在することを証明する書類
ただし、本特例を適用する場合、新規で取得した不動産の税務上の取得価額が減少するため、減価償却費や次に不動産を購入した場合の譲渡所得に影響します。特例を適用するかどうかは、譲渡所得税等の減少額と買い換え特例適用後の所得税等の増加額を試算して判断するようにしましょう。
参考:事業用の資産を買い換えたときの特例|国税庁
4. 譲渡損失が発生したときの税金対策
不動産売却では、取得価額より高く売却できるとは限りません。地価や建物価値の下落に伴って売却額が低下し、譲渡損失が発生するケースがあります。譲渡損失が発生したときは通常、他の不動産を売却して得た譲渡所得から差し引くことが可能です。
事業所得や給与所得といった別の所得と損益通算することは基本的に不可能ですが、マイホームを売却した場合など一定の条件を満たせば損益通算できます。関連する特例や損益通算の可否について以下で詳しく解説します。
参考:不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合|国税庁
4-1. 居住用財産の買い換えにかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用する
マイホームを買い換えたことで譲渡損失が発生した場合、以下に掲載した条件を満たせばその損失を事業所得や給与所得をはじめとした他の所得と損益通算できます。また、損益通算で損失をすべて控除できなかった場合は、翌年から3年以内の期間であれば繰越控除が可能です。
特例の適用要件
- 現に居住しているか居住しなくなった日から起算して3年後の12月31日までに売却する
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている
- 売却日の前年1月1日か売却翌年の12月31日までの間に床面積50㎡以上のマイホームを取得する
- 新たなマイホームに取得した年の翌年12月31日までに居住する
- 新たなマイホームにかかる10年以上の住宅ローンを有している(取得した年の12月31日時点)
本特例を適用する場合は、以下の書類を添えて確定申告してください。
損益通算 |
繰越控除 |
- 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書
- 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
- 売却したマイホームが条件に適合していることを示す書類
- 購入したマイホームの購入日・床面積を証明する書類
- 住宅ローンの残高証明書
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- 損益通算した年の確定申告書の控え
- 損益通算を受けてから繰越控除を適用する年までの確定申告書控え
- 年末の住宅ローン残高を証明する書類
|
譲渡損失が1,500万円発生したケースを想定すると、まずは他の不動産を売却して得た所得から損失を差し引きます。差し引きしきれない場合や該当する所得がない場合は、事業所得や雑所得などから差し引きます。
例えば、事業所得が1,200万円あった場合は、残った損失の300万円を翌年に繰り越します。翌年の事業所得が1,500万円だった場合、繰り越した損失300万円を差し引いた1,200万円から所得税を計算します。
なお、本特例は合計所得金額が3,000万円を超えている年には適用できません。新たなマイホームを自己資金で取得した場合も適用不可です。
参考:マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例|国税庁
4-2. 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用する
買い換えではない単純なマイホームの売却でも、住宅ローン残高を下回る価額で売却して損失が発生した場合は、以下の条件を満たせば損益通算や繰越控除が可能です。
特例の適用要件
- 現に居住しているか居住しなくなった日から起算して3年後の12月31日までに売却する
- マイホームを取り壊している場合は土地を貸し出しなどの用途に使用していない
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えている
- 売却した年の12月31日時点で償還期間10年以上の住宅ローン残高が残っている
条件を満たした場合の損益通算・繰越控除の上限額は、住宅ローン残高から売却価額を差し引いた金額です。例えば、住宅ローン残高5,500万円のマイホームを4,500万円で売却した場合、損益通算・繰越控除できる金額は1,000万円です。
まずはその年の事業所得や雑所得などから控除し、残額は翌年以降に繰り越します。本ルールは、居住用財産の買い換えにかかる譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例と同様です。合計所得金額が3,000万円を超えている年に適用できないのも共通です。
繰越控除を適用する場合、売却した翌年の確定申告だけでなく、その後も連続して確定申告書を提出する必要があるため注意が必要です。
参考:特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例|国税庁
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売りたい不動産の相場を知りたい場合は、同一エリアの売却価格をチェックするとよいでしょう。似たような条件の土地の売却価格から平米単価を計算し、売りたい土地の相場を計算します。建物は似たような築年数・構造・延床面積のものを参考にできます。
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