土地の相続・放棄の手続きを進めたいけれども、どのような手順で行えばよいのかわからず悩んでいる方もいるでしょう。
土地の相続・放棄は、それぞれ手続きの流れや必要な書類が異なります。また、土地の相続手続きには費用や税金が発生するため、事前に理解しておくことが大切です。
この記事では、土地の相続・放棄の手続きの流れについて解説します。
- この記事を読むと分かること
-
- 土地を相続する場合の手続き
- 土地を相続放棄する場合の手続き
- 土地の相続にかかる費用や税金
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土地の相続はいつまでに行うべき?

土地の相続登記(名義変更)の手続きは、土地(不動産)の相続によって取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません(※)。登記事項証明書には、土地(不動産)の所有者の氏名や住所が記載されており、相続により所有者が変わった場合は変更が必要です。
正当な理由がなく土地の相続登記を行わなかった場合は、10万円以下の過料を科される可能性があります。
法務省が正当な理由があると認める主な事情は以下のとおりです。
- 相続人が多数であり、戸籍関係書類の収集や相続人の把握などに多くの時間を要する場合
- 遺言の有効性や遺産の範囲などが相続人の間で争われており、不動産の相続人が確定していない場合
- 不動産の相続登記義務がある相続人が、重病もしくはこれに準ずる事情がある場合
- 不動産の相続登記義務がある相続人が、生命・心身に危害がおよぶ恐れがある状態で避難している場合
- 不動産の相続登記義務がある相続人が経済的な困窮で、登記申請に要する費用を負担する能力がない場合
参考:「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(法務省)
土地の相続が発生した際は、早めに手続きを進めましょう。
(※)「不動産登記法」(デジタル庁)
2024年4月から土地の相続登記が義務化

2024年4月1日から、土地(不動産)の相続登記の申請が義務化されました(※)。義務化の背景には、所有者不明の土地が増加したことが挙げられます。
2024年4月1日以前は、土地の相続登記の申請は任意だったため、所有者不明の土地が増加し、土地活用が円滑に進まない状態が続いていました。加えて、高齢化の加速によって、相続登記されない土地の増加が懸念されていました。
このような問題を解消するために、相続登記の申請が義務化され現在に至っています。
(※)「相続登記の申請義務化について」(法務省)
土地を相続する場合の手続き

土地を相続する場合は、以下の手順で手続きを進めます。
- 遺言書を確認
- 土地の相続順位を確認
- 土地を含む相続財産を調査
- 遺産分割協議を実施
- 土地の相続登記を申請
- 相続税を申告・納付
それぞれの手順を解説します。
1.遺言書を確認
土地の相続が発生した際には相続人を確定するために、被相続人(財産を残して亡くなった方)が遺言書を残しているか確認しましょう。
遺言書がある場合は、遺言書に記載された内容に従って相続人を確定し、相続を行います。遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続人が被相続人の財産を相続します。
2.土地の相続順位を確認
土地の相続順を確認しましょう。土地を含む遺産は、民法により以下のように相続順位が定められています(※)。
- 必ず相続人となる:被相続人の配偶者
- 第一順位:被相続人の子ども(子どもが亡くなっている場合は孫)
- 第二順位:被相続人の父母や祖父母
- 第三順位:被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥、姪)
参考:「相続人の範囲と法定相続分」(国税庁)

被相続人の配偶者は、必ず相続人となります。相続人を調査する際は、被相続人の出生から死亡までが記載されている戸籍謄本の取得が必要です。
(※)「民法」(デジタル庁)
3.土地を含む相続財産を調査
土地以外に相続財産があるか調査が必要です。相続財産の調査では、被相続人が所有する預貯金や借金などの全財産を洗い出します。調査対象となる相続財産の主な項目は、以下のとおりです。
- 不動産(土地、建物)
- 現金、預貯金
- 株式、有価証券
- 保険
- 住宅ローンや車ローンなどの借入金
被相続人が所有している不動産がわからない場合は、以下の方法で確認できます。
- 登記簿謄本の取得
- 固定資産税の納税通知書
- 固定資産課税台帳
4.遺産分割協議を実施
相続財産を調査したら、相続人全員で遺産分割協議を実施します。遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分配について協議・同意する手続きです。相続した土地を分割する方法には、以下の4つがあります。
遺産分割の種類 | 概要 |
---|
現物分割 | 土地と建物は配偶者、貯金は子など、財産をそのまま分割する方法 |
代償分割 | 特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に対して相続割合に応じた代償金(現金など)を支払う方法 |
換価分割 | 不動産を売却し、売却で得られた代金を相続人で分割する方法 |
共有分割 | 複数の相続人の共有名義で不動産を相続する方法 |
参考:「遺産分割Q&A」(裁判所)
遺産分割協議により遺産の分配方法を相続人全員が合意したら、遺産分割協議書を作成します。遺産の分配方法について、相続人のうち一人でも反対意見が出た場合は、家庭裁判所に遺産分割の調停や審判を申立てなければなりません。
5.土地の相続登記を申請
土地の相続人が確定したら、土地の所在地を管轄する法務局で相続登記を申請します。申請時には、以下の書類が必要です。
- 登記申請書
- 遺産分割協議書
- 相続関係説明図
- 被相続人の戸籍謄本(戸籍事項証明書)
- 被相続人の除籍謄本
- 被相続人の改製原戸籍
- 被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
- 相続人の戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)
- 相続人の印鑑証明書
- 相続人の固定資産課税明細書
- 相続人の住民票
参考:「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」(法務局)
遺産分割協議以外で土地を相続する場合、遺産分割協議書と印鑑証明書は不要です。遺言書にもとづき相続する場合は、被相続人の遺言書の提出が必要です。
6.相続税を申告・納付
土地を含む相続財産に相続税が発生する際は、土地の所有者が亡くなった日から10ヶ月以内に相続税を申告・納付しなければなりません(※)。
相続税の申告・納付期日は、いかなる理由があっても延長されません。たとえば、遺産分割協議が10ヶ月以内にまとまらない場合でも一旦、相続税を申告・納付する必要があります。
遺産分割が成立した際は、不足分の納付や納めすぎた分の請求により納付額の調整ができます。
(※)参考「相続財産が分割されていないときの申告」(国税庁)
土地の相続を放棄する場合の手続き

土地を相続放棄する場合の手続きは、以下のとおりです。
- 土地を含む相続財産を確認
- 家庭裁判所へ提出する書類を用意
- 照会書を記入して返送
- 相続放棄申述受理通知書を確認
それぞれの手順について解説します。
1.土地を含む相続財産を確認
土地の相続を放棄する際は、土地を含むすべての相続財産(貯金・借入金など)を調査します。
相続放棄は「被相続人のすべての財産を相続しない」ことを指し、土地のみを相続放棄することはできません。そのため、被相続人が所有していたすべての財産を洗い出し、相続するか検討が必要です。
2.家庭裁判所へ提出する書類を用意
相続放棄する場合は、財産の所有者が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てをしなければなりません(※)。その際、以下の書類を提出する必要があります。
- 相続放棄の申述書
- 標準的な申立添付書類
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票
- 申述人(放棄する方)の戸籍謄本
参考:「相続の放棄の申述」(裁判所)
なお、被相続人との続柄に応じて、以下の書類も揃える必要があります。
続柄 | 必要書類 |
---|
配偶者や子 | 被相続人死亡の記載のある戸籍謄本 |
孫 | 被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍謄本 |
父母 | 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本 |
兄弟姉妹 | 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、被相続人の直系尊属死亡の記載のある戸籍謄本 |
甥姪 | 被代襲者の死亡の記載のある戸籍謄本 |
参考:「相続の放棄の申述」(裁判所)
家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出する際は、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要です。連絡用の郵便切手代金は、各家庭裁判所のホームページで確認できます。必要書類の手配は時間がかかるため、早めに準備しましょう。
(※)参考「相続の放棄の申述」(裁判所)
3.照会書を記入して返送
家庭裁判所から「相続放棄照会書」が届いたら、必要事項を記入して期限までに返送します。相続放棄照会書とは「本人の意思により相続放棄をしたか」を家庭裁判所が確認するための書面です。
相続放棄照会書は、家庭裁判所に相続放棄を申立てた後、2週間から1ヶ月程度で郵送されます。
4.相続放棄申述受理通知書を確認
家庭裁判所が相続放棄を受理したら「相続放棄申述受理通知書」が送付されます。相続放棄申述受理通知書は、照会書を返送してから10日程度で届きます。
相続放棄申述受理通知書は再発行できません。万が一紛失した場合は、家庭裁判所へ相続放棄申述受理証明書を申請する必要があります。
土地の相続手続きは自分で行える?

土地の相続手続きは、自分で行えます。ただし、土地相続の申請書類に不備があると再提出する必要があり、手間がかかります。
適切に手続きができるか不安がある場合や、迅速に手続きを進めたい場合は、土地相続に詳しい司法書士や弁護士などの専門家に依頼するのがおすすめです。
土地の相続にかかる費用

土地の相続には、以下のような費用がかかります。
費用項目 | 目安額 |
---|
戸籍謄本 | 450円 |
住民票 | 300円 |
印鑑登録証明書 | 300円前後 |
土地(不動産)や相続財産の調査費用 | 10万〜30万円程度 |
遺産分割協議書の作成費用 | 10万円程度 |
戸籍謄本や住民票、印鑑登録証明書などの取得費用は、各自治体によって異なります。土地の所有地を管轄する自治体のホームページで確認しましょう。
相続財産の調査や遺産分割協議書の作成などを専門家に依頼する場合は、依頼料の支払いが必要です。依頼料は調査する範囲や遺産総額などによって異なります。
土地の相続にかかる税金

土地の相続にかかる税金は、以下のとおりです。
それぞれの税金について詳しく解説します。
登録免許税
登録免許税とは、相続登記を申請する際にかかる税金です。相続登記における登録免許税の税額は、以下のとおりです。
登録免許税=土地(不動産)の固定資産評価額×0.4%(税額) |
参考:「登録免許税の税額表」(国税庁)
なお、以下のケースに該当する場合、2027年3月31日まで免税措置が適用されます。
- 相続する土地の固定資産評価額が100万円以下の場合
- 土地を相続したにもかかわらず、土地の所有権の移転登記を受ける前に死亡した場合
参考:「相続による土地の所有権の移転登記等に対する登録免許税の免税措置について」(国税庁)
相続税
相続税とは、被相続人から土地や財産などを受け継いだ際に発生する税金です。相続税は課税対象となる財産の総額が、基礎控除額を超えた場合に生じます。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数) |
参考:「相続税の税率」(国税庁)
たとえば、遺産総額が6,000万円で法定相続人が配偶者と子2人の場合、基礎控除4,800万円を差し引いた1,200万円が課税対象となります。
土地の相続税の計算方法については、以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてください。
▼関連記事
土地の相続税はいくらかかる?計算方法や評価額の調べ方、使える控除を紹介
土地の相続にかかる費用や税金を抑える制度

土地の相続にかかる費用や税金を軽減できる制度は、以下のようなものがあります。
- 小規模宅地等の特例
- 配偶者の税額軽減
- 未成年者の税額控除
- 障害者の税額控除
- 相次相続控除
それぞれの制度について詳しく解説します。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、要件を満たした土地を相続する際に相続税評価額を50%〜最大80%減額できる制度です。小規模宅地等の特例を適用できる土地の種類や限度面積、減額割合は、以下のように定められています。

出典:「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(国税庁)
たとえば、330㎡の居住用宅地の相続税評価額が5,000万円の場合、本特例を適用すると、
評価額が4,000万円減額されるため、相続税の負担が大幅に軽減されます。
特例を受けるには、以下のような要件を満たす必要があります。
- 被相続人がその土地を居住用または事業用として使用していた
- 相続人が引き続き、相続した土地を使用する
- 相続税の申告期限(相続開始から10か月以内)までに本特例の申請をする
参考:「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」(国税庁)
配偶者の税額軽減
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が土地を含む財産を相続した場合に利用できる制度です。以下の金額のうち、どちらか多い金額までは相続税が発生しません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分(2分の1)相当額
参考:「配偶者の税額の軽減」(国税庁)
たとえば、1億6,000万円までの財産を配偶者が相続した場合、相続税は発生しません。また、1億6,000万円以上の財産を相続した場合でも、法定相続分である2分の1に相当する金額までは相続税が発生しません。
未成年者の税額控除
未成年者の税額控除とは、未成年者が財産を相続した場合に相続税額から一定の金額を差し引く制度です。未成年者が満18歳になるまでは、1年につき10万円を控除できます。
未成年者の税額控除の適用対象となる主な要件は、以下のとおりです。
- 日本国内に住所がある
- 相続開始日が18歳未満である
- 法定相続人である
参考:「未成年者の税額控除」(国税庁)
日本国内に住所がなくても一定の要件を満たせば、未成年者の税額控除を適用できます。
障害者の税額控除
障害者控除とは、相続人が85歳未満の障がい者の場合に相続税額から一定の金額を差し引く制度です(※)。控除額は、満85歳になるまでの年数1年につき10万円で計算します。
税額控除を受けるには、以下の要件をすべて満たさなければなりません。
- 相続財産を取得したときに日本国内に住所がある
- 満85歳未満の一般障がい者もしくは特別障がい者である
- 相続財産を取得したときに障害者である
- 法定相続人である
参考:「障害者の税額控除」(国税庁)
相続人が満85歳になるまで数ヶ月しかない場合は、切り上げて1年として計算できます。また、特別障がい者の場合は1年につき20万円で計算可能です。
相次相続控除
相次相続控除とは、10年以内に同じ財産に対して相続税が発生した場合に相続税額を控除する制度です(※)。控除額は、経過年数に応じて1年に10%の割合で減額されます。
相次相続控除が適用されるのは以下のとおりです。
- 被相続人の相続人であること
- 10年以内に同じ財産で相続が発生している
- 10年以内に被相続人が財産を相続し、相続税が課税されている
参考:「相次相続控除」(国税庁)
相続した土地を売却したい場合はどうすればいい?

相続した土地を売却する方法は、以下が挙げられます。
- 個人で売却手続きを行う
- 不動産会社に仲介もしくは買取を依頼する
個人売買では手続きをすべて自分で行わなければならず、トラブルに発展する可能性があります。土地の売却トラブルを避けるなら、不動産会社に依頼するのがおすすめです。
不動産会社に依頼すると土地を買い取ってもらえたり、仲介により買主を探してもらえたりします。また、土地の査定から引き渡しまでサポートしてもらえるため、スムーズに土地を売却できるでしょう。
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土地売却の流れを紹介!税金対策や高額売買するためのポイントなども解説
土地の相続で悩んでいる場合は専門家に相談しよう!
土地を相続する場合は相続人を確定し、土地を含む相続財産の調査が必要です。相続人が複数いる場合は遺産分割協議を行い相続財産を分配します。
相続した土地を売却する場合、個人売買だと土地の調査や売買契約まですべての手続きを行わなければならず、時間がかかったりトラブルに発展したりする可能性があります。相続した土地の売却を検討している場合は、土地売却の専門家に相談するのがおすすめです。
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三菱地所リアルエステートサービス 新事業推進部
「不動産売却マスター」編集長
【保有資格】宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、衛生管理者、ファイナンシャルプランナー3級
2008年入社。人事部門で福利厚生制度などの企画運営、住宅賃貸部門でタワーマンション営業所長、高級賃貸マンション企画などを経て、2018年より経営企画部で主に事業開発を担当し、複数の新規事業立上げに従事。2020年度三菱マーケティング研究会ビジネスプランコンテスト最優秀賞受賞。「TAQSIE」では初期構想から推進役を担い、現在もプロジェクト全般に関わっている。
「不動産の売却に特化した情報を発信する『不動産売却マスター』編集部です。不動産の売却や買取をスムーズに進めるポイントや、税金、費用などをわかりやすく解説します」