家を売ると決めたとき、多くの人がまず思い浮かべるのは「不動産会社に頼んで買主を探してもらう」という流れなのではないでしょうか。ただ実は、住まいの手放し方はそれだけではありません。少しでも高く売りたいのか、現金化を急ぎたいのか、売った後も住み続けたいのか。条件や希望によって最適な売り方は異なります。
本記事では代表的な4つの売り方を整理し、最近の動向も踏まえながら、それぞれの売却方法がどんな人に合うのか考察していきます。
- この記事を読むと分かること
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- 「仲介」は王道とも言える不動産売却方法。高値売却が目指せる
- 「買取」は早さと確実さにおいて優位性が高い。近年、買取価格も上昇傾向にある
- 「リースバック」は売却後も住み続けられる手段。高齢者世帯を中心に利用が広がっている
- 「任意売却」は住宅ローンの返済が難しくなった状況で検討される売却方法
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1.仲介:時間をかけて高く売る王道の方法

| メリット |
デメリット |
| ・市場価格に近い金額で売却できる |
・売却が確定するまでの時間が読みにくい
・買い手が決まるまで時間を要することがある
・内覧対応や価格交渉の手間がかかる
・成約時の仲介手数料の支払いが必要 |
もっとも一般的な不動産の売り方が「仲介」です。不動産会社に売却を依頼し、広告や物件情報サイトを通じて買いたい個人を探してもらう方法を指します。
仲介の利点は、市場価格に近い水準で売れる可能性が高いことです。一方で、買い手が見つかるまでに数ヶ月かかるのが一般的で、売却額が確定するまで時間が読みにくい面があります。
内覧の対応や価格交渉も発生するため、ある程度の手間と期間を許容できる人に向いています。また、売却が成立した際には、成約価格に応じた仲介手数料が必要になります。
仲介手数料は法律で上限が「物件価格×3%+6万円(税別)」(売買金額400万円以上。800万円以下の低廉な空き家等を除く)と定められており、多くの不動産会社は上限額を請求します。
売却にかかる期間は長期化傾向に

出典:東日本不動産流通機構
中古住宅の平均成約日数は、ここ数年で長期化の傾向が見られます。2025年に首都圏で成約した中古戸建ての平均成約日数は100.9日、中古マンションは82.5日です。
「成約日数」とは、レインズ(不動産業者専用の物件情報システム)に登録してから売買契約に至るまでの期間を指します。売り出し開始からレインズ登録までの期間は1週間程度、そして中古住宅は売買契約から引き渡しまで2ヶ月前後の期間が空くのが一般的であることを考慮すると、売却開始から引き渡しまでに平均して4〜5ヶ月程度かかる計算になります。
平均以上の期間がかかることも少なくない
4〜5ヶ月程度というのはあくまで平均であり、半年や1年経っても売れない不動産も決して少なくありません。とくに以下のような物件は買い手が見つかるまでに時間を要しやすい傾向があります。
- 築年数が古く駅から遠いなど、立地や築年で条件が見劣りする
- 周辺に同条件の競合が多く、価格や設備で埋もれやすい
- 空き家率が高く、エリア全体の需要そのものが弱い
- 共用部の劣化や修繕積立金の不足など、管理状態に不安があるマンション
- 築年数から想像される以上に、室内の使用感や傷みが目立つ
2.買取:早さと確実さを重視する選択肢

| メリット |
デメリット |
・売却までの期間が短く、金額が早く確定する
・仲介手数料の支払いが不要
・広告を出さずに進められ、近隣に知られにくい |
・仲介で売る場合より価格が低くなることが多い |
時間的な余裕がない場合や仲介ではなかなか売れない物件に適しているのが「買取」です。不動産会社が買主となって物件を直接買い取るため、市場で買い手を探す工程を省けます。
買取の大きな利点は、売却までの期間が短く、金額も早い段階で確定することです。また、不動産会社との直接取引になるため、仲介手数料(物件価格の約3%+消費税など)が不要な点も大きなメリットといえます。 住み替えの期限が決まっている人や相続した家をできる限り早く売却したい人にとっては、非常に有効な手段です。
相場価格に近い金額で買い取ってもらえる事例が増加
買取価格については、長らく「相場の7掛け」が目安と言われてきました。しかし近年、この常識が変わりつつあります。物件によっては相場の8〜9割、あるいは相場と遜色ない金額で買い取ってもらえるケースも増えているのです。
買取価格が上昇している主な要因として、まずは好調な不動産市況が挙げられます。買取会社は、買い取った不動産をリフォーム等して再販し、利益を出すことを目的としています。そのため、再販時に高く売れる見込みが立つほど、仕入れ価格(=買取価格)を高値に設定しやすくなります。
加えて、買取再販業者の増加に伴う競争の激化も、価格を押し上げている要因です。優良な物件を確保したい事業者同士が競合すれば、提示価格は自然と相場に近づきます。とくに立地などの条件が良く、再販しやすい物件は複数社による競り合いになるため、従来の「7割」といった価格では仕入れられないのが実情です。
相場に近い金額で売却でき、なおかつ仲介手数料がかからず、売却の手間や期間も大幅に削減できるとなれば、仲介で売る場合との「手残り金額」の差は縮まっていると言えます。
中古住宅買取再販市場は拡大傾向に

出典:株式会社矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査(2025年)」(2025年11月28日発表)
矢野経済研究所の調査によれば、ここ数年、中古住宅買取再販市場(中古戸建住宅及び中古マンション) の拡大が続いており、2025年の成約戸数は前年比18.8%増の6万2,700戸に達する見込みで、2030年には2024年比43.2%増の7万5,600戸まで伸びると予測されています。
新築価格の高止まりを背景に、リフォーム・リノベーション済みで新築同様に住める再販物件への需要が伸びていることが大きな要因です。かつて「仲介で売れない物件のための手段」と見られがちだった買取が、価格と手間の両面で現実的な選択肢として定着しつつあるのは、こうした市場の構造変化の表れともいえます。
3.リースバック:売っても住み続けられる仕組み

| メリット |
デメリット |
・売却後も同じ家に住み続けられる
・まとまった資金を一括で受け取れる |
・売却価格が市場相場より低くなりやすい
・家賃の支払いが続く
・定期借家契約の場合、住み続けられない可能性がある |
まとまった資金が必要だけど、今の住まいから離れたくない。こうした希望に応えるのが「リースバック」です。自宅をリースバック事業者に売却し、その事業者と賃貸借契約を結ぶことで、家賃を払いながら同じ家に住み続けられます。まとまった資金を手にしながら生活環境を変えずに済むため、老後資金の確保や住み替え資金の準備を目的に、高齢者世帯を中心に利用が広がっています。
ただし、所有権が事業者に移る以上、これまでと同じように住み続けられるとは限りません。設備の変更には事業者の承諾が必要になることがあり、定期借家契約の場合は契約期間が満了すると住み続けられなくなる可能性もあります。家賃や契約条件が割に合わず、後からトラブルに発展するケースも散見されます。
2026年夏、新たなガイドライン策定へ
トラブルの多発を背景に、国の整備も進んでいます。国土交通省は2022年、契約前の確認事項や注意点をまとめた消費者向けのリースバックガイドブックを公表しています。
さらに2026年6月には、契約時に解約条件や家賃、更新の可否といった重要な情報の告知を求める新たなガイドラインを夏までにまとめる方針が示されました。現在、売買契約の解除の条件や賃料、原状回復の負担などの不告知を禁じる方向で検討されています。
4.任意売却:ローン返済が行き詰まったときの方法

| メリット |
デメリット |
・競売より高い価格で売れる可能性がある
・引っ越し時期などについて融通が利きやすい
・売却の事実が周囲に知られにくい |
・金融機関の承諾が前提となる
・売却額がローン残債を下回り、残債が残る場合がある
・信用情報に影響が及ぶ |
住宅ローンの返済が難しくなった状況で検討されるのが「任意売却」です。一定期間返済が滞ると最終的に物件は競売にかけられますが、その前に金融機関の同意を得て市場で売却する方法を指します。
競売では市場相場より低い価格で落札されやすく、売却の事実も公になります。一方、任意売却なら市場価格に近い金額で売却することも可能で、引っ越し時期などについても一定の融通が利きやすくなります。
競売を避けられる利点はあるものの、避けるべきは「滞納」
任意売却は、競売を避けられる唯一ともいえる手段です。ただし、住宅ローンを滞納する前であれば任意売却以外にも打てる手があります。
それは、貸付条件の変更です。貸付条件の変更とは、借入金の返済が困難になった際に、金融機関と交渉して返済期間の延長や毎月の返済額の減額など、当初の契約条件を一時的に見直してもらうことを指します。
金融庁によれば、2025年4月から2026年4月末までの貸付条件の変更の申し込みに対する実行率は98.6%に及びます。つまり、金融機関に申し込みさえすれば、ほとんどの場合はなんらかの形で貸付条件を変更してもらえるということです。
金融庁も、住宅ローンの返済に不安が生じた際は早めに金融機関へ相談するよう促しており、条件変更の申し込みに対して金融機関が誠実に対応することを求めています。

出典:金融庁
自分の目的から逆算して選ぶ
ここまで見てきた4つの方法は、優先したいものが何かによって最適解が変わります。高く売りたいなら仲介、早さと確実さなら買取、住み続けたいならリースバック、競売を避けたいなら任意売却という具合に、出発点はいつも「自分が何を一番に求めているか」です。
ただし、それぞれの不動産売却を取り巻く状況は刻々と変わっています。かつての常識が通用しない場面も増えている今、古い前提のまま決めてしまわず、最新の動向を踏まえて選ぶことが納得のいく売却につながります。
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