築年数が経過したマンションは新築と比べ価値が下がりがちですが、必ずしも売れないわけではありません。特に、築50年でも、条件によっては売却可能です。この記事では、築50年マンションの価値と、売れるマンションの特性を紹介します。さらに、実際の売却例も挙げていますので、参考にしてください。
- この記事を読むと分かること
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- 築50年のマンションでも、立地や管理状況が良ければ売却可能です。
- 資産価値は土地の価値にも依存しますが、築年数が増すにつれ下がる傾向にあります。
- 実際に築50年マンションが売却された事例も紹介。
築50年のマンションの資産価値は?
マンションの資産価値は土地と建物の価値によって決まります。土地の価格も含まれるので、築50年の非常に古いマンションであっても資産価値全体の評価額はゼロになりません。
とはいえ、建物の築年数が古いほど資産価値が下がる傾向があることは事実です。以下の公益財団法人東日本不動産流通機構の「首都圏中古マンション・中古戸建住宅
地域別・築年帯別成約状況【2022年10〜12月】」のデータをご覧ください。
出典:首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2022年10~12月】(東日本不動産流通機構)のデータをもとに作成
首都圏における築0年から5年のマンションの成約㎡単価は110万円ですが、築31年以降は39.7万円となっています。グラフのとおり、マンションの資産価値は築年数が経つにつれて徐々に下がっていくことが分かります。
では、築50年のマンションは実際にどの程度の金額で取引されているのでしょうか。
次の図は、2022年度の東京都内における中古マンションの「取引価格(総額)」=成約価格を表しています。
出典:国土交通省 土地総合情報システム Land General Information Systemをもとに作成
2022年度の東京都における築50年〜60年未満のマンションの平均成約価格は約2,800万円です。築40年〜50年未満のマンションの平均成約価格もほぼ変わりません。
築10年未満のマンションの平均成約価格は約5,100万円なので、築50年のマンションは45%程度の価値ですが、それでも売却はできていることが分かります。
築50年のマンションがなかなか売れない理由は?
築50年のマンションが売れない時に考えられる5つの理由を紹介します。
1.建物の見た目がよくない
買い手が築50年のマンションの強度や古い見た目などに不安を感じて、購入の候補から外しているケースが考えられます。
また内覧に至ったとしても、内覧時に設備や建物の古さを目の当たりにして、購入を思いとどまるケースもあるでしょう。
「既存住宅を選ばなかった理由」(出典:国土交通省独自調べ ※平成28年10月実施)において、「品質に対する不安」や「見た目の汚さ」が多く挙げられていることからも、この理由が多いことが分かります。
2.新耐震基準に適合していない
新耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日から施行された構造基準で、震度6強から7程度の大規模な地震でも、人命に危険が及ぶような倒壊はしないことを目標としています。
一方で旧耐震基準は、1981年(昭和56年)5月31日以前の建築において適用されていた基準です。 震度5程度の地震で倒壊しないという基準であり、新耐震基準よりも地震に弱い可能性が高いと言えます。
よって、旧耐震基準のマンションは耐震性の観点から購入を避けられることがあります。
旧耐震基準と新耐震基準の比較
耐震基準 |
震度5程度の中地震 |
震度6強から震度7程度
の大地震
|
旧耐震基準
(1981年5月31日以前)
|
倒壊・崩壊しない |
規定がなかった |
新耐震基準 |
軽微なひび割れ
程度にとどまる
|
倒壊・崩壊しない |
出典:国土交通省「住宅・建築物の耐震化に関する現状と課題」、「新耐震基準の概要」をもとに作成
2023年6月時点では、築42年以上の建物は旧耐震基準に基づいていますが、中には耐震診断を受けて耐震改修をおこなった物件も存在します。築50年のマンションであっても、改修によって新耐震基準に近い強度にすることは可能です。
3.住宅ローンの借入が難しく、減税の対象にもならない
築50年のマンションは、鉄筋コンクリート造の建物の耐用年数である47年を超えています。よって建物の評価額がゼロになるケースが多く、購入希望者の住宅ローンの借入が難しいのが実情です。
借入できたとしても希望額に届かない可能性があり、資金に余裕がある人しか購入できないことが、築50年のマンションの売却を難しくしています。
また、住宅ローン減税の対象にならないことも、売れにくさの要因です。対象となるのは1982年以降に建築された新耐震基準に適合する住宅であり、築50年のマンションは対象外になります。所得税を減らせる住宅ローン控除を期待する人にとっては、大きな減点になるでしょう。
4.高額な修繕積立金が必要
マンションの所有者は、管理費と修繕積立金を毎月支払わなければなりません。築50年のマンションは、高額な修繕積立金が売却の際のネックになっている可能性があります。
一般的にマンションは築15年以下で1回目、築26年から33年で2回目、築41年以上で3回目の大規模修繕を実施していることが多く、長期修繕計画によって修繕積立金が値上がりしていくケースがほとんどです。(出典:国土交通省 令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査)
国土交通省のデータによると、2015年(平成27年)以降のマンションの修繕積立金の平均額は6,928円です。一方で、1969年(昭和44年)以前のマンションの平均額は25,348円であり、3倍以上になっています。多くの修繕が必要な古いマンションほど高いので、これが売れにくい原因のひとつと言えます。
月/戸当たりの修繕積立金総収入額の平均
完成年次別 |
平均(円) |
2015年以降 |
6,928円 |
1969年以前 |
25,348円 |
出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」をもとに作成
5.マンションの管理体制が機能していない可能性がある
マンションの資産価値は、管理体制の状況によっても変わります。マンションの管理規約は社会情勢や建物の老朽化、居住者の高齢化などに合わせて変更が必要なものです。
しかし、規約の変更には総会での決議が必要であり、管理規約集を正確に更新することも簡単な作業ではありません。規約変更を何度も行っている築50年のマンションは管理体制が上手く機能していない傾向があり、売れない原因になっていると考えられます。
きちんと修繕の計画が立てられており、共用部分の維持管理がなされ、清掃が行き届いているマンションは、居住性がよいため人気が下がりにくいです。
すでに入居している人が長く住み続けたいと思っているマンションは売りに出る頻度も少なく、結果として値崩れしにくくなります。
築50年でも売れるマンションとは?
ここまで築50年のマンションの資産価値や売れない場合の理由を紹介してきましたが、築50年以上でも一定の条件を満たしていれば売却できる可能性があります。
この章では、築50年でも売れるマンションの特徴を4つ紹介します。
1.立地条件がよい
築年数が古くても駅や商業施設から近く、利便性のよいマンションには需要があります。小・中学校に近い立地や、閑静な住宅街も人気です。
日本最古の分譲マンションといわれている「宮益坂ビルディング」がよい例です。渋谷駅から徒歩2分、表参道駅から徒歩11分、神泉駅から徒歩13分という複数の路線が使える場所に、1953年(昭和28年)に竣工したマンションです。
その後、建て替え工事が2020年7月に竣工し、現在は宮益坂ビルディング ザ・渋谷レジデンスとして生まれ変わっています。
現在はさらに利便性が向上。渋谷駅のヒカリエデッキに直結し、駅まで徒歩1分のという便利さになっています。
2.敷地に余裕を持って作られている
築年数が古くても敷地にゆとりがあれば、建て替え時に床面積を増やすことができます。余剰分を再販し、建築費を捻出できることもあるでしょう。このメリットが資産価値を下げにくくし、需要を生む可能性もあると言えます。
しかし、中古マンションは、建築基準法の改正により既存不適格建築物になるケースも存在します。
既存不適格建築物とは、竣工時には法令に則って建築されていたものが、法令の改正を経て現行の基準には適合しなくなった建築物のことを指します。
そのままの状態でも違法にはなりませんが、建て替えを考慮した場合、同じ大きさのマンションを建てられないケースもあることから、資産価値が低くなることもあるでしょう。
3.管理体制が機能し、改修や修繕が行われている
維持管理がきちんとおこなわれており、大規模修繕が適切に実施されているマンションは資産価値が上がると考えられます。
適切な管理によって共用部の清掃が行き届いていることや、耐震診断・耐震改修を実施していることなども資産価値に影響します。
1972年(昭和47年)竣工の江古田パークマンションがよい例です。築50年超のマンションですが、耐震改修やサッシ改修を大規模修繕と併せて実施し、既存不適格事項まで解消しました。
多額な予算がかかる大規模修繕ですが、サッシや玄関ドア改修については補助金を、耐震補強工事については練馬区の助成金を利用するなど、費用の削減も上手くできた事例といえます。
立地条件がよい点もありますが、築50年超でも4,000万円(専有面積52.38㎡)近い価格で取引されています。
4.リフォームされている
築50年のマンションでも、室内を新築のようにリフォームされている物件は売却しやすくなります。
内装や水回りをリフォームしているマンションは、資産価値がアップします。また、たとえば現代人のライフスタイルに合わせて間取りを大きく変更している場合はさらに需要が高まるでしょう。
1970年(昭和45年)竣工の千駄ヶ谷緑苑ハウスは「リファイニング®️」と呼ばれる方法で耐震補強や内外装、設備の交換などの工事を実施。さらに、ロフトを新設したり、ライティングにこだわったりと、居住性やデザイン性にも工夫を凝らしました。
その結果、築50年を超えるマンションながら坪単価290万円で完売。千駄ヶ谷駅から徒歩3分、北側は新宿御苑という立地も魅力ですが、リフォームによって資産価値がアップした例です。
築50年のマンションの売却事例を紹介
築50年のマンションの売却事例を紹介します。築50年のマンションは売れないのではないかと心配している方は、ぜひ参考にしてください。
不動産の成約価格を提供している「レインズマーケットインフォメーション」で、築50年前後のマンションの成約事例を調査しました(成約時期:2022年6月〜2023年5月、調査範囲:中央区・港区・渋谷区・品川区・目黒区)。
最寄り駅 |
駅からの 距離 |
所在 |
価格 (万円) |
専有面積 (㎡)
|
間取り |
竣工年 |
改装の有無 |
高輪ゲー トウェイ |
徒歩8分 |
港区高輪 |
7,500 |
55~60 |
2LDK |
1971年 |
なし |
高輪ゲー トウェイ |
徒歩9分 |
港区高輪 |
3,400 |
35~40 |
1LDK |
1972年 |
なし |
高輪ゲー トウェイ |
徒歩10分 |
港区高輪 |
4,000 |
55~60 |
2LDK |
1968年 |
なし |
恵比寿 |
徒歩5分 |
渋谷区 広尾 |
1,900 |
25~30 |
1K |
1971年 |
なし |
品川 |
徒歩6分 |
港区高輪 |
3,600 |
45~50 |
1LDK |
1965年 |
なし |
八丁堀 |
徒歩7分 |
中央区 新川 |
1,100 |
15~20 |
ワン ルーム |
1974年 |
なし |
大崎 |
徒歩6分 |
品川区 大崎 |
3,500 |
50~55 |
2LDK |
1974年 |
なし |
大崎 |
徒歩11分 |
品川区 北品川 |
1,700 |
25~30 |
1LDK |
1970年 |
なし |
五反田 |
徒歩5分 |
品川区 東五反田 |
2,900 |
30~35 |
1LDK |
1970年 |
改装済み |
五反田 |
徒歩7分 |
品川区 東五反田 |
1,300 |
20~25 |
ワン ルーム |
1974年 |
なし |
五反田 |
徒歩7分 |
品川区 東五反田 |
4,900 |
55~60 |
2LDK |
1971年 |
なし |
五反田 |
徒歩8分 |
品川区 東五反田 |
8,300 |
100~105 |
2LDK |
1973年 |
改装済み |
五反田 |
徒歩9分 |
品川区 西五反田 |
4,200 |
55~60 |
3LDK |
1974年 |
なし |
目黒 |
徒歩2分 |
品川区 上大崎 |
5,800 |
45~50 |
2LDK |
1972年 |
なし |
目黒 |
徒歩3分 |
品川区 上大崎 |
7,000 |
75~80 |
1SLDK |
1970年 |
改装済み |
目黒 |
徒歩4分 |
品川区 上大崎 |
9,000 |
95~100 |
3LDK |
1971年 |
なし |
目黒 |
徒歩5分 |
品川区 上大崎 |
4,100 |
35~40 |
1LDK |
1972年 |
なし |
目黒 |
徒歩5分 |
目黒区 下目黒 |
3,800 |
50~55 |
2LDK |
1973年 |
なし |
目黒 |
徒歩5分 |
目黒区 目黒 |
4,300 |
40~45 |
1LDK |
1966年 |
なし |
目黒 |
徒歩6分 |
目黒区 目黒 |
3,700 |
45~50 |
1LDK |
1971年 |
なし |
築50年のマンションが売れなかったらどうなる?
最後に、築50年のマンションが売却できず所有を続ける場合、どのようなリスクがあるのか紹介します。
①売却の難易度が年々高まる
築年数が増すごとに建物や設備は老朽化し、年々売却の難易度が高まります。
また設備の故障が生じれば、その都度修理費も発生します。維持費の負担が大きいことも懸念事項です。
マンションの数は増加傾向にあり、競合する物件が増えるにもかかわらず、少子化で毎年人口は減る一方です。
戸建ての空き家問題が報じられていますが、すでにマンションの空き家も増加しています。
②修繕積立金・管理費の増加と固定資産税の長期的な負担
修繕積立金は、マンションの築年数が経つにつれて増加する傾向があります。また、電気代の高騰などにより、管理費も値上げが相次いでいます。駐車場を借りている場合、さらに負担は大きくなります。
そして、忘れてはいけないのが固定資産税です。固定資産税は資産価値が低いほど少なくなりますが、たとえ築50年であっても毎年の納税が必要です。
③負の遺産化のリスク・子どもへの影響
築50年のマンションを売却できず、子どもに残すことになると、負の遺産になりかねません。
売却できないマンションを所有し続けることになれば、すぐに月々の管理費や修繕積立金の支払いが発生し、固定資産税も毎年納める必要があります。
相続放棄する方法もありますが、マンション以外の資産も受け取れないことになるので、そう簡単に放棄できるものではありません。
築50年のマンションを売却するなら、早めの行動がおすすめ
築50年のマンションは、立地や条件によってはすぐに売却できる事例もあります。しかし、そうではないケースもあるため、売却を検討しているのであれば早めの行動をおすすめします。
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