• スペシャリストの智
  • リアルな現場
  • The Watch
  • オフィスジャーナル
  • 不動産の税金ガイドブック
  • APPRAISAL NEWS
  • 空室率レポート

企業価値向上のカギとなるクラウド導入で進めるシステム改革 顧客のビジネス価値を高める企業姿勢

クラウドを企業価値向上に生かすかどうかは、最後は経営者の判断

──こうしてシステム投資の対象が変化していくと、人材や組織など企業のあり方にはどんな変化が訪れるでしょうか。

 SoEやSoIの活用でこれまで以上に効果的な営業のアプローチやOne to Oneマーケティングができるようになり、よりプロアクティブな営業活動が求められるようになるでしょうね。営業のスタイルが変われば、当然、ワークスタイルのあり方や業績評価の方法も変わらざるをえません。

──営業拠点などワークプレイスをどのように配置するかも変わっていくのではないでしょうか。このあたりの変化は企業のCRE(不動産)戦略にも影響を与えるだろうと思います。

 ただ、クラウドを活用してどれだけ深いところまで業務改革を進めるかどうかは、やはり経営層の判断になると思います。私たちが提供するソリューションが企業の業務改革を促すのは事実ですが、私たちが提供するのはあくまでもツールにすぎません。それを利用して会社をどう変えたいのかは、ひとえに経営者の理念や情熱にかかっていると思います。
 私が唯一懸念していることがあるとすれば、クラウドを活用してものすごい勢いで成長している欧米の企業がある一方で、クラウドを使いこなせないままでいる日本企業がある。その間に差が開いてしまうのではないかということ。もちろん、その差を縮めるのは私たちITベンダーの仕事なのですが……。

──日本の大手金融機関もようやく業務システムのいくつかでクラウドを使うようになりました。大企業が基幹システムをクラウドで運用したり、Webアプリを業務に活用するような時代もやってくるのでしょうか。

 私たちセールスフォース・ドットコムのお客様事例をみても、実は損保業界などはクラウドの取り組みは早かったんです。製造・流通・サービス業に比べると、金融機関のIT投資意欲は昔から高いですからね。ただ、生保業界は機微情報を扱うので、個人情報保護法の観点から導入がやや遅れました。しばらくは様子見をしていたメガバンクも「公益財団法人金融情報システムセンター(FISC)」が金融機関等向けのコンピュータシステムのガイドラインを整備するにつれて、業務システムにおけるSaaSの活用に積極的に取り組むようになっています。
 金融機関がクラウドを使うのは、自前でデータセンターをもって運用を行うよりもはるかにコストが安いからです。セキュリティー対策も自社で行うより、専門ベンダーに任せた方が安心という認識も生まれ、これがクラウド活用に拍車をかけています。
 最近は、中小企業や個人事業者向けの会計・給与パッケージがクラウドへ移行したり、それをWebアプリとして利用する動きがあります。中小企業なら基幹システムをまるごとSaaSで運用するということはありえない話ではないと思います。

変わらないことのリスクより、変わることのリスクを取る

──当社の「CRE@M」と、これまでお話を伺ったセールスフォース・ドットコム製品とでは、CRE情報とCRM情報という扱う情報の違いこそあるものの、そのツールを活用することで企業価値を向上させるという意味では、狙いや方向性は同じだと思いました。不動産情報は毎日変動するような動的なデータではないですが、これを企業価値向上に生かすという戦略部分は共通していますし、私たちもそういう思いをもってこのシステム開発に取り組んでいます。

 結局のところクラウドを活用するかどうかは、経営者がリスクをどう判断するかによります。クラウド活用によるリスクも当然ありますが、活用しないで旧態依然のシステムのまま動かすリスクのほうが大きいと私は考えます。これは企業システムのどこを変えて、どこを変えないか、その分岐点を見極めることでもあります。クラウド、モバイル、ソーシャル、データサイエンス、IoTを利用すればコストを最小限に抑えて顧客との接点を増やし、顧客の情報を生かし、サービスの質を高め、結果的に自社の企業価値を上げることができる。そのためのリスクをあえてテイクしていく企業こそが、これから生き残っていくのでないかと思います。

──これからはビジネスのサイクルがますます速く回るようになります。変化への対応を適切なタイミングでかつ迅速に行うためにも、ビジネスをどう変えたいのか。そのビジョンを明確にしておくことは前提です。ビジョンの確立、データ活用への意識、そして変化対応へのスピードが、これからの企業価値向上のためには不可欠の要件になるだろうと思います。本日はありがとうございました。

Profile

セールスフォース・ドットコム
専務執行役員 チーフ・トラステッド・パートナー

保科 実

2008年に同社入社後、専務執行役員としてアライアンス、セールスエンジニア、コンサルティングサービス、サポートなど多岐にわたる部門を統括。日本郵政グループ、エコポイント、トヨタフレンドなどのプロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを成功に導く。13 年以降は VAR (付加価値再販パートナー)、OEM ・ ISV パートナーなどを含むアライアンス事業を率いて、現在に至る。

バックナンバー

  1. vol.16
    クリエイティブオフィス戦略で
    新たなイノベーションを
    働き方改革を「場」の視点から再構築
    創造性を促すワークプレイスのススメ
    (百嶋 徹氏)
  2. vol.15
    スペシャリストの智
    CREカンファレンス2017-2018・レポート
    2018年成長する企業の資質とは。
    企業体力強化に備える不動産戦略のポイント。
  3. vol.14
    変革の時代に日本企業の強みを生かす
    CRE戦略を通した「稼ぐ力」の向上
    今後10年の企業ビジョンとCRE戦略の重要性
    (冨山 和彦氏)
  4. vol.13
    企業価値向上のカギを握る
    CREプロフェッショナルの社内育成
    社内外の専門家のネットワークを最大限に活用する
    (村木 信爾氏)
  5. vol.12
    企業価値を高める
    CRE戦略の一環としての
    ワークプレイス改革
    (齋藤 敦子氏)
  6. vol.11
    中堅中小企業が今取り組むべきCRE戦略とは
    不動産の棚卸しから、
    事業継続、相続・承継問題まで
    (平川 茂氏)
  7. vol.10
    リノベーションによる耐震、省エネ、環境保全で
    企業価値の向上
    求められる多様なニーズに対応した
    オフィスビルのリノベーション
    (河向 昭氏)
  8. vol.09
    スペシャリストの智
    CREカンファレンス・レポート
    クラウド化がもたらした加速する社会基盤。
    今の企業価値を考える。
  9. vol.08
    企業価値向上のカギとなる
    クラウド導入で進めるシステム改革
    顧客のビジネス価値を高める企業姿勢
    (保科 実氏)
  10. vol.07
    クラウドを利用した動産管理と企業価値の向上
    「e-Leasing」と「CRE@M」が目指すもの
    (長谷川 善貴氏)
  11. vol.06
    環境保全しながら
    経済合理性のある土地活用を
    (西村 実氏)
  12. vol.05
    不動産を流動化させて経営の劇的な改善を
    バイアウト投資市場からみた企業のCRE戦略
    (南黒沢 晃氏)
  13. vol.04
    現在において考えるべき
    リスクマネジメントとCRE戦略
    (渡部 弘之氏)
  14. vol.03
    企業の成長に欠かせないM&A戦略。
    CRE(企業不動産)の位置づけが重要に
    (大山 敬義氏)
  15. vol.02
    未来に向けたCRE戦略
    外部の専門企業との連携が鍵に
    (百嶋 徹氏)
  16. vol.01
    不動産市況が好転した今年こそ
    CRE戦略再スタートの元年に
    (土岐 好隆氏)