データからみる企業の社宅・寮の今

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目次

企業が福利厚生の一環として従業員に提供する社宅・寮は、保有不動産の見直しや有効活用といった企業不動産(CRE)戦略を実行するうえで、売却や他の用途への建て替えなど、成長投資のためにリソースを振り分けられるケースもあります。社宅・寮に関する費用や不動産に関する公的データをもとに、これまでの推移や現在における状況をまとめました。

福利厚生費からみる社宅・寮

福利厚生費には、企業が福利厚生のために支払う費用のうち、法律で義務付けられている「法定福利費」と、企業が任意で実施する従業員向け福祉施策の費用である「法定外福利費」があります。福利厚生費の構成と、法定外福利厚生費の構成割合は下図の通りです。
法定外福利費の構成をみると、「住宅関連」が最も大きく約半分の48.2%を占めており、大きな位置づけとなっています。この中には、社宅・寮として企業が従業員のために支払っている費用も含まれます。

福利厚生費の構成

福利厚生費の構成

法定外福利費の構成

法定外福利費の構成

※出典:日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告2019年度(2019年4月~2020年3月)」(2020年11月17日)

経団連の調査によると、法定外福利費の中で大部分を占める住宅関連費用の推移は、2000年度以降減少に転じ、抑制傾向が続いていることが分かります。

※出典:日本経済団体連合会「第64回福利厚生費調査結果報告2019年度(2019年4月~2020年3月)」(2020年11月17日)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2020/129_honbun.pdf

社宅の保有形態別企業数割合

人事院の調査では、社宅がある企業において、自社保有と借上げの比率を確認することができます。
社宅がある企業のうち、自社保有していると回答した企業が40.9%、借上げ社宅を利用していると回答した企業が82.2%という結果となりました。複数回答となっているため、保有も借上げもしている企業がありますが、比較すると借上げ社宅が保有の2倍以上となっています。

社宅がある企業のうち
自社保有社宅の企業数割合

社宅がある企業のうち自社保有社宅の企業数割合

社宅がある企業のうち
借上げ社宅の企業数割合

社宅がある企業のうち借上げ社宅の企業数割合

※複数回答
※出典:人事院「令和3年度民間企業の勤務条件制度等調査」より当社が作成

企業が保有する社宅・寮の推移 総務省データ

企業が社宅・寮に充てている費用は長期的に減少傾向であること、また借上げに比べると、社宅・寮を自社保有する企業は少ないことが分かりましたが、次に不動産として保有している戸数について確認していきます。総務省の調査によると、住宅の種類の中で社宅・寮を「給与住宅」という項目でカウントしており、国内における戸数が確認できます。
給与住宅の戸数は、1993年の調査時にピークとなり、その後の調査では毎年減少していることが分かります。
また、2018年の調査結果では、国内における住宅全体のうち給与住宅の占める割合は2.1%となっています。

住宅の総戸数と給与住宅戸数の推移(全国)

※総戸数:住宅の所有の関係「不詳」を含む
※出典:総務省「平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計結果の概要」(2019年9月30日)より当社が作成

企業が保有する社宅・寮の推移 国交省データ

国交省の調査によると、企業が保有する不動産のうち「宅地など(注1)」の種類の中で、社宅・寮を「社宅・従業員宿舎」という項目でカウントしており、国内における件数の推移が確認できます。こちらのデータにおいても、平成5年の調査以降、件数は減少傾向にあり、最新の平成30年では期間中最も少ない69,290件となっています。

※注1)法人名義で所有する土地の事業用資産のうち、「農地」「隣地」「鉄道用地」「送配電等用地」を除外したもの)

「宅地など」のうち「社宅・従業員宿舎」の件数・割合

「宅地など」のうち「社宅・従業員宿舎」の件数・割合

※出典:国土交通省「平成30年法人土地・建物基本調査」(2020年9月30日)より当社が作成

まとめ

ここまでのまとめは以下の通りです。

  • 企業が社宅・寮に支払う費用は抑制傾向
  • 借上げ社宅の割合が自社保有の倍以上
  • 自社保有の社宅・寮の数は減少

企業の社宅関連費用やその保有については、徐々に減少している傾向がありますが、必ずしも全ての企業において同様とは限りません。自社のCRE戦略推進において、社宅・寮はどうあるべきで何が最適かを検討する際に、参考にしてみてはいかがでしょうか。

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