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企業の成長に欠かせないM&A戦略。CRE(企業不動産)の位置づけが重要に

これからは企業収益を伸ばすためのM&A・CRE戦略が必要 M&Aは、再投資・再収益化によって企業が蘇るチャンス

──収益力が評価されるM&Aにおいては、その収益力を高めるためにも、不動産活用は必至というわけですね。

 収益力を高めるためには、スクラップ&ビルドも必要です。全国に30店舗を擁するスーパーマーケットがあるとします。採算が取れているのは20店舗で、10店舗は不採算店である。30店舗まるごと売りたくても、買う側は不採算店も含めて買うわけですから、それほど高い値段は提示できない。それよりも、売り手の側があらかじめ不採算店を閉めて、20店舗に再投資をし、事業全体としての収益性を高めておけば、より高い条件での取引が成り立ちます。
 このように売り手がM&Aの前に自助努力することは大切ですが、実際はそこまでの再投資が自分でできないからこそ会社を売りに出していることが多い。その場合でも、買い手が買収後になんらかの経営改善を行うことで新しい価値を生み出すことは不可能ではありません。
 私が扱ったケースでこういう事実がありました。クレジットカードの印刷技術をもつ会社を同業の会社が買収した例です。わずか数千万円の投資で、機械の配置を変え、工程を改善しただけで、生産歩留まりが20倍以上向上したのです。いまでは遊休地に新しい工場も建設して、ビジネスは順調です。
 企業収益が落ちて再投資できなくなった会社が、M&Aによってより高い資金力の会社と一緒になることで、新しい価値を生み出すことができる。買い手にとっても、一定額の投資で工場や建物が蘇れば、それは負の財産とはいえない。このようにM&Aは、再投資・再収益化によって企業が蘇り、両方の会社にとって大きなメリットをもたらすチャンスともなるのです。

──CREを考えるとき、どうしてもROE(株主資本利益率)を考えなくてはいけませんね。

 不動産の含み経営が成り立たなくなった今は、保有するリソースをいかに有効活用するか、経営者の手腕が問われるようになります。これが世界的に見ると経営の常道なのですが、日本だけはそうではなかった。しかしこれからは、CREは利益を生むもの、有効活用されるべきものであり、その基本にすえるべき経営指標はROEでなくてはなりません。
 そもそも日本企業のROEが欧米と比べて極端に低いのは、シェアを取るために安売りをしすぎて、マージンが低くなっているためです。マージンとはつまり付加価値のことです。ROEを高めるためには収益率を高め、そのためにはマージンを上げ、さらにマージンを上げるために付加価値を高めなくてはなりません。そこで使われる手法がM&Aというわけです。
 つまり、ROE向上のためにM&Aを行うともいえるし、M&Aの結果、ROEが高まるともいえる。どちらの言い方にしても、ROEが高まらないM&Aは失敗というべきです。だからこそ、M&Aは戦略的に重要であり、そこでは当然、CRE戦略を欠かすことができないのです。

これからは企業収益を伸ばすためのM&A・CRE戦略が必要 経営者の世代交代で、CRE戦略は重要課題に

──CRE戦略の必要性は認識していても、なかなか本格的に取り組めない企業があります。何が壁になっているのでしょうか。

 端的にいえば、世代交代が進まないからでしょう。バブルのとき高く買った土地だから廉価では売れない、創業の地は手放せないなど、経営者の不動産への思い入れは相当根強いものがあります。これは世代交代が進まないとなかなか払拭できないものです。しかし、今後は世代交代が進むでしょう。土地に対する過剰な思い入れがなく、合理的に不動産を考えることができる新世代の経営者が登場すれば、日本企業のCRE戦略は大きく変わると思います。
 最初のM&Aの3類型の話に戻りますが、これまでのM&Aと不動産活用というと、どうしても事業承継対策という面が重視されてきました。これからは企業が成長する、収益を伸ばすためのM&A・CRE戦略が必要です。税理士などが個人所有の不動産に対して行っている相続税対策指南のような綿密なサポートを、CRE専門企業が顧客企業の企業不動産に対しても行うべき時期に来ていると思います。不動産はプラスにもマイナスにもなる財産ですが、不動産の実勢価格やその有効活用法をよく知っている経営者は少ない。だからこそ専門企業の出番なのです。
 私ども日本M&Aセンターは、M&Aのプロであり、CREについてもアドバイスまではしますが、実際の不動産売買の仲介は行わないことにしています。この領域はプロに任せるべきだと考えているからです。その意味で優れたCREソリューションをもつ企業と提携することは、私たちにとっても今後重要な課題になっています。

Profile

日本M&Aセンター 常務取締役

大山 敬義

1967年生まれ。91年日本M&Aセンターの設立に参画し同社初のM&Aコンサルタントとなる。後継者難による中小企業のM&Aによる事業承継の仲介、コンサルティング、グループ内外の企業再編手続きのほか、M&Aを活用した企業再生コンサルティングも手がける。著書に「社長!あなたの会社、じつは……高く売れるんです!!」(すばる舎)など。

バックナンバー

  1. vol.18
    モノからコトへ
    消費行動が変化するなか
    企業価値と不動産はどうあるべきか
    (ロバート・フェルドマン氏)
  2. vol.17
    新世代型都市開発と
    これからの企業オフィス戦略
    (谷澤 淳一氏)
  3. vol.16
    クリエイティブオフィス戦略で
    新たなイノベーションを
    働き方改革を「場」の視点から再構築
    創造性を促すワークプレイスのススメ
    (百嶋 徹氏)
  4. vol.15
    スペシャリストの智
    CREカンファレンス2017-2018・レポート
    2018年成長する企業の資質とは。
    企業体力強化に備える不動産戦略のポイント。
  5. vol.14
    変革の時代に日本企業の強みを生かす
    CRE戦略を通した「稼ぐ力」の向上
    今後10年の企業ビジョンとCRE戦略の重要性
    (冨山 和彦氏)
  6. vol.13
    企業価値向上のカギを握る
    CREプロフェッショナルの社内育成
    社内外の専門家のネットワークを最大限に活用する
    (村木 信爾氏)
  7. vol.12
    企業価値を高める
    CRE戦略の一環としての
    ワークプレイス改革
    (齋藤 敦子氏)
  8. vol.11
    中堅中小企業が今取り組むべきCRE戦略とは
    不動産の棚卸しから、
    事業継続、相続・承継問題まで
    (平川 茂氏)
  9. vol.10
    リノベーションによる耐震、省エネ、環境保全で
    企業価値の向上
    求められる多様なニーズに対応した
    オフィスビルのリノベーション
    (河向 昭氏)
  10. vol.09
    スペシャリストの智
    CREカンファレンス・レポート
    クラウド化がもたらした加速する社会基盤。
    今の企業価値を考える。
  11. vol.08
    企業価値向上のカギとなる
    クラウド導入で進めるシステム改革
    顧客のビジネス価値を高める企業姿勢
    (保科 実氏)
  12. vol.07
    クラウドを利用した動産管理と企業価値の向上
    「e-Leasing」と「CRE@M」が目指すもの
    (長谷川 善貴氏)
  13. vol.06
    環境保全しながら
    経済合理性のある土地活用を
    (西村 実氏)
  14. vol.05
    不動産を流動化させて経営の劇的な改善を
    バイアウト投資市場からみた企業のCRE戦略
    (南黒沢 晃氏)
  15. vol.04
    現在において考えるべき
    リスクマネジメントとCRE戦略
    (渡部 弘之氏)
  16. vol.03
    企業の成長に欠かせないM&A戦略。
    CRE(企業不動産)の位置づけが重要に
    (大山 敬義氏)
  17. vol.02
    未来に向けたCRE戦略
    外部の専門企業との連携が鍵に
    (百嶋 徹氏)
  18. vol.01
    不動産市況が好転した今年こそ
    CRE戦略再スタートの元年に
    (土岐 好隆氏)