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中小企業でのBCP策定促進、大企業を含めBCPの内容向上が課題

 BCPの重要性がますます高まっている中、我が国の製造業におけるBCPの策定状況を、経済産業省が実施したアンケート調査(注7)から見ると、「BCPを策定し、必要な対策をとっている」とする企業は全体(4,580社)の5.9%にとどまり、「BCPを策定し、一応の対策はとっているが不安要素が大きい」とする企業が23.4%、「BCPを策定していないが、現在検討中である」とする企業が35.4%を占めている。BCPを策定済み、または策定を検討中とする企業が64.7%を占める一方で、「BCPを策定しておらず、特に検討もしていない」とする企業が35.3%もある。
 企業規模別に見ると、大企業(214社)では、「BCPを策定し、必要な対策をとっている」が28.5%を占める一方、「BCPを策定しておらず、特に検討もしていない」は2.8%に過ぎない。これに対して、中小企業(4,358社)では、「BCPを策定し、必要な対策をとっている」が4.7%にとどまる一方、「BCPを策定しておらず、特に検討もしていない」が36.9%もある。このことから、中小企業にBCP策定を促すことが喫緊の課題と言える。また、大企業でも、47.7%が「BCPを策定し、一応の対策はとっているが不安要素が大きい」としていることから、BCPの策定のみにとどまらず、日頃からの改善・見直しや訓練の繰り返し、さらには企業間連携の構築などにより、実効力のあるBCPにブラッシュアップしていく不断の努力が必要であると思われる。
 2016年4月に発生した熊本地震の影響に対し、策定したBCP対策が有効に機能したかについては、大企業(75社)では、「機能した」が22.7%、「ある程度機能した」が58.7%を占め、「ある程度以上機能した」とする企業が81.4%に上っているのに対して、中小企業で(421社)では、「機能した」が4.8%、「ある程度機能した」が20.9%と、「ある程度以上機能した」とする企業が25.7%にとどまっている。経済産業省「2017年版ものづくり白書」では、「今後、中小企業において BCP の策定を進めるとともに、その策定した内容を向上させることが課題だ」と指摘されている。
 前出のルネサス エレクトロニクスでは、熊本地震により、前工程を担う製造子会社の川尻工場(熊本市南区)と後工程の生産委託先数社が被災した(注8)。同社は前述の通り、東日本大震災後にBCP強化策の一環として、工場の耐震性能を震度6強への対応まで強化していたため、熊本地震で被災した川尻工場の建屋やクリーンルームに大きな損傷はなかった。加熱工程の炉に使う石英治具の破損があったものの、那珂工場が東日本大震災で被災した際に、多くの石英治具の破損・喪失が復旧を阻む重大なネック(クリティカルパス)となったとの教訓を活かし、石英治具の備蓄体制を強化していたため、破損した治具の90%はこの予備への取り換えにより対応できたという(注9)。被災した後工程の生産委託先については、同社からの復旧支援を急いだ。これらのBCP対策が奏功し、川尻工場は2016年4月22日には一部生産を再開し、その1か月後に震災前の生産能力に復帰させることができた。このように同社は、BCPのブラッシュアップにより、緊急時対応能力の向上を図っている先進事例と言えよう。

(注7)我が国の製造業を対象に2016年12月に実施されたアンケート調査であり、主要な調査結果は経済産業省「2017年版ものづくり白書」に掲載されている。

(注8)前工程の製造子会社は、ルネサス セミコンダクタマニュファクチュアリングといい、川尻工場では車載マイコンが生産されている。半導体の製造工程は、シリコンウエハーに集積回路を作り込む「前工程」と組立・検査を行う「後工程」に分かれる。

(注9)2016年5月13日付けEE Times Japanによれば、「90%は予備への取り換え、残り8%も他工場から持ち込み分で済み、(調達まで時間を要する)新規購入が必要な部分は2%だけだった」という。

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