両手仲介って悪いこと?メリット・デメリットを聞いてみた

今回、お話を伺ったエージェント

京王不動産株式会社 中野 慶祐(なかの けいすけ)さん

  • 相続案件も得意
  • 物件買取も得意
  • 賃貸も詳しい
  • 2級FP技能士・AFP

約3年間、他業種に勤務したのち、転職し、約7年間、賃貸営業を経験。その後、京王不動産に入社し、仲介担当者に。聖蹟桜ヶ丘や千歳烏山エリアを担当後、2023年4月から現在の笹塚店に異動。

現在の業務に賃貸営業の経験が生きているという中野さん。特に相続やオーナーチェンジ、収益物件を扱うときに流れがすっと整理できるそうです。
また、仲介担当者として、フットワークの軽さを大事にしているとのこと。普段から1都3県を幅広く担当し、昨年は、以前担当したお客様からの紹介で、福岡エリアの物件を扱ったそうです。リピーターや紹介で担当した複数のエピソードをうかがって、お客様から深い信頼を得ていらっしゃるのだと感じました。

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売主から物件の売却を依頼された不動産会社が、自社で買主を探してきて売買契約を結ぶ「両手仲介」。インターネットでは「両手仲介 悪い」と検索する方も多いようです。なぜ、巷で「悪い」と言われているのか、そのメリットとデメリットを京王不動産株式会社 中野さんに聞いてみました。

イメージ写真

本日はよろしくお願いします。早速ですが、「両手仲介は悪か」というテーマは、答えづらいテーマかと思うのですが、どうしてインタビューを引き受けてくださったんでしょうか。

おっしゃる通り、両手仲介は悪いことのように言われることも多いですが、考え方によってはメリットがあります。それをきちんと伝えられたらいいかなと思いました。

ありがとうございます。まず、両手仲介によって売却される割合はどれくらいでしょうか…。中野さんご自身は両手仲介が多いですか?

私は半々くらいです。
もちろん案件によってケースバイケースだとは思いますが、大手の会社さんだと8割方は自社(両手)で決めているのではないでしょうか。

売主様から「手数料を減額してほしい」と言われ、仲介手数料を低く設定せざるを得ないという案件もあります。手数料を減額するとなると、上限と定められている「売買価格の3%+6万円」とは大きく乖離する場合があります。売主様と買主様の双方から仲介手数料をいただける両手仲介を積極的にやるという会社も少なくありません。

会社として、利益を多く得ようとすると両手仲介が増えてしまうということですね。

その結果、両手仲介にして、お客様を囲ってしまっているというイメージがついているというのがあると思います。
ただ、ここで整理したいのが、“「両手仲介=囲い込み」ではない”ということです(※編集部注釈:囲い込みとは媒介を受けた不動産会社が他社に情報を公開せず、強引に両手仲介にしようとすること」)。「囲い込み」は、両手仲介にこだわるあまり、「一般媒介契約を結んで、指定流通機構に登録しない」「指定流通機構に登録はするが、他社からの問い合わせに対して商談中などいって客付けさせない」など、他社に情報を公開しないことによって、売主様の機会損失を招きます。問題なのは、「囲い込み」であって、「両手仲介」という取引形態そのものではありません。

囲い込みを行う不動産会社や担当者のモラルの問題であって、両手仲介自体が「悪」ではないということですね? では、「両手仲介」の売主側のメリットを教えてください。

まず、交通整理がしやすいというのがあります。関係者が少なくなるので、不動産会社の売り手側A社と買い手側B社のそれぞれの担当者の言うことが違うということはなくなります。双方と接しているので内見の調整もよりスムーズですし、買い手の検討が進まなかった際にも、何が引っかかったのかお断りの理由をヒヤリングして、次に生かすこともできるかもしれない。
また、売主様から直接お話を聞いた担当者・会社が案内するので周辺情報・物件情報は詳しいです。売主様の「家」に対する思いをしっかり買主様に届けることができます。
元々、ある程度条件が合いそうな買主様を紹介することで、一連の流れをスムーズに進めることができます。その結果、早く決まる、高い金額で決まるということもあります。

では、両手仲介のデメリットを教えてください。

うーん…。売却活動をしている中で、結果的に自社で決まった場合の両手仲介にはデメリットはないんですよね。先ほどもお伝えしたように、囲い込みが問題なのであって、両手仲介自体は悪くない。あえて言えば、囲い込みされる心配がある、囲い込みされていても売主様側でそれを正確に把握することが難しいケースがあるということでしょうか。

では、売主が囲い込みされないようにするためには、どうしたらいいですか?

囲い込みがしづらいように宅建業法も整えられてはいますが…、不動産会社との契約を、専任媒介や専任専属媒介ではなく、一般媒介で複数社・複数担当に依頼すれば、囲い込みはなくなりますが、成約率が高いのは専任や専属です。
会社や担当者の方針にもよりますが、手数料が上限の「売買価格の3%+6万円」であれば、多少なりとも両手仲介への拘りはなくなると思います。逆に、売主様が何も言わないのに、仲介担当者から手数料を1.5%にします、1%にします、と言ってくる場合は、囲い込みの可能性があるかもしれません。

囲い込みされているかも?と思った時の確認方法はありますか?

囲い込み行為自体があいまいな行為であり、外部からわかりにくいために、把握するのは難しいです。
対策のひとつはレインズ(※宅建業者しかアクセスできない不動産情報ネットワークシステム)の「登録証明書」をもらうことだと思います。専任媒介契約でも、一般媒介契約でも証明書をもらい、レインズに登録されていること、また、どのような情報が登録されているのか、内容を確認することをおすすめします。所在地や、マンションの部屋番号など詳細が正しく入力されているか、販売図面を貼っているか、取引状況が「公開中」になっているかなどを確認したほうがいいです。
また、SUUMOなどの不動産ポータルサイトにどのような情報が掲載されているかも確認するのもひとつの方法にはなります。

また、レインズに登録され、情報は公開されていても他社の問い合わせに対応しているかはわからないので、業務報告で、引き合いがどれくらいきているか、販売図面がどれくらい取られたのかも聞いたほうがいいです。たくさん引き合いが来ているのに、案内が少ない場合は、囲い込みが行われている可能性があります。

業務報告で状況を把握することが重要なんですね。

担当者と売主様がしっかりとコミュニケーションを取ることが重要だと思います。私も報告内容のわかりやすさに気を付けています。定型文の業務報告はわかりにくいこともあるので、売主様のご希望次第では、定型文に拘らず、「写真を差し替えました」「反響がありました」ということを、チャットのようなわかりやすい文章でご報告するようにしています。

業務報告のほかに中野さんが気を付けていることはありますか?

そうですね。「両手になると思います」「片手での取引にできそうです」と、ある程度の見込みを最初にお伝えするようにしています。調整ごとの多い相続のケースや土地など、案件によっては業者買取をおすすめするので、結果的に両手仲介になります。その旨を事前にご説明をします。
一方、築浅の中古マンション、山手線の内側などの人気の立地で需要が高いところであれば問い合わせは多いでしょうから、片手仲介での取引になる可能性が高いです。もちろん、結果的に両手になることもありますが、最初に、いろいろなお客様から問い合わせが来ると思いますと話すようにしています。

両手仲介と囲い込みは違うということ、信頼できる担当者を見極めるということが重要ということがよくわかりました。本日はありがとうございました。

【中野慶祐さんの担当エリア】
杉並区, 新宿区, 渋谷区(仲介)

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