不動産を売る理由やきっかけは人それぞれ。事情によって売却までの期間も変わってきます。売却したいタイミングによって、販売戦略が変わってくるのか。最短で売却したいケースや、時間をかけてもいいから高く売りたいというケース、それぞれについて三菱地所ハウスネット株式会社の湯谷さんに伺いました！

本日はよろしくお願いします。まず、不動産を最短で売却する場合、どれくらいの期間で契約、引き渡しができますか？

一般的には、契約自体は1〜3か月で決まることが多いですが、最短で売却を進めた場合、宅建業者の買取のケースであれば、約1週間で契約と決済まで終わらせることも可能です。
ただし、実際のところ、売主様の次の家が決まって部屋を引き渡すことができ、かつ、手続きの日程がスムーズに調整できる場合となるため、条件次第となる部分はあります。

買取の場合は、室内の状態は気にしません。購入した部屋をフルリフォームするので、多少汚れていたり、散らかっていたりしても問題ないためです。また、キャッシュで買うケースも多く、銀行とやりとりがないので、早く取引が完了します。

一方、仲介での取引の場合は、内見をして、室内の状況を確認し、リフォームが必要な箇所などを確認した上で検討し、住宅ローンの審査や手付金の用意が必要です。最短でも1か月くらいはかかると思っておいた方がいいと思います。

ありがとうございます。とにかく急いで現金を手に入れたいという場合は、買取がよさそうです。 ただ、買取だと売却できる金額は安くなりますよね？

宅建業者による買取は仲介での取引に比べ価格は下がるケースが多いです。ただ、近年は、以前ほど価格の差が開いていないという実感があります。

現在の市況の問題と、取引される物件が少ないというのが理由だと思います。
特に高額物件の多いエリアは数が少なく希少価値が高くなります。今までは取引される物件が多くあったので、一般向け（仲介）と法人様向け（買取）を分けることができましたが、今は、取引できる物件が減っている印象ですので宅建業者の買取価格は一般向けの価格に近くなってきている実感があります。

価格差がなくなってきていると聞くと、すぐ売却できる買取のメリットを感じますね。売却を急ぐ場合の売却の流れを教えてください。

売却を急ぐ理由は、人それぞれですが、なかには、知らない人に部屋を見られたくない、周りの人に知られたくない、転勤や転職などの仕事の関係で時間をかけられない、離婚が売却の動機で早く新生活をスタートしたい、相続案件で別の家に住んでいるので内見の立ち合いに来るのが負担などの事情をお持ちの方もいらっしゃいます。
これらがきっかけで売却を急いでいる方には、買取が向いているかもしれません。

売却までの流れですが、まずは一般向けの場合の査定金額を算出します。それに対し業者買取の査定との差を出します。
例えば、一般向けで1億円という査定をしたとして、必ずその金額で売れるとは限らないわけですし、また売却までの期間もわからない。
一方、買取の場合だと8,000万円だったとします。買取の場合は、机上である程度固い金額を出していただけます。あとは室内をみて最終的な金額が出ますが、おおよその金額は提示することができます。金額とメリットデメリットを比較して、最終的にどっちにするかは、売主様に決めていただきます。

買取と仲介のどちらで売り出すかは、最初に決めないといけませんか？

一般向けの仲介で市場に出しつつ、買取を同時に進めると、買取の価格が下がる可能性があります。
例えば、仲介で売り出して3ヶ月売れなかったら、業者さんからしても「自社がその部屋を買って売れるのか？」と不安になります。一般向けに募集に出さないからこそ、その物件の人気がブラックボックス化するという側面もあります。
仲介募集と買取を並行して進めることは可能ですが、一般向けに出してしまえば買取の金額が下がる可能性はあるということは売主様にご説明します。

では、売主が急いでいるけど仲介で売りたいと言った場合はどうしますか？

どのくらいの期間を考えているかヒアリングして考えます。どのケースでも、私が何か一方の方法を勧めるということはせず、売主様の事情に寄り添って、課題解決に向けて一緒に検討するように心がけています。

一方、売却の期間が長い場合はどうするか教えてください。長いと言うと…半年以上でしょうか？

売り出してから半年は…ぎりぎり長いとは思わないですね。1年〜2年だと長いと思います。それだけ売っていると、売れ残りのイメージを持ってしまう方もいらっしゃるので、売主様にもそのリスクは正直にお伝えします。
しかし、最終的には1組の人に買ってもらえればいいというのがありますので、1年経ったから売れないとは思いません。物件の良し悪しは人によって違うし、新たにそのタイミングで物件を探す方もいるので、必ずしも売れ残ってマイナスというわけではありません。
金額を値下げするか、売却をストップするかなどは、最終的に売主様の判断に任せるようにしています。

特に期日がなく、長い期間売りたい方は、より高く売りたいと思っている方が多い傾向があります。ちょうど先日も売却を急いでいない売主様が一般向けの仲介でびっくりするような高額で売れたばかりです。

仲介で1年以内に売りたいと考えている方が思うように売れなくて途中で不安になるケースというのはあるのでしょうか？

そのびっくりするような価格で売れたケースがまさにそうでした。
半年〜1年後くらいに引っ越しをしたいので、そこまでは住みたい、かつ高く売りたいというパターンでしたが、売出してもなかなか決まらず、奥様が不安に。このケースは専任媒介契約ではなく一般媒介契約でしたので、他社の担当者からは値段を下げるように提案があったそうですが、私は下げる必要がないと思っていました。根拠は、同じマンションで近い金額で売れた事例があったことと、最初に高額で売りに出したので、もし価格を下げるのであれば1,000万〜2000万円下げないと変わらないと思ったからです。もともと1年くらいかけて高く売りたいと考えていらっしゃったのに、仮に1,000万～2,000万円下げてすぐ契約が決まった場合、売主様としても納得感がないのでは？と考えました。最終的に最初の価格のまま、9か月目くらいで売れたときはほっとしました。

売却期間が長くなると、売主様が不安に感じるのは当然なので、定期的に電話やメールなどで連絡をとって不安を解消するようにしています。
弊社は、一般媒介契約だろうと専任だろうと同じ対応をするのを心掛けているので、営業活動報告書が義務付けられてない一般媒介契約でも、決められたタイミングで報告書を送らせていただくことが多いです。契約が決まらなくても、問い合わせがあったことや、反響の詳細がわかると、売主様が少し安心できる材料になるかと思います。

先ほどびっくりするくらい高い金額で売れたとのことでしたが、長い期間売れば高く売れますか？

それは、必ずしもそうではないです。タイミング次第なので、もちろんチャンスもありますが、例えば売主様は1億2000万円で売りたいと思っていても、指値で1億円だったら買いたいという人が出てきた場合、半年後にそのお客さんが市場にいるかわからない。チャンスはあるかもしれないが、あとから、最初の1億円の人が一番高かったとなるかもしれません。
正解がないので、そこを理解していただいて進めるように気をつけています。

もちろん「この金額で売りたい」と言われればチャレンジすることもできますが、他社さんからかなり相場から離れた査定が出て、その金額で売ろうとしている場合は「（その他社の担当者は）何を根拠にその金額を言われてるんですか？金額が高いというだけで決めるのは危ないかもしれません。そこも踏まえてご検討ください」とは伝えるようにしています。

…不動産売却は難しいですね。正直に事情を話して、率直な意見を言ってくれる信頼できる担当者を決めるのが一番納得感のある売却ができそうです。

仲介担当者は、自社商品を提供しているわけではないので、比較が難しいですよね。お客様ごとに考えるポイントも違うので、フィーリングが最終的な判断材料になるかなと思います。
担当者選びで言うと、2年目に上野営業所にいたときに相談から売却まで半年かかったケースがあります。まだ2年目で知識もなく、一戸建ての売却は難しかったのですが、4〜5社ある中で選んでいただきました。成約後に、最終的に人柄で私を選んだと教えていただいたときは率直に嬉しかったです。
もちろん、人柄だけでは叶わない部分もあると思いますが、ごまかすようなことはせず、正直にリアルな情報をお伝えするようにして、誠実に対応させていただこうと思っています。

本日はありがとうございました！