相続不動産の売却をスムーズに進める方法。今からできる準備とは?
今回、お話を伺ったエージェント
住友林業ホームサービス株式会社 河田 麻由(かわだ まゆ)さん
賃貸営業を経て不動産売買部門へ移り、育休・産休を挟み、子育てをしながら、吉祥寺、荻窪等、都内西側エリアを中心に不動産仲介歴20年以上。エリアの特性上、一戸建ての経験が豊富で、相続がきっかけの売買も数多く担当。相続対策の資産組み換えなどでは、住友林業グループの総力を活かした提案力も強みなのだそう。
中立な立場で冷静に意見を伝えることで売主様の信頼を得て、納得いただきながら売却をすすめていくとおっしゃっていたのが印象的でした。女性ならではの視点と対応力でお話していて安心感があります。相続というナーバスな問題も河田さんには安心して相談できるなと感じました。
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売却のプロを選ぶ相続をきっかけとした不動産の売却は、住み替えや転勤などをきっかけとする売却よりも複雑で、難易度が高くなります。利害関係者が多い、物件の状況がわからないなどの理由で、一筋縄ではいかないことが多いためです。相続での売却をスムーズに行うために事前にできる準備はあるのか。18年の売買仲介経験を持つベテラン仲介担当者で、数多くの相続案件を経験してきた住友林業ホームサービス株式会社の河田さんに不動産の相続についてお話しを伺いました。
本日はどうぞよろしくお願いします。河田さんは数多くの相続案件を担当してきたと伺いました。相続案件は、どういう方からのご相談が多いですか?
相続が発生したので売却したいという方や、ご自身の老後資金のために現金化したい方、終活の一環として不動産価格や相続税について知りたいという方など、相談内容は多岐にわたります。
一番多いのは…やはり、相続後の相談です。不動産を相続されたお子様側ですね。私の担当しているエリアは富裕層も多く、相続税を手元資金で払えるため、のんびりしたご相談が多い印象です。相続人同士が揉めていない場合は、兄弟の代表者様が相談に来るケースが多いです。
相続をきっかけとした売却は、住み替えなどを理由とした売却となにか違いがありますか?
売却の進め方は基本変わりません。ただ、売主様の状況や思いが、より複雑で千差万別であることが多いです。相続の場合、すぐに売却したい方も、売却に前向きではないが売らざるを得ない方もいます。家への愛着から、建物を壊さず売りたいという意向をもたれているなど、ケースバイケースです。そのため、マニュアル的に売却までのスケジュールを立てるのではなく、相続の背景、人間関係、経済状況などを把握した上で進めるようにしています。
やはり、トラブルが起こるケースも多いのでしょうか?
そうですね、トラブルになった案件もあります。兄弟それぞれに仲介担当者を連れてきて、売却の方針について言い合いになってしまう状況も経験しました。もともと仲の悪かったご兄弟の場合、どちらが介護したかなどの感情論もあり、話が進まなくなることもあります。どちらの仲介担当者も似たような提案をしている場合、どっちを使うかという問題も出てきます。
そのような状況では、私は、中立でいることを心掛けています。こっちを立てれば、こっちが立たない。一方的に依頼者の肩を持つのではなく、事実に基づいて冷静に対応し、言うべきことははっきり言う。フェアな判断をすることがお客様の為になると思っています。
確かに、対立したままでは話が進まない。相続人がともに納得することが大事なんですね。他にも困ることはありますか? 例えば…相続対象になる家は古い物件が多いと思いますが、どのように売却を進めるのでしょうか?
たしかに建築から何十年も経っていることが多いので、家としての売却はハードルが高いこともあります。コンディションや条件にもよりますが、土地の価格で査定となることが多いです。どのように販売していくかは、売主様のお話しを聞きながら決めています。1円でも高く売りたいという希望は、相続の場合も共通して皆様お持ちです。余裕がある場合はできるだけ高い価格で売却を目指しますが、お金が必要で早く売りたい場合、いつまでに、いくらで売りたいかというゴールから逆算して計画を立てます。スピード重視でしたら冒険をせず買取や、即売れる価格での販売をおすすめしています。
売却希望額と相場が離れている場合はどうしますか?
売主様のご要望は受け止めつつ、厳しいと思ったら現実を伝えます。希望売却価格が高すぎる場合、期間を切って、どの程度反響があったのか、実際の動きを元に市場性をお見せし、価格や売り方の切り替え提案をおこなっています。契約して欲しいからと高い査定を出し、後から「売れそうにないから値段を下げましょう」というのは言い訳に聞こえるので、媒介契約前に売却の進め方や相場観を伝えるようにしています。売主様の気持ちに寄り添いつつ、判断時には客観的な根拠を示すことで、納得いただきながら進めるように心がけています。ここは、相続案件でも、それ以外の通常案件でも変わりません。
相続が発生する前に、終活の一環としてご相談に来られる方もいらっしゃるとのことでしたが、実際に、河田さんがご経験されたケースを教えてください。
フラッと来店され、ご自身のことはお話しにならず、相続に関する質問や不動産相場について1時間ほど質問された方がいらっしゃいました。1か月ほど経ってから電話をいただき、たくさんの不動産を所有されている一族の方だとわかりました。私の対応を評価してくださり、売却を任せていただいたんです。その際は一般媒介でしたが、提案や対応スピードに満足いただき、その後、何度か専属で依頼をいただきました。お子様にもご紹介いただき、今でもお付き合いが続いています。
お子様にもお会いしているのはすごい! そこまで準備できていると安心ですね。不動産資産を持っている方が、生前に相続について整理する場合、子ども世代と親は一緒に準備を進めるべきでしょうか。相続の話は家族間でも出しにくいのではないかと思います。
子ども側が死に関わる話題を出しにくいだけでなく、親側が、お金の話を子どもにするのはタブーだと考えることも多いです。ですが、私はスムーズな相続のためには、親の思いを知ってもらうことが重要だと考えています。いわゆる「争続」と呼ばれる状況は、遺言がない等の理由で、親の思いが正しく伝わっていないことで起きています。相続人には財産状況だけでなく、親が子どもたちに誰に何を残したいと考えているか、気持ちを知っていただきたいです。できればみなさん一緒に、親の思いと今ある資産の状況を把握する場を持ち、今後のお話をするのが理想です。難しければ遺言書や、メモ書きでもいいので、希望を残しておくといいです。
また、認知症対策として家族信託をおすすめしています。親が認知症となり、介護施設に入居させたいけれど資金が手元になく、家を売って工面したい場合。認知症で判断能力を失うと契約行為ができなくなるので、売りたくても売れないという状況に陥るのです。今すぐは売却の予定がなかったとしても、早めの準備をすべきです。
お話を聞き、相続ならではの難しさがあると感じました。相続由来の売却に強い仲介会社、仲介担当者を見極める方法はありますか?
相続を理由とする売却の経験数が重要だと思います。相続の状況は家庭ごとに様々なので、トラブルもケースバイケースです。多くの経験をしている仲介担当者は知識や対処法が豊富なので、幅広いアドバイスが可能です。人柄としては、信頼できること。また、自分事として売主様への提案を考え、迅速に回答するタイプが親身になってくれるでしょう。
最後に相続による売却を担当される中で、どんなことを大切にしていらっしゃるかお聞かせください。
まず、ご状況をしっかり聞くことを心がけています。
どうしても不動産業というだけでうさんくさいと思い、警戒心を持たれる方は少なくありません。ご自身の詳しい事情に踏み込まれたくないという方もいらっしゃいます。不動産を保有されている方は資産家が多いのでなおさらです。そのため、すぐに心を開いてもらうのは難しいですが、最適な提案のためには、家族関係や資産状況など、他人には話しづらい情報を出していただかなくてはいけませんので、信頼いただけるように、丁寧に関係を築くことを目指しています。
ご相談内容を伺い、状況によっては、急いで売却する必要はないのではとアドバイスすることもあります。目の前のお仕事にはつながらないですが、何かあったときに思い出していただければという気持ちで接し、ご相談いただけるタイミングをお待ちします。
また、納得の上、売却を進めていただくために、必要と思えば早い段階で税理士やFPなど専門家と連携するようにもしています。
私は50代で団塊ジュニアと呼ばれる世代。親世代や同世代の売主様も多いです。実際に、相続の当事者となった経験もあります。売主様の気持ちを理解し、寄り添うことができると思っています。
スムーズな相続のための準備として「親の思いを知ってもらうことが大事」という河田さんのお話、とても参考になりました! 本日は、ありがとうございました。
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