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鑑定部特別インタビュー 平成29年度相続税路線価公表。問われる「街のちから」を反映して、さらなる二極化時代へ

4.横浜以西の注目都市と今後の地価について

5.横浜

西口の再開発で大きく変わりました。人の流れが加速度的に増えていて、それに応じて価格も上がっています。西口の再開発による人の流入の増加で、街の魅力が高まったと言えるでしょう。
みなとみらい地区にも触れておきたいと思います。最高路線価はみなとみらい2-2-1の177 万円。対前年比7.9%上昇。4年連続の上昇となっています。

6.名古屋

JR名古屋駅の名駅側の再開発が一気に進み、路線価も上昇しました。ミッドランドスクエア、大名古屋ビルヂング、松坂屋跡地にJRゲートタワー、中央郵便局のJPタワーが建ちました。一方で、駅の西側は昔ながらの街並みが残っています。
一方、栄地区については、名古屋駅前と同様に上昇しましたが、栄地区最高路線価は名古屋駅前のそれに比し65%水準となっています。かつて名古屋の繁華街と言えば「栄」でした。それが名古屋駅前の開発が進むにつれ、街の中心が名駅前に移りました。5年前(平成24 年)の栄地区の最高路線価は名古屋駅前のそれに比し74%水準でした。開差は年々拡がっており、街の力が路線価にも見てとれるようになっています。

7.京都

地価だけを見れば府内の最高価格は四条ですが、変化率では宇治エリアが要注目です。宇治はいままでは住宅地としては注目されていませんでしたが、鉄道の利便性の良さが見直され、住宅やマンション開発が進みました。特に六地蔵駅の上昇幅が際立つ形になりました。これは鉄道の利便性によるものです。京阪宇治線で大阪の北浜や淀屋橋に、京都市営地下鉄で京都市内に、JR奈良線で奈良に行けるアクセスの良さが、住宅地としての評価を上げました。

8.大阪

阪急梅田駅の阪急百貨店前が府内の最高価格です。このあたりは大規模施設も多い上に、北ヤードと呼ばれる駅周辺での開発も行われています。未完成ですが、開発が進むにつれて人の流れが多くなっています。

9.広島

県内路線価は2年連続で上昇中で、県内最高価格は相生通りの256万円となっています。注目は現在も再開発の進む広島駅南口の上昇でしょうか。広島駅南口は再開発でショッピングモールや分譲マンションが建設されるなど、猿猴川までのエリアは数年前と比較し駅前はずいぶんと雰囲気が変わりました。

10.福岡

最高価格は九州一の繁華街である天神エリアです。JR博多駅周辺でも再開発が進み、ビルや大規模施設が建っていますが、不動産価格の中心はいまだ天神にあります。九州・福岡では西鉄ブランドが強く、西鉄ターミナルのある天神が街の中心地となっています。現時点でJR 博多駅と天神との不動産価格の格差はかなりありますが、上昇率や変動率は博多駅前の方が高くなっています。今後は札幌のケースのように再開発の進む博多駅前が追い上げ、「良い勝負」になる可能性があります。

鑑定部:
後列左から領家常務、岩崎、宮永課長、熊谷、浅井、塚田、浜名、高垣
前列左から石原、岡部、池田部長、山中次長、永堀、中

5.今後の地価について

1.キーワードは「街のちから」

人口純減に突入した我が国において、地域経済の活性化には人の流入がカギになります。人の流入といっても既存の人の流れではなく、新たな人の流れを作り出せるかがポイントです。活性化に成功している地域は、その要因について「再開発」「復興」「街おこし」「観光」「インバウンド」といった側面から読み解くことができます。
「再開発」については、各エリアにランドマークともいうべき大規模施設が誕生し、目新しい流行や物珍しい体験を求めて多くの人が訪れています。
「復興」について、東日本大震災の被災地では、職を奪われ、家屋倒壊により住む場所も奪われ、苦境の生活を強いられましたが、地道な復興活動や支援によって「街のちから」が取り戻されつつあります。
「街おこし」については、人口減・高齢化や産業の衰退で低迷し、人の往来が減ったところに、若者をはじめとする新規参入者が今までになかった店舗などの施設を展開するという新たな動きが地元民に受け容れられ、賑わいを取り戻しつつあるエリアがあります。
「観光」は言わずもがなですね。大都会の近代的な建物が建ち並ぶ街並みや、他方で歴史を感じられる風光明媚な観光スポットが共存し、さらには料理、アニメといった日本特有の文化まで、地元の観光資源を見直し、積極的に磨き、広告する、そういうエリアにおいては観光客が増加し地元経済が潤いつつあります。
最後に「インバウンド」について、ここでいうインバウンドは日本各地への観光目当ての外国人渡航者や定住者を指します。訪日外客数は2016年度には2400万人を突破し、今年も5月末時点で1100万人を突破しています。外国人が抱く日本のイメージや日本文化を体験できるエリアに人が集まっており、観光産業の発展・拡大に繋がっています。また、日本への海外勤務や留学等さまざまな目的で、日本で暮らす外国の方々がいます。彼らが定住するようになるには、彼らが不便を感じることなく安心して日常生活を送ることができる街づくりが重要です。

2.加速する二極化傾向

国外の経済変動などの外部要因にも注視する必要がありますが、ここでは、国内の要因に目を向けましょう。先ず、日銀による金融超緩和政策が継続することで、「街のちから」に絡む不動産案件に引き続き資金が集まるのではないでしょうか。路線価に影響を及ぼす要素は複合的で、どんな街にしていくのかという街づくりの方向性が問われます。再開発やインバウンド施策等の魅力ある街づくりに注力し、「街のちから」を磨いていける地域は今後も上がっていき、景気変動に伴う調整局面はあったとしても一時的な下落局面で、少なくとも下がり続けることはないでしょう。一方で、こうした取り組みができず、手を打たない地域は、人の流出も止まらず、路線価も下げ止まらないでしょう。結果、地価の二極化はさらに進むと思われます。
街づくりへの取り組みを通信簿のように反映し、「街のちから」を示す路線価。加速する二極化時代にあって、本稿が今後の投資活動の一助になれば幸いです。

Profile

三菱地所リアルエステートサービス
鑑定部 次長 不動産鑑定士

山中英明

2007年入社
法人に特化した総合不動産コンサルタントとして日々全国を飛び回る。モットーは「正確かつ迅速なサービス対応」で、お客様からの信頼も厚い。