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社宅とは何か〜住宅手当との違いや社有と借上のメリット・デメリット

2019.08.05

社宅には、社員に安価に住宅を提供するという福利厚生の意味合いがあるが、一方で、不動産を所有し、その不動産を社宅として提供する場合には、その社宅は資産と捉えることができる。自社で不動産を持たない借上社宅制度、社宅制度とは異なる住宅手当を導入している企業もあるが、その違い、メリット、デメリットについて紹介していく。

そもそも社宅、住宅手当などがある理由は?またその違いは?

社宅は社員に住居を提供するという福利厚生の一環だ。社員に住居を提供するという意味では「社宅」のほかに「社員寮」という言葉もよく使われるが、これらの違いは、社員寮は単身者向け、社宅はファミリー向けの住居を指すのが一般的であり、なにか明確な定義があるわけではない。社員にとっては家賃や光熱費の負担を補助する社宅・社員寮制度は、大きな魅力だと言える。
また、転勤が多い会社の場合、社員の住居確保やそれに伴う関連業務、引っ越しや諸契約に関する費用など、会社の負担は大きい。転勤する社員にとっても、急いで転勤先の住居を探すなど、負担は小さくない。しかし、自社の各拠点に社宅があれば、転勤者の住居の確保がしやすく、それに伴う関連業務や経費の負担も軽減できる。一旦、社宅に入り、じっくり好みの住居を探すこともできるだろう。こうしたことから、社宅制度は社員・会社の双方にとってメリットがあると言える。

住宅手当を支給している企業は45.8%と約半数になる。※1また、社宅を保有している企業は全体の44.7%になっている。※2この2つの数字は調査方法が違うため一概に比べることはできないが、多くの企業が福利厚生として、住宅手当や社宅保有など何らかの手段を講じ、従業員の居住環境を支援していることが見て取れる。

一般的に、住宅手当が支給されると、社員は自由に住む場所を選ぶことができ、相場家賃よりも安く住めるなどのメリットが生じる。しかし住宅手当は給与所得に含まれ課税対象となるため、所得税が上がることになる。同様に、会社・従業員ともに社会保険料の負担が増すというデメリットが生じる。一方、社宅が提供される場合、住宅手当が発生しないことから、社員の所得が目減りすることはない。加えて、会社・従業員ともに社会保険料の負担が増加せず、一部の社宅費用を福利厚生費として経費計上することができる。よって会社の節税という税面でもメリットを生む。一方、社員が住む場所を選ぶことができないという問題もある。

※1 厚生労働省「H27就労概況賃金制度_29年2月訂正」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/15/dl/gaiyou03.pdf

※2 人事院「社宅の有無別、保有形態別企業数割合」https://www.jinji.go.jp/kisya/1809/h30akimincho_bessi.pdf

社有社宅と借上社宅 そのメリットとデメリットは?

社宅は、大きく、社有社宅と借上社宅に分類される。社有社宅は、会社が保有する住宅を従業員に貸与するものだ。一方、借上社宅は、会社が一般の賃貸住宅を借り、従業員に貸与する形となる。1980年代後半から1991年のバブル期は、資産として不動産を所有するメリットが大きいと考えられ、借上社宅より社有社宅を提供する企業が多かったと言われている。しかしバブル崩壊後は不動産価値の下落とともに不動産を所有するリスクが大きいと感じる企業が増え、社有社宅は減少した。結果、現在では社宅制度を持つ企業の約8割が借上社宅を採用している。しかし、現在では地価は微増傾向にあり、不動産所有のリスクは大きくないと言える。だからこそ、社有社宅と借上社宅のメリットとデメリットを比較して、自社にとってより良い形を選択することが重要になってくる。

税金、運用維持費について
社有社宅 メリット 社宅は不動産資産となるため、減価償却や維持管理費によって税金対策を施せる。
毎月の賃料や契約更新時の敷金・礼金の支払が不要となる。
デメリット 固定資産税など、税負担が発生する。
社員との賃貸借契約管理が必要になる。
維持管理費の負担がある。修繕や建替えも負担となる。
借上社宅 メリット 固定資産税がかからない。
修繕や建替えの負担がない。
デメリット 敷金や礼金、火災保険料などがかかる。
不動産会社との賃貸借契約の管理業務が発生する。
急な社員の退職、転勤などにより契約期間内での退去があると、空家賃や違約金が発生する場合がある。
不動産資産として
社有社宅 メリット 不動産資産の所有と福利厚生を両立できる。
社有社宅を他社へ貸し出せば、不動産運用による収益も見込める。
デメリット 不動産物件の価値を維持しなければならない。
空室対策や定期メンテナンスなどが発生する。
また地価変動や老朽化によって、不動産の資産価値が減少するリスクもある。
借上社宅 自社で所有していないため、不動産資産としてのメリットもデメリットも生じない。ただし、社員が物件選択をできるため、社員の通勤や家族構成に合わせることができるというメリットがある。しかし、不動産所有者都合での賃料や管理費等の増加など想定外の費用増加のデメリットが考えられる。

いま、社宅制度の充実を検討する意味

人手不足の中で優秀な人材を確保するためには、社宅制度などの福利厚生での差別化は必要不可欠なものだといえる。社宅制度の充実は採用時に有能な人材を確保できるだけでなく、社員の満足度を高め、モチベーションをアップさせる効果もある。社宅制度の導入を考える際には、社宅保有の負担が大きければ借上社宅を、資産の保有や運用収益を重視するのであれば、社有社宅を検討すべきだろう。時勢や企業の状況により、どちらが有利だとは一概には言えない。社宅制度導入の有無や、社有社宅と借上社宅の選択においては、会計面、税制面、不動産資産としての価値など、多角的な検討が必要となるだろう。

 人手不足の影響もあり、社員への福利構成の充実を考える企業が増えています。そこで、社宅制度にも注目が集まっていますが、当社、三菱地所リアルエステートサービスでも「社有社宅の購入」や「借上社宅切り替え時の社有社宅の売却」をお手伝いできるサービスがございます。ぜひお気軽にご相談ください。