REIT(リート)とは?現物不動産投資との違いやREITの種類を解説

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REIT(J-REIT)と呼ばれる不動産投資信託。当記事では、現物の不動産投資との違い、REITの種類に加えて、昨今注目されている地域特化型REITについても解説します。

REIT(リート)とは?

REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略で「不動産投資信託」のことです。
多数の投資家から集めた資金で不動産への投資を行い、得られた賃料収入や売却益などを原資として、投資家に分配する金融商品です。
アメリカで生まれたREITにならって、日本版REITはJapanのJを頭に付けJ‐REIT(ジェイリート)と呼ばれています。日本での市場規模は、株式会社日本取引所グループ発表の月刊REIT(リート)レポート(2022年12月版)によると、時価総額15.8兆円です。

REITの仕組み

REITと現物の不動産投資の違い、それぞれのメリット

REITと現物の不動産投資では、物件を所有するか否かが最も大きな違いとなります。他にも資金面や運用面でも顕著にあらわれる違いについて、それぞれのメリット・デメリットを踏まえ説明します。

それぞれのメリット・デメリット

現物不動産では投資家が不動産を購入し所有するため、始めにある程度まとまった資金が必要となりますが、REITでは不動産を運用する投資法人が投資先となるため、少額から投資が可能で、間接的に不動産に投資することができます。REITでは不動産の売買、事務作業・税務処理などの運用・維持管理などは、投資法人から委託されたプロである会社が行うため、投資家は手間がかからずに配当所得を得られることがメリットといえます。一方、自身に不動産運用のノウハウがある場合、投資不動産の選定や運用を精査することができないことをデメリットに感じる方もいるでしょう。自身の戦略に基づき運用できることは不動産投資の面白さといえる部分でもあります。
また、現物不動産は銀行からの借り入れが可能なため、少ない自己資金で大きなリターンを得るレバレッジ効果が高い傾向にあります。一方、REITは基本的に全額自己資金での投資となります。但し、流動性の面でいうと、金融商品であるREITは短期間で現金化が可能ですが、現物不動産は売却活動を行い買い手を探さなければならず、REITの方が流動性は高いといえます。

以上のように、REITと現物不動産、それぞれメリットとデメリットとなる部分があり、自身の状況に応じて検討すると良いでしょう。

REITと現物不動産比較表

REIT現物不動産
投資対象不動産不動産
投資先投資法人実物の不動産
不動産所有権の有無
(投資法人の証券を保有)
利益の内容分配金+売却益賃料収入+売却益
初期費用少額投資が可能まとまった資金が必要
管理・運営プロが管理するため、運用に悩まなくて良い自主管理またはプロに委託するなど、自分で運用・決定することができる
流動性短期間で現金化しやすい反面、金融市場の影響を受けやすい短期間での現金化が難しい反面、資産価値の大幅なブレは少ない
融資の有無原則自己資金
レバレッジ効果が低い
融資が可能で、
レバレッジ効果が高い
繰上償還の可能性がある不動産登記の手間や税金面の負担が大きい

投資対象となる不動産の種類

投資対象となる不動産には、オフィスビル、マンション、ホテルなど様々な種類があります。現物不動産ではマンション(住居系)がポピュラーであり、REITでは投資法人によるもののオフィスや商業施設などの割合が多くなります。

マンション

一棟マンションの売買ニーズは需要も多く一定程度保たれています。比較的値動きも小さいため、ローリスク・ローリターンの傾向があります。一室当たりの賃料の割合が比較的小さく、全体への影響も小さいため、安定した賃料収入を得られやすい特徴があります。大きな収益性はあまり期待できませんが、高い安定性が魅力です。

オフィスビル

都心のオフィスビルが代表例です。ターミナル駅に近いといった立地や独自の設備を完備しているなど、他にはない優位性を持つ場合高い収益が見込めます。景気の動向やテナント会社の業績などに影響されやすく、安定性よりも収益性の高さが魅力です。コロナ禍においては、テレワークが普及しオフィスを縮小する企業も見られましたが、最近では回帰傾向も見られており、今後の社会情勢の見極めが重要になります。

ホテル

景気や観光産業の動向による影響を受けやすく、ホテル需要の多寡により賃料収入が左右されるため、安定性よりも収益性が高いといえます。ここ2~3年はコロナ禍の影響により観光産業が大打撃を受け厳しい状況が続いていましたが、徐々に個人旅行目的でも入国が解禁され、2022年10月以降はコロナ前の水準まで戻る地域も散見されており、今後の動向に注目です。

商業施設

大きく都市型と郊外型に大別され、立地により傾向が分かれます。都市型はテナントの売上と賃料を連動させるケースが多く、景気の動向により配当が大きく変わります。一方、郊外型はテナントが長期間入居するケースが多いため、賃料収入が安定しやすい傾向にあります。

物流施設

インターネット通販が普及し、需要は高まっているため安定した収益が見込めるといえます。テナントの入れ替えも比較的少なく安定性が高い一方、テナント入れ替え頻度が少ない分、他の不動産よりも次のテナントが見つかるまでに長く時間を要するケースも少なくありません。

ヘルスケア施設

有料老人ホームなどの高齢者施設や、病院・看護施設などのヘルスケアに関連する施設です。なかには、地方創生、地域・多世代交流、団地再生、コンパクトシティなどの社会ニーズに対応した、投資による成長と社会貢献の両立を基本方針として掲げている投資法人も存在します。

データセンター

社会のデジタル化・クラウド化が急速かつ広範に進む中で、データセンター利用は年々増加し注目を集めています。コンテンツ配信やクラウドサービス等の基盤であり、これらのサービスの市場規模拡大に伴い、データセンターの市場規模も年10%程度のペースで拡大しています。

REITの種類

投資対象の不動産アセットについて説明しましたが、ここではREITの種類を説明していきます。大きく分けると、以下の2種類があります。

単一用途特化型REIT

「単一用途特化型REIT」は、特定の用途の不動産のみへの投資です。
投資する不動産の種類によって、オフィスビル特化型、ホテル特化型などに分けることができます。単一用途に限定しているため、投資した不動産から受ける影響が大きく、値動きも大きくなる傾向です。物件用途が限定されているため情報収集がしやすいメリットもあります。

複数用途型REIT

「複数用途型REIT」とは、投資対象の用途が2種類以上あるREITのことです。
分散投資の効果が期待でき、例えば「オフィスビルが低調でも物流が好調」というように、1つの用途が低調でも他の用途で補うことができる特徴があります。
「複数用途型REIT」は、さらに「複合型REIT」と「総合型REIT」に分けられます。

複合型REITの特徴

「複合型REIT」とは、例えばオフィスビルと物流施設といった、2種類の用途を組み合わせて投資するタイプです。異なる2つの用途の不動産に分散して投資するため、リスクを軽減することが可能となります。

総合型REITの特徴

「総合型REIT」とは、用途の種類がさらに増え、3種類以上の用途を組み合わせて投資するタイプです。「複合型REIT」よりも分散投資効果が増すため、更なるリスクの軽減が期待できるでしょう。

今後の成長が期待される地域特化型REIT

REITは東京などの大都市圏を中心に投資する傾向がありますが、特定の地域に絞って運用されているREITもあります。それが「地域特化型REIT」と呼ばれるものです。
タイプは総合型が多く、投資対象のアセットを限定せず幅広く投資することによって、地域に特化するリスクが軽減されています。都市の成長に伴って収益が期待できるメリットがあるため、関西圏や九州圏のみならず、北海道や広島など全国に広がりを見せている注目のREITです。

運営上のメリットが大きい

地域に特化していることで、運用コストを抑えることができ、効率の良い投資がしやすくなります。
投資法人がスポンサーや地元の有力企業とのパイプを築けていることが運用成果アップのカギとなり、その土台を新しい案件の創出や物件の取得に活かし、スポンサー以外からの物件取得にも繋げていくことができます。また、特定のエリアに多くの物件を所有することになれば、周辺の賃料相場をコントロールすることも可能になります。

物件情報が集まりやすい

地域密着だからこその土地勘や地域に根差した情報収集力が強みとなります。
マーケットに関する深い知見や幅広いネットワークを活かし、競争力のある投資や運用を行うことで実績が積み重なり、認知度も増していきます。ポートフォリオが集中することによりそのエリアでの売却相談も集まりやすくなる傾向があり、情報が情報を呼び成長の原動力となっています。

地元企業や地域へ貢献できるメリットも

地域特化型REITは、投資家から集めた資金を地域に還元する仕組みです。地域の中心エリアの優良物件をREITに幅広く組み入れた場合、それによって地域全体へ投資資金を循環させ、地域活性化に貢献することもできます。
投資家向けの集会を開き、投資・運用について幅広く意見を求めエリアに寄り添った運用を行うなど、地域に密着し地域に貢献することが既存のREITと異なる地域特化型の魅力といえるでしょう。

一方で、地域特化型の投資法人は東京に比べるとアクセス面での不利な点はあります。しかし、投資市場の動向をいち早く掴み柔軟に対応することで、補うことができるでしょう。そのためには、投資法人と地元企業、それに投資家の繋がりが大変重要となります。

地方へ目を向けた投資

一般社団法人不動産証券化協会の資料によると、J-REIT全体の保有不動産の約50%が東京23区、約70%が関東圏に集中しています。
近年、大都市部の不動産価格は高騰しており、新たな投資先として地方に目を向ける投資家も増え、そんな中で地域特化型リートも注目を集めています。また、これはREITに限らず現物の不動産投資でも同様であり、自然災害に対するリスクの分散として複数のエリアへの投資を不動産戦略とする一般企業も増えてきています。
いずれも分散投資の一環であることが多く、前に挙げた現物不動産とREITそれぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、自分の投資戦略に合った方法で地方へ目を向けてみてはいかがでしょうか。

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