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賃貸物件運用の最大の悩み、「空室」。
そのリスクを低減する「空室保証」とは?

2019.05.29

不動産で利益を上げていこうとする場合、賃貸経営を考慮することが多い。しかし、所有不動産を賃貸物件とする場合、「空室が出たらどうするか」という問題とは切り離すことができない。この数年、その課題に対して「借上」=「サブリース」という仕組みが増加していたが、不動産オーナーにとって不利な状況に陥っているケースが多く報道されている。賃貸物件経営における空室リスクを軽減できる「空室保証」について、今回はサブリースとの違いを踏まえて、解説していく。

空室リスク対策としての「サブリース契約」では、契約内容の吟味が重要

 遊休不動産がある場合、不動産会社や金融機関から、「賃貸物件にしませんか」という声がかけられることが多い。活用されていない不動産の場合、固定資産税だけが出ていき、また相続時のことも意識して、賃貸物件に転用しようと考えるオーナーも少なくない。ここで、近年、問題となっているサブリース契約が話題となることが多い。不動産オーナーが賃貸物件に転用して収益をあげようと考える場合、収入の原資となるのは、家賃に他ならない。家賃そのものは立地などの条件で考えることができるが、空室があるとそもそも家賃が入ってこないことになる。この空室による家賃収入の変動をカバーするとして、増えていたのが「サブリース契約」だ。
 サブリースとは、いわゆる「借上」のことを指す※。最近では一棟まるごと借り上げるサブリース契約が多いようだ。不動産オーナーは、所有地に賃貸物件を建てる。ここまでは、不動産オーナーの投資となる。この賃貸物件を、不動産会社、あるいは管理会社にまるごと借り上げてもらう。不動産会社は、その物件を転貸することで家賃収入を得る。不動産オーナーは「不動産会社からの賃料」を収入として受け取ることになる。不動産オーナーにとっては、空室があろうがなかろうが、契約期間中は変わらず不動産会社からの賃料を受け取ることができる。賃貸物件運営の最大の悩みである「空室」から開放されるのだ。

※三菱地所リアルエステートサービスでは、サブリースという言葉の意味が広く、誤解を生じることも踏まえて、「マスターリース(空室保証型 or 実績連動型)」という単語を用いています。本記事では、賃貸物件の「借上(一部、一棟ごとを含む)」を指す言葉として、サブリースという単語を使用しています。

 しかし、昨今のサブリース契約にまつわる問題では、この契約内容に問題がある場合が多い。サブリース契約では、空室のリスクを不動産オーナーから不動産会社に移したようなものだが、不動産会社でも空室リスクは大きい。そこで、空室が多い、あるいは空室を埋めるために賃料を下げるような場合には、「不動産オーナーとの間で取り決めた賃料を下げることができる(変更を求めることができる)」という契約になっている事がほとんどだ。そもそも、賃貸物件の賃料を数年先まで、保証できるケースは、よほどの好立地でない限り難しい。この点をきちんと説明せず、一方的に不動産オーナーと契約した賃料を下げるようなケースが問題化しているのだ。

空室リスクを低減するサブリースと「空室保証」

 サブリースの契約にも、空室率によって変動する「実績連動型」と空室に関わらず不動産オーナーに支払われる賃料を一定とする「空室保証型」がある。
一方で、借上であるサブリース契約とは異なる「空室保証※」もある。保証会社と物件オーナーが契約し、実際の家賃収入が満室時の何割かを下回ったときにその差額を補填するサービスで、毎月保証料を支払うことになる。これはサブリース契約していない物件でも契約することができる。保証会社との契約によって、空室が増え、賃料収入が減少しても、一定の割合で収入を補填するサービスだ。毎月の保証料は必要だが、万一のときに備える保険に近いともいえる。

サブリース 空室保証

一括借上で不動産会社と契約を結ぶ。

賃貸物件の管理、入居者の募集などは不動産会社が行う。

オーナーに支払われる賃料は満室時を基準に一定の料率で定められることが多い。

2年程度の契約で更新することが多い。その際に保証料率が見直されることも。

契約料が一定の「空室保証型」の他、入居率によって契約料が変動する「実績連動型」もある。

あくまでも、空室時の家賃収入を保証するサービスで、保証会社と契約を結ぶ。

物件の管理、入居者の募集などは、物件オーナーが行う(別途、不動産会社と契約することもできる)。

保証料は毎月定額制の場合が多い。金額は物件の条件で異なる。

空室が出た場合でも満額が保証されるとは限らない(契約内容による)。

※賃借人が家賃を払えない場合に備える「家賃保証サービス」とは異なり、「空室保証」は、物件オーナー(賃貸人)に対して、空室があっても一定の収入を保証するものです。

空室リスクを下げるのは、物件価値の維持向上と適切な運営。楽な空室リスク対策はない

 サブリース(一括借上)や空室保証などのサービスが注目される背景には、現在の不動産賃貸業界の状況が大きく影響している。少子高齢化が進み、社会的に「空き家問題」が深刻化しつつある。そもそも人口が増えないなかでは、不動産、賃貸物件の需要も増えることは考えにくい。しかし、投資としての賃貸物件経営、ワンルームマンション経営などは、いまでも根強い人気がある。金融投資に比べて、「土地」という形があることに安心感があるのかもしれない。しかし、空室リスクは大きい。投資した金額に対する金利、家賃としての収入、税金などを踏まえて、収益を生むかどうか。このカギの一つが空室だとも言える。

 

 あえて言うならば、楽な賃貸物件運用はない。重要なのは、「その不動産は賃貸物件として、本当に魅力があるかどうか」を考え抜くことだ。そして、適切に管理して、入居者が退去したくないような物件にすることだ。そのために、協力してくれる管理会社とともに、良い賃貸物件を生み出していくしかない。「サブリースするので、空室の心配はありません」「少々立地が悪くても、かならず埋めます」という不動産会社もあるかもしれない。賃貸物件を運用する場合、信頼できる不動産会社と手を携えて、客観的な視点を持つ保証会社に空室保証を相談して、進めていくべきだ。