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業務効率アップや固定費最適化のカギを握る
いま考えておきたいオフィスの「照明計画」

2019.02.07

ビジネスパーソンにとって、オフィスはビジネスに集中する場であり、環境が快適であればあるほど業務は捗るというものだ。一方、OECD(経済協力開発機構)の調べによると、2017年の日本の時間当たり労働生産性は47.5ドルと、米国の72.0ドルに比べると3分の2程度の水準で、OECD加盟国36カ国中20位、主要先進7カ国中では最下位という結果に留まった。
こういった状況を踏まえ、業務効率の改善などの施策を通じた生産性向上に取り組む企業は少なくない。具体的には、業務フローの見直し、AIやICTといった先端テクノロジーの採用、フリーアドレスのオフィスレイアウトなどが挙げられる。
そのひとつとして、オフィスの「照明」に着目するケースも増えているようだ。これまでは、画一的な照明計画がデフォルトであったが、執務ゾーンごとに作業内容に応じたバリエーションに富んだ照明を取り入れることで、疲労度の軽減や快適性・業務効率の改善につながるという。また、柔軟性のある照明計画によってはエネルギーコストの削減も実現する。ここでは、適切なオフィスの照明計画について考えてみよう。

(写真=Business office building in London, England/Shutterstock.com)

安全かつ快適なオフィス環境には「最適な光」が必須

言わずもがな、照明の目的はオフィスや商業施設といった空間、さらにはデスクワークや各種作業などのタスクに対して必要な明かりを確保し、安全で快適な環境を作り出すことで、それを実現するのが、照明計画と言える。

では、オフィスにおける最適な明るさとは、どのくらいの基準を指すのだろうか。ポイントは、単位面積当たりに入射する光の量で、ルクスを単位として表す「照度」だ。労働安全衛生規則では、事業者に対して労働者を常時就業させる場所の作業面の照度を、精密な作業では300ルクス以上、普通の作業は150ルクス以上、粗な作業は70ルクスと定めている。

これは、ビジネスパーソンの安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進するための最低照度を明文化したもので、基準を下回ると視力の低下や眼精疲労、作業ミスや見落としなど、健康被害と安全性の低下を及ぼすとされ、事業者は罰則の対象になる可能性がある。

JIS(日本工業規格)でも作業内容や空間の用途によって推奨照度を定めたJIS照明基準を設けていて、事務所や営業室、設計室、製図室は750~1500ルクス、事務室や役員室、受付などは300~750ルクス、応接室、食堂、EVホールで200~500ルクス、休憩室、更衣室などは75~150ルクス、屋内非常階段は30~75ルクスと定めている。

また、一般社団法人照明学会による「オフィス照明設計技術指針」でも推奨照度を定めていて、それに則れば事務室や役員室といった執務エリアなら500~1500ルクス、応接室や休憩室などコミュニケーションエリアは500~750ルクス、食堂・休憩室を含むリフレッシュエリアは150~500ルクス、トイレ、玄関、車庫などユーティリティエリアは75~500ルクスという内容だ。

ここからわかるのは、それぞれで基準は異なるものの、業務の内容によって最適な明るさがあり、それを順守することで安全と快適、健康被害の抑制も実現しうるオフィス環境になるということだ。

エリアに応じた照明計画で快適性と生産性アップを狙う

照明計画を進める際は、先述の基準を参考に、空間それぞれの目的に応じた明かりを取り入れることだ。デスクワークなどを行う執務エリアであれば書類や人の顔を見やすく、会議室なら出席者や書類を見やすくするなど、状況に応じて照明状態が変えられるといい。バックオフィスや倉庫といった多目的エリアは、作業に支障がない程度の照度にすればいい。

加えて、照明方式も検討したい。それは大きく3つにわけられ、部屋全体を明るくする「全般照明方式」は、もっとも一般的な方式だ。全体を一様に照らすので、事務機器やデスク、什器の配置を変えても、照明器具の種類や配置を変更しないですむ。

狭い範囲を個別に照らす「局所照明方式」は、光を必要とする相手・対象に合った条件で照明設備や装置を設置する方式である。個別なので、それぞれが必要に応じて点灯・点滅もしやすい。

そして最近、省エネの観点を踏まえて導入が増えているのが、全般照明方式と局所照明方式を組み合わせた「タスク・アンビエント照明方式」だ。これは、デスク周りなど業務(タスク)に必要な部分には十分な照明を当てて、部屋全体の照度(アンビエント)は抑えるといった方式で、オフィス全体の光量を押さえながらも業務にはストレスを感じさせないのが特長といえる。現在では、デスクワークで書類作成といっても内容は多岐に渡り、さらには印刷物のチェックもあればPC画面上での検証もあり、それぞれの作業に対して適する照度も異なる。タスク・アンビエント照明方式を採用すると個々の最適化に加え、部屋全体を煌々と照らす必要がなくなるので、エネルギーコストの削減にもつなげられる。

なお、エネルギーコストの削減をかなえる手段は、タスク・アンビエント照明方式だけに限らない。低炭素社会実現に向けた政府を挙げた国民運動の「COOL CHOICE」では、オフィスでできる節電アクションとして、「明るさを調整できる照明器具は必要のない場合に照度を下げる」「間引き点灯をする」「照明器具の掃除で明るさをアップ」「点灯時間を短くする」「人感センサーの活用」「電球型蛍光灯やLED電球など省エネ型の照明器具の採用」といったことを推奨している。

もしくは、開口の大きな窓側のエリアは自然光を活用することもできるし、最近はAIやIoT技術を活用して自動で最適な調光制御を行うソリューションも提供され始めている。電力の利用状況を可視化できるサービスを導入することで、従業員の節電意識を高めるといった方法もあるだろう。

いずれにしても、さまざまな取り組みを実施すればオフィスの照明は最適化し、業務効率や生産性の改善効果をもたらす。ふだんの視作業に不便を感じるなら、新たな照明計画を組織全体で考えたい。ただし、大がかりな変更を実施する際は、ビルのオーナーや管理会社への相談も忘れないことだ。