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日本の視点ではエキセントリック?アメリカにおけるオフィスの常識とは

2018.11.07

オフィス市場の商習慣や物件を評価する価値観は国や都市によってさまざまだ。日本での常識が海外の主要都市ではまったく異なることも多い。賃料に直結する賃貸面積の表示ひとつとっても、日本とアメリカではギャップがある。
さらに、ニューヨークをはじめとするアメリカの主要都市において、選ばれるオフィスの条件は立地やビルの規模、スペックだけにとどまらない。環境負荷軽減に対応した「グリーンビルディング」であるかどうかが重要な評価軸となっている。

(写真= Sean Pavone New York New York skyline/Shutterstock.com)

ニューヨークの賃貸物件では面積表示に要注意

オフィスの賃貸借における賃料の表示単位は都市によって異なる。日本では尺貫法による「坪/月」表示だが、欧米圏ではヤード法による「sq.ft.」(平方フィート)とメートル法による「sq.m.」(平方メートル)の2つが代表的だ。ニューヨークでも「sq.ft.」が用いられており、ロサンゼルス、ロンドン、香港、シンガポールなども同様である。

ニューヨークでのオフィス賃貸借で先ず注意すべきは、面積についての捉え方だ。日本の場合、賃貸物件に表示してある賃料基準となる面積は、通常オフィスとして利用可能な専有部分である。ところがニューヨークでは、オフィスの専有面積に加えて、廊下・エレベーターホール・トイレなどの共用部分の面積まで組み入れた「RSF」(Rentable Square Footage=賃貸可能面積)で賃料が算出されるのが一般的である。このため、日本の感覚でニューヨークの物件面積を判断すると、RSFと実際の専有面積とのギャップが生じることになる。契約の際には、RSFだけでなく専有面積であるUSF(Usable Square Footage=利用可能面積)の確認が必須となる。

契約期間もニューヨークでは5〜10年と長期契約のケースが多い。テナントの事情による中途解約は原則として認められていないため、事業の都合等で退去する場合には、オーナーとの契約を継続したまま残期間を第三者へサブリース(転貸)することが認められている。これはニューヨークに限らず他都市でも一般的な商習慣であり、むしろ日本のように6ヵ月前までの予告で中途解約が認められる方が世界的には特殊といえるようだ。

契約時の独特な商習慣

ニューヨークの場合、日本のようにいわゆる賃借人に有利に働く制度は少ないと言ってよく、その事例の一つとして取り上げられるのが、エスカレーション事項である。賃貸オフィスにおけるエスカレーションとは、契約期間中に資材費高騰のような値上がり要因がなくても賃料が段階的に上昇していくことを言うケースが多い。日本ではあまり馴染みのない事項であるが、ニューヨークではオーナー側の立場が強いという意識があり、テナント側もオーナー側も「賃料は上がっていく(下がらない)もの」だと考えている背景が前提にあることが大きいのであろう。

アメリカに浸透する環境性能認証制度LEED

アメリカ主要都市のオフィス市場では、建物の環境性能について世界的な評価軸が確立されているのも大きな特徴として挙げられる。環境投資は企業にとって依然最重要課題のひとつであり、企業活動の拠点であるオフィスにおいても地球環境に配慮したグリーンビルディングであることが求められている。

アメリカでは、全米グリーンビルディング協会が開発したLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)という建物と敷地利用の環境性能を評価・認証するシステムが浸透している。グリーンビルディングとして備えるべき必須条件を満たした上で、さらに取得したポイントによって標準認証、シルバー、ゴールド、プラチナの4つの認証レベルが与えられる。

2018年現在は「BD+C(新築または大規模改修ビル)」「ID+C(テナント内装)」「O+M(既存建物運用及び管理)」「ND(エリア開発)」「HOMES(住宅)」の5カテゴリーの認証システムが設けられている。建物オーナーやデベロッパーであれば建築物を対象にした「BD+C」「O+M」、テナント企業であれば内装を対象にした「ID+C」など、オーナーとテナントがそれぞれのカテゴリーで認証を取得することができる。

全米の多くの州や自治体が、LEED認証物件に対して固定資産税の減額や容積率の緩和などさまざまな優遇措置をとってグリーンビルディングを推進している。ニューヨーク市ではグリーンビルディング法によって、市の関連建築で建築コストが200万ドル以上のプロジェクトはLEED認証取得が義務づけられており、民間オフィスにおいても、運営コストの削減や不動産価値・企業イメージの向上のために、よりランクの高い認証取得に積極的だ。

日本のオフィスビルには日本独自の認証システムとして、政府支援のもと、産官学共同プロジェクトとして開発されたCASBEE(建築環境総合性能評価システム)があり、認証取得物件数は2018年4月時点で674件に上る。一方で、LEED認証システムは世界各国で導入されており、2017年11月時点で認証件数は65,807件に上る。日本でのLEED認証取得物件数は2017年11月時点で101件と徐々に増えており、2017年には日本コカ・コーラ本社(渋谷区)が節水や省エネルギー等の項目において高得点を取得し、最高ランクのプラチナ認証を受けている。

このように日本とアメリカでは不動産取引においてもさまざまな文化の違いがあり、オフィスの選び方や評価システムも異なる。海外で不動産をもつ際には、その国の文化を理解することが重要であるといえる。また、企業においては、よりグローバルな視点での不動産選びや環境への取り組みが今後必要不可欠となるだろう。