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個人も企業も多様なオフィスを自在に選ぶ時代がやってきた

2018.10.05

2017年から2018年にかけて、東京のコワーキングスペースやシェアオフィスの床面積は爆発的に拡大し続けている。企業に所属するオフィスワーカーがコワーキングスペースで仕事をし、自前のオフィスを持つ企業であってもシェアオフィスをサテライトとして活用する。そんな光景が当たり前のものになってきた。
働き方改革に呼応して、固定的なワークプレイスで就業することを中心に設計されてきた従来のワークスタイルが明らかに変わってきた。「いつでもどこでも働ける場」という視点は、既存不動産にも新たな価値を創出しつつある。

(写真=Workplaces in a modern panoramic office, Singapore city view from the windows. Open space. Black tables and black leather chairs. A concept of financial consulting services. 3D rendering./Shutterstock.com)

シェアとレンタル、新しいオフィスのあり方

知的生産性の向上や人材の有効活用を促進する働き方改革の波に乗って、時間や場所を選ばず自由に働けるテレワークが徐々に普及してきた。この動きに呼応するように、テレワークを快適に行うためのシェア型ワークプレイスがオフィス市場のトレンドとなっている。
また、入居時の初期投資を抑えたい、郊外や遠隔地にもオフィスを開設したいといった企業のニーズに対しても、自前でオフィスを構える従来の形態とは異なるサービスが提供されるようになってきた。

まず、これらの新しいワークプレイスの形態を大別してみよう。

(1)レンタルオフィス
事務所に必要な備品や通信設備、机、椅子などがあらかじめ備えられた個室空間で、通常の賃貸オフィスとほぼ同等の機能を持つ。通常の賃貸オフィスとの違いは、レンタルオフィス業者がフロアを一括で借り上げて、家具からOA設備まで必要なオフィス環境を提供するので、借主が自前で入居する場合の諸設備の手間や施工のコストを大幅に軽減できる。

(2)シェアオフィス
個人や複数の法人会員がシェアして利用するオフィスの形態。原則として各法人には専有空間はなくオープンスペースが中心だが、一人で作業できる個室や会議室、打合せできるスペースを設けるなど、通常のオフィスに近い多様な用途に応えられるところが多い。プリンターなどの機器は、共用のケースが多く、最近では、スタートアップ企業同士の協業や集積を特色にするシェアオフィスも増えつつある。

(3)コワーキングスペース
Co-working、つまり共同で仕事をするための空間である。利用者が賃料ではなくメンバー料金を払ってオープンなフリーアドレス空間をシェアしてそれぞれの仕事を行う。利用者同士がゆるやかなコミュニティを形成し、連携や協業を促進する場として運営されていることが多い。スキルアップやコミュニケーションを目的としたセミナーなどを開催するところも多く、作業の場としてよりもコミュニケーション発展の場、ビジネスヒントの場として活用されている。

拡大するコワーキングとシェアオフィス

現在のオフィス市場において、個人向けか法人向けか、専有かオープンスペースかという枠組みは急速に崩れつつある。コワーキングやシェアリングの概念が新しい働き方の象徴として一般化し、広く社会に受け入れられるようになったからだ。

JLLが2018年7月に発表したレポート「東京オフィス市場で拡大するコワーキング・スペース」によれば、東京のコワーキングスペースの床面積は2017年から急拡大し、2018年6月時点で前年の約2倍に増加している。なお、ここでいうコワーキングスペースにはシェアオフィスも含まれる。

急拡大の牽引役となったのが2017年7月に日本上陸したWeWorkだ。
ニューヨークで誕生したWeWorkは、創業当時はフリーランスやスタートアップの拠点というイメージが強かったが、現在では世界的大企業をメンバーに抱え、コワーキングの領域を超えた包括的なワークプレイスを提供している。ハード面の設備やワークスペースのデザイン性だけでなく、情報や体験をシェアできるメンバー専用SNSなどのサービスを提供し、WeWorkで働くことが仕事の質や企業価値を高める、そんなイメージを作り出すことに成功している。

一方、リージャスやサーブコープなどのレンタルオフィス大手も、近年ではコワーキングスペースの提供に力を入れている。また、オフィスビルデベロッパーが新たに開業する大規模オフィスビルには、テナント企業専用の快適なコワーキングスペースを備える物件も増えてきた。
全国の主要都市で展開する多拠点型のシェアオフィスも増加し、モバイルワークや出張の多いビジネスマンに利便性を提供している。

既存物件にもオフィス転用の可能性

今後の都心エリアでは更なる再開発と大規模ビルの開業が相次ぎ、オフィスの大型供給が進んでいく。法人向けのシェアオフィスやコワーキングスペースも今後さらにハイクラス化、ブランド化していく傾向にあるだろう。その一方でそれらとの関連性が薄く、空室率上昇が懸念される既存不動産でも、まだまだ多様な働き方のニーズに応えるサービスに取り組む余地はあるはずだ。

営業職の電話営業やTV会議などでは、オープンスペースよりも音もれや周囲の環境に気兼ねしなくてもいい防音性の高い個室空間が求められる。こうした需要に目を付けてオフィス市場に参入してきたのがカラオケルームだ。例えば、「ビッグエコー」では一部の店舗にビジネスプランを設け、ビギナーでも気軽に利用しやすい敷居の低さ、既存設備をそのまま活用した防音個室によって、従来のコワーキングスペース利用者以外の新規ユーザーを呼び込んでいる。

また、子育て中の在宅ワーカーや職場復帰を予定している育休中の女性たちが求めるのは、自宅の近くで、子連れで仕事ができる空間だ。キッズルーム、授乳スペース、託児サービス、保育所などを備え、子供を安心して連れていける小規模なコワーキングスペースやシェアオフィスが、都市部や郊外各地に増えて来ている。特に子育て世帯の多い住宅地やタワーマンションの集積地では、今後さらにその需要は高まると見られる。

そのときどきの業務内容によって最適な場所を選ぶ働き方、ワークライフバランスなどの視点から、既存ビルや休眠不動産を見直すことで、これまでオフィスには不向きとされてきた立地や物件にも新たなコンバージョンの可能性が生まれそうだ。