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音と香りのデザインがオフィスワーカーの集中力を左右する

2018.09.06

オフィスづくりではレイアウトや動線設計などに目がいくが、盲点になりがちなのが「音」の問題だ。フリーアドレスやオープンスペースなどオフィス空間が多様化していく中、周囲の話し声や会議室の音もれによってのさまざまな問題は看過し得ない。
より創造的な働き方をめざす企業では、BGMやサウンドマスキングを導入して積極的な課題解決に取り組んでいる。また、集中力を高めたりリラックスを促したりする仕掛けとして、音だけでなく香りの効用も注目されている。作業効率を向上させるために、五感全体の活性化を意識したオフィスのあり方を考えてみたい。

(写真=Reed Diffuser In High End Luxury Room/Shutterstock.com)

集中したいときほど雑音が気になる

生産性を高める取組みとしてオフィスに、集中、コミュニケーション、気分転換やリラック等それぞれに特化した環境を取り入れることがある。だが空間のゾーニングは、パーテーションなどでいかようにも変えられるが、音のコントロールは意外に難しい。

「USEN」が実施したアンケートによると、オフィスでの気になる雑音として、ふいに耳に入ってくる話し声や電話での会話、キーボードを叩く音などが高い比率を占めている。かといって静寂が保たれていればいいかというと、逆に、「オフィス内があまりに静まり返っている雰囲気だと息が詰まる」という声も強くあがっている。

また、情報セキュリティの面においてもオフィスにおける「音」にはリスクが介在している。機密性の高い会議、顧客との打合せなどは、社内の人間にも内容を聞かれないように配慮しなければならないが、実際にどこまでスピーチプライバシーが守られているか不安を感じている企業も少なくない。隣接する会議室の音もれによって他の会議に支障が生じることもあるようだ。

オフィスに特化した音対策サービスが好評

前述のことを総括すると、オフィスの音対策には主に2つの目的がある。

1つめの目的は生産性向上。雑音をシャットアウトして集中力を高める一方、静かすぎる環境への違和感を解消する雰囲気づくりも大切だ。2つめの目的はセキュリティマネジメントとしての音対策である。しかし建築を伴う防音仕様はコストも工事期間もかかり、ことによってはオフィスに閉鎖性をもたらしてインテリアを損なうことにもなる。そこで注目を集めているのが、音の問題を音で解決するサービスである。

先に挙げた「USEN」では、2013年からオフィスに特化したBGMサービス「Sound Design for OFFICE」を展開している。当初は職場で音楽を流すことに抵抗感を持つ企業も多かったが、ストレスチェック制度の導入や働き方改革の波に乗って採用企業は増えている。

その選曲と音量はオフィス環境の邪魔にならないように周到に設計されており、集中力を向上させ雑音をマスキングする、ひらめきを促すなど、それぞれのワークスペースに適したチャンネルを流すことができる。映画のサウンドトラックを流してテンションをアップさせる、終業時に決まった曲を流すことで残業時間突入への周知とその削減につなげるなど、オンとオフの切り替え効果も大きいという。

コクヨでは、雑音や音もれをマスキングする「サウンドマスキングシステム」を提供している。天井の構造を上手く活用し、耳障りにならない空調音のような背景音を連続的に流すことで、オフィスや会議室などの音対策に効果を発揮する。もともと病院や弁護士事務所など利用者のプライバシーに配慮すべき場に採用されてきたが、ここのところオフィス需要も増えてきて、不特定の企業社員が共同で利用するシェアオフィスなどでの導入事例も増えつつある。

アロマや環境音で五感に響くオフィス空間を

一方、ビジネスシーンにおける「香り」の効用も注目されている。嗅覚は五感の中で最も本能的な感覚といわれており、効果的に活用すればリフレッシュ、集中力アップ、ストレス軽減などに大きく作用する。ホテルや空港ラウンジ、各種商業施設では香りによるおもてなしは珍しくない。カーディーラーのレクサスのショールームでは、顧客にブランドの価値観を体感してもらう一環として季節ごとにオリジナルのアロマによる演出を行なっている。

オフィスでもエントランスロビーやエレベーターホールなどを中心にアロマの導入が増えている。
2017年春に竣工した三菱地所の大手町パークビルディングでもエントランスロビーにアロマを導入している。屋内壁面緑化を設えた開放感あるロビーに木の香りがほのかに漂う。訪問者の印象度を上げるだけでなく、入居企業の社員にとっても癒しや気持ちの切り替えになっているようだ。

アイウエアブランドを展開する「JINS」が2017年12月にオープンした会員制ワークスペース「THINK LAB」は、五感への刺激にこだわりぬいた空間設計が話題になっている。目指したのは「神社仏閣のようなオフィス空間」。エントランスを入ると、参道をイメージした暗く長い廊下が続く。森の香りを感じながら適度な緊張とともに進んでいくと、視界がひらけ、リフレッシュできるように植物がマネジメントされたオープンスペースに到着。耳をすますと水のせせらぎや鳥の鳴き声がかすかに聞こえる。利用者の集中力を深めるため、科学的研究に基づいたさまざまな仕掛けが施されている。

昨今のようにフリーアドレスが普及してくると、ワーカー自身がその時のメンタル状態などを勘案して、効率が上がりそうなサウンドやアロマのスペースを選択することも可能である。音や香りの感受性には個人差や好みがあり、一律に「これがベスト」といえる解を出すのは難しいが、視覚的、物理的な工夫にとどまらず、適切な音対策や五感に訴えるオフィスデザインによって、より生産的で創造的な働き方を引き出すことができそうだ。