『クリエイティブオフィス』とは? 単なる「オシャレなオフィス」ではない!

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最近、グリーンが多いオフィス、リフレッシュスペースが充実したオフィス、決まったデスクがないフリーアドレスのオフィスなど工夫を凝らしたオフィスが増えている。これらは単にカッコいいから、オシャレだから、取り入れられているわけではない。経済産業省が推進する『クリエイティブオフィス』の考えに則ったものなのだ。

単なるオシャレなオフィスと『クリエイティブオフィス』の違いとは?

近年、オフィスの有り様が変化している。かつては無機質で、部課ごとにエリアが分けられ、上司が部下を管理することに特化したオフィスが一般的だった。従業員の多くは、上司の目が届く決まったデスクで働くことが当たり前だったのだ。それが最近では大きく変わっている。デスクの場所が決まっていないフリーアドレスの導入、一見仕事とは関係がないリフレッシュスペースを設けるオフィスが増加している。グリーンをふんだんに配置、水槽で熱帯魚を飼うようなオフィスさえある。

これらのオフィスは外資系企業やIT系のスタートアップ企業に多く見られる印象があり、中には「単なるおしゃれなオフィス」だと思っている人もいるかも知れない。しかし、実は、こういった新しいオフィスのあり方は、2007年に経済産業省が推進を始めた『クリエイティブオフィス』の考え方を取り入れているのだ。経済産業省は『クリエイティブオフィス』を次のように定義している。

知識創造行動を誘発する、空間・ICTツール・ワーカーへのはたらきかけと、組織の目標とプロジェクトのゴールに向けたマネジメントの双方を備え、組織の創造性を最大限に発揮するための働き方に適した“場”

これだけでは、なかなかわかりにくいが、従業員に快適に働いてもらおう、働きやすい環境にしようという単純なものではなく、「知識創造行動」を促すことで企業の創造性、生産性を向上させようというものだ。

『クリエイティブオフィス』が促す「12の知識創造行動」とは?

『クリエイティブオフィス』のポイントといえる「12の知識創造行動」は、経営学者の野中郁次郎先生が提唱する「SECIモデル」で定義されている。

12の知識創造行動

※一般社団法人ニューオフィス推進協会 「クリエイティブ・オフィス・レポート V1.0 V1.5 V2.0」をもとに作成

まず「S  Socialization 共同化 刺激し合う」では、「ふらふらと歩く」「(人と人が)接する」「見る・見られる感じ合う」といった行動を挙げている。オフィス内の通路をあえてジグザグに作り、コーヒーなどを飲みながら雑談ができる喫茶スペースを作る、オフィス全体が見渡せるような構造にするなどの工夫が考えられる。

次の「E Externalization 表出化 アイデアを表に出す」では、「軽く話す」「ワイガヤ・ブレストする」といったコミュニケーション促進に加えて「絵にする、例える」という個別の行動も挙げられている。気軽に利用できて声を出して議論できるようなミーティングブースを用意し、ホワイトボードを設置して議論ができるスペースを作るといったことが望ましい。

「C Combination 連結化 まとめる」では、「試す」「実践する」「理解を深める」という、具体的な行動、思索が挙がっている。試作品を作ることができるスペース、プレゼンテーションしやすい設備が整った商談スペース、他社に邪魔されない作業スペースなどが必要になる。

最後の「I Intermalization 内面化 自分のものにする」では、「調べる・分析する・編集する・蓄積する」「真剣勝負の討議をする」「診てもらう・聴いてもらう」といった行動が挙げられている。自席で集中できる環境、あるいは集中して思索できるスペース、真剣な討論ができる会議室などが求められる。

よく見ると「ふらふらと歩く」「軽く話す」「ワイガヤ・ブレストをする」といった比較的手軽なコミュニケーションと同時に「真剣勝負の討議をする」「診てもらう・聴いてもらう」という密度が濃いコミュニケーション、さらに「理解を深める」「絵にする・例える」「調べる・分析する・編集する・蓄積する」といった集中して行うべき行動が混在している。
これらの行動が実現できるオフィスが『クリエイティブオフィス』だと言える。

『クリエイティブオフィス』を実現するために押さえておきたいポイント

気軽なコミュニケーションと密度が高コミュニケーション、加えて集中すべき思索といった行動を無理なく取れるようなクリエイティブオフィスを実現するポイントは次の3つだ。

1.空間設計

かつて主流だったオフィスは、上司が部下を管理し支持を徹底する「上意下達型の組織」を念頭に置いたものだ。社員一人一人の創造性を重視する現在のオフィスの考え方では、「知識創造行動」を促進する空間設計が必要になる。手軽なコミュニケーションを実現するために、フリーアドレスを導入し、リフレッシュスペースを設けて部署を超えたコミュニケーションが取れるように工夫する。密度が濃いコミュニケーションのための会議スペースを充実させる。作業に集中するための執務スペースを用意するなど、シチュエーションに応じた空間を用意する必要がある。

2.ICTツールの活用

従業員が気軽に移動し、そのときに求められる場所で働けるよう、ICTツールの活用は不可欠だ。「この資料はこの場所にしか置いていない」「社内の限られた場所でしか、十分な通信環境が整備されていない」といった状態では、コミュニケーションに支障が出るだけでなく、実務にも影響が出てしまいかねない。

3.社員への意識付け

いくら『クリエイティブオフィス』を整備しても、「仏作って魂入れず」では意味がない。そこで働く従業員に、『クリエイティブオフィス』の意味、求められる行動について、きちんと伝え理解させなければならない。

『クリエイティブオフィス』でこんな効果も!

『クリエイティブオフィス』の目的は、最初に述べたように「従業員の知識創造行動を促し、企業の生産性・創造性を高める」ことにある。一方で、他にも様々な効果が期待されている。

例えば、モバイルワーク、リモートワークの促進もその一つだ。『クリエイティブオフィス』を整備するにあたって、ICTツールの整備は欠かすことができないが、それはそのままモバイルワーク、リモートワークに転用できる。
また、先進的な『クリエイティブオフィス』は企業ブランドの向上、そして企業の発展に不可欠な人材採用にも貢献する。会社訪問、面接などで企業を訪問した就職希望者に『クリエイティブオフィス』は良い印象を与えるだろう。

近年、「働き方改革」で時短勤務の徹底を行う企業が増えている中、その本質である「従業員の生産性向上」に向けたサポートや施策まで手が回っていない企業もある。これを機に『クリエイティブオフィス』は単なるオシャレなオフィスではなく、オフィスを変えることで、会社そのものを変革し、成長させることができるのだということを考えてみてほしい。

※『クリエイティブオフィス』については、「クリエイティブオフィス戦略で新たなイノベーションを働き方改革を「場」の視点から再構築創造性を促すワークプレイスのススメ」でも、詳しく解説しています。

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