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ITベンチャーのスタートアップの新たなフィールド、大手町がイノベーションの実証の場になる

2018.05.10

大手町エリアが新たなスタートアップ拠点としてITベンチャーのプレーヤーを惹きつけている。キーワードは、金融とテクノロジーの融合によってイノベーションを生みだす「フィンテック」だ。国内金融の中心地であり、日本を代表する大手企業の本社を数多く抱えるビジネスの集積地で、現在、フィンテックを介して新旧の企業がダイレクトに結びつき、互いの強みを生かした協業が進んでいる。「東京を世界一ビジネスしやすい街にする」という国家戦略特区構想と歩調を合わせるように、スタートアップ支援のインフラを構築してきた大手町エリア。この街から、未来を創造するサービスを世界に発信することができるのか。

(写真= pic0000/Shutterstock.com)

フィンテック企業は大手町をめざす

大手町や丸の内のビジネス街に「金融を超えたイノベーション」のコピーが掲げられ、起業家たちのカンファレンスがくりひろげられた。2017年9月に開催された「FIN/SUM WEEK 2017」での光景である。「FIN/SUM WEEK 2017」は、フィンテック(金融とテクノロジーの融合)をテーマとするグローバル・スタートアップイベント。日本経済新聞社、金融庁、一般社団法人Fintech協会の共同主催による。2018年はさらに拡大深化したものとなるだろう。

日本を代表する金融街であり、老舗の大企業が本社を構える大手町。かつては保守的なイメージが強く、ベンチャー企業がスタートアップに選びやすいエリアではなかった。1990年代から2000年代初頭にかけてITベンチャーが勃興した時代、脚光を浴びたのは渋谷や六本木。起業家は横のつながりを重視する。勉強会を開催したりオフィス空間をシェアしたりしながら、アイデンティティやビジョンを共有し、起業家同士のコミュニティを形成していく。彼らが集まって働くためには、入居基準や企業の格付けなどにこだわらず、またオフィスの区画面積はさほど大きくはないものの、IT環境などのインフラを充実させた最新のオフィスビルの多い渋谷や六本木が選ばれたのは自然な流れだった。

現在も渋谷や六本木はベンチャー集積地のひとつではあるが、賃料の高騰もあり、かつての求心力に陰りが見られる。また近年は、ベンチャー同士のつながりという図式に留まることなく、積極的に大手企業との接点やビジネスチャンスを求めて、都心部や東京の東側に拠点を求める新しい動きが生まれつつある。それぞれが得意とするビジネス領域やスタイルによって棲み分けがなされていた慣習を踏み越えて、世界に直結している大企業が多く立地しているという地の利を生かして、このフィンテックの中心となりつつあるのが大手町エリアだ。

再開発と共に続々と誕生したベンチャー支援施設

大手町を含む丸の内エリアでは、街そのものの再開発と歩調を合わせるように2000年代からベンチャー企業を積極的に誘致支援してきた。その第一歩となったのが2007年、新丸の内ビル開業と同時に開設された「EGG JAPAN」。ベンチャー企業の事業開発支援を目的にしたオフィススペースと、多業種のビジネス交流の場となる「東京21cクラブ」で構成されている。

2010年代からは、「東京を世界一ビジネスしやすい街にする」ことをめざす国家戦略特区構想によって税制の見直しや規制緩和が加速。大手町・丸の内エリアは、海外企業やベンチャー支援のプラットフォームと位置づけられるようになった。

この流れを受け、2016年に2つのビジネス拠点が大手町に誕生した。ひとつは「EGG JAPAN」と対をなすベンチャー支援施設「グローバルビジネスハブ東京」。大手金融企業などが多く入居する高層ビル「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」内に、約800坪という規模で、カジュアルな共用ラウンジやワークプレイスを備えたスペースが設けられた。もうひとつが、フィンテックに特化したスタートアップ集積拠点「フィンテックセンター・オブ・東京」、通称「FINOLAB(フィノラボ)」である。

オープンイノベーションの実験場に

「フィノラボ」が入るのは1958年竣工の大手町ビル。周辺の高層ビルとは対照的なレトロな外観のビル内を大胆にリノベーションし、決済システムやブロックチェーンなど先進的なサービスの開発に取り組むベンチャー企業が入居している。施設内には指紋認証セキュリティシステムが導入されており、それは入居企業のひとつ株式会社LIQUIDの開発した独自技術によるものだ。

お手本としてイメージされるのは、金融先進地ロンドンで、フィンテックを牽引するスタートアップ支援施設「Level 39」。これは、世界中から集まってくる意欲的な起業家と、大手金融機関や投資家とをつなぐハブとなって機能している。

「フィノラボ」でも、みずほフィナンシャルグループがラボ施設を設置して新たな金融サービスの開発環境を提供するなど、大企業とベンチャーとが協業してオープンイノベーションをめざしている。
規制の厳しい金融分野で新しいサービスを生みだしていくために、法律や特許に強い専門家集団「フィノベーターズ」が支援体制をとっており、また、そういった事例の一つとしては、先に述べた株式会社LIQUIDの指紋認証技術が、2018年から三菱地所本社に導入され、社員食堂や無人販売店の決済システムや入退出管理システムの実証実験という取組みが進められている。

古くて新しい「日本の顔」でもある街、大手町。時代を変えるサービスやソリューションがここからいかに世界に向けて羽ばたくか、今後も注目していきたい。