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「空き家を放置していてはいけない」空き家の売却・処分を急ぐ人が増えている理由

2018.03.13

総務省が発表した「平成25年住宅・土地統計調査」で、空き家が全国で約820万戸にのぼることが判明するなど、空き家問題が深刻化している。これを受けた国の緊急対策として「空家等対策の推進に関する特別措置法」が2014年11月に公布され、2015年に施行された。施行から3年が経過し、空き家に流通の動きが出始めている。

(写真=Jackthumm/Shutterstock.com)

空き家が急増した背景と空き家問題

かつて高度経済成長期の日本では常に住宅不足であった。ところが、現在では家が余っている時代だ。単純に考えても、一人っ子同士が結婚すれば将来、どちらかの実家が空き家になる。

国土交通省がまとめた「空き家等の現状について」によると、空き家を所有するに至った経緯として最も多いのが「相続」で、全体の56.4%だった。相続したものの、自身が居住するために必要としていない、職場へのアクセスが良くないという理由から転居する予定がない人も多い。

空き家を放置している理由で最も多かった回答は「物置として必要だから」というものだ。次いで「解体費用をかけたくない」「特に困っていない」と続く。もちろん、思い出のある実家を処分しづらいし、親族が将来住むかもしれないから、という人もいるだろう。

とはいえ、人が住まなくなった家は急速に老朽化が進む。遠隔地に住む所有者が、数年ぶりに空き家を見に行くと、驚くほどの廃虚になっていたという話は珍しくない。空き家のままだと、豪雨や災害でダメージを受けても放置されることが多く、害虫なども住みつきやすい。危険だから何とかしてほしいと近隣住民からの苦情が急増するケースもある。

空き家に対する政府の対策とは

空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、市町村はその管轄するエリアの空き家について調査し、空き家の状態・所有者の確認などを行っている。並行して近隣住民から直接苦情のある空き家については、優先的に所有者を探し、空き家の活用や取り壊しなどの指導も行っている。

さらに、税制改正により「特定空家等」として勧告を受けた土地については「固定資産税等の住宅用地の特例」から除外されることとなった。該当する空き家は、固定資産税や都市計画税が更地並みに増額されることになる。広さやエリアによって一概にはいえないが、3倍から6倍の増額になる。年額5万円納税していた場合、15万円から30万円に増額される計算だ。これまで放置していた空き家の処分や活用方法を考える人が増えてもおかしくない。

「特定空家等」に指定される要件は次のとおりである。

・倒壊など、著しく保安上危険となる恐れのある状態
・著しく衛生上有害となる恐れのある状態
・適切な管理が行われていないことにより、著しく景観を損なっている状態
・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

これらに該当する空き家は「特定空家等」に指定され、役所からの指導・助言を受ける。その内容に従わず、改善がされないと判断されると、固定資産税の住宅用地特例から除外されるだけでなく、最終的には行政代執行が行われる可能性もあり、その場合所有者に費用が請求される。

空き家の流通促進と活用方法

国は空き家を含む既存住宅の流通が促進されるように、2016年に宅地建物取引業法の一部を改正した。今後は、既存建物についてインスペクション(建物状況調査)に関する説明が義務付けられ、古い家でも安心して購入できるように体制を整える方向である。税金面では、相続の発生により空き家になった不動産を相続開始から3年以内に売却し、その他の条件を満たしていれば、売却した際の譲渡所得から3,000万円の特別控除が受けられる。

2017年3月に国土交通省が発表した「空家等対策の推進に関する特別措置法の施行状況等について」によると、平成28年度は全国で3,500軒以上の空き家が「特定空家等」として助言・指導をされ、210軒が勧告を受けている。政府や自治体が行ってきた対策により、空き家の所有者たちの意識は以前より改善され始めている。

空き家の活用方法として、古民家風の店舗や事務所として使用するケースが増えている。さらに民泊やレンタルスペースとしての利用も人気のようだ。立地によっては、外国人が好むシェアハウスに改装している物件もある。高齢者が落ち着いて利用できるという理由から、デイケアやグループホームへの活用にも需要が期待され始めている。これらは新しい建物にはない、「昔ながらの趣」に目を付けた発想かもしれない。

また、東京や大阪では、認可保育園に土地や建物を貸すと一定期間、固定資産税の免除や家賃補助などを助成する自治体が増えてきている。都市部では待機児童対策に空き家が活用されているのだ。今後ますます空き家の活用方法に注目が集まるだろう。