ケーススタディ 経営力を強化するセール&リースバック

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人材育成に力を入れたい、斜陽産業からの転換を図りたい。企業を成長させていくために、持続可能な企業であるために、経営者としてさまざまなチャレンジをする必要がある。しかし、それには資金が必要だ。資金調達といえば、銀行融資、不動産売却などが候補に挙がるが、銀行融資は審査の厳しさ、不動産売却は仮に不動産を持っていても、事業に使っていて売却できないケースもある。そこで、「不動産をそのまま使いつつ、売却する」、セール&リースバックで未来への投資を実現したケースを紹介したい。

監修:税理士法人 平川会計パートナーズ 理事長/税理士 平川茂

企業の成長には、常に投資が必要。そのためには資金調達しなければならない

いま、VUCAの時代ともいわれ、将来の予測がつきにくい時代だ。いま好調の事業でも、数年後には様相が一変しているということもあり得る。企業の寿命はかつて30年ともいわれていたが、いまはもっと短いかもしれない。長く続いている企業というものは、自然に事業を転換したり、時代の変化に対応する投資を怠っていない企業だといえる。

企業を成長させるために必要な要素はたくさんある。まず人材の採用や育成。長く貢献してくれた社員はやがて年をとって退職していく、それに対応して常に次の世代の人材を育成し続けなければならない。また、新たな商材の開発、技術の進歩への対応も不可欠だ。そのためには、設備投資も欠かせないだろう。根本的に斜陽になる事業には見切りをつけて、新しい事業に手をつける判断も求められる。

しかし、いずれにせよ「先立つもの」、つまり資金が必要になる。一般的に資金調達といえば銀行融資、公的な支援金、ファンドなどを通じた資金調達などがあり得るが、「借りる」という手段には抵抗がある経営者も多いだろう。また、金融機関や投資家意向には逆らえないという事情も起こりかねない。

そこで、不動産を活用した資金調達があり得るのだが、事業で活用していて売却できない不動産も多い。その「売却できない不動産」を使用し続けながら、売却して資金調達をする手段がある、それがセール&リースバックだ。今回は、人材育成や事業転換のためにセール&リースバックで資金調達したケースを説明する。

ケーススタディ1 会社の若返りのためのセール&リースバック

C社は、創業35年の金属加工メーカーで、高い技術力を背景に順調に成長を続けている。従業員も100名を超えたが、その半数以上が創業時からのメンバーで、彼らの高い技術が成長の源泉となっている。
いま課題を感じているのが、中核メンバーの平均年齢の上昇。平均年齢は40代後半から50代で、まだまだ働き盛りだが、10年後はというと疑問符がつく。

若い人材を育成しつつ、古くなった設備の更新、新製品開発など、会社の若返りを図りたいと考えている。

十分な資金が手元にないことから、税理士と相談し、不動産会社のアドバイスを受けて、オフィスビルと工場をセール&リースバックすることに決定。創業者があまり銀行融資に積極的ではなかったため、資金確保手段に悩んだが、ビルや工場の立地もよく、売却先が比較的早いタイミングで見つかったことが功を奏した。

セール&リースバックでは、買戻特約をつけ、めどがたった段階で不動産を買い戻すこととした。

調達した資金で、設備の更新、人材育成への投資などを行い、ベテラン従業員の指導の元、若手が着実に成長していった。また、更新した設備のおかげで生産性も向上し、利益率も改善した。ベテラン社員と若手がともに新製品の開発を手掛け、将来に期待ができそうな新製品の開発も進んでいる。

その結果、予定通り5年で不動産を買い戻すことになった。

ケーススタディ2 経営力強化のためのリースバック

老舗の食品加工メーカーであるD社。長年に渡る事業拡大のせいもあり、複数の工場が点在している。なかには整備が古い工場もあるうえ、工場の維持費もかさんでおり、スリム化の必要を感じていた。

まず、複数の工場を集約して効率化を考えたが、設備を最新化する費用が不足することがわかった。現状で借入金があることから、新たに借り入れを行うことは考えたくないという経営者の意向もあり、セール&リースバックを検討した。老朽化した工場は売却し、立地条件が良い2つの工場の土地をセール&リースバックすることとした。

古い工場の売却益、セール&リースバックで得た資金で工場の設備を最新化し、新たに研究開発設備も導入、新製品の開発も行うようにした。

まず設備の最新化によって、既存の製品においても生産性が向上し、利益率が改善した。また、新製品も定期的にリリースできるようになり、売上増につながった。不動産を整理したことで固定資産税を始めとする維持管理コストが低減され、経営体質の改善にもつながった。

その結果、10年後にはセール&リースバックしていた工場の土地を買い戻すこともでき、加えて新工場を現工場の隣接地に建設することになった。

この2つのケースのように、事業で活用している不動産を売却し、賃借するセール&リースバックには「不動産を使い続けることができる」ことと「資金調達ができる」という特徴がある。事業を持続可能なものにするために、不動産の価値を最大限に利用することも重要なポイントになってくるだろう。

三菱地所リアルエステートサービスでは、セール&リースバックの経験が豊富なスタッフを多くそろえています。
現在、事業承継や財務体質改善、経営力強化など、さまざまな企業の悩みごとについて、多彩な角度から解決策を提案させていただいています。セール&リースバックもその手段の一つです。

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