ケーススタディ 財務体質改善を実現するセール&リースバック

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長年、経営を続けていた企業の場合、「ぜい肉」がついてしまっている場合が珍しくない。それは借入金であったり、遊休不動産であったり、さまざまな形で財務体質に影響を与えている。今回は、セール&リースバックを活用して、財務体質の改善を成功させるケーススタディを紹介する。

監修:税理士法人 平川会計パートナーズ 理事長/税理士 平川茂

財務体質改善のために、セール&リースバックを活用できる

長年、事業を行ってきた企業の場合、しらずしらず財務体質が悪化しているケースが見られる。借入金がいつの間にか増えてしまっていた、古い設備のメンテナンス費用がかさんでいた、長く持っている不動産の固定資産税が負担になっていたなど、さまざまなケースが考えられる。

そのなかでも、案外多いケースとして、不動産に関連するものがある。かつて土地の値段は上がるものと信じていた頃に購入した不動産が負担になっているケースも珍しくない。特に、本社ビル、工場、倉庫など、事業に活用しているとその管理費や固定資産税などを「仕方がない経費」と考えてしまいがちだ。場合によっては、賃貸で借りていたほうが効率的な場合も少なくない。

しかし、いま活用している不動産を売却すると事業が回らなくなると考え、そのまま、財務体質改善に手を付けないケースもありえる。そうなると、本来なら可能だったはずの設備投資、人材開発などができなくなってしまいかねない。

そこで、「いまの不動産はそのまま使い続けることができる」一方で「不動産売却益を手にして、財務体質を改善できる」ことをセール&リースバックで実現したケーススタディを紹介する。

ケーススタディ なかなか減らない借入金、古くから所有する不動産がネックだった

中部地方で建材商社を営むB社は、地域のデベロッパー、工務店から信頼され、堅実にビジネスを発展させてきた。扱い商材の関係から大きな倉庫が必要であり、エリアごとに数ヶ所の倉庫を無理して取得しており、本社社屋も所有している。地域では自社ビルを所有、複数の倉庫の所有が信頼にもつながっていた。かつては倉庫として使用していたが、いまでは使わなくなった物件も複数所有している。古い不動産の中には、立地が良いものの、建物が老朽化してしまい、改修できないまま使用しなくなった物件も存在する。

最近、税理士と相談する中で、不動産の固定資産税、管理費が経費の中で多くを占めており負担となっていることを指摘された。また、古くから借入が常態化しており、金利負担もばかにならないことから、不動産を売却して借入金を返済してはどうかと提案された。

しかし、不動産の多くは倉庫であり、事業を続ける以上失うわけにはいかないため、売りたくても売るわけにはいかない。

売却する不動産、リースバックする不動産を整理して、借入金を返済

まず、以前よりも交通の利便性が向上し、倉庫や加工場を集約できる見込みがあること、不動産を所有することによる信用についてもすでに長年の事業によって得られていることから、不動産を整理することとした。活用のあてがない遊休不動産は売却し、立地が良い物件は売却せず、他の不動産の売却益で古くなった建物や設備を新しくして、倉庫として再利用することにした。

立地条件が良い本社ビルは売却した上で1フロアのみ、リースバックをすることにした。駅前で立地が良かったためか高額で売却できたため、その資金で倉庫のリニューアルと借入金の返済を行った。

図

まず不動産の固定資産税が圧縮されることになり、本社社屋の賃貸料を差し引いても、全体で見ればコスト圧縮につながった。またこれを機会に倉庫を再編し、高効率の立地の倉庫のみに設備を集約、古くなっていた倉庫もリニューアルして活用したことで、効率化を実現できた。

B社のように、古くから不動産を所有している企業の中には、遊休不動産や採算が悪化している不動産を所有しているケースも少なくない。いったん、財務体質を見直し、不動産も棚卸しを行って、現状維持、売却、セール&リースバックなど、さまざまな方針で運用していくことで、事業全体の最適化を実現することができるだろう。

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