サードプレイスオフィスとは 企業の導入メリット・必要性について解説

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働き方改革の推進に加え、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、職場環境は著しく変化しています。在宅ワークが一般化し、出社しない人も多いでしょう。中でも、近年、クローズアップされているのが「サードプレイスオフィス」です。その名のとおり、自宅や職場とは異なる「第3の職場」を意味しますが、どのようなメリットや注意点があるのでしょうか。

今回は、サードプレイスオフィスについて詳しく紐解いていきます。

サードプレイスオフィスの概要を解説

これまでは、仕事といえば職場や現場で行うケースが一般的でした。働き方が多様化している昨今、働く場所に対する概念も著しく変化しています。近年、取り入れる企業が増えている「サードプレイスオフィス」もその1つです。働き方改革に対応するために導入を考えているけれど、詳しく理解できていない人も多いでしょう。まずは、概要について解説します。

そもそもサードプレイスとは何か

「サードプレイス」とは、「第3の居場所」を意味しており、1989年にアメリカの社会学者レイ・オルデンバーグ氏が自身の著書「ザ・グレート・グッド・プレイス」で提唱した概念です。自宅や職場、学校とは別の居心地のよい場所は、人生を豊かにするといった考え方が基になっています。

多くの人にとって、自宅や職場は人生の中で最も長い時間を過ごす場所です。当たり前に過ごしているようで、気がつかないうちに負荷がかかってしまうこともあるでしょう。そこで、自宅と職場以外に自分にとってくつろげる場所があれば、ストレスからの解放に繋がります。例えばスポーツジムやカフェなど、立場や責任とは関係なく、気軽にコミュニケーションを楽しめる場所は、サードプレイスといえるでしょう。

ファーストプレイス、セカンドプレイスとの違い

居場所の概念には、ファーストプレイス・セカンドプレイスもあります。まず、ファーストプレイスは生活の基盤となる場所で、自宅のことを指しています。自宅は落ち着くスペースですが、家族との関わりや家事の負担などを踏まえると、ストレスが生じることも少なくありません。

セカンドプレイスは、社会的な生活を送る場所を意味し、職場や学校が該当します。自宅よりも職場や学校にいる時間の方が長いという人も多いでしょう。常に目的をもって活動する場所であると言えるでしょう。

種類意味
ファーストプレイス生活の基盤となる場所自宅
セカンドプレイス社会的な生活を送る場所職場、学校
サードプレイス自宅や職場、学校とは別の居心地の良い場所スポーツジム、カフェ

サードプレイスオフィスとは第3の職場

サードプレイスの考え方を応用した職場の在り方が「サードプレイスオフィス」です。新型コロナウイルス感染症の拡大は、社会生活にも大きな影響を及ぼしました。そこで見直されるようになったのが職場の在り方です。従来は、職場や現場で業務にあたるのが一般的でした。しかし、在宅勤務を余儀なくされ、テレワークを導入する企業が増えました。こうした流れの中で職場や自宅とは異なる、第3の職場として「サードプレイスオフィス」に注目する企業が増えています。

サードプレイスオフィス導入の3つのメリット!

第3の職場であるサードプレイスオフィスにも、社内では得られない利点があります。メリットをしっかりと理解した上で導入すると、より効率的に仕事を進めることができます。まずは、特筆すべきメリットを3つ紹介します。

生産性が向上する

サードプレイスオフィスは、自宅や職場とは異なり業務に集中できるのが特徴です。生活音や職場の人間関係に気を取られることなく、業務に集中できるため、より生産性の向上が期待できます。

採用強化、離職防止

サードプレイスオフィスの導入による多様な働き方へ対応することで、採用強化や、離職防止にも効果が期待できます。また、サードプレイスオフィスを取り入れると、職場との間に程よい距離感が生まれ、快適に仕事ができます。育児や介護に忙しい社員も、自宅から近い場所で勤務が可能になり、時短勤務やテレワークがしやすくなるでしょう。

事業継続計画の実現

近年、日本では豪雨や地震などの自然災害が多発しています。こうした災害には交通網がストップすることもあり、通常業務の継続が難しくなることが考えられます。また、新型コロナウイルスのような感染症対策でも、営業拠点を分散することで万が一のリスクを避ける上で有効なのが、サードプレイスオフィスです。様々な場所で業務にあたることで、事業への影響を抑えることができるでしょう。

注意すべきサードプレイスオフィス導入時のポイント

社員の心身をサポートしたり、効率的に業務を行う上で、非常に利点の多いサードプレイスオフィスですが、注意点もあります。メリットだけに注目して、事前の準備をしないままに取り入れれば、思わぬ損失を被る可能性も否めません。続いては、導入する際の注意点を解説します。

情報漏洩のリスク

サードプレイスオフィスを導入すると各社員がデータを持ち出したり、周囲に他社の人がいる状況で仕事をしたりする可能性があります。また、カフェなど職場以外の場で業務を行うことで、外部に情報が漏れるリスクも考えられます。

このように、快適に仕事ができる反面、情報漏洩が起こらないためにも、セキュリティ対策は十分に行う必要があります。

勤怠管理が困難

サードプレイスオフィスでは、社内で業務を行う時と比べると勤務状況の把握が困難といったデメリットがあります。例えば、部下に対する仕事の評価も難しいため、社員から不満が出ることも想定されるでしょう。そのほか、場所を選ばずに仕事ができる環境により、気がつけば長時間労働をしていたというケースも少なくありません。

サードプレイスオフィスを設ける際は、勤怠管理システムを整備し、社員の勤務状況を把握できる準備が肝要です。近年は、多様な働き方に対応した様々な勤怠管理システムがあるため、自社に適したシステムを選んで活用しましょう。

コミュニケーションの減少

それぞれの社員にとって快適な場所で仕事ができるサードプレイスオフィスですが、反面、社員同士のコミュニケーションが希薄になりがちです。社内では、対面で業務を行うため、細かなニュアンスも掴めます。しかし、サードプレイスオフィスでは一般的にメールやチャットツールを使って業務連絡を行うことが多いでしょう。文字だけのやり取りでは、相手の表情や思いが汲み取りづらく、不安を覚える人も少なくありません。ビデオ通話やオンライン会議などを活用して、意識的にコミュニケーションを取る時間を増やすことも大切です。

データから見る働きやすい環境の必要性

少子高齢化が進む昨今、企業が生き残っていくためには、働きやすい環境の整備が欠かせません。昨今の感染症蔓延の状況をうけて、働き方も大きく変わりテレワークの導入も進みました。実際、国土交通省が実施した「令和3年度テレワーク人口実態調査」では、テレワークの場として、主たる場所以外に「共同利用型オフィス等を利用したい人」は約49%、「利用意向あり」の合計は約58%と、6割近くの方がサードプレイスオフィス利用を考えています。また、テレワークを実施したい場所として、共同利用型オフィス等と回答した人が、主な実施場所として自宅を選択しなかった理由としては、「仕事環境(執務部屋、机・椅子、インターネット利用環境等)が良くないから」が約45%と約半数を占めており、今後も様々な働き方や、快適な職場環境を求める就業者は増えていくでしょう。

東京都でも着実に進む人口減少

東京都でも着実に進む人口減少

東京都政策企画局による「2060年までの東京の人口推計」によると、東京の人口のピークは2025年と予想されています。全国的にはすでに減少していますが、東京は増加しているのが現状です。しかし、2025年になると団塊世代が75歳を超えるため、減少に転じていきます。そんな中で社会を支えていくためには、今より高齢者が活躍する時代となっているでしょう。様々な年代、生活環境にある人が快適に働くためには、サードプレイスオフィスのような職場環境が欠かせません。

子育てと仕事の両立が当たり前に

子育てと仕事の両立が当たり前に

東京都生活文化スポーツ局が策定した「東京都女性活躍推進白書」では、2000年を境に共働き世帯が専業主婦世帯を上回っているというデータが記載されています。こうした背景を踏まえると、企業の課題として仕事と子育てを両立できる環境整備が挙げられます。サードプレイスオフィスであれば、通勤時間の短縮やストレスのない職場環境が確保できるメリットがあり、子育て中の社員も快適に業務を行えます。また、家族に介護が必要な方がいる社員や、共働きをする夫婦の社員等、社員の多様性にも対応することができます。

サードプレイスオフィスの種類とそれぞれの特徴

サードプレイスオフィスには、主に「サテライトオフィス」「オフィス内のサードプレイス」「ワーケーション」の3パターンがあります。それぞれに特徴があり、サードプレイスオフィスを設ける際にはその目的や効果をしっかりと把握しておくことが大切です。ここでは、サードプレイスオフィスの種類についてそれぞれ解説します。

サテライトオフィス

本社や本拠地とは別のエリアに設置するオフィスをサテライトオフィスといいます。例えば東京に本社がある企業が、地方やターミナル駅に拠点を構えるというものです。都会の喧騒から離れ、自然あふれる場所でリラックスして業務にあたれるため、生産性の向上を期待できます。また、職住近接(職場と自宅が近いこと)が可能になる点もメリットでしょう。

サテライトオフィスにも種類があり、自社で物件を借りる場合もあれば、複数の利用者によって1つのスペースを共有するシェアオフィスやコワーキングスペースを活用するケースもあります。

オフィス内にサードプレイスを設ける

サードプレイスオフィスといえばオフィス外に設置するイメージがありますが、オフィス内に設けるケースもあります。例えばカフェスペースや、ソファーやリフレッシュスペースなどを設置するというパターンです。外部に出向かなくてもオフィス内でリラックスできる場所があれば、気分転換が出来るでしょう。また、通常の業務ではあまり接する機会のない社員同士のコミュニケーションも図れるというメリットもあります。そのほか、サードプレイスはそれぞれの企業が個性を発揮しやすいのが特徴です。明るくオープンな空間は、ブランディングやエンゲージメントに効果的です。

ワーケーション

「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語が「ワーケーション」です。リゾート地や観光地に出かけて休暇を取りながら仕事をする働き方を意味します。非日常的な空間に身を置きながら仕事をすると、新しいアイディアが生まれやすくなり、生産性の向上につながる点がワーケーションのメリットです。また、通常は長期休暇が取りにくい人でも、ワーケーションであれば旅先で仕事ができるため、家族や友人と過ごす時間も楽しめます。最近では、観光地の活性化にも有効と考えられており、ワーケーションの普及を目標とした企業誘致や補助金が設けられるケースもあります。

本記事では、サードプレイスについての概要や社会的な需要の高まり、利用する際の注意点等について説明しました。企業で新たな働き方を検討する上で、サードプレイスでの就労環境の整備を考えようとしている場合は是非ご参考下さい。

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