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テレワークでどう変わる? オフィス需要と事業用不動産の活用

2020.12.22

今年4月に緊急事態宣言が出されてから、多くの企業でテレワークが導入されている。急な導入で混乱もあったようだが、現在では、テレワークと出勤での勤務の共存が進んでいる。それに伴って、オフィスの需要動向にも変化が生じている。今後のオフィス需要の動向とその環境下での事業用不動産の運用について、解説する。

テレワークの緊急導入から時間が経過し、テレワークは当たり前になりつつある

いま、多くの企業でテレワークの導入が進んでいる。多様な働き方を推進する意味で、数年前からテレワークについてはその導入が叫ばれてきたが、コロナ禍という環境で、テレワークの導入が一気に進んだことは前向きに捉えられるだろう。

東京商工会議所が行った調査※によると、今年6月の時点でテレワークを導入している企業は、67.3%に上っている。同内容で3月に行った調査時では、テレワークを導入している企業が36.0%だったことを考えると一気にテレワーク導入企業が増えたことがわかる。

当社三菱地所リアルエステートサービスでも4月から原則在宅勤務としてきた。それは5月26日に解除となったが、その後もテレワーク制度は継続している。社内でテレワーク制度に関するアンケートを採ったところ、在宅勤務に肯定的な意見が多数となっている。在宅勤務で「仕事がやりやすい」と回答した社員が約8割に達しており、「通勤や人間関係によるストレスが軽減された」「通勤がない分、スキルアップ等自由な時間が取れる」といった声が多く見られた。他にも、「オンライン会議導入により不要な会話が少なくなり業務効率が上がった」「会えない環境で、どうやったら相手に伝わるかを真剣に考えて発言・メールするようになった」など、業務効率の向上につながったという意見が多い。東京商工会議所のアンケートでも「働き方改革が進んだ(50.1%)」「業務プロセスの見直しができた(42.3%)」など、肯定的な結果となっている。

そのため、今後もテレワークを継続する企業が多そうだ。当社のアンケートでも、今後も在宅勤務を行いたいかを聞いたところ「頻繁に利用したい」が40%、「時々利用したい」が55%となっており、在宅勤務と出勤での勤務の共存が現実的なようだ。

 

東京商工会議所「テレワークの実施状況に関する緊急アンケート」

自宅での勤務に課題を感じる人も…そこで検討されるサテライトオフィス

いいことずくめに思える在宅勤務だが、課題があるという意見も少なくなかった。当社アンケートでは「仕事とプライベートの時間・環境を分けたい」「出社のほうが、メリハリができて良い」「自宅の在宅勤務環境がもっと良ければ利用したい」といった声も上がる。

子供がいるため、在宅勤務をしづらい、通信環境やパソコンやプリンターなどの必要な機材が自宅にないと言ったことも課題になるようだ。在宅勤務のメリットの一つである「通勤が必要ない」ことも、「メリハリがなくなる」「公私の区別をつけたい」といった声もある。セキュリティー面でも、自宅の通信環境で業務に求められるセキュリティーが担保できるかという不安もあるようだ。

そこで注目されているのが、サテライトオフィスだ。会社よりも近い場所で、自宅からは離れて、情報セキュリティー設備が整った環境で仕事ができる場所として、サテライトオフィスの需要は高まっている。当社の市場調査においても、テレワーク導入による必要オフィス面積の変動、サテライトオフィスの活用、郊外へのオフィス新設を今後のオフィスのあり方として検討している企業が多い。
サテライトオフィスの需要としては、郊外のターミナル駅、例えば船橋や千葉、川崎や横浜、大宮や浦和、府中・調布や立川などが候補エリアとして挙げられている。どこも都心へ通勤する人にとっては、自宅近くのターミナルであり、そこにサテライトオフィスがあれば通勤時間を大幅に短縮した上で、効率よくテレワークを実施できると期待されているようだ。

変わるオフィス需要。転換すべき事業用不動産、収益性不動産の運用

今後のオフィスは、従来のオフィスを「ファーストオフィス(センターオフィス)」、自宅を「セカンドオフィス」、サテライトオフィスを「サードオフィス」と分類して、必要に応じて使い分ける方向で変化すると思われる。この変化に対しては、自社のオフィスをどうするか、自社が持つ自社ビルをはじめとする事業用不動産や、状況変化が著しいオフィスビルといった収益性不動産をどう運用するかを考えなければならない。

自社オフィスが賃貸であれば面積の変更、移転なども検討されるべきだし、その分、在宅勤務の環境整備、補助、サテライトオフィスの契約なども必要になる。自社ビルであれば、自社ビルの自社利用面積を減少させる場合は賃貸できる面積は増えるが、新たなテナントを探すことは容易ではない。従来の賃貸ではなく、シェアオフィスなどの工夫が求められるだろう。自社ビルに限らず、収益性物件でも、リノベーション(リニューアル)や管理会社や固定費の見直しなどで、収益性を上げる工夫が必要だ。

またサテライトオフィスについても、郊外のオフィスビルを借りる、あるいは購入するという選択肢もある。自社の従業員だけでなく、他社との契約によってサテライトオフィスの賃料収入も期待できる。

コロナ禍で起こった急速なテレワークの導入は、オフィス需要の大きな変化をもたらした。その結果、企業が所有する事業用不動産、収益性不動産の運用にも大きな影響を及ぼし始めている。都心物件の運用方針の転換、売却、郊外物件の購入など、これまでとは異なる視点での不動産運用が必要となってきている。対応が後手に回り、手遅れになる前に、情報を持つ不動産会社と相談して、事業用不動産戦略を見直しておきたい。